DUMSCOと京都大学の共同研究により開発臨床研究アプリ「ハカルテリサーチ」とがん患者サポートアプリ「ハカルテ」が京都大学の研究で活用され成果が学会発表されました
〜ASGO 2025/第67回日本婦人科腫瘍学会学術講演会にて〜
株式会社DUMSCO(所在地:東京都港区、代表取締役CEO:西池成資、以下 当社)は、京都大学と共同研究により開発した臨床研究用アプリ「ハカルテリサーチ」、がん患者サポートアプリ「ハカルテ」を、京都大学大学院 医学研究科 婦人科学産科学の研究チームが進めるがん患者の症状負担やQOLに関する研究において、データ収集ツールとして提供しております。
このたび、本アプリを活用した2つの研究成果が、2025年7月17日(木)〜19日(土)に東京国際フォーラムで開催された「ASGO 2025(Asian Society of Gynecologic Oncology 2025/第67回日本婦人科腫瘍学会学術講演会 合同開催)」にて発表されました※。発表は、京都大学大学院 医学研究科 婦人科学産科学の東山希実先生および梅宮槙樹先生によってそれぞれ行われました。


当社のHRV測定技術とアプリ開発について
当社は、心拍変動(HRV: Heart Rate Variability)測定技術に強みを持ち、自律神経の状態を可視化する複数のヘルスケアスマートフォンアプリを通じて300万人以上、4,000万回を超えるHRVデータを蓄積してきました。HRVとは、心拍と心拍の間隔(R-R間隔)の揺らぎを示す指標であり、交感神経と副交感神経のバランスに影響を受けることが知られています。当社では、300万人以上のHRVデータを解析し、平均値を100としたスケール(50〜150)でエネルギーレベルを数値化する独自モデルを開発。このエネルギーレベルは、比較的元気な状態では高く、不調や疲労が続く場合は低下する傾向があります。こうしたHRV解析技術を活用し、京都大学と共同研究により開発したがん患者向けの臨床研究用アプリ「ハカルテリサーチ」は、スマートフォンを使って日常的に症状記録ができるだけでなく、スマートフォンのカメラを用いて迅速簡便にHRVを記録・管理できるツールとして、研究の現場で活用されています。また、研究の場のみならず、より多くの方のがん治療に寄与していくことを目的に、「ハカルテリサーチ」を一般ユーザー向けアプリへと改修した「ハカルテ」も2024年7月から提供しており、多くのがん患者にご利用いただいております。今回発表された研究においても、「ハカルテリサーチ」や「ハカルテ」を用いて計測されたHRVや体調記録のデータなどが使用されています。
今回の京都大学による研究結果について
東山希実先生のご発表内容
タイトル:Factors associated with symptom burden in cancer patients undergoing systemic therapy: an observational study using ePRO(全身療法を受けているがん患者の症状負担に関連する因子:ePROを用いた観察研究)
内容要約:
全身療法を受けているがん患者における症状負担(病気や治療などより起こる複数の症状が、患者の生活に及ぼす影響の程度)は性別によって異なることが報告されていますが、統一的な理解は未だ確立されていません。本研究は、全身療法中の症状負担に寄与する因子を明らかにすることを目的に実施されました。がん患者サポートアプリ「ハカルテ」利用者を対象とし、参加者は、重症度を含む症状を日々アプリケーションに記録、歩数はスマートフォン内蔵の歩数計を用いて自動的に収集されました。最終的に化学療法を受けている1,051人の患者から合計30,223件の記録が収集されました。結果、がん患者の半数以上が全身療法中に中等度から重度の複数の症状を経験し歩数減少を伴う他、女性であることと殺細胞薬(細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することで、がんを攻撃する薬※2)の使用は、症状負担の増加に関連する重要な因子であることがわかりました。
梅宮槙樹先生のご発表内容
タイトル:Predicting Quality of Life in Patients with Cancer Using Ultra-Short Heart Rate Variability Analysis via Smartphone Camera: A Sensitivity-Optimized Logistic Regression Model(スマートフォンカメラを用いた超短時間心拍変動解析によるがん患者のQOL予測:感度最適化ロジスティック回帰モデル)
内容要約:がん治療において、生活の質(QOL)の維持は極めて重要です。京都大学の研究チームはこれまでに、スマートフォンカメラを用いて1分間で測定可能な心拍変動(HRV)がQOLを反映できることを明らかにしてきましたが、本研究ではアプリ「ハカルテリサーチ」などを用いたHRVから得られる指標を用いて、がん患者のQOLをモニタリングする方法を確立することを目指しました。※本研究では、がん患者がアプリで計測したHRVデータを用いたロジスティック回帰モデルを構築し、QOLや代表的な症状である「疲労」の悪化を高い感度で予測できることが確認されました。特に一部の症例では、医療従事者が自覚する前の段階で、HRVがQOLの急激な低下を示しており、早期の介入を可能とする有効な指標であることが示唆されました。スマートフォンのカメラで取得したHRV指標を用いたロジスティック回帰モデルは、QOLと疲労の悪化をスクリーニングするのに有用であり、これらの結果は、HRVががん患者のQOLをモニタリングするための、アクセスしやすく客観的なツールであることを示唆されました。
※本研究の途中段階で「ハカルテリサーチ」が開発されたため、梅宮先生の研究発表の一部患者においては当社開発のセルフ・コンディショニングアプリ「ANBAI」のHRV測定機能を使用されています
※2国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html
がん患者サポートアプリ「ハカルテ」について
当社では臨床研究用の「ハカルテリサーチ」の開発知見を活かし、広く一般のがん患者の体調記録にご活用いただくために改修した「ハカルテ」を提供しております。患者目線にたって開発・改善を重ねている点が特徴です。がん患者が自分の状態を知り、より主体的に治療やケアを受けられるようサポートすることで、がん患者の自己効力感を高め、QOL(生活の質)向上に寄与することを目指しており、簡単で詳細な体調記録やHRVの測定などをすることができます。今後は受診アドバイスの提供や、気軽に医療者に相談できるチャット機能なども追加していくほか、アプリ内でアピアランスケアなどに関する情報提供なども行い、より広くがん患者をサポートできるアプリを目指してまいります。
詳細は下記をご確認ください。
ハカルテWebサイト
ハカルテ公式note
SNS(がん患者さんに役立つ情報を発信しています)
https://www.instagram.com/hakarute/
ハカルテ開発の背景
現在、日本は生涯で二人に一人ががんになる時代であり、昨年より国が開始した第4期がん対策推進基本計画においても、3本柱の一つとして「がんとの共生」が掲げられています。計画の中では「全てのがん患者及びその家族等の療養生活の質の向上を目指す」と明記され、通院しながら社会生活を送るがん患者さんの抱える問題への対策は急務となっています。
当社では、3つの背景からハカルテ開発に至りました。
■ハカルテ開発の背景1:医療の進歩に伴うがん治療の変化
近年のがん治療は、長期の入院はせずに定期的(化学療法の場合は数週間に一度ほど、放射線療法の場合は連日のケースが多い)に通院し、外来で治療を行う形式が一般的です。しかし、治療期間のほとんどを自宅で生活しながら過ごす患者にとっては、体調の変化や治療の副作用について、すぐに医療者に相談できないという不安と隣り合わせでもあります。「ハカルテ」は、患者が自分のスマホで日々の体調やライフログ*1を記録し、診察前に体調記録やメモを確認することで、前回の治療以降の体調変化や質問事項を伝えやすくし、主体的な治療をサポートします。
■ハカルテ開発の背景2:がん治療における患者のQOL維持・向上の重要性
多くのがん患者は、がんと診断されることや治療の副作用などにより、心身ともに大きな負担を感じ、QOLが著しく低下することがわかっています。また、QOLの低下が治療の中断につながることも少なくなく、治療を完遂するためにはQOLの管理が重要となっています。海外では、QOLを管理することにより治療成績が上がったという報告*2もあります。そういった背景もあり、近年はがんを治すことだけではなく、がん患者の不安を取り除き、QOLを維持・向上することの重要性が叫ばれています。しかし、限られた診療時間の中で、医療者が十分に患者のQOLに配慮した対応をすることは難しく、がん治療における課題の一つとなっています。「ハカルテ」は症状やライフログのデータによって心身の状態を可視化することで、がん患者のQOLを客観的に評価し、短い診療時間のなかでも医療者と患者が円滑にコミュニケーションを取れるようサポートします。
■ハカルテ開発の背景3:がん患者の体調記録の重要性
様々な研究で、医師は患者の訴えを過小評価していると報告されています。特に、心理面や社会面についてその傾向が強く、症状では痛みやしびれ、だるさ、不眠等について、医師が患者の訴えを過小評価したり、実態を捉えにくかったりすると言われています。*3患者がよりよい治療を受けるためにも、自分の症状とその程度について記録したものを主治医に見せて、心身の状態を正しく理解してもらうことが重要です。
*1 ライフログ(lifelog):人間の活動(life)の記録(log)のことで、日本語訳すると生活記録と訳される。ハカルテで記録できるライフログは、心拍変動・歩数・睡眠・気分など。
*2 Basch E, Deal AM, Dueck AC, et al. Overall Survival Results of a Trial Assessing Patient-Reported Outcomes for Symptom Monitoring During Routine Cancer Treatment. JAMA. 2017;318(2):197-198.
*3 Basch E. The missing voice of patients in drug-safety reporting. N Engl J Med. 2010 Mar 11;362(10):865-9.
株式会社DUMSCOについて
「持続可能なパフォーマンスをデザインする」をミッションに、データ分析とテクノロジーで課題を解決するべくサービス開発や企業向け生産性向上コンサルティングを提供しています。
ハカルテ事業にとどまらず、前身アプリが300万DLを突破しリニューアル後もユーザー数を伸ばしているセルフコンディショニングアプリ「Habitone」、toB向けストレス測定アプリ「ANBAI」、ポーラメディカルと共同開発している熱中症リスク判定AIカメラ「カオカラ」など、さまざまな事業を展開しています。
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