超高強度鉄筋コンクリート造柱の補修・補強技術を開発
設計・施工から維持(補修)までを網羅した超高層鉄筋コンクリート造技術へ
当社は、高耐力・高靭性を兼ね備えた超高層鉄筋コンクリート造技術「HiRC®工法」(ハイアールシー工法)を保有しています。今回の技術開発により、同工法は建物の設計・施工から維持(補修)までを網羅できる工法となり、建物の長寿命化にも貢献します。鹿島は今後も、同工法などの技術を用いて、より安全・安心で快適な建物を提供していきます。
※ 写真は鹿島設計施工によるHiRC工法適用の物件例です
(本補修・補強工法の実績を示すものではありません)
開発の背景
現在、超高層鉄筋コンクリート造建物の柱には、一般的にコンクリート強度が60N/mm2を超える超高強度コンクリートが使用されています。一方、地震等で万が一の損傷を受けた部材の補修・補強に関しては、従来の指針類では超高強度コンクリートは適用範囲外であり、その技術的知見も十分ではありませんでした。建物の設計および施工は、慎重な安全検討の下で行われますが、近い将来に高い確率での発生が危惧される南海トラフ沿いの巨大地震や首都直下型地震などによる、万が一の損傷に対する備えとして、補修・補強技術を確立する必要がありました。
鹿島は、1970年代に「HiRC工法」を確立して以来、柱部材の耐力と粘り強さを向上させるべく、研究開発を継続してきました。これにより、安全・安心とともに、より高く、より自由度の幅が広い超高層建物が実現可能となり、高い信頼を得ながら豊富な実績を蓄積してきました。こうした中、今回、超高強度RC造柱が損傷を受けた場合でも、建物を使い続けながら柱の耐力および性能を維持、回復できる補修・補強技術を開発しました。
本技術の概要
本技術の概要は、次のとおりです。
1.超高強度コンクリートに対応した補修・補強材
補修・補強材には、超高強度繊維補強モルタルを使用します。これは鹿島が中心となって開発した、特殊鋼繊維などから構成される超高強度繊維コンクリート「サクセム®」をベースにしたものです。この繊維補強モルタルは、コンクリート強度150N/mm2という高い強度まで対応可能であり、高強度・高靭性・高耐久性に加え、高い流動性も兼ね備えています。
2.2種類の補修・補強工法
万が一、柱部材のかぶりコンクリートに欠損や剥落が生じた場合、まず損傷したかぶりコンクリートの一定範囲を除去します。その後、かぶりコンクリートを除去した箇所の表面に所定のプライマー処理を施し、除去した部分を超高強度繊維補強モルタルで置換します。
置換方法には、流動性の高い超高強度繊維補強モルタルを型枠に流し込んで成形する「流し込み工法」と、増粘剤を用いて流動性を落とし、固練りにした超高強度繊維補強モルタルを塗布する「コテ塗り工法」の2種類があります。補修・補強範囲の広さなどによって最適な工法を選択します。例えば、「流し込み工法」は、補修・補強範囲が柱部材の4面にわたるなど広範囲の場合などに適しています。一方、「コテ塗り工法」は、部分的な補修・補強や、型枠の設置が困難な場合などに適した方法です。
構造実験による性能確認
補修後の超高強度RC造柱の構造性能を確認するために、120N/mm2の超高強度コンクリートで構築した柱部材を用いて構造実験を行いました。
本実験では、1/2スケールで模擬した柱部材に、想定される建物重量と地震力(軸力・水平力)を負荷し、柱部材のかぶりコンクリートの一部が剥落するまで損傷させました。その後、柱に建物重量を負担した状態で、柱部材の補修を行いました。補修後、再び同じ地震力を負荷したところ、元の柱断面性能と同等以上の耐力・変形性能を維持していることを確認しました(右図max値[1]<[2])。また、補修により、損傷で劣化した剛性が最大で約50%回復した(右図[3])ほか、再加力によっても、コンクリートと補修材の境界面に剥離は生じず、強固に一体化されていることが確認できました。
なお、本技術で補修・補強した後の柱は、耐火性能実験の結果、建築基準法に定められた耐火性能(3時間)があることを確認しています。(建築技術性能証明/GBRC性能証明 第23-18号)
今後の展開
今回の超高強度RC造柱の補修・補強技術の確立により、超高層鉄筋コンクリート造を実現する鹿島の固有技術「HiRC工法」は、建物の長寿命化による持続可能な社会の実現に貢献するとともに、BCP(事業継続計画)や LCP(生活継続計画)の備えとしてもさらに安心できる工法になりました。
鹿島は今後も、たゆまぬ技術革新により、人々が安心して暮らせる安全な建物を提供してまいります。
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