妊婦や子供の医療・教育アクセスが欠如。公的支援が受けられない国内で"取り残された外国人”へ緊急支援を実施。孤独や自殺、路上生活の危機にある当事者の声も公開

日本生まれの国連NGO、休眠預金活用事業の実行団体として難民認定申請者への支援事業を開始。アンケート調査結果も公開。

難民認定申請中の男性への相談対応の様子

実施背景・課題

新型コロナウイルス感染症が収束し入国制限の解除を受けて以降、外国人の入国者数が増え、それと共に難民認定申請者数も増加し、2023年は13,823人が申請し前年比266%と報告されています(出入国在留管理庁「報道発表資料」2024年3月26日)

NPO法人アクセプト・インターナショナル(東京都中央区、代表理事:永井陽右)は、2020年より在日外国人を対象とした相談窓口を開設し、これまで1,000名を超える方々からの相談に対応してきました。相談内容は在留資格、仕事、教育、医療、そして日本語学習など多岐に渡り、相談者の背景や状況に合わせて自立・定住を実現できる支援を行っています。

相談者の中には難民認定申請者の方々もおり、その多くは在留資格が条件を満たしていないため住民登録ができず、以下のような問題が生じています。

・国民健康保険に加入できず、医療費を負担できないため十分な医療サービスを受けられない。

・子どもが学校に通えないことがある。

・就労許可がないため働くことができず、生活が困窮している。

・言葉の壁や文化の違い、情報の欠如により地域コミュニティに参加できず、孤立が深まる。

さらに、こうした不安定な状況に置かれた外国人への支援は、ゴールの設定が難しいことや支援者側の金銭的な負担が極めて大きいことなどから、支援の担い手が不足し続けてきました。

そこで、NPO法人アクセプト・インターナショナルは休眠預金活用事業(10年以上入出金等がない預金等を、民間公益活動を促進するために活用する仕組み)の実行団体として、難民認定申請者、特に在留資格がない方や、所持していても公的支援を受けられない方々への緊急支援を開始しました。

難民認定申請者への緊急支援の様子

緊急支援の中でも特にニーズの高い食料支援一時宿泊施設の提供についてご報告します。

【食料支援】

入国から間もない方は「どこで何を手に入れられるのか」、「どの商品がハラルフード(イスラム教の教義に沿った食料)なのか」などがわからず、自身の健康や宗教にあった食料を手に入れることが難しい状況にあります。

そのため、食糧支援では彼らの生活状況や宗教、家族構成に合わせたさまざまな種類の食べ物を用意しています。例えば、路上生活を余儀なくされる方々にはすぐに食べられるハラル対応のレトルト食品や、水を注げば食べられる食品を提供しています。

また、近隣にコンビニなどがある場合は一緒に買い物に行き、ハラル対応かどうかの見分け方を伝えたり、本国の食べ物に似たものを探したりする「買い物支援」も実施しています。買い物支援は、表示の確認方法や、値段や量を比較しながら購入するスキルを学ぶ機会にもなっています。

なお、本事業では「食べる時間が楽しみになる」ような工夫もしています。彼らが安心して食べられるものを確保することはもちろん、食べ盛りの子どもがいる世帯には、補食となるようなお菓子や果物、また、1日のささやかな楽しみとなるような紅茶やコーヒーなどを提供し、一時的にでも気持ちが明るく前向きになれるよう努めています。

路上生活者への食料配布と合わせた相談対応の様子

【一時宿泊施設の提供】

日本に入国して間もない方は、言葉や文化、宗教の壁により支援情報を得ることが難しい状況に置かれています。また、在留資格がない方は、賃貸契約が難しいため、路上生活に陥りやすいのが実状です。

アクセプト・インターナショナルが緊急支援を開始した昨夏、駅周辺、公園、繁華街などを転々としている方々やその支援者から居所確保の相談が数多く寄せられました。彼らの多くは所持金がなく、言葉もわからず、自分たちが東京にいるのかどうかも把握できていない状況でした。

昨夏、連日猛暑の中、疲労困憊で先行きの見えない日々を送る相談者の中には、妊婦や単身女性、未成年者もおり、絶対的な支援不足を再確認しましたが、女性や未成年者は他団体と連携し、ネットカフェやビジネスホテルなど一時的な滞在先を確保することができています。

一方、単身男性の場合は女性や子どもに比べて支援者が相対的につきづらいため、昨夏からこの冬にかけて数か月にわたり路上生活を強いられていたり、夜はモスクなどで仮眠を取り日中は公園などで過ごす方々が多くいたりします。そうした方々に対しても一時的な宿泊施設を提供しています。

宿泊施設にはキッチンやシャワー、洗濯機などが整備され、基本的な生活を送れる環境が整っています。スタッフが週に1度、施設に出向いて生活指導や相談対応を行っており、退所後の生活に役立つ日本の生活習慣なども指導しています。

また、入居者一人一人にオンラインの「日本語くらぶ」を提供し、簡単な日本語の授業を行っています。授業は1対1で行うため様々な相談を受けることもあり、日本語を教える目的だけではなく、彼らのケースワークを検討する機会にもなっています。さらに、彼らが不安を共有することで少しでも心を軽くし、孤立を防ぐ場としても役立っています。

一時宿泊施設内での食事の様子

アンケート調査結果(一部)

今回、アクセプトインターナショナルは緊急支援の対象者にアンケートを実施しました。すでに他団体による量的な調査データが公開されていることから、今回はより質的なデータを集めていくことを目的に実施しました。

約160名の緊急支援対象者うち77名にアンケートを送付後、46名からの回答がありました。全体的な傾向としては、多くの方が日本での生活や支援に感謝を述べると同時に、日本政府の在留資格などに関する対応への釈然としない心持ちが寄せられました。

以下はアンケート調査結果の一部抜粋です。

もし今の状況が続くとしたら、近い将来あなたはどうなっていると思いますか?

・私は今、とても孤独で、しばしば自殺を考えるほどストレスを感じでいます(マリ・男性)

・路上の厳しい寒さと睡眠不足のせいで体調を崩していて、今後悪化してしまうことがとても心  配です(モロッコ・男性)

・妊娠中のつわりのせいもあり、今後の生活がとても不安です(カメルーン・女性)

現在の厳しい生活の中での楽しみは何ですか?

・僕の最大の楽しみは、妻から勇気をもらっていることです。妻はいつも僕を楽しませてくれて、ストレスを忘れさせてくれます(西アフリカ某国・男性)

・今ある幸せは、治安のいい日本にいるため祖国にいたときより危険から遠ざかり、怖い思いをしなくて済むことです(インドネシア・女性)

・子供たちがそばにいることだけが幸せです。それ以外のことで今の生活で楽しいことは何もありません(ナイジェリア・女性)

・日本語を学ぶことです。アクセプト・インターナショナルのクラスが楽しいです(コンゴ民主共和国・男性、スリランカ・男性、カメルーン・女性など)

・アクセプト・インターナショナルからの支援です。私を助けてくれること、そして家族のような関係を築けていることがうれしいです(モロッコ・男性、スーダン・女性)

今後どうしていきたいか、詳しく教えてください。

・この国の経済発展のためにあらゆる手段で貢献し、家族とともに自由で幸せな生活を送りたいです(ナイジェリア・男性)

・私の今後の望みは、祖国の状況が安定し、一刻も早く戻るということです。ただ、残念ながら状況が非常に悪いため、今すぐに帰国することは難しいです(マリ・男性)

・日本できちんとした在留資格を持って、普通の人と同じように働きたいし、暮らしたいです(ナイジェリア・女性)

・私の将来の希望は家族を苦しみから救い、安心させてあげることです。妻を大切にし、日本で子供たちを育てること、そしてこの国でいい夫になることです(スリランカ・男性)

・今は何も将来について前向きな気持ちを持つことができず、どうしていきたいかもわかりません(チュニジア・男性)

日本政府に伝えたいことはありますか?

・日本政府には「私たちを助けてくれてありがとう」と言いたいです。一方で、私たちの厳しい生活を真剣に受け止め、私たちが母国でどんな目に遭ってきたのか、事実を知るよう、これからも伝えていきたいと思います(西アフリカ某国・男性)

・祖国には戻れないし、戻りたくもないです。日本政府からの助けが必要です(イラク・男性)

・日本政府が私たちの状況(健康、語学、住居、食事)を改善するために援助してくれることを心から望んでいます(ギニア・男性)

・私はただ、日本政府が私と私の家族にしていることはとても不公平なことだと知ってほしいのです。私たちは日本を選んだわけではありませんが、母国の状況によって日本に来るしかありませんでした。私の子供たちが、苦しんでいることを知ってほしいです。日本にいる多くの家族はビザを手に入れているのに、なぜ私の家族はもらえないのでしょうか(カメルーン・女性)

・日本政府の皆さまへ。私は自由になりたいです。日本が人命、自由、民主主義を尊重し、その点でとても発展していることを知っています。私は平和で自由に働き、暮らしたいです。 私は謙虚で、誰も傷つけたくありません。 私は1人の人間です。だからどうか助けてください。(エチオピア・男性)

・難民が安全で安心して暮らせるようにと、日本政府が行ってきた多大な働きに対して、ただただ感謝の意を表したいです。これからも素晴らしい仕事を続けてほしいし、私の夢や希望を応援してほしいと思います。もし可能であれば、政府からの奨学金が欲しいです。また、夫が私たち家族を養えるように、働くための許可が必要です。私たちは出産を控えており、資金も不足しています。日本に来る前に、祖国で私たち夫婦が経験したような悲惨なことを子供が経験しないようにすることが私たちの夢です。この平和を願う想いが届くことを祈っています(西アフリカ某国・女性)

今後の展望

休眠預金を活用したこの度の緊急支援事業は継続中ですが、すでにこれまでの活動を通じて、在留資格のない方や住民登録ができない方々への支援体制が、非常に限られていることを改めて認識しました。彼らへの支援は、制度が壁となってゴール設定が非常に難しく、まさに「出口なき問題」とも言えます。その中でも、彼ら一人一人が自尊心を取り戻し、中長期的に希望を持って生活していけるよう、命を繋ぐ支援や弁護士と連携した法的アドバイスなども実施していきます。

さらに今後は、本事業を通して得た知見を活かして、日本における外国人元受刑者の社会復帰支援を実施することを検討しています。日本で暮らす外国人元受刑者は、非正規滞在者として日本に在留する場合がありますが、彼らへの社会復帰支援を行う組織は、日本にはほとんどありません。

これまでアクセプト・インターナショナルは、海外の紛争地の最前線で取り残されてきた若者の社会復帰を支援し、憎しみの連鎖をほどく活動を行ってきました。その経験を活かして、日本における外国人元受刑者の社会復帰にも応用していきます。


当法人への取材について

アクセプト・インターナショナルは、ソマリアやイエメン、パレスチナなど、世界のテロ・紛争の現状などについて、日本の報道機関向けの取材に加え、メディアの方を含む一般の方々に対して国内で定期的にオンライン・オフラインのイベント(直近のイベント一覧はこちら)を開催しております。また、現場での活動の画像・動画のご提供、スタッフへのインタビューなどもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。

ご寄付のお願い

アクセプト・インターナショナル独自の取り組みは、皆様からの温かいご寄付で成り立っています。月1,500円からのご寄付をいただくアクセプト・アンバサダー(詳細はこちら)はもちろん、単発でのご寄付(詳細はこちら)やふるさと納税を通じたご寄付(詳細はこちら)も受け付けております。日本発で前例を創るため、ぜひ皆様のご協力をお願いいたします。

NPO法人アクセプト・インターナショナル

NPO法人アクセプト・インターナショナル

国内外で憎しみの連鎖といった負の連鎖をほどくことを目指して、2011年の創設以来、ニーズが非常に高いにも関わらず見捨てられてきた地域・分野・対象者に対して取り組みを実施してきました。海外では、紛争に加担した若者が平和の担い手となるための支援や、世界中の紛争当事者が暴力から離脱するための国際規範の制定に向けた働きかけを行なっています。また、日本国内においては特に取り残されがちなイスラム教徒を中心とした在日外国人への相談支援や、犯罪に巻き込まれた特に深刻な少年・少女への包括的な支援を展開しています。

組織概要
名称:NPO法人アクセプト・インターナショナル(NGO Accept International)
住所:東京都中央区日本橋堀留町1丁目5-7 YOUビル 6A
設立:2017年4月(前身団体・日本ソマリア青年機構は2011年9月設立)
代表理事:永井 陽右
主な活動国:ソマリア、イエメン、ケニア、インドネシア、コロンビア、パレスチナ、日本
公式サイト:https://accept-int.org/
代表メールアドレス:info@accept-int.org
代表電話:03-4500-8161

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会社概要

URL
https://accept-int.org
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都中央区日本橋堀留町1丁目5-7 YOUビル 6A
電話番号
03-4500-8161
代表者名
永井陽右
上場
未上場
資本金
-
設立
2017年04月