不確実性の中での前進
2021年ファーウェイ・グローバルアナリストサミット 輪番会長Eric Xuによる講演 日本語訳全文
3月12日 中国・深圳で開かれたファーウェイの第18回グローバルアナリストサミットで、輪番会長のEric Xuが基調講演を行いました。その要旨は次の通りです。
お集りの皆様
2021年 ファーウェイ・グローバルアナリストサミット(HAS)へお越しくださいましてありがとうございます。本日は、ファーウェイの未来のステップについてお話させていただきます。皆様と一緒に未来を切り開いていけること、楽しみにしております。
去る3月31日、2020年アニュアルレポートを公表しました。当社の収益は3.8%増の8,914億元となり、純利益は3.2%増の646億元となりました。この業績は、COVID-19および当社への外部からの制裁の影響にも関わらず、予測に沿ったものとなっています。昨年の当社の戦略は大量の在庫確保であったため、営業活動によるキャッシュフローは352億元となり、こちらも予測どおりとなっています。
2020年の収益を事業部門別にご説明します。キャリア事業は堅調を保ち、3,026億元の収益となり前年比で0.2%増となりました。法人事業では、産業のデジタル・トランスフォーメーションにより力強い成長を見せました。収益は1,003億元となり、前年比で23%増となりました。
コンシューマー事業では、米国の供給禁止措置によりスマートフォンの販売台数が減少しました。しかしながら、パソコン、タブレット、スマートウェアラブル、スマートスクリーンなどあらゆるシナリオと端末でのシームレスAI戦略の推進を続けました。スマートフォン以外の8つのコンシューマー事業のポートフォリオでは収益が65%増加し、今後も主要注力分野であり続けることになります。コンシューマー事業からの収益は3.3%増で4289億元となりました。
2020年には、企業としての躍進を続けるための努力の一環として、米国の禁輸措置による供給継続性の課題に対応し、将来のサステナビリティを達成するため研究開発への投資を強化しました。2020年の研究開発への支出は、1,418.9億元に上り、総収益の15.9%に相当します。
未来に目を向けるに当たり、ファーウェイは基礎科学でのブレイクスルーに継続して取り組み、テクノロジーのフロンティアを押し上げ続けます。産業からのICTに関する新たな需要を特定し、産業を取り巻く難題に取り組むに当たり、当社はビジョンドリブンおよびアサンプションドリブンによるアプローチを続けます。
現時点から2030年までの間に世界が直面することになる技術的課題について、多くの議論を行ってきました。これらの課題は、グローバル全体の産業が直面する課題であり、したがって効果的に対処していくために私たちは共に手を取り、共に投資を行い取り組む必要があります。
当社は、昨年のほとんどの時間を相次ぐ禁輸措置への対処に費やしました。今年は、次のステップと私たちが目指す姿について取り組む時間が多く取れるでしょう。次に、当社の未来への5つの戦略的イニシアチブについてご紹介します。これには、次のものがあります:
・業績回復を促進するため、ポートフォリオを最適化
・5Gのバリューを最大化し、業界関係者と5.5Gを定義しモバイル・コミュニケーションの進化を促進
・すべてのユーザーシナリオに渡り、シームレスでユーザーセントリック、かつインテリジェントな実体験を提供
・低炭素社会に向けエネルギー消費を削減するイノベーション
・サプライの継続性の課題に対応
詳しくご説明します。
イニシアチブの中で最大のものは、業績回復を促進するため、ポートフォリオを最適化することです。現在ファーウェイは地政学的緊張から起こる試練、COVID-19の感染再拡大、米国の禁輸措置に立ち向かい、不確実性の高い時期となっています。この文脈から、業績の回復は優先事項となります。すべての事業において回復を促進させたいため、昨年以来当社はこの目標を念頭にポートフォリオの最適化に取り組んでいます。ここには3つの優先事項があります。
まず、ソフトウェアを強化します。その一環として、当社のソフトウェア・エンジニアリング能力を改善し続けます。2018年11月末、取締役会は20億米ドルをソフトウェア・エンジニアリング能力の強化に投資することを決定しています。2年以上が経過し、ここまで満足が得られる成果となりました。今後に向け、次の3年をかけてソフトウェア・エンジニアリング能力を次のレベルに引き上げるために投資を続けます。これまで過去2年で達成した成果に基づき、チップへの依存を減らし当社のプロダクトをさらに競争力の高いものにするのを目指すのは正に、この成果が価値あるものであったからです。
加えて、ソフトウェア分野での新たな事業機会を模索しているところでもあります。適切なポジション取りができると判断すれば、収益チャンネルでのソフトウェアとサービスの割合を高めるための投資を増やしていきます。マネジメントチームを含めた最近のクラウド&AIビジネスグループのリストラクチャリングは、この取組の一環でもあります。ソフトウェアは、クラウドのコアとなるものです。ソフトウェアの組織構成を強化し、ハードウェアからは切り離すようにしていくつもりです。
2つ目に、先進情報処理技術への依存がより少ない事業に投資を増やしていきます。例えば、当社は光学テクノロジーに何年も取り組んできましたが、主に注力したのは光通信に関するものでした。時を経て、このテクノロジーは光学ディスプレイ、拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUDs)、インテリジェント・ヘッドライト、ファイバーセンシングなど他の分野にも用いることができることに気づきました。簡潔に述べれば、既存のテクノロジーを活用して新たなチャンスを模索し、新たな事業を作り出しているということです。既に市場にあるものではなく、コンシューマーおよび法人のお客さまのニーズを満たすため新奇なプロダクトを提供することを目指しています。
3つ目に、特に自動運転ソフトウェアにおいて、インテリジェント・ビークルのコンポーネントへの投資を強化します。自動車はより一層コネクティビティを備え、インテリジェントになり、電子化され、そしてシェアされるようになっており、このトレンドの核となるのは自動運転ソフトウェアが完全に自動運転を現実のものとできるかどうか、そして完全無人運転に近づくことができるかどうかになっています。自動運転ソフトウェアへの集中投資で、当社は自動車およびICT産業の統合が進むに連れこのトレンドを強化し、結果としてファーウェイに長期的な戦略的事業機会をもたらすことを期待しています。
ファーウェイは、自社をインテリジェント・ビークルの新たなコンポーネントのプロバイダーとして位置づけています。当社の戦略は、自動車OEMがより良い自動車を作るのを手助けすることになります。Richard Yu氏は、自動車メーカーが自動車をより販売できるように協力することを模索し始めています。こうして、当社は自動運転ソフトウェアへの投資を続けていきます。無人運転が現実のものとなったら、実質的に関連するすべての業種での破壊が起こり、今後10年で世界が目にする最も破壊的な産業のトランスフォーメーションを引き起こすことになるでしょう。
2つ目の主要なイニシアチブは、5Gのバリューを最大化し、そして産業関係者と5.5Gを定義しモバイル・コミュニケーションの進化を進めることになります。2020年末、140以上の5Gネットワークが世界で展開され、3億3,000万人以上の5Gユーザーが生まれました。グローバルな規模での5Gの発展は、私たちが期待するよりはるかに大きなものとなりました。
しかし、5Gの商業的成功の要素はコンシューマーだけにとどまらず、法人事業分野も取り込むものになることには十分理解しています。コンシューマーと法人事業者の2つの分野どちらでも躍進し、多様な需要に応えていかなければなりません。
そのため何よりもまず、コンシューマーへの普及を促進し、5Gのユーザーベースを作り上げるため努力を倍増させていく必要があります。より多くの4Gユーザーが移行することで、より多くのデータトラフィックを5Gネットワークへと振り分けることができます。
同時に、事業者向けの5Gソリューションを最適化し、大規模な商用採用を実現させ、社会のあらゆる分野でその恩恵に授かれるようにしています。2020年末、当社は全世界で3,000以上ものイノベーションプロジェクトに協力してきました。キャリアおよびパートナーと協働し、20以上の業種で1,000以上の5G契約を獲得してきました。ほとんどの部分において、事業での5G採用は中国で最も進捗を見せ、ファーウェイはこうしたプロジェクトのほとんどに参加しており、製造業、鉄鋼業、石炭業、港湾業などの業種で大きな進歩を確認しています。こうした努力は当社のお客様に効率化の進展をもたらし、より大きな社会的メリットも生み出しています。一歩ずつ、当社は事業分野での5Gのバリューを具現化しています。
この経験を活かし、2021年には様々な業種での主要な需要の支援を優先していきます。これは、高度な信頼性のネットワーク接続性、大規模なアップリンク・キャパシティ、デターミニスティック・レイテンシー、およびあらゆる形態と規模の企業からの膨大な数の小さな要求に応えるネットワークプランニング、ロールアウト、メンテナンス、最適化サービスの提供となります。このように、当社は5Gの恩恵をより多くの企業と産業に提供していきます。
これまで経験したビジネスケースを見るなら、5Gがすべての産業の需要を満たしていないことは明白です。5Gの核となるテクノロジーのバリューを完全に活用するには、5G規格が進化し続けなければなりません。ファーウェイは2020年のモバイル・ブロードバンド・フォーラムで5.5Gへ向けたビジョンを提唱し、これが5G開発の次のマイルストーンとなることを期待しています。
では、これは何を描いたものなのでしょうか?
これまで、5Gは主に高帯域幅、幅広い接続性、そして低レイテンシーに重点を置いてきました。5.5Gでは、さらに3つのシナリオを追加したいと考えています。アップリンク中心のブロードバンド通信(UCBC)、リアルタイムブロードバンド通信(RTBC)、および通信とセンシングの調和(HCS)です。
ファーウェイの3番目の主要なイニシアチブでは、すべてのシナリオにわたってシームレスでユーザーセントリック、かつインテリジェントな体験を提供することを目指しています。米国で禁輸措置が敷かれたことは当社の携帯電話事業に深刻な影響を及ぼしましたが、消費者に対する私たちの取り組みはこれまでと変わっていません。スマートホーム、スマートオフィス、旅行の便宜、フィットネス&ヘルス、エンターテインメントなど、すべてのシナリオにおいて引き続きシームレス、ユーザーセントリック、そしてインテリジェントな体験を提供していきます。HarmonyOSとファーウェイモバイルサービスを通じて、世界中の開発者やパートナーと緊密に連携し、ハードウェアとサービスのエコシステムを充実させていきます。
ちょうど良い機会ですので、HarmonyOSについて簡単にご紹介しましょう。HarmonyOSは、すべてのシナリオをサポートする分散型のオペレーティングシステムです。すでにスマートスクリーン、スマートウェアラブル機器、ヘッドユニットなどで使用されています。次の段階としては電話への搭載を計画しており、現在、20を超えるハードウェアメーカーが280のアプリプロバイダーと連携してHarmonyOSのエコシステムを構築しています。2021年には、40を超える主要ブランドの1億台以上のデバイスでHarmonyOSのエクスペリエンスをご提供できる予定です。
ファーウェイの4番目の戦略イニシアチブは、低炭素社会に向けてエネルギー消費を削減するためのイノベーションを起こすことです。最近では、炭素排出量のピークを設定し、カーボンニュートラルを達成することがますます注目されるようになっています。世界的に注目が集まるこれらの目標を掲げて、ファーウェイは気候変動との戦いに真っ向から取り組んでいます。私たちはこの戦いが、人類の最終的な運命と密接に関連していると信じています。企業としてファーウェイが提供できる最大の価値は、すべての産業が低炭素社会のエネルギー消費を削減するのに役立つ新技術とイノベーションを実現することです。
自社でカーボンニュートラルを実現するなら、太陽光発電所に投資して消費量を相殺する電力を生成することはできますが、それではファーウェイの強みを十分に活用できません。技術革新を通じてすべての業界の消費電力を削減し、販売するデバイスやネットワークおよび通信機器の消費電力を削減することではじめて最大の価値を生み出すことができるのです。さらなる低炭素社会への道を切り拓くために、ファーウェイはこの方法を通じて、排出量のピークとカーボンニュートラルに対する独自の貢献をしたいと考えています。
5番目の主要なイニシアチブは、供給継続という課題に取り組むことです。今日お集まりの皆さんの多くは、この問題に対して関心の深い方も多いことでしょう。ファーウェイは米国の規制を乗り切ることができるのでしょうか?また、供給問題をどのように解決していけるのでしょうか?
半導体は設計・製造が非常に複雑な製品であり、研究開発や設備投資に多額の資金が必要です。その結果、高度に専門化されたグローバルサプライチェーンが生まれ、地域ごとにそれぞれの強みに基づいて異なる役割を果たしています。このコラボレーションによりイノベーションと低コスト化がノンストップで進み、世界中の企業と消費者に利益をもたらしました。
グローバルサプライチェーン全体でコラボレーションがなくなったと仮定します。すべての地域が独自のエンドツーエンドのローカルサプライチェーンを確立し、自給自足で運用していくようになるでしょう。半導体産業協会(SIA)のレポートによると、不確実な時代にグローバルな半導体サプライチェーンを強化し、半導体供給分野で地域的な自給自足体制を確立するためには、少なくとも1兆米ドルの追加先行投資が必要になります。これにより、全体的な半導体価格が35%~65%増加することになるでしょう。これらのコストの増加は、最終的には消費者に転嫁されます。
チップ生産工場が提示する生産価格も上がり続けています。生産コストが上がるとチップの価格も高くなり、最終的にはすべての家電製品の価格が高騰します。近い将来、製品価格は急上昇するでしょう。
米国は過去2年間でファーウェイに対して計3回の制裁を課しており、これは当社の事業に重大な損害を与えています。さらに目を向けるべきなのは、それが世界の半導体産業にもより大きな損害を与えたことです。米国の規制により、業界のグローバルサプライチェーン全体の信頼が事実上崩壊し、多くの国や地域がサプライチェーンのセキュリティについて考え直すことを余儀なくされています。
ヨーロッパ、日本、中国はすでに半導体への投資を増やしています。特に、ヨーロッパは、半導体業界の自立を支持する意向であることを明確に表明しています。昨年12月、ドイツ、フランス、スペインを含む17か国が、プロセッサと半導体技術に関する共同宣言を発表しました。これは、自国の半導体機能に多額の投資を行うというヨーロッパの決意を示す動きです。
ファーウェイに対する米国の行動がきっかけで、世界中の多くの企業の間でパニック買いも発生しています。特に、これまで在庫を備蓄していなかった中国企業の中には、この機に3か月、6か月、またはそれ以上の期間分の備蓄をしたところもあるといいます。在庫をしっかり確保しておくことでサプライチェーンの不確実性に対する防波堤を敷くことができる、というのが彼らの主張です。
しかし問題は、業界が在庫ゼロのサプライチェーンを構築するのに何年も費やしてきたため、パニックに起因する備蓄の動きが世界的な半導体供給不足につながっていることです。最近までは、大量のチップを在庫しておく必要もなくすべてがスムーズに動作していました。しかし今では、企業の間で1か月分の在庫を確保しておくことが一般的になっています。これが原因で世界的なサプライチェーンに混乱が起きているのです。世界的な供給不足は、ファーウェイに対する米国の行動がもたらした直接的な結果であり、世界中でパニック買いを引き起こしました。それだけでなく、ファーウェイや他の企業に対する米国の行動も、世界中のさまざまな業界で供給不足を引き起こし始めており、予期しない経済危機につながる可能性があります。
何とかして、半導体産業の軌道修正を行わなければいけません。状況がさらに悪化するのを防ぐためには、信頼を再構築し、グローバルな半導体サプライチェーン全体のコラボレーションを回復することが重要です。今、業界は信じられないほどのリスクに晒されています。世界中のリーダーはこれを真剣に受け止め、信頼を再構築し、グローバルサプライチェーンをできるだけ早く軌道に戻すよう賢明な政治的選択を行う必要があります。
グローバルな半導体サプライチェーン全体で信頼を再構築し、コラボレーションを回復できれば、ファーウェイの総合力を最大限に活用することができます。そうなれば、私たちが直面している問題もその過程で解決できる可能性が出てくるでしょう。
最後になりますが、ファーウェイはデジタルテクノロジーの力で、私たち全員が直面する問題への新たなソリューションを生み出せることを心から信じています。そのため、私たちはお客様やパートナーとともにデジタル変革のイノベーションを推進し続け、完全に接続されたインテリジェントな世界の実現を加速します。
ありがとうございました。
2021年 ファーウェイ・グローバルアナリストサミット(HAS)へお越しくださいましてありがとうございます。本日は、ファーウェイの未来のステップについてお話させていただきます。皆様と一緒に未来を切り開いていけること、楽しみにしております。
去る3月31日、2020年アニュアルレポートを公表しました。当社の収益は3.8%増の8,914億元となり、純利益は3.2%増の646億元となりました。この業績は、COVID-19および当社への外部からの制裁の影響にも関わらず、予測に沿ったものとなっています。昨年の当社の戦略は大量の在庫確保であったため、営業活動によるキャッシュフローは352億元となり、こちらも予測どおりとなっています。
2020年の収益を事業部門別にご説明します。キャリア事業は堅調を保ち、3,026億元の収益となり前年比で0.2%増となりました。法人事業では、産業のデジタル・トランスフォーメーションにより力強い成長を見せました。収益は1,003億元となり、前年比で23%増となりました。
コンシューマー事業では、米国の供給禁止措置によりスマートフォンの販売台数が減少しました。しかしながら、パソコン、タブレット、スマートウェアラブル、スマートスクリーンなどあらゆるシナリオと端末でのシームレスAI戦略の推進を続けました。スマートフォン以外の8つのコンシューマー事業のポートフォリオでは収益が65%増加し、今後も主要注力分野であり続けることになります。コンシューマー事業からの収益は3.3%増で4289億元となりました。
2020年には、企業としての躍進を続けるための努力の一環として、米国の禁輸措置による供給継続性の課題に対応し、将来のサステナビリティを達成するため研究開発への投資を強化しました。2020年の研究開発への支出は、1,418.9億元に上り、総収益の15.9%に相当します。
未来に目を向けるに当たり、ファーウェイは基礎科学でのブレイクスルーに継続して取り組み、テクノロジーのフロンティアを押し上げ続けます。産業からのICTに関する新たな需要を特定し、産業を取り巻く難題に取り組むに当たり、当社はビジョンドリブンおよびアサンプションドリブンによるアプローチを続けます。
現時点から2030年までの間に世界が直面することになる技術的課題について、多くの議論を行ってきました。これらの課題は、グローバル全体の産業が直面する課題であり、したがって効果的に対処していくために私たちは共に手を取り、共に投資を行い取り組む必要があります。
当社は、昨年のほとんどの時間を相次ぐ禁輸措置への対処に費やしました。今年は、次のステップと私たちが目指す姿について取り組む時間が多く取れるでしょう。次に、当社の未来への5つの戦略的イニシアチブについてご紹介します。これには、次のものがあります:
・業績回復を促進するため、ポートフォリオを最適化
・5Gのバリューを最大化し、業界関係者と5.5Gを定義しモバイル・コミュニケーションの進化を促進
・すべてのユーザーシナリオに渡り、シームレスでユーザーセントリック、かつインテリジェントな実体験を提供
・低炭素社会に向けエネルギー消費を削減するイノベーション
・サプライの継続性の課題に対応
詳しくご説明します。
イニシアチブの中で最大のものは、業績回復を促進するため、ポートフォリオを最適化することです。現在ファーウェイは地政学的緊張から起こる試練、COVID-19の感染再拡大、米国の禁輸措置に立ち向かい、不確実性の高い時期となっています。この文脈から、業績の回復は優先事項となります。すべての事業において回復を促進させたいため、昨年以来当社はこの目標を念頭にポートフォリオの最適化に取り組んでいます。ここには3つの優先事項があります。
まず、ソフトウェアを強化します。その一環として、当社のソフトウェア・エンジニアリング能力を改善し続けます。2018年11月末、取締役会は20億米ドルをソフトウェア・エンジニアリング能力の強化に投資することを決定しています。2年以上が経過し、ここまで満足が得られる成果となりました。今後に向け、次の3年をかけてソフトウェア・エンジニアリング能力を次のレベルに引き上げるために投資を続けます。これまで過去2年で達成した成果に基づき、チップへの依存を減らし当社のプロダクトをさらに競争力の高いものにするのを目指すのは正に、この成果が価値あるものであったからです。
加えて、ソフトウェア分野での新たな事業機会を模索しているところでもあります。適切なポジション取りができると判断すれば、収益チャンネルでのソフトウェアとサービスの割合を高めるための投資を増やしていきます。マネジメントチームを含めた最近のクラウド&AIビジネスグループのリストラクチャリングは、この取組の一環でもあります。ソフトウェアは、クラウドのコアとなるものです。ソフトウェアの組織構成を強化し、ハードウェアからは切り離すようにしていくつもりです。
2つ目に、先進情報処理技術への依存がより少ない事業に投資を増やしていきます。例えば、当社は光学テクノロジーに何年も取り組んできましたが、主に注力したのは光通信に関するものでした。時を経て、このテクノロジーは光学ディスプレイ、拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUDs)、インテリジェント・ヘッドライト、ファイバーセンシングなど他の分野にも用いることができることに気づきました。簡潔に述べれば、既存のテクノロジーを活用して新たなチャンスを模索し、新たな事業を作り出しているということです。既に市場にあるものではなく、コンシューマーおよび法人のお客さまのニーズを満たすため新奇なプロダクトを提供することを目指しています。
3つ目に、特に自動運転ソフトウェアにおいて、インテリジェント・ビークルのコンポーネントへの投資を強化します。自動車はより一層コネクティビティを備え、インテリジェントになり、電子化され、そしてシェアされるようになっており、このトレンドの核となるのは自動運転ソフトウェアが完全に自動運転を現実のものとできるかどうか、そして完全無人運転に近づくことができるかどうかになっています。自動運転ソフトウェアへの集中投資で、当社は自動車およびICT産業の統合が進むに連れこのトレンドを強化し、結果としてファーウェイに長期的な戦略的事業機会をもたらすことを期待しています。
ファーウェイは、自社をインテリジェント・ビークルの新たなコンポーネントのプロバイダーとして位置づけています。当社の戦略は、自動車OEMがより良い自動車を作るのを手助けすることになります。Richard Yu氏は、自動車メーカーが自動車をより販売できるように協力することを模索し始めています。こうして、当社は自動運転ソフトウェアへの投資を続けていきます。無人運転が現実のものとなったら、実質的に関連するすべての業種での破壊が起こり、今後10年で世界が目にする最も破壊的な産業のトランスフォーメーションを引き起こすことになるでしょう。
2つ目の主要なイニシアチブは、5Gのバリューを最大化し、そして産業関係者と5.5Gを定義しモバイル・コミュニケーションの進化を進めることになります。2020年末、140以上の5Gネットワークが世界で展開され、3億3,000万人以上の5Gユーザーが生まれました。グローバルな規模での5Gの発展は、私たちが期待するよりはるかに大きなものとなりました。
しかし、5Gの商業的成功の要素はコンシューマーだけにとどまらず、法人事業分野も取り込むものになることには十分理解しています。コンシューマーと法人事業者の2つの分野どちらでも躍進し、多様な需要に応えていかなければなりません。
そのため何よりもまず、コンシューマーへの普及を促進し、5Gのユーザーベースを作り上げるため努力を倍増させていく必要があります。より多くの4Gユーザーが移行することで、より多くのデータトラフィックを5Gネットワークへと振り分けることができます。
同時に、事業者向けの5Gソリューションを最適化し、大規模な商用採用を実現させ、社会のあらゆる分野でその恩恵に授かれるようにしています。2020年末、当社は全世界で3,000以上ものイノベーションプロジェクトに協力してきました。キャリアおよびパートナーと協働し、20以上の業種で1,000以上の5G契約を獲得してきました。ほとんどの部分において、事業での5G採用は中国で最も進捗を見せ、ファーウェイはこうしたプロジェクトのほとんどに参加しており、製造業、鉄鋼業、石炭業、港湾業などの業種で大きな進歩を確認しています。こうした努力は当社のお客様に効率化の進展をもたらし、より大きな社会的メリットも生み出しています。一歩ずつ、当社は事業分野での5Gのバリューを具現化しています。
この経験を活かし、2021年には様々な業種での主要な需要の支援を優先していきます。これは、高度な信頼性のネットワーク接続性、大規模なアップリンク・キャパシティ、デターミニスティック・レイテンシー、およびあらゆる形態と規模の企業からの膨大な数の小さな要求に応えるネットワークプランニング、ロールアウト、メンテナンス、最適化サービスの提供となります。このように、当社は5Gの恩恵をより多くの企業と産業に提供していきます。
これまで経験したビジネスケースを見るなら、5Gがすべての産業の需要を満たしていないことは明白です。5Gの核となるテクノロジーのバリューを完全に活用するには、5G規格が進化し続けなければなりません。ファーウェイは2020年のモバイル・ブロードバンド・フォーラムで5.5Gへ向けたビジョンを提唱し、これが5G開発の次のマイルストーンとなることを期待しています。
では、これは何を描いたものなのでしょうか?
これまで、5Gは主に高帯域幅、幅広い接続性、そして低レイテンシーに重点を置いてきました。5.5Gでは、さらに3つのシナリオを追加したいと考えています。アップリンク中心のブロードバンド通信(UCBC)、リアルタイムブロードバンド通信(RTBC)、および通信とセンシングの調和(HCS)です。
ファーウェイの3番目の主要なイニシアチブでは、すべてのシナリオにわたってシームレスでユーザーセントリック、かつインテリジェントな体験を提供することを目指しています。米国で禁輸措置が敷かれたことは当社の携帯電話事業に深刻な影響を及ぼしましたが、消費者に対する私たちの取り組みはこれまでと変わっていません。スマートホーム、スマートオフィス、旅行の便宜、フィットネス&ヘルス、エンターテインメントなど、すべてのシナリオにおいて引き続きシームレス、ユーザーセントリック、そしてインテリジェントな体験を提供していきます。HarmonyOSとファーウェイモバイルサービスを通じて、世界中の開発者やパートナーと緊密に連携し、ハードウェアとサービスのエコシステムを充実させていきます。
ちょうど良い機会ですので、HarmonyOSについて簡単にご紹介しましょう。HarmonyOSは、すべてのシナリオをサポートする分散型のオペレーティングシステムです。すでにスマートスクリーン、スマートウェアラブル機器、ヘッドユニットなどで使用されています。次の段階としては電話への搭載を計画しており、現在、20を超えるハードウェアメーカーが280のアプリプロバイダーと連携してHarmonyOSのエコシステムを構築しています。2021年には、40を超える主要ブランドの1億台以上のデバイスでHarmonyOSのエクスペリエンスをご提供できる予定です。
ファーウェイの4番目の戦略イニシアチブは、低炭素社会に向けてエネルギー消費を削減するためのイノベーションを起こすことです。最近では、炭素排出量のピークを設定し、カーボンニュートラルを達成することがますます注目されるようになっています。世界的に注目が集まるこれらの目標を掲げて、ファーウェイは気候変動との戦いに真っ向から取り組んでいます。私たちはこの戦いが、人類の最終的な運命と密接に関連していると信じています。企業としてファーウェイが提供できる最大の価値は、すべての産業が低炭素社会のエネルギー消費を削減するのに役立つ新技術とイノベーションを実現することです。
自社でカーボンニュートラルを実現するなら、太陽光発電所に投資して消費量を相殺する電力を生成することはできますが、それではファーウェイの強みを十分に活用できません。技術革新を通じてすべての業界の消費電力を削減し、販売するデバイスやネットワークおよび通信機器の消費電力を削減することではじめて最大の価値を生み出すことができるのです。さらなる低炭素社会への道を切り拓くために、ファーウェイはこの方法を通じて、排出量のピークとカーボンニュートラルに対する独自の貢献をしたいと考えています。
5番目の主要なイニシアチブは、供給継続という課題に取り組むことです。今日お集まりの皆さんの多くは、この問題に対して関心の深い方も多いことでしょう。ファーウェイは米国の規制を乗り切ることができるのでしょうか?また、供給問題をどのように解決していけるのでしょうか?
半導体は設計・製造が非常に複雑な製品であり、研究開発や設備投資に多額の資金が必要です。その結果、高度に専門化されたグローバルサプライチェーンが生まれ、地域ごとにそれぞれの強みに基づいて異なる役割を果たしています。このコラボレーションによりイノベーションと低コスト化がノンストップで進み、世界中の企業と消費者に利益をもたらしました。
グローバルサプライチェーン全体でコラボレーションがなくなったと仮定します。すべての地域が独自のエンドツーエンドのローカルサプライチェーンを確立し、自給自足で運用していくようになるでしょう。半導体産業協会(SIA)のレポートによると、不確実な時代にグローバルな半導体サプライチェーンを強化し、半導体供給分野で地域的な自給自足体制を確立するためには、少なくとも1兆米ドルの追加先行投資が必要になります。これにより、全体的な半導体価格が35%~65%増加することになるでしょう。これらのコストの増加は、最終的には消費者に転嫁されます。
チップ生産工場が提示する生産価格も上がり続けています。生産コストが上がるとチップの価格も高くなり、最終的にはすべての家電製品の価格が高騰します。近い将来、製品価格は急上昇するでしょう。
米国は過去2年間でファーウェイに対して計3回の制裁を課しており、これは当社の事業に重大な損害を与えています。さらに目を向けるべきなのは、それが世界の半導体産業にもより大きな損害を与えたことです。米国の規制により、業界のグローバルサプライチェーン全体の信頼が事実上崩壊し、多くの国や地域がサプライチェーンのセキュリティについて考え直すことを余儀なくされています。
ヨーロッパ、日本、中国はすでに半導体への投資を増やしています。特に、ヨーロッパは、半導体業界の自立を支持する意向であることを明確に表明しています。昨年12月、ドイツ、フランス、スペインを含む17か国が、プロセッサと半導体技術に関する共同宣言を発表しました。これは、自国の半導体機能に多額の投資を行うというヨーロッパの決意を示す動きです。
ファーウェイに対する米国の行動がきっかけで、世界中の多くの企業の間でパニック買いも発生しています。特に、これまで在庫を備蓄していなかった中国企業の中には、この機に3か月、6か月、またはそれ以上の期間分の備蓄をしたところもあるといいます。在庫をしっかり確保しておくことでサプライチェーンの不確実性に対する防波堤を敷くことができる、というのが彼らの主張です。
しかし問題は、業界が在庫ゼロのサプライチェーンを構築するのに何年も費やしてきたため、パニックに起因する備蓄の動きが世界的な半導体供給不足につながっていることです。最近までは、大量のチップを在庫しておく必要もなくすべてがスムーズに動作していました。しかし今では、企業の間で1か月分の在庫を確保しておくことが一般的になっています。これが原因で世界的なサプライチェーンに混乱が起きているのです。世界的な供給不足は、ファーウェイに対する米国の行動がもたらした直接的な結果であり、世界中でパニック買いを引き起こしました。それだけでなく、ファーウェイや他の企業に対する米国の行動も、世界中のさまざまな業界で供給不足を引き起こし始めており、予期しない経済危機につながる可能性があります。
何とかして、半導体産業の軌道修正を行わなければいけません。状況がさらに悪化するのを防ぐためには、信頼を再構築し、グローバルな半導体サプライチェーン全体のコラボレーションを回復することが重要です。今、業界は信じられないほどのリスクに晒されています。世界中のリーダーはこれを真剣に受け止め、信頼を再構築し、グローバルサプライチェーンをできるだけ早く軌道に戻すよう賢明な政治的選択を行う必要があります。
グローバルな半導体サプライチェーン全体で信頼を再構築し、コラボレーションを回復できれば、ファーウェイの総合力を最大限に活用することができます。そうなれば、私たちが直面している問題もその過程で解決できる可能性が出てくるでしょう。
最後になりますが、ファーウェイはデジタルテクノロジーの力で、私たち全員が直面する問題への新たなソリューションを生み出せることを心から信じています。そのため、私たちはお客様やパートナーとともにデジタル変革のイノベーションを推進し続け、完全に接続されたインテリジェントな世界の実現を加速します。
ありがとうございました。