ファッション・高級品の中古市場規模は、2030年までに最大3,600億ドルに達する見込み～BCG、Vestiaire Collective共同調査

新品市場の3倍にあたる年平均成長率約10％で拡大

ボストンコンサルティンググループ

2025年12月18日 15時30分

経営コンサルティングファームのボストンコンサルティンググループ（以下、BCG）は、中古ファッション・高級品販売の世界的なプラットフォームVestiaire Collectiveと共同で、調査レポート「Resale’s Next Chapter: How Fashion and Luxury Brands Can Win in the Secondhand Market」（以下、レポート）を発表しました。Vestiaire Collectiveの利用者7,800人を対象とした調査の結果に基づき、中古市場における購買行動の実態を分析しています。

ファッション・高級品の売上全体のうち中古品は約8％を占める

調査によると、ファッション・高級品の中古市場規模は2022年の約1,300億ドルから2025年には約2,100億～2,200億ドルまで成長、この間の年平均成長率（CAGR）は15～20％と推計されます。ファッション・高級品の売上全体で中古品は現在約8％を占めており、循環型経済を促す規制強化を進める欧州を中心に拡大しています。今後5年間でCAGRは新品市場の3倍にあたる10％前後で成長が続く見通しで、2030年には市場規模が約3,200億〜3,600億ドルに達すると予測しています（図表1）。

中古ファッション・高級品を購入する動機で最も多かったのは「手頃な価格」で、回答者の約8割が主な理由に挙げています。ほかにも豊富な種類とユニークさ（55％）や環境への優しさ（40％）などが購入を後押しする要素になっています。一方、中古品を売却する主な動機としては、「クローゼットの整理」と「副収入を得るため」が多く挙げられました。副収入は、別の中古品購入のため（44％）、新品購入のため（18％）など、次の買い物の資金にする動きも見られました。

中古品はZ世代の所有アイテムの3割超を占める

世代別に見ると、Z世代の回答者は所有アイテムの3割超を中古品が占めており、市場を牽引しています（図表2）。購入の主要な動機は多くの回答者と同様に「手頃な価格」（74％）である一方、上の世代と比べ、限定品や完売品などの掘り出し物を見つける楽しさや、自分らしいスタイルを磨く喜びから中古品を購入する傾向があることがわかりました。また、Z世代の回答者の約80％が「中古品を通じて新しいブランドを購入した・知った」と答えており、全体平均の66％を上回っています。このことから、中古品は特にZ世代にとって新たなブランドと出会う入り口となっていることがうかがえます。

ファッション・高級品市場において注目が集まる「デジタル製品パスポート（DPP）」

ファッション・高級品業界はこれまで、自社のECサイトや店舗を通じて中古品を販売したり、中古品販売のプラットフォームと提携したりするなど、戦略的な再販モデルによって循環型経済への基盤を築いてきました。しかし、販売時点以降の体系化されたデータが存在しないことが、中古品販売における課題となっています。こうしたなか、製品情報をライフサイクルのあらゆる段階で記録・管理する「デジタル製品パスポート（DPP）」[注1] が重要な仕組みとして注目されています。調査回答者の過半数は、商品が正規品であることを証明する仕組みや、素材・仕様など詳細な商品情報を把握できることに価値を感じており、DPPは循環型経済の促進に加え、信頼性向上の観点でも強力なツールとなる可能性があります。一方で、DPPの認知度はまだ低く、調査回答者の65％はDPPを「聞いたことがない」、さらに15％は「名称は知っているが理解していない」と回答しています。

BCGデュッセルドルフ・オフィスのマネージング・ディレクター & パートナーで、レポートの共著者のCatharina Martinez-Pardoは次のように述べています。「DPPは規制に対応する必須事項にとどまらず、顧客との信頼構築に向けた戦略的なツールへと進化しています。DPPは消費者の購入時の手間や不安を減らし、製品の真正性を保証するとともに、ブランドにとっては製品ライフサイクル全体で新たな価値を創出する機会を生み出します」

[注1] 製品情報をライフサイクルのあらゆる段階（製造、配送、使用、廃棄など）で、デジタル形式で記録・管理するシステムを指す。欧州を中心に導入が進んでおり、製品の情報や環境負荷を「見える化」することで透明性を担保し、消費者がより環境に配慮した選択をできるようにするねらいがある

■ 調査レポート

｢Resale’s Next Chapter: How Fashion and Luxury Brands Can Win in the Secondhand Market」

■ 調査概要

Vestiaire Collectiveを利用する、中古品売買に積極的な消費者が対象

実施時期：2025年4月〜5月
回答者数：7,800人

■日本における担当者

森田　章　　マネージング・ディレクター & シニア・パートナー

BCG消費財・流通グループの日本リーダー、気候変動・サステナビリティグループにおける循環型社会構築、および食料システムの変革のトピックリーダー。

慶應義塾大学理工学部卒業。同大学大学院理工学研究科修了。IT関連企業の起業・経営、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。

内藤　純　　マネージング・ディレクター & パートナー

BCG消費財・流通グループ、気候変動・サステナビリティグループ、およびオペレーショングループのコアメンバー。

東京大学法学部卒業。国内大手メーカー、グローバルアパレル企業、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。

■ ボストンコンサルティンググループ（BCG）について

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。
https://www.bcg.com/ja-jp/

■ Vestiaire Collectiveについて

Vestiaire Collective is the leading global platform for pre-loved luxury fashion. The company’s mission is to transform the fashion industry for a more sustainable future, through empowering its community to shop more consciously. Driven by the philosophy ‘Think First, Buy Second’, Vestiaire Collective offers a trusted space for its community to prolong the life of its most-loved fashion pieces. The platform's innovative features simplify the selling and buying process, as well as giving its members access to one-of-a-kind wardrobes from around the world. The company boasts a curation of 5 million desirable items. Co-founded in 2009 by two female entrepreneurs in Paris, Vestiaire Collective is a Certified B Corporation® and is active in 70 countries worldwide.