ANAのオペレーション“頭脳”を日立の技術でシステム化　本邦航空会社“初” 悪天候などで乱れた運航ダイヤの修正案を高速・最適に自動立案

株式会社日立製作所

2025年7月17日 17時02分

悪天候などで乱れた運航ダイヤの修正案を高速・最適に自動立案するシステムを開発し、2025年7月より稼働を開始しました。
本システムはANAの運航ノウハウと、日立の技術を掛け合わせ共同開発しました。
イレギュラー発生時に運航ダイヤの修正作業が数時間単位で短縮でき、お客様への影響を最小限に抑えます。

　全日本空輸株式会社(以下、ANA)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、株式会社日立コンサルティング(以下、日立コンサルティング)とともに、イレギュラー発生時に運航ダイヤの修正案を高速・最適に自動立案するシステム (以下、本システム)を、ANAの国内線オペレーションを対象に2025年7月より稼働開始しました。本システムは、ANAが培ってきた運航のノウハウと日立の技術を掛け合わせ、共同開発したものです。同様のシステムは本邦航空会社として初めてのものです。

悪天候などによる運航ダイヤの乱れが予測される、または発生した場合、本システムは航空機の運航スケジュール、整備計画、乗務員計画、空港における各種条件などの膨大なデータを収集・解析し、運航ダイヤの修正案を自動で複数立案するとともに、これらの変更に伴う機材の整備計画の修正を自動で行います。ANAのオペレーション担当は、提示された複数の修正案から、その時々に応じた最適な案の選択が可能となり、修正ダイヤ決定までの時間短縮と運航品質の向上を実現します。

従来、これらの対応は熟練社員の経験とノウハウに頼る部分も多く、限られた時間内で複雑な条件を考慮した最適なダイヤの修正には人材育成や修正案策定までの所要時間に課題がありました。そのためオペレーションマネジメントにおけるイノベーションが求められてきました。

　こうした背景のもと、ANAと日立、日立コンサルティングは課題解決に向けたシステム構築のために、2019年より取り組み*１を開始しました。実証実験を重ねた結果、自動立案されたダイヤの修正案が、これまで人が実施してきた品質と同等の水準となりました。特に規模の大きな運航の乱れにおいては、数時間単位の作業時間の短縮が可能となりました。台風により航空機の運航に大きな影響が生じた場合、従来はANAの10年以上の経験を持った熟練社員が特別体制で調整を行い、運航への影響を最小限にとどめる対応を行ってまいりました。

このたび導入した本システムにより、

修正案検討の所要時間を最大で70%短縮
台風進路や速度などの天気予報の変化に、何度でも柔軟な対応が可能
短時間でのダイヤの修正案の立案と判断を迫られるオペレーション担当者の心理的負担の軽減
複数の修正案を迅速に比較することによる、運航の安定性向上

　これらによって、いち早いお客様への情報発信が可能となり、お客様体験価値の向上にもつながることが期待できます。

　世界的に航空業界においてデジタル技術の活用が進む中、大規模なイレギュラーから、日々起こり得る機材メンテナンス、空港の混雑などによるダイヤの乱れまで、イレギュラーの大小を問わずに自動化が可能な汎用性と、日本のような台風が多く、またダイヤが複雑化しやすい環境の中で培ってきたANAのオペレーション品質を再現するための網羅性において、本システムは非常に高い精度を誇ります。

　ANAは、今後もデジタルの活用による人的リソースの最大化を推進し、航空業界における世界最高品質のオペレーションの実現をめざしていきます。

　日立は、共同開発した本システムを、Lumada*２ソリューションとしてANAの国際線オペレーションや世界の航空会社にスケールさせることで、人々の生活を支える社会インフラの強靭化を通じ、フロントラインワーカーの生産性や人々のウェルビーイングの向上をめざしていきます。