自殺で親を亡くした子ども(自死遺児)への支援プロジェクトから生まれた絵本『さよならなんかしない』刊行

株式会社童心社(東京都文京区 代表取締役・後藤修平)は、子どもに向けたグリーフケアの絵本『さよならなんかしない』を11月12日に刊行します。

株式会社 童心社

●自殺で親を亡くした子ども(自死遺児)への支援プロジェクトから生まれた絵本『さよならなんかしない』あらすじ

『さよならなんかしない』(佐藤まどか・森山花鈴/文 高橋和枝/絵 自死遺児支援プロジェクト /企画)

佐藤まどか・森山花鈴/文 高橋和枝/絵

自死遺児支援プロジェクト /企画

3学期が始まったばかりの昼休み、先生がぼくを職員室に呼んだ。

先生は、ぼくのことをまっすぐ見ながら、こう言った。

「あのな、びっくりせんと聞いてくれるかな? お母さんから電話があってな、お父さんがたおれたから、帰してくださいって」

『さよならなんかしない』(佐藤まどか・森山花鈴/文 高橋和枝/絵 自死遺児支援プロジェクト /企画)本文より

お父さんを亡くした小学5年生のユウ。まだだれからも、お父さんがどうして死んだか、教えてもらっていません。

みんな、ぼくのことどう思ってるんやろ。

「お父さんが死んでかわいそう」と、思われてるかもしれへん。

かわいそうな顔したほうがいいんか、なんともない顔したほうがいいんか、わからんかった。

笑ってたら「お父さん死んだのに笑ってるやん」と思われるんちゃうかな。

ある日、夜ごはんのあと、お母さんに聞かれます。

「ユウ、学校の相談室に行かへん?」

つぎの週、ユウが相談室に行ってみると……。

カウンセラーさんの前で、内側に押さえ込んできた気持ちがふっと緩みます。

『さよならなんかしない』(佐藤まどか・森山花鈴/文 高橋和枝/絵 自死遺児支援プロジェクト /企画)本文より

————「泣くのをがまんしてたらな、胸がめっちゃ痛くなるって 知らんかった」

自死により父を亡くした〈ぼく〉の心の物語。

深いかなしみに寄りそうグリーフケアの絵本。

自死遺児だけでなく、親、教師、カウンセラー、友だちにも読んでもらいたい1冊です。

『さよならなんかしない』(佐藤まどか・森山花鈴/文 高橋和枝/絵 自死遺児支援プロジェクト /企画)本文より

グリーフ(grief) とは……死別等によって、大切な誰かを失って感じる哀しみや傷つき、そしてさまざまな心身の反応のことをいいます。「喪失による悲嘆」などと訳されます。

●日本ではじめて「自死遺児」を主人公につくられたグリーフケアの絵本

自死遺児とは、親を自殺で亡くした子どものことです。正確な統計はありませんが、平均的な数値に基づいて推計を行った2008年の研究(*1)では、日本における自死遺族はおよそ300万人、自死遺児はおよそ9万人存在するとされています。

本作は、そんな子どもたちのために、自死遺児だった当事者や、自死遺族支援に携わる実務家・研究者が中心となり企画されました。

日本において、10代の子どもたちの自殺が深刻な社会問題となっています。2024年の小中高生の自殺者は529人で、過去最多となりました。学校現場でも自殺予防教育が進められてきていますが、教育を受ける子どもたちの中には、自殺を考える子どもたちもいれば、親が自殺している子どもたちもいます。自死遺児やその家族への接し方がわからずに悩む現場の教育者・支援者たちも多くいます。にもかかわらず、これまでに子どもに向けて書かれた「自死遺児」を主人公にした絵本は、1冊もありませんでした。

そこで、研究者や当事者へのインタビューなども重ね、子どもが安心して読める内容で、支援者や周りの人にも活用してもらえる絵本が企画されたのです。

本作では、子どもたちに向けて「自分を決して責めないでほしい」というメッセージを伝えています。

スクールカウンセラーとの会話を通して、徐々に心を開いていく主人公のユウの姿から、安心できる場所と相談できる人がいる大切さを描いています。また、大人に向けては、子どもに事実をきちんと伝えることが大切であり、子どもの権利に応える大人の義務を説いています。

本作が、当事者の方への、悲しみや喪失感に寄り添う手助け=グリーフケアに繋がることを祈っています。

本作が刊行される11月は、子どもの権利を考える「子どもの権利月間」で、「子どもの権利条約」が国連で制定された11月20日は、「世界子どもの日」として、世界各地で子どもに関わる様々な催しが開かれています。また、2023年より、11月23日が「グリーフを考える日」に制定されました。本作を通して、「子どもの権利」や「グリーフ」について、考えるきっかけになることを願っています。

(*1)森浩太・陳國梁・崔允禎・澤田康幸・菅野早紀(2008)「日本における自死遺族数の推計」 https://www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/2008/2008cj207ab.html

●自死遺児支援プロジェクトとして――制作関係者について

本作の文章を手がけられたのは、佐藤まどかさんと森山花鈴さんです。

佐藤まどかさん

佐藤まどかさんは、幼少期に家族を自死で亡くした経験から、2001年より自死遺族支援を始め、保護者や支援者向けの研修などを行い、自殺対策懇話会委員も務められています。現在は、スクールソーシャルワーカーとして、学校現場で子どもたちへの支援も行っています。本作が初めての著作になります。

森山花鈴さん

南山大学社会倫理研究所准教授の森山花鈴さんは、自殺対策の研究者です。大学院在籍中から内閣府自殺対策推進室、国立精神・神経医療研究センター等で勤務されていました。本作では巻末の解説も執筆されています。

絵を担当されたのは、絵本作家の高橋和枝さん。あたたかなタッチで、主人公・ユウの気持ちの変化を丁寧に描かれました。挿画を担当された『さよならのあとで』(ヘンリー・スコット・ホランド 詩/夏葉社)は、グリーフケアの本として評価が高い作品です。

≪自死遺族支援プロジェクトのメンバー≫(五十音順)

佐藤まどか 特定非営利活動法人グリーフサポート・リヴ 代表理事
辻本耐   南山大学社会倫理研究所 プロジェクト研究員
都築章子  特定非営利活動法人海の自然史研究所 研究員
徳永和美  特定非営利活動法人グリーフサポート・リヴ 副代表理事
樋口麻里  北海道大学大学院文学研究院 教授
森下圭子  翻訳家、ムーミン研究家
森山花鈴  南山大学社会倫理研究所 准教授

●いのちを守るために ――著者の言葉

本作の企画意図のひとつに、「自死についての差別、偏見をなくしたい」ということもあります。以下の著者の言葉にも、その思いが込められています。

「自殺は、いのちを粗末にしたわけではなく、生きることがしんどくなってしまった末に起こる死です。

いのちを大切にできなくなったから亡くなったのではありません。

子どもたちはすでに様々な情報に触れています。

『いのちを守る』ためには、正しい知識が必要です。

この絵本を手に取ってくださったことも、とても大切なご縁です。

ユウの物語が皆さんの心の中に、少しでも広がっていくことを願っています」

(森山花鈴/本書「解説」より)

 

●書誌情報

書名:さよならなんかしない

佐藤まどか・森山花鈴 文/高橋和枝 絵/自死遺児支援プロジェクト 企画

定価1,870円 (本体1,700円+税10%)

発売:2025年11月12日

判型:B5変型判/サイズ:20.6×18.8cm

頁数:65頁

ISBN:978-4-494-02342-4

NDC:913

童心社HP:https://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494023424

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会社概要

株式会社 童心社

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URL
https://www.doshinsha.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都文京区千石4-6-6
電話番号
03-5976-4181
代表者名
後藤修平
上場
未上場
資本金
1600万円
設立
1957年03月