『食養』に基づく玄米中心の和食の継続は健康的な腸内細菌叢の形成に寄与することを解明
~日本人向けの病気の予防・改善につながる食事となる可能性~
シンバイオシス・ソリューションズ株式会社(以下、当社)は、腸内細菌叢(腸内フローラ)※1と疾病の関連性に関する研究と、腸内細菌叢の改善を介した疾病の予防・改善方法に関する研究・開発に取り組んでいます。この度、当社とあしかりクリニックの共同研究により、『食養』に基づく玄米中心の和食(食養ダイエット)の継続が高齢の日本人女性における健康的な腸内細菌叢の形成に関連することが明らかとなりました。食養ダイエットは、腸内細菌叢に関連する病気の予防・改善につながる食事となる可能性があります。
本研究成果は、国際学術誌『Nutrients』(2026年1月9日付)に掲載されました。
■背景
高齢化が進む日本では、健康な状態で長生きすることが個人だけでなく社会的な面からも望まれます。近年の研究からは、私たちの健康には腸内細菌叢の状態が大きく影響し、腸内細菌叢の構成の異常(ディスバイオシス)が2型糖尿病、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、大腸がん、心血管疾患、認知機能低下などを含む様々な疾病の発症や悪化と関連していることが明らかとなっています。健康的な加齢には、腸内細菌叢の状態を良好に保つことが大切で、そのためには日々の食事内容が重要となります。
『食養』は、19世紀の食医・石塚左玄が提唱した、食と健康の調和を重視する伝統的な日本の食の思想です。本研究では、NPO法人 日本綜合医学会※2が推奨している、『食養』に基づいた伝統的な和食を『食養ダイエット』としました。食養ダイエットでは、玄米、野菜、豆、少量の魚、発酵食品、海藻などを主に摂取するため、食物繊維が豊富な食事内容となります(図1)。日本綜合医学会では、レシピ集を含めた食養ダイエットの体系化が行われており、高齢女性を含む多くの人々が食養ダイエットを実践・継続されています。
以上のことから、本研究では、食養ダイエットが腸内細菌叢の状態を良好に保ち、腸内細菌叢に関連する疾病の予防・改善につながる食事の候補になると考え、これを検証するために、食養ダイエットの摂取が高齢女性の腸内細菌叢に与える影響と健康との関連性について調査しました。
■研究手法と成果
食養ダイエットグループ(食養ダイエットを長期間継続の60~79歳の日本人女性19名)について、同年代の日本人女性から構成される通常の日本食の健常者グループ(19名)、及び通常の日本食の非健常者グループ(31名)との比較解析を行いました。その結果、β多様性(腸内細菌叢の構成の違いを評価する指標)について、食養ダイエットグループと健常者グループの間では有意な違いがなかったのに対し、食養ダイエットグループと非健常者グループの間では有意な違いが認められました。これは、食養ダイエットグループの腸内細菌叢の構成が健常者グループのものに類似し、健康の維持に関連していることを示唆しました。
食養ダイエットグループでは、非健常者グループと比較して、健康に有益な酪酸産生菌(Anaerostipes、Coprococcus、及びKineothrix)が多く、健康リスクをもたらす可能性がある腸内細菌(Eggerthella、Enterocloster、Erysipelatoclostridium、Escherichia/Shigella、Flavonifractor、及びRuthenibacterium)が少ない傾向も観察されました。
食養ダイエットグループにも、高血圧症、脂質異常症、花粉症などの疾病罹患者が存在し、食養ダイエットを実践したからといって疾病とは無縁ではありませんでした。それでも、食養ダイエットグループは、BMIの値が低く、2型糖尿病、肥満症、便秘症、骨粗鬆症、めまいなどの疾病罹患者はみられませんでした。食養ダイエットによって形成される腸内細菌叢は、かならずしも健康を約束するものではありませんが、一部の疾病の発症を抑制し健康の維持に関連する可能性があると考えられました。
これらのことから、食養ダイエットの摂取が高齢女性の腸内細菌叢の状態を良好に保ち、腸内細菌叢に関連する疾病の予防・改善につながる食事として有用である可能性が示唆されました。
現在の日本における食事の選択肢は多岐にわたり、健康的な腸内細菌叢の形成につながる食事を継続することは容易ではありません。食事内容によっては、疾病に関連する腸内細菌叢の異常が生じ、それが維持されます。これに対して、食養ダイエットの長期間の継続は、健康的な腸内細菌叢の形成につながることが期待されます。食養ダイエットは日本綜合医学会の提供する講座などを通じて誰でも実践することができ、継続しやすいことも利点です(本研究では食養ダイエットを40年以上継続している参加者も含まれていました)。
健康的な腸内細菌叢の形成につながる食事としては、これまでに地中海食が知られています。地中海食は、野菜、果物、豆類、魚、オリーブオイル、ナッツの摂取量を増やし、赤身の肉、乳製品、飽和脂肪の摂取を減らすことを特徴とする食事です。ただし、ギリシャ、イタリアなどの地中海沿岸諸国の伝統的な食事法である地中海食は、日本人、特に高齢者にはなじみが薄く、取り組みにくい課題があります。これに対して、食養ダイエットは和食であり、日本人の高齢者にとって日常食として受け入れやすい食事と考えられます。
■今後の展望
本研究によって、食養ダイエットが健康の維持・増進につながる腸内細菌叢の形成につながる食事として有望であることが示されました。将来的に、食養ダイエットは、異常を起こした腸内細菌叢の改善や、改善後の状態の維持を目的とした食事療法に活用されることも期待されます。本研究の論文には、食養ダイエットグループの腸内細菌叢の平均的な構成(各腸内細菌の相対存在量の平均値など)が記載されています(図2)。これは、食養ダイエットを継続した際に期待される腸内細菌叢の構成についての参考情報となり、食養ダイエットの実施を検討する際の判断材料の1つとして利用することができます。


■用語解説
※1 腸内細菌叢
ヒトの腸内には1,000種以上、10~100兆個程度の腸内細菌が共生しており、重さにして約1.5 kgと考えられている。腸内細菌はそれぞれテリトリーをもって生息しており、その全体を「腸内細菌叢」と呼んでいる。腸内細菌叢は、腸内フローラと呼ばれることもある。
※2 NPO法人 日本綜合医学会
詳しくは公式サイト(https://nihon-sougou.com/)をご参照ください。
■研究グループ
シンバイオシス・ソリューションズ株式会社
代表取締役社長 増山 博昭
研究開発本部 畑山 耕太・江原 彩・平野 千尋・香野 加奈子
あしかりクリニック
院長 芦刈 伊世子
■原論文情報
Kouta Hatayama, Aya Ebara, Chihiro Hirano, Kanako Kono, Hiroaki Masuyama, Iyoko Ashikari. Intestinal Microbiota of Older Japanese Females Adhering to a Traditional Japanese Brown Rice-Based Diet Pattern. Nutrients 2026, 18(2), 219.
doi:10.3390/nu18020219
■研究内容に関する問合せ先
シンバイオシス・ソリューションズ株式会社研究開発本部 畑山 耕太
research(at)symbiosis-solutions.co.jp
※ (at) は@に置き換えてご連絡ください。
■取材に関する問合せ先
シンバイオシス・ソリューションズ株式会社 広報担当
info(at)symbiosis-solutions.co.jp
※ (at) は@に置き換えてご連絡ください。
■企業概要
当社は、腸内細菌叢から疾病リスク等を分析・評価する腸内細菌叢の検査・分析サービス(『SYMGRAM®』、『健腸ナビ®』他)の開発・運営および医薬・食品メーカー等と連携して腸内細菌叢の改善を介して疾病を予防・改善するための機能性食品(医食品®)の研究・開発などを行うヘルステック・バイオベンチャーです。
・会社名:シンバイオシス・ソリューションズ株式会社
・本社:東京都千代田区神田猿楽町2-8-11 VORT水道橋Ⅲ 3F
・研究所:埼玉県和光市南2-3-13 和光理研インキュベーションプラザ内
・設立:2018年4月 ※一般社団法人日本農業フロンティア開発機構と国立研究開発法人理化学研究所(旧辨野特別研究室)による研究成果を事業化する目的で設立
・資本金:29億9,392万円(資本準備金含む:2026年1月1日現在)
・URL:
【コーポレートサイト】https://www.symbiosis-solutions.co.jp/
【腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」サイト】https://symgram.symbiosis-solutions.co.jp/
【腸内細菌叢の検査・分析サービス「健腸ナビ」サイト】https://kenchonavi.com/
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