スペースデータ、オープンソースの宇宙ステーション開発プラットフォーム「Space Station OS」を公開

世界中の誰もが宇宙ステーションを開発できる未来へ

株式会社スペースデータ

株式会社スペースデータ(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤航陽、以下スペースデータ)は、宇宙ステーションのオープンプラットフォーム「Space Station OS」を公開しました。「Space Station OS」は、世界中の技術者が協調して、宇宙ステーションの共同開発と利用を行うためのプラットフォームです。宇宙ステーションの制御ソフトウェアとして、世界初のオープンソースとなります(※1)。

Space Station OS
https://spacestationos.com/

(※1)ROS™️(Robot Operating System)を活用した宇宙ステーションのソフトウェアとして世界初。ROSデータベース内2024年10月当社調べ。

「Space Station OS」について

「Space Station OS」は、宇宙ステーションの開発や利用に必要なソフトウェアおよびシミュレーション環境をオープンソースとして全世界に公開し、世界中の技術者が協力して宇宙ステーションの開発や利用を促進するためのプラットフォームです。世界共通の宇宙ステーションの開発および運用環境を提供します。

第一弾として、宇宙ステーションの開発に必要なソフトウェアおよびシミュレーション環境を、世界最大のソフトウェア開発プラットフォームであるGitHubにて公開しました。GitHub上では、世界中の数百万人もの開発者と共同開発を進めることができ、国境を越えた技術協力が可能となります。

「Space Station OS」は、いわば「宇宙のOS」です。コンピューター産業におけるWindowsのようなOSは、異なるハードウェアの差異を吸収し、共通の操作環境を提供することで、コンピューターの普及を促進し、インターネットという新たなインフラを生み出しました。同様に、「Space Station OS」は、異なる企業や国が開発した宇宙ステーション間で共通に動作するソフトウェアを提供し、宇宙ステーションの開発や管理、運用を容易にします。これにより、誰もが宇宙ステーション事業に参加できる時代を開きます。

【背景】複数の民間宇宙ステーションや有人宇宙船が開発・運用される時代

過去10年間で、米国のSpaceXをはじめとする企業によってロケットの打ち上げコストは劇的に低下し、打ち上げ回数は大幅に増加しました。特にSpaceXの「ファルコン」シリーズや「スターシップ」の成功により、宇宙輸送がより手頃かつ高頻度で行われるようになり、民間企業による有人宇宙船の定常的な打ち上げと運用も実現しています。

現在、米国を中心に民間企業が宇宙ステーションの開発を積極的に進めています。2030年に予定されている国際宇宙ステーション(ISS)の退役を見据え、NASAは「Commercial Low-Earth Orbit (LEO) Development」プログラムを通じて、民間企業による宇宙ステーションの設計・開発を支援しています。これにより、2030年代には複数の民間宇宙ステーションが地球軌道上で運用されることが期待されています。

このような未来を見据え、スペースデータでは、世界中における宇宙ステーション開発の加速を目指し、異なる企業や国家が開発する宇宙ステーション間での相互運用性を確保するため、共通動作するソフトウェアの開発をオープンソースとして推進してまいります。

「Space Station OS」が提供する機能 

宇宙空間は、地球には当たり前にある空気や水、対流などの自然資源が無く、昼間は120度、夜には-150度に達する極端な温度環境にあります。また、強い宇宙放射線、無重力などの人にとって過酷な環境が広がっています。

宇宙ステーションは、地球と同等の環境を工学的に再現することで、宇宙でも人が安全で快適に生活できるように設計されています。宇宙ステーションの技術は、地球の自然な営みを工学的に再現した「小さな地球」と言い換えることもできます。

「Space Station OS」には宇宙ステーションを構成する、熱制御、姿勢制御、電力、熱、通信、生命維持などを制御するソフトウェアが搭載されています。また、各機能を統合し、システム全体の最適化を図る機能を備えています。

主要機能

Space Station OSモジュール群(※2)

 | |→シミュレータ

 | |→熱制御

 | |→姿勢制御/軌道変換

 | |→電力供給・制御

 | |→通信

 | |→生命維持

 | |→有人宇宙船/輸送船ポート

 |→取扱説明書完備

(※2) ROS 2のパッケージ機能を活用してモジュール群を統一

実現手段とロードマップ

 「Space Station OS」は、ROS 2(Robot Operating System 2)を基盤として構築されています。ROS 2は、ロボット開発のためのオープンソースミドルウェアで、ソフトウェアライブラリ、通信プロトコル、開発ツールなど、ロボットアプリケーションに必要な多様なツールを提供しています。ROS 2は、2023年には5億5千回を超えるダウンロード数を記録する等、世界最大のロボット開発者向けのオープンプラットフォームです。

ROS™️(※3)の普及以前、ロボット産業では、専門家がフルスクラッチでシステムを開発するのが一般的でした。しかし、ROSの登場により、ロボット開発に必要な技術や知見が広く共有され、ソフトウェアの再利用が促進されました。これにより開発コストが削減され、信頼性が向上し、ロボット技術者の人口も増加しました。現在、ROSは自動化、製造、医療、農業など、多様な産業分野に広く普及しています。

宇宙ステーションの開発は、ROSが普及する以前のロボット産業と類似した状況にあります。現在は限られた専門家が独自に開発を進めていますが、「Space Station OS」により、技術や知識の民主化が進み、世界規模での宇宙ステーションの共同開発が実現すると考えています。

(※3) ROSは、ROS2の前身となるロボット開発プラットホームです。ROSは2007年にロボットソフトウェアの開発を世界規模で共同開発するために、ロボット工学分野の研究開発におけるコードの再利用を促す目的で開発されました。当初、研究開発用途を想定して開発されたROSの利用が想定を超える領域での利用に広がりました。2015年にROSのコンセプトを引き継ぎ「ROS2」の開発が始まりました。ROS2では、実製品にも適用可能なよう、サポートOSの拡大、信頼性の向上がなされています。

また、各機能をモジュール化し、パッケージ機能でそれらを統合することで、柔軟性と再利用性、拡張性を実現するROS 2を技術基盤し「Space Staion OS」を構築します。

【技術的背景】宇宙ステーション開発におけるソフトウェアディファインドアプローチの採用について

近年のハードウェアの開発ではソフトウェア制御を前提とし、共通のハードウェア上でソフトウェアを頻繁にアップデートし、機能や顧客体験を向上させるソフトウェアディファインドとよばれるアプローチが注目を集めています。「Space Station OS」ではこうしたアプローチを宇宙ステーションの開発に導入し、柔軟かつ拡張性の高い製品や開発を実現します。

宇宙空間ではハードウェア交換が難しいため、ソフトウェアを通じて機能の追加や変更が可能になることで、宇宙ステーションの運用がより柔軟になります。「Space Staion OS」では、システムとして成立する最小の機能(電力、通信、熱制御等の最小単位の機能)を提供すると共に、ソフトウェアやハードウェアの拡張性を許容するアーキテクチャを指向します。

また、標準化されたインターフェースを通じて、各国や企業が開発した機器が互換性を持ち、シームレスに連携できる環境を構築できます。これにより、宇宙ステーションの開発と運用が柔軟かつ持続可能なものとなり、将来の技術革新にも対応可能な基盤を提供します。

※現時点では、ハードウェアの自社製造は計画しておらず、ハードウェアの製造委託先に関する提携企業も未定です。

「Space Station OS」開発責任者 加藤 裕基のコメント

宇宙ロボティクスの専門家である私は、ロボティクスミッションが自由に宇宙に打ちあがっていく未来を目指しています。

数十年もの間、宇宙ミッションは有人か、無人(ロボット)か、という論争がなされてきましたが、私の中での答えはただ1つです。「ロボットが、有人ミッションに自由を与える」のです。そして、この「Space Station OS」は歴史を一つ刻み、世界に誇れるステップです。

宇宙ステーションは大きなロボットであり、スマートホームのようなものです。宇宙ステーションへ人がその維持作業のために行くのではなく、ロボットが管理しきれいにしてある宇宙空間にリモートワーク出張している世界は必ず実現できます。

Space Station OSが普及し、「宇宙の民主化」が進めば、有人火星探査や、スペースコロニーの話もどんどん出てくる、つまり人類の進歩への貢献を感じられるのです。

加藤 裕基 プロフィール

カーネギー・メロン大学大学院修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科博士課程終了。2007年から宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて、宇宙ロボティクスの研究開発および戦略立案を牽引。現在は、火星衛星探査計画(MMX)のフォボスの砂を自律的に採取するサンプリングロボット開発を主導するとともに、2024年にスペースデータに参画し「Space Staion OS」を開発。

JAXA「きぼう」日本実験棟の開発責任者 長谷川義幸氏のコメント

「きぼう」は先端の有人宇宙技術を獲得する国家事業として国内の宇宙関連企業8社で分担開発を行いました。このため、各社間のデータ通信の接続を定義する「インタフェース仕様」を定義する作業が非常に大変で、試験をするとデータが受信できなかったり、指令データが届かないことが起き、全体システムとして仕上げるのに多大な労力やコストを費やしました。NASAとのインタフェース試験でも似たようなことが起きました。当時は、まだソフトウエアの標準化ができていない時期だったのです。

もし各社が手軽に利用でき安価で信頼のおける共通ソフトウエアが存在していれば、本来の目的である先端技術開発や宇宙実験準備に技術者の時間を集中できただろうと思います。宇宙ステーションの基本的な機能を組み込んだ「Space Station OS」は、そのような余計な業務を効率化でき開発を加速できる可能性があります。これをきっかけとして、国内外の多くの技術者や事業者が、宇宙ステーション開発や利用の事業に参加することを期待しています。

三菱重工業「きぼう」日本実験棟の管制システム開発責任者 竹内芳樹氏のコメント

「きぼう」の設計を行った1990年代は、PC、Windows、ネットワーク等が漸く普及した時代であり、管制システムおよび搭載ソフトウェアの要求定義やインタフェース設定に非常に苦労しました。この度公開される「Space Station OS」は、そのような業務を大幅に効率化するものであり、国内外での民間ステーションの開発で大いに活用されることを期待します。

東京大学先端科学技術研究センター知能工学分野 矢入健久教授のコメント

私たちは長年に渡って、宇宙機の信頼性と安全性を高めるための人工知能・機械学習研究に取り組んでいますが、宇宙機開発における知見やデータの共有の困難さが大きな障壁でした。Space Station OSが提供するオープンな研究開発環境はこの障壁を取り除き、真に宇宙で使える人工知能の実現に貢献すると大いに期待しています。

宇宙飛行士 山崎直子氏のコメント

ミニチュアの地球とも言える宇宙ステーションを、世界中の叡智をつなげて開発利用していく「Space Station OS」は、画期的な仕組みであり、人類にとって大きな一歩です。民間の宇宙ステーションが複数計画されている過渡期だからこそ、本OSが公開される意義は大きいでしょう。

国際宇宙ステーション(ISS)では、100以上の国の研究者により、約3,000もの実験が実施されてきています。準備には長い時間がかかる場合が多いですが、本OSが広まれば、宇宙実験をしたい、宇宙ならではのエンタメを考えたい等、多様なアイディアの実現も加速できるでしょう。そして、宇宙ステーションの熱制御、電力、生命維持など様々な機能をシミュレーションできる様になれば、より複雑な「宇宙船地球号」の理解への糸口となるはずです。宇宙でも地球でも貢献されることを期待しています。

スペースデータについて

スペースデータは「宇宙」と「デジタル」の融合を目指した研究開発を行うスタートアップです。人工衛星・宇宙ステーション・月面探査といった宇宙分野の技術と、AI・3DCG・デジタルツインといったデジタル分野の技術の融合を目指す研究を進めています。「新しい宇宙を作る」をビジョンに掲げて、革新技術の発明・特許化・実用化を行っています。

法人概要

社名 :株式会社スペースデータ

代表 :佐藤 航陽

所在地:東京都港区虎ノ門 1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階

資本金:15億1300万円

目的 :宇宙開発に関わる投資と研究

URL :https://spacedata.jp

本件に関するお問い合わせ

下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。

https://spacedata.jp/contact

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会社概要

株式会社スペースデータ

36フォロワー

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URL
https://spacedata.ai/
業種
情報通信
本社所在地
東京都渋谷区道玄坂2-11-1 JMF渋谷ビル03 5F
電話番号
-
代表者名
佐藤 航陽
上場
未上場
資本金
15億1300万円
設立
2017年01月