新型コロナウイルスで看護師養成に打撃…看護学生アンケート「実習先がない」「就職が不安」
株式会社クイック(本社:大阪市、代表取締役社長:川口一郎)が運営する看護師専用コミュニティサイト『看護roo!(カンゴルー)』(https://www.kango-roo.com/)は、看護学生約2000人を対象に「新型コロナウイルスによる授業・実習・就職活動への影響」についてアンケートを実施、調査結果をまとめました。
■アンケート調査の背景
新型コロナウイルスの感染拡大により、医療機関は現在、スタッフの不足や疲弊、マスク・ガウンなど個人防護具の不足、通常とは異なる診療体制の確保など、さまざまな対応を迫られています。
こうした中、「看護学生の病院実習の受け入れ先が確保できない」といった課題が生じています。
そこで、新型コロナウイルスによる看護学生への影響について緊急アンケートを実施。
調査結果からは、休校や実習の中止などにより看護知識・技術の修得機会が著しく減少し、大きな不安を抱いている看護学生の実態が浮き彫りになりました。また、来春に向けた就職活動にも支障が生じており、人材不足が慢性化している看護師の養成にさらなるダメージが懸念されます。
▼▼詳細レポート▼▼
https://www.kango-roo.com/work/7538/
■アンケート調査の概要
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2020年4月30日~5月6日
・調査対象:全国の看護学生(有効回答数:2010人)。学校種別の内訳は大学33.6%、専門学校59.6%、その他(短大・高専・5年一貫校)6.8%。
■アンケート調査結果のポイント
1)看護師養成校における休校・代替授業の実施状況
アンケート結果によると、ほかの教育機関と同様、看護学校もほとんどが休校措置を取っています。再開予定は「5月から」が最多となっていますが、緊急事態宣言の延長に伴い、再開日も延期されているとみられます。
休校期間中は自主学習プログラムやオンライン授業などで対応されていますが、「代替授業や自主学習プログラムなどがない」とする回答も5.9%あり、学生へのサポート状況に格差が生じている現状がうかがえました。
2)医療機関等で行われる実習の実施状況
医療機関や介護施設などで行われる実習(病院実習、臨地実習 ※1)は軒並み延期・中止となっています。「再開未定」とする回答も多数を占めました。
厚生労働省は「実習施設が確保できない場合は、学内の演習に代えてもよい」と通知しています(※2)。
アンケートでも「今後、学内演習・オンライン実習に切り替えの予定」などとする回答が多く寄せられました。「◯月以降に再開予定」としている中には、こうした「学内演習による再開」も相当数、含まれると推測されます。
しかし、臨床現場での経験が不十分なまま看護師として働くことに、多くの学生が不安を訴えていました。
※1)病院実習、臨地実習
看護学生が医療機関・介護施設・保育所・地域等で実際に患者や利用者を受け持ち、看護ケアの実践を学ぶカリキュラム。学内で修得した知識や技術をもとに、臨床現場で必要な実践力や判断力を養うもので、看護師養成課程に
おいて重要な位置を占めます。
※2)「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校、養成所 及び養成施設等の対応について」(文部科学省・厚生労働省事務連絡令和2年2月28日)
3)来春の就職活動・採用活動への影響
看護学生の場合、医療機関が設けた奨学金を利用しているなどで就職先が既に決まっているケースもありますが、2月から夏にかけて就職活動(病院説明会・病院見学やインターンへの参加、採用試験の受験など)が本格化する時期です。
しかし、参加する予定だった病院説明会が中止になる、病院・施設の採用が止まっているなど、厳しい就活状況が読み取れます。
4)看護師国家試験の実施時期に関する希望
看護師等国家試験は例年2月中旬に実施されます。2020年度(第110回)の国試の実施時期について尋ねたところ、4人に1人が「例年より延期してほしい」と答えました。
5)看護師を目指す気持ちの変化
最後に、今回の新型コロナウイルスをめぐる状況を受けて、「看護師を目指す気持ちに変化があったか」を尋ねたところ、約9割の看護学生は「これまでと変わらず看護師として働く」と答えています。
その一方、4.6%の看護学生が「新型コロナウイルスの影響で、看護師として働く気持ちが揺らいでいる・働く予定を変更した」と回答しました。
「気持ちが揺らいでいる」とした人の中には「医療従事者への偏見が続き、看護師というだけで結婚できない・誰とも暮らせないとか、そんなふうになるのではないかと不安」との声もあり、新型コロナウイルスをめぐる医療従事者への差別や偏見が将来の医療体制にも深刻な影響をもたらしていることがあらためて認識されます。
■まとめ
今回の看護学生アンケートの結果から、看護学生も新型コロナウイルスの影響を大きく受けている実態が明らかになりました。授業・実習・就職活動・国家試験の何もかもが例年と異なり、不安を抱えている看護学生の姿が浮き彫りになりました。
一方で、こうした状況にあっても、多くの看護学生が「看護師として働きたい」という志を持ち続けていることもわかりました。
看護師不足への対策は、これまでも国を挙げて取り組まれてきた課題です。個々の学校や医療機関だけでは限界があり、行政によるサポートにも期待が集まります。
■看護学生の声(自由記載のコメント抜粋)
【代替授業について】
- web授業も行われていないため、何をしたらいいのかわからず、戸惑っている
- オンライン授業で本当に今まで通りに学習できるのか不安です
- オンラインで授業をしている学校としていない学校で国試合格率に差が出るのではないか
【実習について】
- 実習ができず、看護師になってから初めて患者さんに接するのは不安
- GW明けから実習が始まる予定だったが校内実習に変更になり、就職した時に不安な気持ちになる
- 実習に実際に行ってないため技術や知識が身に付かない
- 学生だけでなく看護師や患者側もリスクを伴うので、今の時期の実習は中止にすべき
- 就職後"コロナで実習受けてこなかった世代"というレッテルを貼られるかと思うと不安
- 実習が大幅にカットされるため、臨床で学べることが限られてしまう事や、コロナの影響で実習が出来ないことで、コロナ世代と呼ばれていることなどに不安や悲しみを感じている
【就職活動について】
- 3月に多くのインターンに行く予定だったが中止され、就活ができずにいる
- コロナウイルスの影響で病院面接が延期になり、就職活動に不安がある
- 就職を4~5月までに終わらせて国試に向けて集中したかったが、就職説明会さえも行われない、Web説明会もない病院が多く、不安です
- Uターンを考えているため、移動が制限される今、現居住地での就職活動に限界を感じている
【国家試験について】
- このまま国試が受けられる状況になるのか
- 夏休み中の国試対策などがなくなりとても不安
- 国家試験が従来通りの日程で行われるのかなどが心配
- 国試直前まで実習が行われてしまうと、国試対策ができるか不安
- 国試はこれからの人生を左右する大切なものなので先が見えない今は不安が大きい
【その他】
- 貯めていた奨学金とアルバイトの貯金を切り崩して生活している状況。この状況が続けば後期の授業料や生活費が無くなるので不安です
- コロナ世代だからしょうがない、と言われながら働くなら、終息してから今まで通りのカリキュラムをこなして就職したいという気持ちがあります
- 医療従事者への偏見が続き、看護師というだけで結婚もできない・誰とも住めないとかそんなふうに思われるのではないか、なるのではないかと不安です
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