財団設立35周年記念【医師・研究者435名へのアンケート調査】 [医師の働き方改革]施行後、「良くなった点は特にない」が7割強 [研究に足りないもの]1位「時間」 2位「人員」 3位「環境・設備」
小児医学・医療・保健の発展のため、小児医学研究者への研究助成や小児医学を志す医学生への奨学金給付などを行う公益財団法人川野小児医学奨学財団(所在地:埼玉県川越市、理事長:川野幸夫/株式会社ヤオコー代表取締役会長)は、病気で息子を亡くした父親の「病に苦しむ子どもを減らしたい」という思いから1989年12月25日に設立され、今年で設立35周年を迎えます。これを記念し、このたび全国の医師・研究者の435名を対象に「医師・研究者の仕事・研究に関するアンケート調査」を実施いたしました。全国の様々な医療現場で働く医師・研究者の仕事のやりがいや大変さ、また2024年4月に施行された「医師の働き方改革」の約半年後の状況についても質問を行いました。本調査は、医療や研究の現場の実態を調査・分析することを目的としております。
■調査概要
調査名:「医師・研究者の仕事・研究に関するアンケート調査」
対象者:医師・研究者(435名)
調査方法:インターネット調査
調査期間:2024年9月20日~9月22日
回答数:435名(臨床医335名、臨床・研究医100名)
※本調査リリースの調査結果・グラフをご利用いただく際は、【(公財)川野小児医学奨学財団調べ】とご明記ください
■集計結果のポイント
●医師がストレスを感じるときは、1位「患者やその家族から、クレームを受けたとき」(49.2%)。(Q2)
●医師としてやりがいを感じるときは、1位「患者やその家族から感謝されたとき」(63.7%)。(Q3)
●医師に必要だと思うことは1位「医学の知識と技術」(74.9%)、2位「コミュニケーション能力」(62.3%)、3位「体力」(35.2%)。当財団が2024年5月に発表した医学生を対象に行った調査と同じ順となった。(Q4)
●「医師の働き方改革」が施行されて良くなった点については「よくなった点は特にない」が7割強(74.7%)と、2位以下に圧倒的な差をつけて1位となった。(Q7)
●研究者が研究をスタート、継続するのに大変なことは1位「研究に割ける時間が少ない」(51.0%)
2位「研究に関わる人員が少ない」(37.0%)、3位「研究する環境・設備などが不十分」(34.0%)
4位「研究資金の獲得が難しい」(32.0%)。(Q13)
●研究者が海外の研究機関に移籍する理由の1位は、「海外には研究を十分に進められる環境がある」(59.0%)。2位「海外では能力や実績がより評価に反映されやすい」(45.0%)、3位「海外ではより多くの研究費が獲得できる」(44.0%)。(Q14)
●医師の職業病だと感じるエピソードとして「(挨拶にて)お大事に、とよく言ってしまう」、「友人や医師ではない人に、うっかり先生と呼びかけてしまう」、「血管や爪、顔色をみてつい診察してしまう」、「救急車をみたり音(サイレン)がきこえるとビクっとする」など。(Q15)
■アンケート集計結果
●医師の仕事について
Q1.どのような理由で医師になりましたか。 [複数回答]
「世の中の役に立ちたい」が約5割(48.3%)で1位、次いで「患者さんの病気を治したい」が約4割(38.4%)で2位となった。1位2位と、3位「高い収入が得られると思ったから」(20.5%)との差が大きく開く結果となった。
Q2.医師の仕事をする中で、どのようなときにストレスを感じますか。 [複数回答]
「患者やその家族から、クレームを受けたとき」が約5割(49.2%)と最も多く、約半数に達した。次いで「勤務時間が長くなったとき」(42.1%)、「予定外の緊急事態が発生したとき」(40.5%)、「体力的に厳しさを感じるとき」(37.9%)、「プライベートの時間が確保できないとき」(36.1%)の順となった。
医師の働き方改革では、長時間労働の改善、業務の負担の軽減などに焦点が当てられたが、医療現場では「患者やその家族からクレームを受けたとき」という、人とのコミュニケーションに因るものが最大のストレスになっていることがわかった。
Q3.医師としてやりがいを感じるのはどんな時ですか。 [複数回答]
「患者やその家族から感謝されたとき」という回答が圧倒的に多く6割強(63.7%)となった。次いで「人の命を救えたとき」が約4割(40.7%)、「手術や治療が成功したとき」が3割強(35.4%)、「患者やその家族の笑顔を見たとき」が約3割(31.7%)となった。
Q2では「患者やその家族から、クレームを受けたとき」が最も高い回答となり、Q3では「患者やその家族から感謝されたとき」「患者やその家族の笑顔を見たとき」が上位になっている。医師のストレスややりがいは、患者やその家族との関係性に大きく影響を受けることがうかがえる結果となった。
Q4.医師に必要だと思うことはなんですか。 [複数回答]
1位「医学の知識と技術」(74.9%)、2位「コミュニケーション能力」(62.3%)とそれぞれ半数を超え上位を占めた。
5月に配信した医学生の意識調査と比較すると「コミュニケーション能力」「思いやり」は、医学生より現場を経験する医師の方がそれぞれ10pt以上高い結果となった。
Q5. 現在の専門分野を選んだ理由はなんですか。[自由回答]
※回答数が多かったもの、特徴的なものを専門分野ごとに抜粋
【内科】
・広く様々な疾患を診られる力をつけたかったため
【小児科】
・子供が好きだから
【外科】
・手術治療に興味があった
【産科・婦人科】
・分娩が神秘的と思ったから
【救急科】
・人の命を救いたかったから
【眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科】
・全て自科でオぺまで完結していて最後は開業できるから
【精神科】
・人間の心理に興味があったから
【整形外科】
・スポーツ医学に興味があったから
【麻酔科】
・全身管理に興味があったから
【脳神経外科】
・崇高な脳のことを知りたかったため
【放射線科】
・切らないがん治療に興味があったから
●「医師の働き方改革」について
Q6.2024年4月より「医師の働き方改革」が施行されて約半年が経過しましたが、施行前より勤務環境は改善されましたか。 [単一回答]
「医師の働き方改革」が施行されて約半年が経過したが、施行前と後では「変わらない」という回答が最も多く約7割(69.2%)に達した。
「改善された」(3.4%)、「少し改善された」(9.2%)の合計は12.6%に留まり、「かえって悪くなった」(14.3%)の回答の方が高い結果となった。
Q7.「医師の働き方改革」が施行されて良くなった点は何ですか。 [複数回答]
「医師の働き方改革」が施行されて良くなった点について聞いたところ「よくなった点は特にない」が7割強(74.7%)と、2位以下に圧倒的な差をつけて1位となった。
良くなった点として、「休暇が取りやすくなった」(12.6%)、「勤務時間が短くなった」(8.3%)といった回答もあるものの、わずかとなった。
医師の長時間労働を改善し健康に働ける環境を作る目的で施行された「医師の働き方改革」だが、その効果はまだ小さいことがうかがえる。
Q8.「医師の働き方改革」が施行されて悪くなった点は何ですか。 [複数回答]
「医師の働き方改革」が施行されて悪くなった点について聞いたところ「悪くなった点は特にない」という回答が約半数(48.7%)となった。
一方、「業務の負担がかえって増加した」(20.2%)、「医師不足が深刻化した」(17.2%)もそれぞれ約2割となっている。
●研究について
Q9.日本の医学研究のレベルは世界と比べて高いと思いますか。 [単一回答]
「普通」が39.3%、「高い」および「やや高い」が33.6%、「やや低い」および「低い」は22.0%となった。
7割強が日本の医学研究のレベルを普通以上と感じている回答となった。
Q10.Q9.で選んだ回答の理由を教えてください。[自由回答]
<高い、やや高いと回答した理由(抜粋)>
・ノーベル賞的な研究を行っている研究者が多数いるから。(クリニック・医院(診療所)/内科)
・国内で開発された医療機器がすぐれている。(一般病院/眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科)
・分野によっては世界をけん引するような研究成果が上がっている。ただし政府や世間にあまり評価されておらず予算が乏しい。(一般病院/放射線科)
<普通と回答した理由(抜粋)>
・以前は世界水準より高かったが優秀な人材がどんどん海外へ流出したから(クリニック・医院(診療所)/整形外科)
・全体的なレベルは必ずしも高くないが、突出して優秀な研究者が個人で存在するため(クリニック・医院(診療所)/内科)
・海外の学術論文などの本数が少ないため。(公立・公的・社会保険関係法人の病院/小児科)
<やや低い、もしくは低いと回答した理由(抜粋)>
・研究に関わる金額、人員が他国より少ない(一般病院/小児科)
・研究に進む人が少なくなっているから。(一般病院/内科)
・医師が臨床と教育の合間に研究をしなければならない(国立病院/救急科)
Q11.現在どのような研究をしていますか? [自由回答](臨床・研究医のみ回答)
研究者によって様々な回答があったが、中でも、がん治療に関する研究が最も多く、10名の研究者がこの分野で研究していると回答した。次いで、6名の研究者が脳関連(脳科学や認知症など)の研究と回答した。
回答一部抜粋
・癌治療の手術、放射線、化学療法、以外の治療(クリニック・医院(診療所)内科)
・新しいがん治療(クリニック・医院(診療所)/放射線科)
・脳蘇生(公立・公的・社会保険関係法人の病院/麻酔科)
・MASLDの臨床研究(一般病院/内科)
・生活習慣病患者と生活習慣改善意識について(企業/内科)
・神経変性疾患に関与する遺伝子の研究(大学病院 /内科)
Q12.研究資金はどこから得ていますか。 [複数回答] (臨床・研究医のみ回答)
研究者が研究資金をどこから得ているかについては「自分が所属する病院・大学」が最も多く、半数以上(52.0%)となり、次いで「公的機関から」(26.0%)という結果となった。
Q13.研究をスタートもしくは継続するにあたって大変なことを教えてください。[複数回答](臨床・研究医のみ回答)
研究者が研究をスタートもしくは、継続するにあたって大変なことの1位は「研究に割ける時間が少ない」で半数以上(51.0%)が回答した。次いで「研究に関わる人員が少ない」(37.0%)、「研究する環境・設備などが不十分」(34.0%)、「研究資金の獲得が難しい」(32.0%)の順となった。
研究に足りないものは、「時間」→「人員」→「環境・設備」→「資金」という順となった。
Q14.研究者が海外の研究機関に移籍する理由は何だと思いますか。 [複数回答] (臨床・研究医のみ回答)
「海外には研究を十分に進められる環境がある」という回答が約6割(59.0%)で1位となった。
次いで「海外では能力や実績がより評価に反映されやすい」(45.0%)、「海外ではより多くの研究費が獲得できる」(44.0%)の順となった。
Q13で不足していると回答があった「環境」「資金」の問題が解消される他、「正当な評価」についても重視していることがうかがえる。
Q15.プライベートで医療関係者以外の人と話をしていて自身が職業病だと感じるエピソードがありましたら教えてください。[自由回答]※抜粋
・日常的な挨拶で「お大事に」といってしまう(公立・公的・社会保険関係法人の病院/精神科)
・すぐ相手のことを先生と言ってしまう(一般病院/内科)
・相手の歩き方や動きで病気かどうか診断してしまう。(クリニック・医院(診療所)/整形外科)
・救急車の音を聞くとビクっと反応してしまう。(クリニック・医院(診療所)/内科)
・レントゲンやCT画像は向かって右が患者さんの左なので、運転中に左右をよく言い間違える。
(一般病院/小児科)
・病気の話が出たときに、思わず専門用語がでてしまう(一般病院/精神科)
・医療ドラマの話に突っ込みを入れてしまう(クリニック・医院(診療所)/内科)
<財団概要>
財団名: 公益財団法人川野小児医学奨学財団
所在地: 〒350-1124 埼玉県川越市新宿町1-10-1
理事長: 川野 幸夫(株式会社ヤオコー 代表取締役会長)
事務局長: 川野 紘子
設立: 1989年12月25日
行政庁: 内閣府
URL: https://kawanozaidan.or.jp/
TEL: 049-247-1717
Mail: info@kawanozaidan.or.jp
事業内容: 研究助成/奨学金給付/小児医学川野賞/医学会助成
小児医療施設支援/ドクターによる出前セミナー
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失われた息子の命をきっかけに設立した「川野小児医学奨学財団」ー小児医療をめぐる課題に取り組む中で感じた、子どもたちの心と体を守るために必要なこと
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