高流動コンクリートを用いた「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入
打設時の人員の約60%低減とコンクリート表層の均質化を実現
開発の背景と経緯
従来のトンネル工事における覆工コンクリート打設には、狭隘な空間でのコンクリートの入念な締固めや配管の切替え等、人力による苦渋作業が伴います。また、これらの作業は技能労働者の技量や熟練度によるところが大きく、品質不良箇所の発生が懸念されます。さらに、年々深刻化する技能労働者不足や後を絶たない労働災害など、建設業が抱える課題も相まって、近年、覆工コンクリート打設の自動化へのニーズが、より一層高まっています。
そこで鹿島では、人力作業の削減と生産性・安全性の向上を目的に、締固めが一切不要な覆工用高流動コンクリートを用いた本システムを2020年に開発、模擬トンネル(静岡県富士市)において、その有用性を確認しました。そして今般、実工事において、本システムに自動化のメリットを最大限に活かすことができる覆工用高流動コンクリートを初めて採用しました。
なお、2023年3月には、軽微な締固めが必要な中流動覆工コンクリートにも対応できるよう本システムを改良し、実工事に導入済みです。
現場への導入と効果
本工事の一部区間(約84m)の覆工コンクリート打設において、覆工用高流動コンクリートを本システムに採用し、その効果を検証しました。中流動覆工コンクリートを用いた区間では、箱抜き※箇所などにおいて棒バイブレータを使った人力による締固めが必要でしたが、覆工用高流動コンクリートを用いた区間では、すべての箇所で締固めが不要となりました。その結果、狭隘な作業環境下での人力作業がゼロになるとともに、打設時の人員が7名から3名になり、省力化および省人化を実現しました。さらに、コンクリートの充塡性についても良好であることを確認しました。
また、硬化後の覆工用高流動コンクリートの表面は、中流動覆工コンクリートと比べても、顕著な気泡等がない美しい仕上がりとなりました。さらに、コンクリート表層の品質評価指標となる透気試験の結果、覆工用高流動コンクリートを用いた区間では、同条件・環境下で施工した中流動覆工コンクリートの区間に比べ、透気係数が「良」の結果にまとまり、ばらつきが小さく、均質になることが確認できました。
※ 照明や非常用設備、換気設備などを埋設・設置するための空間
本工事で構築するトンネルは片側3車線の大断面であることから、硬化後のひび割れによる剥落防止を目的に、使用する覆工コンクリートは補強材として繊維と鉄筋を用いる仕様となっています。そこで、今回使用する覆工用高流動コンクリートは、繊維と鉄筋の干渉による充塡性の低下などを考慮し、高い流動性を確保しました。これにより、繊維補強型の覆工用高流動コンクリートでも締固めが不要となり、本システムによる全自動打設のメリットを最大限に活かすことができました。
今後の展開
鹿島は今後、他のトンネル工事においても、締固めが不要な覆工用高流動コンクリートを用いた本システムの導入を推進し、さらなる合理化施工を検証していきます。
そして将来的には、型枠の設置からコンクリート打設および養生に至るまでのすべての作業工程を自動的に行う統合システムの構築を目指し、研究開発を進めてまいります。
工事概要
工事名称:新名神高速道路 宇治田原トンネル西工事
工事場所:京都府綴喜郡宇治田原町岩山~郷之口
発注者:西日本高速道路株式会社関西支社
施工者:鹿島建設株式会社
工事諸元:トンネル延長上り線822m、下り線992m、設計掘削断面積140m²、内空断面積116m²
工期:2019年5月~2023年11月(その1) 2022年9月~2025年7月(その2)
(参考)
トンネル覆工用高流動コンクリートを唐丹第3トンネルに初適用(2017年10月2日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/201710/2c1-j.htm
トンネル覆工コンクリートの完全自動打設に成功!(2020年7月15日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202007/15c1-j.htm
「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入(2023年3月7日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202303/7c1-j.htm
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