視力を失い、子どもまで差し出さなければならない。危機が続くアフガニスタンで父親が直面する苦悩とは
一人ひとりに寄り添う活動を続けるNGOに戦争によって日常を奪われてしまった男性が話した実話。必要な人に、必要な支援を続けます。
アフガニスタンを通る有名なシルクロード沿いに育ったメヘルさんは、教育を受ける機会がないまま農民となり、自分たちの畑のほか、他の家の畑仕事も手伝って家族を養っていました。
「人生に大きな不満もなく、私の生活は平凡でも幸せでした」と当時を振り返るメヘルさんは話します。しかし、ほどなくしてメヘルさんの日常は、国の状況悪化の影響を受けるようになりました。
アフガニスタンは、もはや報道されることはなくなりましたが、今も危機に瀕しています。
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、アフガニスタンでは、米軍が撤退した2021年8月以降、人道支援を必要とする人が前年の3倍に増加するなど深刻な人道危機が続いており、現在では人口の60%以上にあたる2,830万人以上¹が命をつなぐ支援を必要としています。国の経済は崩壊し、現金が手に入らず、メヘルさんのような家族の困窮状態はかなり深刻です。
1996年から始まった最初のタリバン政権時代、メヘルさんは戦闘で負傷し、片目を失いました。「それでも生活はできていたんです。ひどい怪我をして片目を失っても、なんとか家族を養っていました」とメヘルさんは続けます。しかし、最近の戦争でメヘルさんはもう片方の目の視力を失ってしまいました。
「私の世界は真っ暗になりました。それからは不幸の連続です」とメヘルさんは話します。
怪我が回復したのち、メヘルさんは住む家を追われました。メヘルさんたちは、カブールの小さな集落に移り住みましたが、そこでは冬の厳しい寒さから身を守ることもできず、環境も不衛生でした。
メヘルさんは、怪我の治療やほかの健康上の問題のために、かなりの医療債務を抱えることになりました。この借金が、メヘルさん一家をさらに苦しめます。家を追われ、視力を失った父親が家族を養う術はなく、メヘルさんの妻は仕事を掛け持ちしていましたが、借金取りが毎日来て、大声で返済を迫る日々が続きます。
新型コロナウイルスによって息子を1人失ったにもかかわらず、もう一人の息子も、出稼ぎのために海外に送らざるを得なくなり、連絡が取れなくなりました。そして、生きるために最悪の手段とはわかっていながらも、「ほかに選択肢がなかった」と幼い娘を、返済の代わりに差し出す申し出さえしました。医師からは、片方の目の視力は、手術で回復する見込みがあると説明がありましたが、費用の問題から検討の余地はありませんでした。
家族を守ってきた父親が、10代の息子を手放し、幼い娘を差し出すつらい決断を強いられ、人生を変える手術をあきらめなければならない。これがアフガニスタンで起きている現実です。
最も弱い立場の人を、もっと弱い立場に追いやるもの。それが戦争であり、自然災害やその他の人道危機です。ADRAは、そのような人々に寄り添う支援を続けていきます。
アフガニスタンでの活動について
ADRAは、皆さまからの温かいご支援のもと、メヘルさんのように辛い思いをしている方々に寄り添い、少しでも状況を改善できるようにアフガニスタンでの活動を続けています。
2023年3月31日からは、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(東京都千代田区)の助成を受け、アフガニスタン・バーミヤン県バーミヤン地区の最も弱い立場にある247世帯に3か月分の食料や衛生用品の配付をはじめ、水をろ過する方法や、適切な食料の保存方法を伝え、厳しい状況の中でも人々が大切な命をつなげるようにサポートしています。4月7日からは、同県ヤカウラン地区でも、675世帯を対象に同様の活動をスタートしました。
助成金でカバーできない部分や、メヘルさんのような個別に対応が必要な活動については、皆さまからの温かいご支援が頼りです。引き続き、よろしくお願いいたします。
アフガニスタン事業の詳細・ご寄付のお申込みはこちら
https://www.adrajpn.org/afghanistan2022/
1.reliefweb https://reliefweb.int/report/world/global-humanitarian-overview-2023-enaresfr
■■■認定NPO法人 アドラ・ジャパンについて■■■
アドラ・ジャパン(ADRA Japan)は、世界中約120ヶ国に支部を持つ世界最大規模の国際NGO、ADRAの日本支部です。各国ADRA支部や国連等のパートナー団体と連携し、「ひとつの命から世界を変える」をモットーに人種・宗教・政治の区別なく、紛争や自然災害の被災地また途上国において、一人ひとりに寄り添い、自立を助ける支援に取り組んでいます。
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