地域産広葉樹を高付加価値な家具へ、日本の森林資源活用の新たなモデルを目指す
飛騨産業、森林総合研究所・岐阜県生活技術研究所との共同研究がオープンイノベーション研究・実用化推進事業に採択

飛騨産業株式会社(本社:岐阜県高山市、代表取締役:岡田明子、以下 飛騨産業)は、国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所(茨城県つくば市)、岐阜県生活技術研究所(岐阜県高山市)と共同で提案した研究課題「地域産広葉樹材を無駄なく使い切る高付加価値利用技術の開発」(以下 本研究)が、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)の令和8年度「オープンイノベーション研究・実用化推進事業(開発研究ステージ・開発重要政策タイプ)」に採択されたことをお知らせします。
本研究において飛騨産業は、地域産広葉樹を高付加価値な家具へと活かすための技術・意匠開発と製品化を担います。家具メーカーとして100年以上培ってきたものづくりとデザインの知見を生かし、これまで十分に活用されてこなかった小径材や短尺材、多様な樹種が混在する地域産広葉樹を家具に活かす技術を開発、その成果を実際の製品化へとつなげます。
令和8年度から令和11年度までの4年間にわたり実施される本研究では、飛騨地域で培われた技術や知見を「飛騨モデル」として全国へ展開し、地域産広葉樹の高付加価値化を後押しすることで、山側への適正な利益を還元し、里山の維持・再生につながる、日本の森林資源活用の持続可能なモデルの確立を目指します。
研究提案の背景
地域産広葉樹を活かすことが、里山の未来につながる
日本は国土の約3分の2を森林が占める森林国でありながら、国内で利用される広葉樹材の自給率は約1割にとどまっています。国産広葉樹材の多くは製紙用チップや燃料などに利用され、家具や内装材といった高付加価値用途への利用は5%未満です。また、かつて地域住民によって利用・管理されてきた里山林は、薪炭利用の減少などにより放置が進み、ナラ枯れや野生鳥獣による被害など、森林環境や地域社会への影響が顕在化しています。
一方、海外産広葉樹材の価格上昇や供給の不安定化を背景に、家具・内装業界では国産広葉樹への期待が高まっていますが、里山林から産出される広葉樹は、小径材や曲がり材、短尺材が多く、多様な樹種が少量ずつ混在するため、従来の家具づくりでは活用しにくいという課題があります。
本研究では、こうした地域産広葉樹を新たな価値を生み出す地域資源として捉え、加工・製品化技術の開発を通じて高付加価値利用を促進し、木の価値を高めることで、里山林の維持・再生につながる仕組みづくりを目指します。


本研究での飛騨産業の取り組み
地域産広葉樹を家具へ活かす技術・意匠開発
本研究では、小径材や短尺材、多様な樹種が混在する地域産広葉樹の特性を活かし、高付加価値へと展開するための加工技術と意匠開発に取り組み、またサプライチェーン構築のための丸太選別基準策定に協力します。
1)小径材を活かす
接着部材の曲木技術開発:幹が細い「小径材」を繋ぎ合わせる「幅接着材」や「厚接着材」について、曲木加工の蒸煮(じょうしゃ)処理時の熱や蒸気による剥離を防ぐ接着・加工条件を確立します。ナラ、クリ、ブナ、ヤマザクラなどの小径材を活用し、飛騨産業の定番椅子シリーズなどへの適用・製品化を図ります。

*写真は現行のナラ仕様
色むら抑制調色技術の開発:部材同士の接合部や材色の違いによって生じる色むらを抑える調色技術を開発し、家具製品としての美しい意匠性と品質を高めます。

2)多様な広葉樹の利用
異樹種複合積層材の三次元加工:伐採時に少量多樹種で混ざり合って産出される地域産広葉樹を重ね合わせた「異樹種複合積層材」を開発し、NCルーターによる三次元切削加工を行う技術を確立します。樹種ごとに異なる木目や色が調和した、これまでにない新しいデザインの家具を開発します。

意匠性の高い縦継ぎ技術:短尺材(短い材)を面材料として有効活用するため、外部デザイナーとの協業により、従来の縦継ぎ(フィンガージョイント等)のイメージを一新する、高い意匠性と強度を備えた新たな縦継ぎ技術を開発し、テーブル天板等へ応用します。

3)丸太選別基準策定への協力
家具メーカーの立場から丸太選別基準の策定に協力し、山と家具メーカーのニーズをつなぐことで、地域産広葉樹がより有効に活用される仕組みづくりに貢献します。

最終目標と社会実装
研究成果を「飛騨モデル」として全国へ
本研究では、開発した技術や成果を自社製品へ展開するにとどまらず、業界団体やプラットフォームを介して全国へ普及させることで、飛騨地域で培われた技術や知見を「飛騨モデル」として全国に展開し、木の価値を高めることで森を守る、日本の森林資源活用の新たなモデルの実現を目指します。
製品化・自社目標:2029年度に異樹種複合積層材による三次元加工家具や新たな縦継ぎ技術によるテーブル等の新シリーズを発表・販売開始。これにより2030年までに飛騨産業の国産材使用比率を30% へ引き上げ(2025年9月期実績19.9%)、国産材家具売上20億円を目指します。
業界全体・他地域への波及活動:開発した技術は(協)飛騨木工連合会や(一社)日本家具産業振興会等の業界団体を通じて全国の事業者へ普及を図り、家具製造業全体で2035年に国産材製品比率30%(売上450億円規模)の実現に貢献します。また、「里山広葉樹利活用・再生プラットフォーム(仮称)」等を活用し、丸太選別基準や加工技術を「飛騨モデル」として全国へ波及させることで、国内の広葉樹用材使用率を現在の4.3%から2035年に20%(年間約40万㎥の用材供給増)へ引き上げる後押しをします。
山への還元と里山再生:未利用広葉樹を高付加価値化して山(素材生産者・森林所有者)へ適正な利益還元(年間約45億円の循環資金)を行う仕組みを構築します。これにより放置里山林の適切な手入れを促進し、ナラ枯れ防止や鳥獣被害軽減、生物多様性の回復と地方創生に寄与します。

補足| これまでの取り組み
飛騨産業の地域産材活用の挑戦
飛騨産業は創業時より、木材の新たな価値を引き出す技術とデザインを追求してきました。今回の研究はその歩みをさらに発展させ、地域産広葉樹を高付加価値な家具に活かすことで、持続可能な森林資源活用の未来を切り拓く新たな挑戦です。

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年 |
主な取り組み |
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1920年 |
創業。曲木技術を海外より導入し、当時は「無用の長物」ともいわれていた飛騨産ブナを活用した家具づくりを開始。 |
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2001年 |
家具には不向きとされていた国産スギの家具利用を目指し、圧縮加工技術の研究を開始。 |
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2005年 |
エンツォ・マーリ氏 デザインによる圧縮スギ家具「HIDA」をミラノサローネで発表。国産スギの新たな価値を世界へ発信。 |
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2023年 |
奥飛騨 栃尾工場を開設。 |
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原研哉 氏デザイン「SUWARI」を発表。国産小径木の特性を活かした家具を発表。 |
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2024年 |
三澤遥 氏デザイン「HIHI DADA」を発表。 |
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2022〜2024年 |
イノベーション創出強化研究推進事業・応用研究ステージに参画。未利用広葉樹の家具利用技術を開発。 |
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2025年 |
上記成果がウッドデザイン賞2025 奨励賞(審査委員長賞)を受賞。 |
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熊野亘 氏デザイン「kei」を発表。国産クリ材の節や木目を木本来の個性として捉え、その魅力を活かした家具シリーズを展開。 |
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2026年〜 |
オープンイノベーション事業・実用化推進事業に採択。 |

木工家具ブランドHIDAを展開する飛騨産業は、飛騨地方の悠久の森と飛鳥時代より続く匠文化を背景に、地域の発展を願う有志によって1920年に創業された家具メーカーです。「匠の心と技をもって、飛騨を木工の聖地とする」という志のもと、「人を想う」「時を継ぐ」「技を磨く」「森と歩む」の4つの価値観を軸に、地域に根ざした持続可能な木製家具づくりに取り組んでいます。
曲木やスギ圧縮など独自の技術の研鑽を続けながら、国内外のデザイナーとの協働によって開発されたコレクションは、海外の展示会やアワードにおいて国際的な評価を獲得しています。また近年では、木工職人の育成を行なう「飛騨職人学舎」や「遊朴館 HIDA GALLERY」などの取り組みを通じて、木工文化を未来につなぐための活動にも力を入れています。
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