アートを通じた対話で高齢者のQOL向上に寄与する可能性を示唆 ベネッセ シニア・介護研究所、有料老人ホームでの「おしゃべりART鑑賞」の研究成果を国際老年学会で発表

株式会社ベネッセスタイルケアグループ

 株式会社ベネッセスタイルケアグループ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長CEO:小林 仁)のグループ会社である株式会社ベネッセスタイルケア(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:滝山 真也、以下「ベネッセスタイルケア」)は、ベネッセアートサイト直島(Benesse Art Site Naoshima、以下「BASN」)が展開するBASN対話型鑑賞をもとに開発した対話型鑑賞プログラム「おしゃべりART鑑賞」の効果を検証し、参加者同士の対話促進やQOL(Quality of Life:生活の質)向上につながる可能性を確認しました。この研究成果は、2026年7月5日から8日にオランダ・アムステルダムで開催された国際老年学会(23rd IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics)で、ベネッセスタイルケアの社内シンクタンクである「ベネッセ シニア・介護研究所」が発表しました。

 介護現場では、職員からご入居者様へ声をかけて会話が始まる場面が多くみられます。一方で、ご入居者様同士の自然な交流や、その方自身の思いや価値観を引き出す機会を創出することは、個別性の高いケアの実現に向けた重要な課題の一つです。

 ベネッセスタイルケアが運営する有料老人ホームでは、ご入居者様一人ひとりのQOLの向上を目指し、アートを活用した新たな対話のあり方を検討するとともに、作品展などさまざまな活動を行っています。制作活動に加え、お身体の状態などの理由から制作活動への参加が難しい方も含め、より多くのご入居者様がアートを楽しめる機会として、「見ること」と「話すこと」を中心とした対話型鑑賞「おしゃべりART鑑賞」にも取り組んでおり、東京や神奈川の複数のホームや作品展の会場でも実施しています。その実践の中で、ご入居者様が自ら話し始めたり、職員がこれまで聞いたことのない思いや経験が語られたりする場面が見られたことから、どのような経験が生まれ、日々の生活やQOLとどう関係するのかを明らかにするため、今回の研究を行いました。

「おしゃべりART鑑賞」のプログラム概要

 本プログラムは、高齢者の方が誰でも参加しやすいように開発した対話型鑑賞プログラムです。参加者は、はがきサイズのアートカードから気分や好みに合う1枚を選んで理由を話した後、大きな作品を見て、気づいたことや感じたことを自由に語り合います。ファシリテーターは「どこからそう思いましたか」などBASN対話型鑑賞のメソッドに沿った問いかけを通じて、作品に関する知識や正解ではなく、その方のまなざしや価値観を基にした対話を展開する点が特徴です(図1)。

国際老年学会(23rd IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics)について

 国際老年学会は老年学・老年医学の分野を代表する国際学会の1つで、4年に1回開催されます。今回は79か国から3,200人を超える参加があり、250以上の発表セッションで活発な議論が行われました。

【本研究内容について】

検証の概要

 ・実施場所:ベネッセスタイルケアが運営する有料老人ホームのうちのあるホーム

 ・参加者・年齢:ご入居者様5名・82〜93歳(平均89.0歳)

 ・実施期間・頻度・回数:2025年11月〜2026年2月・1か月に1度・全4回(各回1時間)

 ・実施内容:毎回2~3点のアート作品(絵画、写真、もしくは立体作品の写真)を1つずつ見ながら自由に発言

 ・記録方法:同意取得の上、ビデオカメラで記録

 ・分析方法:発話内容・発話時間の書き起こしの各回比較、セッション開始時・終了後のフェイススケール(6段階)、検証期間前後のWHO-5(本人評価)及びshort QOL-D(職員による評価)、参加者のアンケートコメントの前後比較

検証の結果参加者同士の発話の割合が増加、QOLが向上

 ・参加者の「まなざし」が作品そのものの観察から、自身の記憶や経験、価値観、未来への想像へと広がる様子が見られ、多くの参加者で気分の向上が記述的に認められた。

・回を重ねるにつれて参加者同士の発話の割合が有意に増加した(図2)。

 ・QOLについて、short QOL-Dで有意な向上、WHO-5では向上傾向が見られた(図3)。

 ・「他の入居者と話すことを楽しめた」ことへの言及や、「気持ちが豊かになった」という声もあった。

考察

 ・「おしゃべりART鑑賞」は参加者一人ひとりに寄りそった問いと、語りを引き出す場となっている。

 ・ファシリテーターの「どこからそう思いましたか?」という問いかけは、参加者が作品のどの部分に注目し、何を感じたのかを言葉にすることを促した。その結果、参加者同士が互いの見方や考え方に耳を傾けながら対話を重ね、新たな気づきや理解が生まれ、対話がより深く豊かなものになっていくことが示唆された(図4)。

 ・近代美術では自身の経験や価値観という内省的な語りが多く、現代美術では鑑賞から生まれた「問い」から作品や自身以外へと向かう対話となる傾向が見られた。この違いは気分やQOLの向上とも関連する可能性があると考える。

 この「おしゃべりART鑑賞」は、アート制作への参加が難しい方を含むご入居者様に、自己表現や人とのつながりを生み出す機会を提供します。また、その方の経験や価値観などを知る機会にもなり、個別性の高いケアにつながる可能性があります。

 今後、ベネッセスタイルケアでは、より多くのご入居者様を対象に検証を重ね、得られた知見を実践へ還元しながら、「おしゃべりART鑑賞」をより良いものへと発展させていきます。あわせて、活動の価値や効果を検証し発信することで、「その方らしさに、深く寄りそう。」を実現する取り組みを推進してまいります。

株式会社ベネッセスタイルケア ベネッセ シニア・介護研究所

https://www.benesse-style-care.co.jp/lab/

<ベネッセスタイルケアグループについて>

 ベネッセスタイルケアグループでは、ベネッセの不変の企業哲学「Benesse(=よく生きる)」のもと、30年以上にわたり、入居・在宅介護事業、保育・学童事業を通じて、お一人おひとりの「よく生きる」の実現に取り組んでいます。急速に進む少子高齢化と介護人材不足などの介護・保育を取り巻く環境の大きな変化の中でも、誰もが人生の節目を楽しみながら、自分らしく豊かに生きられる世界を実現できるよう、介護・保育領域の持続可能性の維持・向上に向け、今まで以上に積極的に挑戦を続けていきます。持続可能な介護・保育事業の推進のほか、介護食事業/介護HR事業/紹介事業/介護・育児と仕事との両立支援事業等、社会課題の解決に向けた取り組みを一層加速させていきます。

(ベネッセスタイルケアグループ企業サイト https://benesse-scg.co.jp/

【参考】

図1:「おしゃべりART鑑賞」プログラム一例(約1時間)の概要

図2:各参加者の発話時間の変化(参加者同士の発話の割合は有意に増加)
図3:各参加者のQOLの変化(向上傾向)
図4:対話を通じて意味や自己理解が生まれる仕組み

発表演題に関する情報

・Ryoko Fukuda, Io Kato: Oshaberi ART Viewing: A Dialogue-Based Art Viewing Program in Long-Term Care — A Quantitative Pilot Study of Mood and QOL Outcomes

・Io Kato, Ryoko Fukuda: Oshaberi ART Viewing: A Dialogue-Based Art Viewing Program in Long-Term Care — A Qualitative Pilot Study of Meaning-Making Processes

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会社概要

URL
https://benesse-scg.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都新宿区西新宿2-3-1新宿モノリスビル
電話番号
-
代表者名
小林仁
上場
未上場
資本金
-
設立
2025年01月