〈中小企業のESG経営に関する実態調査~E(環境)~〉自社領域におけるCO2排出量を把握できている企業はわずか7.8% CO2削減量の把握及び管理ができている企業もわずか6.6%
中小企業の環境に係る取り組みは進んでいない実態が明らかに
「ESG投資」「ESG経営」など、近年ESGが注目されています。ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の頭文字から作られた言葉です。企業がESGに配慮した経営を行うことは、社会に対する責任を果たす存在として投資家や金融機関からの注目され、さらに市場からの企業評価も高まるとして期待されています。大企業を中心に取り組まれてきたESG経営について、中小企業の実態を調査しました。
●本レポートの詳細は、こちらをご覧ください。
URL:https://gdx-research.com/?p=936
【調査結果サマリー】 ①自社領域におけるCO2の把握ができている企業はわずか7.8% 約2年前に行った調査からの割合の変化はほぼなし 自社の実態把握に関して中小企業の取り組みは大きく進んでいない結果に ②最も取り組まれている環境活動の取り組みは 「省エネルギー活動」 環境活動の第1ステップとして身近な内容が取り組まれていると推察 「グリーンエネルギー使用活動」など環境への取り組みが明確化されていないと取り組むことが難しい内容は少数に ③環境活動の効果測定について CO2削減量の把握及び管理ができている企業はわずか6.6% 環境活動の実態把握ができていない企業は、把握方法が分からないことや 人的リソースが足りていないことが推察される |
本リリースの調査結果をご利用いただく際は、必ず【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】とご明記ください。
【アンケート概要】
・調査主体:株式会社フォーバル
・調査期間:2024年4月1日~2024年5月31日
・調査対象者 :全国の中小企業経営者
・調査方法:ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
・有効回答数:990人
①自社領域におけるCO2の把握ができている企業はわずか7.8%
約2年前に行った調査からの割合の変化はほぼなし
自社の実態把握に関して中小企業の取り組みは大きく進んでいない結果に
Q1.自社領域(Scope1/Scope2)におけるCO2排出量の把握
「使用量のデータを数値で把握し、文書による記録及び保存をしている」は7.8%となり、「実態の把握には至っていない」は72.5%となりました。「ブルーレポートmini2022年7月号」では同じ趣旨で調査を行っており、当時の調査結果でも、
事業における環境活動の実態把握については「実態の把握には至っていない」が7割以上を占めていました。
同設問ではないため正確な比較にはなりませんが、自社の実態把握という点においては約2年経過した今も中小企業の環境への取り組みは大きく進んでいない結果となりました。
②最も取り組まれている環境活動の取り組みは 「省エネルギー活動」
環境活動の第1ステップとして身近な内容が取り組まれていると推察
「グリーンエネルギー使用活動」などの取り組みが明確化されていないと
取り組むことが難しい内容は少数に
Q2.CO2削減につながる環境活動の取り組み
環境活動の取り組み状況については、「省エネルギー活動(意識的な活動:無駄な電気を消すや空調の適正な温度設定など)」が664回答、「廃棄物削減活動(意識的な活動:マイボトル推奨、ごみの分別、裏紙や両面印刷使用など)」が630回答、「廃棄物削減活動(ペーパーレス化による紙の使用削減)」が578回答となり、この3選択肢が上位を占めました。
これらの項目は環境活動の中でも比較的身近なため、第1ステップとして取り組む企業が多いと推察されます。
一方で、「グリーンエネルギー使用活動 (グリーン電力使用、カーボンオフセット)」は131回答、「環境にプラスの影響を及ぼす事業活動の展開(環境配慮商品の製造・販売やサービス提供)」は149回答と取り組みが少ない結果となりました。
これらは、環境への取り組みを明確な企業施策として掲げていなければ、なかなか取り組みしづらい項目だと考えられます。
③環境活動の効果測定について
CO2削減量の把握及び管理ができている企業はわずか6.6%
環境活動の実態把握ができていない企業は、把握方法が分からないことや
人的リソースが足りていないことが推察される
Q3.CO2削減量の把握及び管理
「CO2の削減量を数値で把握及び管理ができている」は6.6%となり、「具体的な取り組みをしていない」は66.3%となりました。
環境活動を行ううえで大切な事は自社のCO2排出量を可視化し、月単位もしくは年単位での差分を分析することです。環境活動に取り組んでいるものの、数値で把握できていない企業は、どのように把握すればよいか分からない、把握するための人的リソースがない、などの要因があると推察されます。必要に応じて環境活動の取り組みを可視化するITツールの活用、外部委託などの手法について検討するべきだと捉えられます。
本レポートでは、ESGのうちE(環境)について取り上げ、その調査結果を報告しました。全体を通して、中小企業の環境に係る取り組みは進んでいない実態が明らかとなりました。ESG経営を進めるにあたって、自社のCO2排出量の把握が最初に取り組むべき項目ですが、現時点では中小企業の7割以上が把握できていない結果となりました。
日本政府がカーボンニュートラルを2050年に実現する目標を立てていますが、こうした取り組みは大企業のみならず、サプライチェーンを構成する中小企業にとっても不可避であり、その傾向は今後ますます強まると予想できます。
今こそ、非財務領域の注目指標であるESG、特に環境への取り組みを実践し、持続可能な経営の実現と、市場における差別化戦略の実践を検討してみるべきだと考えられます。
【有識者のコメント】中小企業の人的資本経営について
フォーバル GDXリサーチ研究所所長
平良 学(たいら・まなぶ)
■経歴
1992年、株式会社フォーバルに入社。九州支店での赤字経営の立て直し、コンサルティング事業の新規立ち上げ、
全体統括を経て、2022年に新たに発足した中立の独立機関「フォーバル GDXリサーチ研究所」の初代所長に就任。
中小企業経営の実態をまとめた白書「ブルーレポート」の発刊、全国の自治体と連携し、地域の中小企業経営者に向けたDX、GXの講演、中小企業経営者向けのイベントの企画などを通じて、中小企業のGDXを世に発信している。
■コメント
今号ではESGのE(環境)に関する分析と業種比較を行った研究レポートをお届けしました。 全体で見ると、中小企業の環境への取り組みはまだまだ道半ばといえるでしょう。2020年10月に政府より2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことが宣言されている中で、中小企業の取り組み状況が変わっていない現状を国や中小企業支援事業者が一体となって変えていく必要があるでしょう。その他の項目を見ても「策定できていない」、「具体的に取り組めていない」、「周知できていない」といった回答が大半を占めました。「部分的に周知している」や「一部のみ取り組めている」、「ある程度把握しているが記録までは至っていない」という回答も2~3割にとどまりました。このような企業がいかに取り組みを加速させていくか、が中小企業の環境への取り組み状況を改善させるカギを握っていると思います。
■フォーバル GDXリサーチ研究所とは
日本に存在する法人の99%以上を占める中小企業。この中小企業1社1社が成長することこそが日本の活力につながります。中小企業が成長するための原動力の1つにGreen(グリーン)とDigital(デジタル)を活用し企業そのものを変革するGDX(Green Digital transformation)があります。
フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業のGDXに関する実態を調査し、各種レポートや論文、報告書などをまとめ、世に発信するための研究機関です。「中小企業のGDXにおける現状や実態を調査し、世に発信する」をミッションに「中小企業のGDXにおいてなくてはならない存在」を目指し活動していきます。
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