蓄電池製造設備産業の強化をめざす共同事業「Swiftfab」始動
日立、共同事業体の設立準備に参画。先進AIを活用した「HMAX Industry」の提供、蓄電池製造工程のデジタルツイン技術の開発めざす
一般社団法人電池サプライチェーン協議会*1(Battery Association for Supply Chain、以下「BASC」)に加盟する設備関連企業の中の9社が、このたび、蓄電池製造設備産業の強化に向け、共同事業体「Swiftfab Energy Systems 株式会社(仮称、以下「当共同事業体」)」の設立に合意しました。当共同事業体は、産業横断型の共同プロジェクト「Swiftfab(以下「本事業」)」を推進するために設立されるものです。蓄電池産業における7つの重点課題*2の1つである「②電池設備産業の構造変革」に向けて、日本の蓄電池産業の国際競争力向上をめざします。
本事業は、国内安定供給体制の強化、および蓄電池産業戦略の実現に貢献すべく、さまざまな分野のBASC会員企業が、それぞれの強みを結集・連携して産業横断型の製造プラットフォーム構築を推進するという業界初の先進モデルであり、産業界全体の全体最適で基盤を築くことを目的としています。本事業では、建屋・設備・生産装置・システムを一体で設計・開発し、蓄電池製造ラインとして統合したソリューションを共同で構築・展開することで、圧倒的な短期間・低コストでありながら、高品質を高次元で両立できる電池製造拠点の提供実現をめざします。また、本事業で得られた成果は、今後BASC会員企業にも順次開放し、「共創型産業インフラ」として拡張していく予定です。本取り組みが、国内製造設備産業の強靭化と日本発の競争力ある産業モデルの構築につながることを期待しています。
こうした中、株式会社日立製作所(以下、日立)は当共同事業体の設立準備に参画します。精密かつ複雑な工程をつなぐための装置設計・ライン設計のリードタイム長期化や、生産立上げ調整時間の長期化といった、国内の蓄電池製造の課題解決に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)実現をめざします。
当共同事業体の設立後、具体的には、他の参画企業と共同で蓄電池製造工程のデジタルツイン実現のコアとなるシミュレーション技術の開発に取り組む予定です。現場の設備やラインの多様なデータを収集・蓄積してデジタル空間で事前に検証することによる、設計段階のリードタイムの短縮、さらに、複数の要素やシステムを一体化した統合シミュレーションや性能予測シミュレーションで因果関係の解析と高精度な予測を可能とすることで、生産立ち上げ後の調整期間の短縮をめざします。これらにより、設計から生産までの全体プロセスを最適化し、時間とコストの削減に貢献します。
日立のコネクティブインダストリーズ(CI)セクターは、現場の多様なデータ、日立のドメインナレッジと先進AIを組み合わせたデジタルサービス「HMAX Industry」を、蓄電池(バッテリー)などの成長産業へ水平展開する「Integrated Industry Automation」に注力しており、今回の取り組みはその重要な一端を担います。全社のリソースを結集して新たな社会イノベーション事業を創生する戦略SIB*3ビジネスユニットとともに、One Hitachiで、Lumada*4 3.0を体現する「HMAX Industry」の提供を通じて、フロントラインワーカーの現場を革新します。
*1 一般社団法人電池サプライチェーン協議会(Battery Association for Supply Chain):電池サプライチェーン全体の健全な発展をめざし、電池材料・設備・製造・サービスなど幅広い分野から244社(2025年11月時点)が参画する電池業界団体です。脱炭素社会(GX)・デジタル社会(DX)の実現に不可欠な電池産業の競争力強化に向け、経済産業省が策定する蓄電池産業戦略と連動し、個社単独では解決が困難な共通課題に対し、業界全体で迅速に取り組む活動を進めています。
本事業においては、技術標準や国際展開の調整、他のBASC会員企業への情報共有等を通じて当共同事業体をサポートする予定です。
*2 7つの課題について:①持続的な資源・製錬の確保、②電池設備産業の構造変革、③電池・部素材・設備製造への積極投資、④中古車の国内還流促進、⑤リサイクル資源の国内還流促進、⑥電池価値向上に向けた情報流通整備、⑦電池人材育成・確保スキームの構築
*3 SIB:Social Innovation Business (社会イノベーション事業)
*4 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。
■国内の蓄電池製造における課題と日立の蓄電池分野におけるケイパビリティ
蓄電池製造は、工程が精密かつ複雑で、高い品質管理が求められます。このため、装置ごとにサプライヤー・仕様が異なると、生産ラインの各装置や建屋間の連係時のすり合わせに多大なコスト・時間を要します。また、案件ごとに材料や生産量などの諸条件が異なることにより、装置や生産ラインの設計のリードタイムや、生産ラインの立ち上げ後にOEE(総合設備効率)*5が安定するまでの調整期間が長期化する傾向にあります。その他、特殊環境構築のための工場の大型化やエネルギー消費の増大など、国内の蓄電池製造の拡大に向けてはさまざまな課題があります。
日立は蓄電池製造に関連する豊富なケイパビリティでこうした課題解決をめざしています。具体的には、インフォマティクスを活用した材料開発*6や、蓄電池製造の異物検査*7、ロールプレス*8、ドライクリーンルーム*9といったミッションクリティカルなプロダクト・設備、ロボットを活用したラインビルディング*10、製造実行システム(MES)*11、LiBライフサイクルマネジメントソリューションなどのリユース・リサイクル*12を促進するソリューションに至るまで、さまざまなプロダクト・設備、ソリューションとドメインナレッジをOne Hitachiで提供しています。これにより、将来的に成長が見込まれる蓄電池分野におけるバリューチェーン全体の高度化・効率化に貢献していきます。
*5 OEE(Overall Equipment Effectiveness) : 設備の稼働率・性能・品質を掛け合わせた指標で、生産効率を総合的に評価するために用いられる。
*6 株式会社日立ハイテク 日立ハイテクの材料開発ソリューション
*7 株式会社日立ハイテク X線異物解析装置 EA8000A
*8 株式会社日立パワーソリューションズ ロールプレス設備
*9 株式会社日立プラントサービス ドライクリーンルーム
*10 日立のロボットを活用したラインビルディング ファクトリーオートメーション
*11 日立の製造実行システムMES
*12 株式会社日立ハイテク リチウムイオン電池向けソリューション
Swiftfab Energy Systems株式会社の概要

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事業名 |
Swiftfab(スイフトファブ、swift「素早い」+fabrication「製造」からの造語) |
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事業主体 |
Swiftfab Energy Systems株式会社(仮称) |
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設立時期 |
2026年4月(予定) |
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所在地 |
東京都港区(予定) |
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共同出資者 (予定) |
BASC会員企業9社 (株式会社西部技研、コマツNTC株式会社、株式会社東伸、株式会社豊電子工業、平田機工株式会社、株式会社日立製作所、株式会社リコー(リコーエレメックス株式会社)、株式会社ジェイテクト、株式会社大気社) |
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事業内容 |
蓄電池*13製造装置・ラインの開発・設計・販売・運用支援 |
*13 自動車用・定置用リチウムイオン電池/次世代電池
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所
水環境ソリューションに関するお問い合わせ:水環境ソリューション:日立
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