「世界チョコレート成績表(2025)」日本企業の評価に対し、 児童労働撤廃に取り組むACEがコメント

~2025年はSDGsの目標8.7(児童労働撤廃)の達成期限、 企業の垣根を越え、現地政府と連携した効果的な仕組み構築を提言~

特定非営利活動法人ACE

カカオ産業の児童労働撤廃をめざす活動を2009年から続ける認定NPO法人ACEは、4月8日にオーストラリアのNGO「Be Slavery Free」などが主導し、国際的な市民社会団体と共同で発表した「第6版チョコレート成績表 (2025年)」に寄せて、コメントを発表します。

16年にわたりカカオ産業の児童労働撤廃に取り組む、ACE 副代表・共同創業者の白木朋子のコメント

「この成績表では、児童労働や森林破壊、サステナビリティの観点から世界の主要チョコレート企業が評価されています。日本企業は全体的に評価が低く世界から大きく差をつけられています。一方で、児童労働に関する項目では比較的良好な評価も見られました。これは、ACEが長年にわたり日本企業に働きかけを続けてきた成果の一端であると受け止めています。またこの成績表は、 NGOによる評価や対話が企業の透明性と説明責任を高める可能性を示しており、より積極的に情報開示することが、日本企業のパフォーマンス改善には重要と考えています。 」

2025年は、国連が定めたSDGsの目標8.7「すべての形態の児童労働を終わらせる」の達成期限の年です。今まで通りの表面的な改善ではなく、企業やステークホルダーの垣根を越えた本質的な連携を進めること、根本解決のための地域に根差した対策や仕組みの構築を速やかに進めることが重要であり、ACEは日本の企業、政府、市民社会の関係者がオールジャパンで連携を強化することを呼びかけています。

一般社団法人熱帯林行動ネットワーク(JATAN) 「世界チョコレート成績表(2025)」日本語プレスリリース(https://jatan.org/archives/10712)より

「世界チョコレート成績表」とは

「世界チョコレート成績表(The Chocolate Scorecard )」は、世界の主要チョコレート企業のサステナビリティに関するパフォーマンスを評価した報告書です。評価項目は6項目(①トレーサビリティと透明性 ②生活維持所得 ③児童労働 ④森林破壊と気候 ⑤アグロフォレストリー ⑥農薬)で、総合評価と項目別のランキングが公表されます。オーストラリアを拠点とする人権団体「Be Slavery Free」が主導して毎年発表し、消費者や投資家がより良い購買や投資判断をする材料を提供することで、より公正なカカオ産業を実現することを目的としています。

6回目を迎えた今年は、専門家、市民社会、学術関係者、コンサルタント会社など33団体が評価に加わり、世界の主要なチョコレート関連企業81社が調査対象となりました。そのうち60社が回答を提出し、中・大規模企業、小規模と小売業の3つのカテゴリー別に総合評価のランキングが発表されました。日本企業は9社が調査対象となり(中・大規模企業7社と小売業2社)、そのうち8社が回答し、評価結果が掲載されました。

「第6版チョコレート成績表(2025)」(英文):https://www.chocolatescorecard.com/scorecards

「第6版チョコレート成績表(2025)」の児童労働および日本企業に関するACEの分析と評価

  • 以下に引用した世界的な傾向をACEも評価し、歓迎します。

    「多くの企業が『世界チョコレート成績表』をきっかけに取り組みを開始し、データを共有し、信頼を築いている。児童労働に関するデータを完全に開示した大手企業は、第4版では45%、第5版では58%だったが、第6版では82%に増加している。『透明性と共に説明責任が高まりつつある』というトレンドが明確に示され、チョコレート業界は風通しの良い業界になりつつある。」(「第6版チョコレート成績表(2025)」日本語プレスリリースより引用)

  • さらに、回答した60社すべての企業が児童労働に関する何らかのポリシーを持っていること、回答した45のすべての中・大規模と小規模のチョコレート企業が児童労働対策プログラムを導入していることも評価できる。一方で、小売業者(プライベートブランドとしてチョコレートを製造、販売)においては、児童労働対策を導入している企業が半数以下に留まっていることは課題といえます。

  • 日本企業については、今回2社(中・大規模企業1社、小売業1社)が新たに回答に加わり、評価を受けた企業が昨年の7社から9社に増えたことは歓迎できる。一方で、小売業1社が無回答であったことは遺憾。

  • 中・大規模企業カテゴリーで評価を受けた39社中、7社が日本企業であるが、日本企業の中で総合評価が最上位の企業でも28位、スコアは37%に留まっている。全項目に対する世界の平均スコアが55%なのに対し、日本企業だけを集計した平均スコアは23%(Be Slavery Free提供資料より)、すべての項目においても世界の平均スコアとの大きな差があるのが現状。中・大規模企業カテゴリーの下位5社が日本企業で独占されていることにも表れており、全ての日本企業が農薬の項目に対する評価が赤であること、森林破壊ゼロのコミットメントを示していない世界の中・大規模企業5社のうち4社が日本企業であることも、世界との差を広げている要因のひとつではないかと思われます。

  • 6項目中、児童労働の項目が日本企業と世界とのギャップが比較的小さく、日本企業において他の項目に比べて児童労働への取り組みが進んでいる傾向が読み取れます。

「各評価項目における世界と日本企業との比較」 Be Slavery Freeより画像提供

ACEからの提言(主に児童労働に関して)

日本がカカオの約7割を輸入するガーナでは、カカオ生産に従事する児童労働者は77万人といわれています(2020年、シカゴ大学) 。ACEは、2009年からガーナのカカオ生産地で児童労働の撤廃をめざした支援活動を行うとともに、日本企業に対して、サプライチェーンにおける児童労働対策の推進や持続可能で倫理的なカカオ調達への転換を働きかけてきました。また、ガーナ政府が国家政策として推進する「児童労働フリーゾーン」認定制度の構築支援や、「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」のメンバーとして企業・団体・政府機関との連携を進めてきました。今回の成績表では、日本企業の全体評価は低調だったが、児童労働に関する項目では、他の項目と比較してよい評価を得ている企業もあり、これは長年の対話と協働の成果と考えています。今後の更なる改善に向けた提言は以下の通りです。

  • 世界的傾向を見ても、このような評価を通じて企業の透明性や説明責任を高めることができることから、日本企業には「世界チョコレート成績表」への参加を通じたNGOを含むステークホルダーとの対話や情報開示を積極的に行うことを提言したい。

  • 児童労働に関する質問内容を見ると、児童労働対策に関する方針やプログラムの有無だけでなく、プログラムの対象となっている農家数や調達量に対する割合、プログラムの対象となっている子どもの数や実際に確認された児童労働者数や是正した件数など、具体的なデータの提示が求められている。こうしたエビデンスとなるデータの情報開示を日本企業も進めていく必要がある。

  • 世界的な傾向として、児童労働に関するデータを完全に開示した大手企業が82%に大幅に増加し、透明性は高まっているものの、実際に児童労働者数が大幅に減少するなどのインパクトは確認されていない。これは、企業による自社のサプライチェーンをベースとした児童労働対策の限界を示している。

  • 成績表の質問内容にも表れているとおり、現在の企業の児童労働対策の主なアプローチは、児童労働モニタリング・是正システム(CLMRS)を自社のサプライチェーンに広げることが中心となっており、モニタリングの対象となる農家数や農家の割合を100%に近づけることがめざされている。しかし、企業同士で取引している農家は重複している可能性があるため、農家数を増やすだけでは不十分である。企業の垣根を越えて、対策が取られている地理的エリアのカバー範囲について情報共有し、対象エリアを広げていく必要がある。

  • サプライチェーン毎ではなく、サプライチェーンが関わっている地域毎にアプローチする必要があり、ACEは、ガーナ政府が推進しているエリア(地域)ベースで児童労働を予防・解決するための仕組みの構築を進める「児童労働フリーゾーン」のアプローチを支持している。児童労働の解決には、子どもの教育や福祉、保健を含む社会サービスの充実が不可欠であり、現地の政府や行政との連携が不可欠である。これらに加え、NGOや国際機関を含むカカオ生産地における幅広いステークホルダーとの連携がさらに強化されていくことを提言する。

ガーナのカカオ農園で児童労働に携わる子ども

児童労働の現状
児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことを指します。日本がカカオの約7割を輸入するガーナでは、カカオの収穫や運搬などの農作業に従事する児童労働者の数は77万人。そのうち農薬散布などの危険有害労働に従事する子どもは71万人(92%)です。(2020年シカゴ大学NORC調査報告書より) 

※ ACEは、カカオ生産地の子どもを危険な児童労働から保護し、就学を徹底することを目的とした支援活動「スマイル・ガーナ プロジェクト」を2009年から行っています。 

2025年はSDGs目標8.7達成期限年

国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中でも、目標8.7は「2025年までにすべての形態の児童労働を終わらせる」と明記しています。しかし現在も世界では1億6,000万人の子どもが労働に従事し、その多くが危険な環境に置かれています (ILO/UNICEF:2021年発表推計 より)。この目標年である2025年に、世界と日本の企業・市民社会がどのようなアクションを取るかが、将来の子どもたちの人生を大きく左右します。ACEはこの年を重要な年と位置づけ、社会全体での変革をあらためて呼びかけます。

認定NPO法人ACE(エース)について
ACE(エース)は、子どもの権利保護および、児童労働の撤廃と予防に取り組むNGOです。ガーナのカカオ生産地で危険な労働から子どもたちを守り、日本で児童労働の問題を伝える活動のほか、日本政府、ガーナ政府、日本のチョコレート企業への提言活動を行っています。インド人の人権活動家カイラシュ・サティヤルティ氏(2014年ノーベル平和賞を受賞)の呼びかけにより、1998年に世界103カ国で行われた「児童労働に反対するグローバルマーチ」を日本で実施するため、1997年に学生5人でACEを設立しました。2023年3月、第6回ジャパンSDGsアワードにおいて、国際NGOとして初のSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞。

本件に関する問い合わせ先:認定NPO法人ACE 赤坂・青井
Eメール:press%acejapan.org(%を@に変えてお送りください)

電話:03-3835-7555(受付時間:平日午前10時~午後5時)

ウェブサイト: https://acejapan.org/

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会社概要

特定非営利活動法人ACE

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URL
http://acejapan.org/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都台東区浅草橋五丁目2-3 鈴和ビル2F
電話番号
03-3835-7555
代表者名
岩附由香
上場
未上場
資本金
-
設立
1997年12月