〈中小企業の人的資本経営に関する実態調査 第1弾〉賃上げと共に注目される「人的資本経営」中小企業経営者で人的資本経営について詳細に理解できている経営者はわずか3.8%!人材確保への課題が多い状態に
「人的資本経営」が世界的な潮流から日本でも注目度が高まっています。人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。2023年3月決算から、有価証券を発行している企業のうち大手企業約4000社に対しては人的資本の情報開示が義務化されています。
今回は人的資本経営について、中小企業の実態を明らかにすべく調査いたしました。
【調査結果サマリー】 ①人的資本経営を詳細に理解できている経営者はわずか3.8%に! 中小企業では人材育成・獲得に向けた資金確保が十分にできておらず、 人的資本経営に必要な人材の確保ができていない状況に ②人的資本経営では従業員のエンゲージメントも重要に エンゲージメントを高める施策については人材確保よりも取り組めていない実態! エンゲージメントを図れるITツール導入については84.8%が導入していない結果に ③人材確保・従業員のエンゲージメント両面において中小企業では十分には取り組めていない状況 結果的に人材確保が出来ていない先は48.4%に |
本リリースの調査結果をご利用いただく際は、必ず【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】とご明記ください。
【アンケート概要】
・調査主体 :フォーバル GDXリサーチ研究所
・調査期間 :2023年12月11日~2024年2月8日
・調査対象者 :全国の中小企業経営者
・調査方法 :ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
・有効回答数 :973
①人的資本経営を詳細に理解できている経営者はわずか3.8%に!
中小企業では人材育成・獲得に向けた資金確保が十分にできておらず、
人的資本経営に必要な人材の確保ができていない状況に
Q1. 人的資本経営についてどの程度知っていますか。
「知らない」(41.2%) 「聞いたことはあるが、よく知らない」(31.7%)と合わせて、72.9%が人的資本経営について説明できないという回答結果となり、「知っており、他の人に説明できる」はわずか3.8%となりました。中小企業では人的資本経営について理解ができていない経営者が多数を占める結果となりました。
Q2. 人的資本経営に取り組みたいと考えていますか。
また、こちらの設問では「どちらともいえない」(47.4%)「いいえ」(16.5%)との回答結果となり、取り組みたいと考えている中小企業の経営者が未だ少ないことが明らかになりました。
Q3. 人材育成に関する総費用を設定されていますか。
こちらの設問では「設定していない」が79.1%との回答結果となり、大半の中小企業において人材育成に関わる費用を設定していないという結果になりました。人的資本経営では人材を「資本」として捉え、人材育成を通じて企業価値の向上を図るものですが、そもそもの人材育成に向けた予算の確保が十分にされていないと分かります。
Q4. 法務・法律に関する外部認証や資格を保有している人材を社内または外部に確保できていますか。
Q5. IT・デジタル・DXに関する外部認証や資格を保有している人材を社内または外部に確保できていますか。
Q6. 環境・SDGs・GXに関する外部認証や資格を保有している人材を社内または外部に確保できていますか。
人的資本経営の構築に向けた重要な人材の確保に関する上記設問において、「社内及び外部に確保できている」 「社内に確保できている」と回答した割合はそれぞれ以下のようになりました。Q4「社内及び外部に確保できている」(6.6%) 「社内に確保できている」(2.1%) ・Q5 「社内及び外部に確保できている」(4.9%) 「社内に確保できている」(5.2%)・Q6 「社内及び外部に確保できている」(2.4%) 「社内に確保できている」(2.9%)。それぞれの項目における人材について、社内に確保できている中小企業は非常に少ない結果となりました。
中小企業では人材育成・確保に関する予算の確保がまだまだできておらず、重要な人材の確保が社内にできていない中小企業が多いことが推察されます。
②人的資本経営では従業員のエンゲージメントを高めることも重要に
エンゲージメントを高める施策については人材確保よりも取り組めていない実態!
エンゲージメントを図れるITツール導入については84.8%が導入していない結果に
Q7.従業員エンゲージメント(従業員一人一人が、企業が目指している姿に対して共感し、目指している姿の達成に向けて行動できている状態)を高めるために、エンゲージメントを図れるITツールを導入していますか。
人的資本経営では従業員エンゲージメントも重要になりますが、上記設問において「導入していない」と回答した方は84.8% となり、大半の中小企業において従業員エンゲージメントを測る体制が整っていないことが明らかとなりました。
Q8.従業員エンゲージメントを高めるために、企業理念やビジョンを従業員に向けて発信していますか。
「実施している」と回答した方は32.6%にとどまり、多くの中小企業において企業理念やビジョンの発信ができていないことが明らかとなりました。
Q9.従業員エンゲージメントを高めるために、1on1など従業員一人一人と話す機会を設けていますか。
「設けている」と回答した方は37.3%となり、上記項目に比べると実施されている割合が高くなったものの、過半数の企業においては取り組めていない実態となりました。
Q10.従業員エンゲージメントを高めるために、業務の裁量権を従業員一人一人に広く持たせていますか。
「持たせている」と回答した方は43.4%となり、こちらの項目もQ7,8に比べると実施されている割合が高くなったものの、過半数の企業においては取り組めていない実態となりました。
従業員エンゲージメントに関しても中小企業においては未だ取り組めていない企業が非常に多く、またエンゲージメントを測る体制の構築が特に取り組めていないことが分かりました。
Q9,10においては、他の項目に比べると取り組めている割合が高く、大企業に比べて中小企業は従業員の人数が少ないことから、従業員と話す機会や裁量権が広い体制が構築されていると推察できます。しかし、従業員のエンゲージメントを高めるには、Q7,8も重要であり、Q1からもわかるように、まず人的資本経営に関する理解の促進が中小企業においては必要だと捉えられます。
③人材確保・従業員のエンゲージメント両面において
中小企業では十分には取り組めていない状況
結果的に人材確保が出来ていない先は48.4%
Q11.必要な労働力確保のために採用による人材を確保できていますか。
「人材を確保できていない」と回答した方は48.4%となり、半数近くの中小企業において必要な人材確保ができていないという結果となりました。
これまでの設問から、人的資本経営のための資金確保や従業員エンゲージメントの向上など、人的資本経営に重要なポイントへの取り組みや、そもそもの人的資本経営への理解が足りていない現状が明らかとなりましたが、人材確保の課題解決の一つの手段として人的資本経営に取り組む必要性が中小企業においても高まっていると推察できます。
【有識者のコメント】中小企業の人的資本経営について
フォーバル GDXリサーチ研究所所長
平良 学(たいら・まなぶ)
■経歴
1992年、株式会社フォーバルに入社。九州支店での赤字経営の立て直し、コンサルティング事業の新規立ち上げ、
全体統括を経て、2022年に新たに発足した中立の独立機関「フォーバル GDXリサーチ研究所」の初代所長に就任。
中小企業経営の実態をまとめた白書「ブルーレポート」の発刊、全国の自治体と連携し、地域の中小企業経営者に向けたDX、GXの講演、中小企業経営者向けのイベントの企画などを通じて、中小企業のGDXを世に発信している。
■コメント
今回は、人的資本経営への認知度や取り組みについての調査結果をまとめました。
人的資本経営とは人材を企業価値を向上させるために不可欠な資本と捉え、価値を生み出すものとして投資するという考え方で、従来の人材はコストという考え方とは異なる新しい考え方です。
中小企業経営者に、この人的資本経営への認知度、取り組み意欲、取り組み度合いについて伺ったところ、いずれも進んでいない状況が明らかになりました。
具体的な取り組み状況を見ると、人材育成についての予算の確保ができている企業は約1割、DXやGXを推進できる人材を社内、社外に確保している企業については5~10%と少数にとどまりました。
人的資本経営の必要性は非常に高まっています。企業理念・ビジョンを社内に発信するとともに、従業員との1on1面談やITツール等を使った会社へのエンゲージメントの可視化を行い、企業理念・ビジョンが浸透しているか確認を行う必要があるでしょう。
このような取り組みを他の企業より早く取り組むことにより市場や求職者から選ばれる企業になれる可能性も高まると考えられます。
中小企業の人材確保状況は5割に達していないことも明らかになりましたが、今後、人的資本経営に取り組むことでこの状況を打破できる可能性があります。人的資本経営を進めるためには、まず、人的資本経営への理解を深めたり、既に取り組んでいる中小企業の事例を参考にする。また、自社だけで取り組もうとせずに積極的に専門家に相談したり、伴走支援をしてもらうといった形で臨んでいただければと思います。
■フォーバル GDXリサーチ研究所とは
日本に存在する法人の99%以上を占める中小企業。この中小企業1社1社が成長することこそが日本の活力につながります。中小企業が成長するための原動力の1つにGreen(グリーン)とDigital(デジタル)を活用し企業そのものを変革するGDX(Green Digital transformation)があります。
フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業のGDXに関する実態を調査し、各種レポートや論文、報告書などをまとめ、世に発信するための研究機関です。「中小企業のGDXにおける現状や実態を調査し、世に発信する」をミッションに「中小企業のGDXにおいてなくてはならない存在」を目指し活動していきます。
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