emol、成人ADHD治療用アプリを開発。AMED研究実証済みCBTを搭載し、性能評価を開始

精神疾患向け治療用アプリを開発するemol株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役 CEO:千頭 沙織、以下「emol」)は、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター(所在地:東京都小平市、センター長:久我弘典、以下「NCNP」)と共同で、成人ADHD(注意欠如・多動症)向け治療用アプリ(医療機器プログラムとして薬事承認申請予定、以下「本アプリ」)の性能評価を開始したことをお知らせいたします。
本アプリは、AMED(日本医療研究開発機構)が採択した研究課題「成人期の注意欠如・多動症に対する個人認知行動療法(ADHD‑CBT)統一プログラム(課題管理番号:21dk0307100h0001)」で開発・有効性が検討されたCBTプログラム(※1) をデジタル実装したものです。NCNPの臨床知見と、emolのモバイルアプリ設計・開発ノウハウを掛け合わせることで、専門家不足による治療アクセスの課題を補完することを目指します。
※1 CBT:Cognitive Behavior Therapy(認知行動療法)
■ADHDとは
ADHD(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)は、不注意・多動性・衝動性といった行動特徴により、学業や就労、日常生活に著しい支障を来す神経発達症です。幼児期~青年期に初めて診断されることが多いものの、適切な診断・治療機会を逃したまま成人期に至るケースがあり、諸研究で国内成人人口の1〜4%¹(推計約80〜320万人²)が該当すると報告されています。

■社会的課題
国内で専門的な認知行動療法(CBT)を継続提供できる医療機関(精神科・心療内科診療所など)は全体の6%程度³ にとどまり、通院距離や待機期間の長さから充分にCBTを受けられないケースが少なくありません。成人ADHDは症状が改善しづらい上に、社会機能の低下を招きやすく、本人と家族に加え社会全体にも影響する課題となっています。
さらに、CBTは成人ADHDに対し欧米で有効性が示されており(Safren ら, 2005 ほか)、薬物療法を補完する非薬物治療として国際的ガイドラインにも位置づけられています。しかし国内では専門家不足により提供体制が限定的であり、デジタル化による普及が急務です。
■製品開発の背景と目的
医療アクセスの格差や継続性の課題をデジタル技術で補完すべく、NCNPで臨床効果が検証されたCBTプログラムを基盤にスマートフォンアプリの開発を進めています。本アプリは、成人ADHDに推奨される治療選択肢の一つであるCBTを医師の指導のもと安全かつ継続的に提供し、場所や時間の制約を受けずに行動習慣の改善と長期的な自己管理を支援し、専門的支援へのアクセス格差を縮小することを目的としています。

■SaMD開発パイプライン

疾患/目的 |
開発段階 |
---|---|
ADHD(注意欠如・多動症)治療 |
性能評価フェーズ |
強迫症(OCD)治療 |
探索的治験開始 |
精神疾患診断支援 |
開発中 |
社交不安症(SAD)治療 |
開発中 |
■今後の展望
本アプリは今後、性能評価の結果を踏まえて機能とユーザーインターフェースをブラッシュアップし、臨床試験を経て薬事承認申請を目指しています。また、強迫症向け治療用アプリはすでに探索的臨床試験を開始しており、精神疾患診断支援や社交不安症など他疾患領域への展開も視野に入れ、治療アクセスの格差解消と医療資源の最適化に貢献することを目標としています。
アプリを介したCBTが普及すれば、専門医が少ない疾患でもガイドラインに沿った治療を均質に提供でき、患者さんは遠方の病院に何度も通うことなく、最低限の受診で自宅にいながらアプリによるCBTを実施できるようになります。これにより“ドクターショッピング”(※2)の抑制や診療コストの削減が期待され、医師にとっても外来枠をより重症患者の診療に充てられるなど、医療体制全体の効率化が見込まれます。
emolでは、デジタルを活用し医療現場の効率化、治療の選択肢を広げるなど、精神医療への貢献を目指していきます。
※2 ドクターショッピング: 症状改善を求めて複数の医療機関を転々と受診すること。
<emol株式会社>
会社名: emol株式会社
代表者: 代表取締役 千頭沙織
設立日: 2019年3月18日
URL: https://emol.jp/
事業内容: 精神疾患・メンタルヘルス関連サービス開発
お問い合わせ: support@emol.jp
<出典>
¹ 例:Adler LA & Chua HC, 2002; Kessler RC et al., 2006 など。
² 総務省統計局「人口推計」2025年5月1日現在:成人(20歳以上)7,975万人
³ 日本認知・行動療法学会「2021年 CBT 実施状況調査報告」より
※本プレスリリースに関する注意事項
本アプリは医療機器プログラムとして現在性能評価(治験前)段階にあり、日本国内で医療機器としての承認・認証を受けていません。したがって一般の販売・提供はできません。本資料は性能評価に関する情報提供のみを目的としており、広告・販売促進を意図するものではありません。
本アプリは現在薬事承認前の開発段階にあり、治療効果を保証するものではありません。
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