「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」を発表 「ウェルビーイング」認知度は2年で倍増の27.1%に 一方、就業者の幸福感は男女ともに微減傾向

親の「幸せに働く姿」が、子の労働観やキャリア観の形成に影響

株式会社パーソル総合研究所

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)は、「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」の結果を発表いたします。

本調査では、「ウェルビーイング」という言葉の認知度は2023年からの2年間で倍増しました。これに対し、働く人の幸福感は男女ともに微減傾向にあり、不幸だと感じている人はほぼ横ばいでした。また、今回は新たに次世代の労働観を把握するため、学生に親の「働く姿」についても尋ねたところ、36.2%が「幸せそうだ」と回答したのに対し、23.3%は「幸せそうではない」と回答。親の働く姿が家庭生活を通じて子どもの労働観に影響することも示唆されました。

本調査は2020年から継続して実施しており、今回で4回目となります。就業者の“職業生活ウェルビーイング※”の認識と実態(経年変化)を把握するとともに、その要因を明らかにし、継続的な維持・向上のためのポイントを提示することを目的としています。

※職業生活ウェルビーイング:自分の仕事に満足し、はたらく事を通じて、社会とのつながりや貢献喜びや楽しみを感じることが多く、怒りや悲しみといった嫌な感情をあまり感じずにいる状態。また、そのような仕事や働き方を自分で決めることができている状態。

■ 「ウェルビーイング」認知度が2年で倍増、27.1%に到達した。直近の認知度は、「エンゲージメント」(24.6%)を上回っており、ビジネスパーソンの間で一定程度定着が進んでいる。

■ 本調査における、はたらく事を通じて感じる幸福感や不幸感の要因は、それぞれ7つの因子で構成され以下のように定義。7つの因子の状態を良好に保つことによって、職業生活ウェルビーイングを高めることができる。

<原著論文>「職業生活における主観的幸福感因子尺度/主観的不幸感因子尺度の開発」(Inoue.et,al.,日本感情心理学会、2022,12)

■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください

<認知とイメージ>

1. 「ウェルビーイング」認知度が2年で倍増、27.1%に到達。また、仕事におけるウェルビーイングに対する実際のイメージは“自然体”であり、エンゲージメントのような『ガツガツ』『仕事中心』とは異なる特徴が浮かび上がった。

<就業者の実態>

2. はたらく「幸せ」実感は低下傾向、「不幸せ」は横ばい。

3. はたらく幸せ/不幸せ実感の7因子スコアで見ると、はたらく幸せ因子は「役割認識因子」(自分なりの役割を能動的に担っている実感が得られている)を除いて全般的に低下傾向にあり、不幸せ因子は「評価不満因子」(正当に評価されないと感じている)を除いて全般的にほぼ横ばい。

<次世代(学生)への影響>

4. 学生(高校生・大学生ら)の「はたらく」事へのイメージは経済的要因が中心。「自由に使えるお金」「生活のかて」「趣味や欲しいもののため」が上位にあがった。

5. 学生に対し、親のはたらく姿(働いていて幸せそうに見えるか)について印象を確認した。全体の36.2%は「幸せそうだ」と回答したものの、23.3%は「幸せそうではない」と回答。

6. 親のはたらく姿が子どもの労働観に影響。親のはたらく姿が「幸せそうに見える」学生ほど、はたらく事へのポジティブなイメージを持っており、「幸せそうに見えない」学生ほどネガティブなイメージを持っていた。 

<ウェルビーイングを左右する要因>

7. フォーカシング・イリュージョン(焦点化錯覚):就業者の26.8%は「はたらく幸せ/不幸せの7因子」の中で「リフレッシュ因子」が最も重要だと回答。この群は他因子を低く評価し、リフレッシュ因子を過大評価する傾向が確認された。 

8. 幸せを感じる体験がウェルビーイングの出発点:就業者が仕事の中で「幸せを感じる体験」を得ることが、ウェルビーイングの好循環を生む起点となることが確認された。「はたらく幸せ実感」が価値観を育み、自己理解や行動を促し、再び幸せを高める流れにつながっている。

9. ウェルビーイング・トランジション(ウェルビーイングを左右する要因が時とともに移り変わること):幸せの要因はライフステージで変化。これまでの人生において、はたらく幸せ/不幸せの要因が大きく変わったことがあるかを聞いたところ、「大きく変わったことがある」と回答した人は24.4%だった。加齢や経験、人生における大きな出来事が契機になる傾向。


■主なトピックス(詳細)

<認知とイメージ>

1. ウェルビーイングの認知度(経年変化):「ウェルビーイング」という用語の認知度を有職者に確認したところ、27.1%が「意味を知っている」と回答した。2023年同時期の認知度(15.9%)と比較して、11.2%増加している。また、「聞いたことがない」割合も48.1%と半数を下回る。なお、直近の認知度は、「エンゲージメント」(24.6%)を上回っており、ビジネスパーソンの間で一定程度定着が進んでいる。

ウェルビーイングとエンゲージメントのイメージ比較:はたらく上での「ウェルビーイング」と近似する概念として「エンゲージメント」と比較した。結果、エンゲージメントもウェルビーイングも仕事に対して「意欲的」で「継続的」で「真面目な」イメージが共通していた。しかし、ウェルビーイングには、「ゆったり」、「健康的」「ほっとした」「私生活中心」「ゆるい」「余裕がある」といった、心身の安定や自然体を想起させるイメージが特徴的であった。これに対し、エンゲージメントは「ガツガツ」「ドキドキ」「仕事中心」「厳しい」「忙しい」といった、仕事への強い集中や緊張感を伴うイメージが強く表れていた。
すなわち、両者はともに前向きな仕事への姿勢を示しながらも、ウェルビーイングは「バランスと余裕」、エンゲージメントは「力強さと負荷感」という対照的な側面を持つことが明らかになった。

<就業者の実態>

2. はたらく幸せ/不幸せ実感の経年比較(2020年~2025年):はたらく事を通じた主観的な実感として、幸福感/不幸感(単項目)について就業者に確認した。2020年時点と比較すると、幸福感を得ている人の割合は(40.8%)と3.1pt減少し、不幸感は(22.5%)と2.3pt増加していた。また、「幸せを感じない」と回答した割合も増加傾向にある。これらの事から、仕事を通じた主観的な幸福感/不幸感は、やや悪化傾向にあることがうかがわれる。

3. はたらく幸せ/不幸せ因子の経年変化(2020年~2025年): はたらく幸せ/不幸せ実感の主たる要因となる、7つの因子スコアについて経年比較を行った。その結果、はたらく幸せ因子は「役割認識因子」を除いて全般的に低下傾向にあり、不幸せ因子は「評価不満因子」を除いて全般的に低下していた。不幸せ因子の一部で改善傾向が見られるものの、はたらく幸せ実感および各因子の低下は、ワーク・エンゲージメントの低下を招くリスクをはらんでおり、注意が必要である。*はたらく幸せ実感は、ワーク・エンゲージメントの先行要因となる(2020年調査結果より)。

<次世代(学生)への影響>

4. 学生のはたらく事へのイメージ:学生に対し、はたらく事に関連付けられる複数の言葉(ポジティブ/ネガティブ)を提示し、はたらく事のイメージを確認した。学生は、「自由に使えるお金」「趣味や欲しいもののため」といった経済的側面が上位となり、「忙しい」「人間関係が大変」といったネガティブな懸念も上位に上がる。また、「成長」「人との出会い」といったポジティブな期待感もあがり、経済的充足を求めるリアリズムと共に期待と不安が入り混じっていることが分かる。

5. 親のはたらく姿:学生(高校生~大学院生)に対し、親のはたらく姿(働いていて幸せそうに見えるか)について印象を確認した。全体の36.2%は「幸せそうだ」と回答したものの、23.3%は「幸せそうではない」と回答した。この傾向は、就業者自身が感じている主観的幸福感(40.8%)と近似しており、親世代の働き方や職業生活実態が、家庭生活を通じて子どもにも伝わっている可能性が示唆される。

6. 親のはたらく姿と子どものはたらくイメージの関係:親のはたらく姿に対する子ども(学生)の印象と、学生のはたらくイメージ【ポジティブ/ネガティブ項目】との関連を分析した。結果、親が「幸せそうに見える」学生ほど、はたらく事へのポジティブなイメージを持っており、「幸せそうに見えない」学生ほどネガティブなイメージを持っていた。本分析は相関であり因果関係ではないものの、中でも「楽しい」は35.2ポイントの差が生じており、家庭内での親(就業者)の働く姿の印象が、子どもの労働観やキャリア観の形成に影響する可能性が示唆される。

7. フォーカシング・イリュージョン(焦点化錯覚)※:就業者の相対的な重視度では「リフレッシュ因子」は3位となった。しかし、順位づけで「リフレッシュ因子」を1位に挙げた人は最も多かった。リフレッシュ因子を1位に挙げる人は、フォーカシング・イリュージョンが生じている可能性がある。実際、リフレッシュ因子重視の人が次に重視するのは「オーバーワーク因子」であり、それ以外の因子は全体平均よりも低く位置づけられる。影響度が高いにもかかわらず、「他者貢献因子」や「自己成長因子」、「自己抑圧因子」などに意識が向いていない傾向がある。リフレッシュ因子はウェルビーイングにとって重要だが、他の因子とのバランスも必要だ。日々、仕事に追い立てられないよう段取りし、過小評価しがちな他者貢献や自身の好奇心を満たすことなどにも目を向けることが重要である。

※何かの判断を行う時、自分が注目する要因の影響力を過大評価する傾向

8. 幸せを感じる体験がウェルビーイングの出発点:ウェルビーイングであることを求め能動的に行動することを「ウェルビーイング・クラフティング」と称し、職業生活におけるウェルビーイング・クラフティングを促進するメカニズムを検証した。結果、図のように、①直近の「はたらく幸せ実感」を起点として、②「はたらく幸せを重視する価値観」が醸成され、③「自分のはたらく幸せの理解」が深まる。価値観醸成、幸せの源泉の理解が深まることで④「幸せにはたらくための工夫(クラフティング)」が促進され、その結果更なる①「はたらく幸せ実感」が獲得される。すなわち、持続的な職業生活ウェルビーイングの実現には、日常の仕事の中で実際にはたらく幸せを実感することが重要となる。

9. ウェルビーイング・トランジション(ウェルビーイングを左右する要因が時とともに移り変わること):就業者に対し、これまでの職業生活において幸せに感じる事柄(要因)の変化を自覚したことがあるかを尋ねた。その結果、「大きく変わったことがある」と答えた人は24.4%、「変わったことはない」は56.3%であった。性別では大きな差は見られなかった一方で、年代別では30代以上で「変化した」と答える割合が増加する傾向が見られた。ライフステージの移行や経験の蓄積により、ウェルビーイング・トランジションが生じる可能性がある。

はたらく事を通じて幸せだと感じやすくなったことについて、その変化が生じた年齢と7つの因子の観点で確認した。

その結果、20代・30代で「リフレッシュ因子」をあげる割合が顕著に多く、次いで「自己成長因子」や「役割認識因子」「チームワーク因子」があがった。60代では、「役割認識因子」「チームワーク因子」「他者承認因子」といった集団への所属と貢献をあげる傾向が確認された。

はたらく事を通じて不幸せだと感じやすくなったことについて、その変化が生じた年齢と7つの因子の観点で確認した。

その結果、20代・30代では「オーバーワーク因子」をあげる割合が多く、次いで「評価不満因子」や「理不尽因子」などがあがった。「評価不満因子」は40代以降でも上位にあがるが、50代では「疎外感因子」も同列で上位にあがる。60代は、「評価不満因子」や「自己抑圧因子」といった能力発揮機会と評価に意識が向く傾向が見られる。

■調査結果からの提言

今回の調査では、就業者のウェルビーイング実態(経年比較)を確認するとともに、個々人で異なるウェルビーイングの源泉(要因)について分析を行った。その結果、就業者が職業生活をより良い状態で過ごすための複数のポイントが確認された。

1.はたらく親のウェルビーイングは、次世代の労働観形成に影響を与える

今日の学生が抱く「はたらく事」のイメージでは、「自由になるお金を得る」、「趣味や欲しいものを買う」、「生活のかて」といった経済的側面が中心である一方、「夢や目標実現」「社会貢献」「成長」といった前向きな要素や、「世間体のため」、「忙しい」、「人間関係が大変」といった消極的な要素も半数程度にみられた。また、本調査では、親の働く姿が子どもの労働観に影響を与えることが示唆された。企業が、就業者(親世代)のウェルビーイング向上に取り組むことは、回避的な労働観の連鎖を断ち、子どもの「働くことへの希望」を育む社会的意義を持つ。

2.自分のウェルビーイングにとって大切な要素を理解するのは大事だが、過大評価に注意

職業生活においてより良い状態を自ら作り出す姿勢は大切である。しかし、何を重視すべきかを適切に理解できている人は多くはない。本調査では、仕事を離れて「リフレッシュ」する事が最重要だと考える人の割合が多かったが、フォーカシング・イリュージョン(焦点化幻想)により実際以上に過大評価している可能性が示唆された。リフレッシュすることを疎かにしてはいけないが、それだけでは得難い喜びや楽しみもある。まずは、当人が仕事を通じて自身の成長や役割を自覚する喜び、他者貢献することで得られる喜びなどを、実体験を通じて味わうことが重要だ。仕事を通じた良質な体験は、人生を豊かにし得る“職業生活ウェルビーイング”を拡張する。

 

3.ウェルビーイングの源泉には個人差があり、かつ、時とともにトランジション(変化)する

一人ひとりのウェルビーイングの源泉(影響度の強い要素)は異なり、人生の出来事やライフステージ、加齢や経験の蓄積によって変化する。そのため、現在の自分が置かれている状態と重視すべき要素は、定期的に振り返ることが有効だ。

その際、フォーカシング・イリュージョン(焦点化幻想)の懸念を意識しつつ、自分にとって重要視すべき要素を適切に自覚することができれば、“職業生活ウェルビーイング”を改善・維持・向上するための行動を起こすことができる。

本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。

●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。

 URL: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/worker-well-being/

●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

■調査概要

■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。

■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。

人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。

はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。

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会社概要

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業種
情報通信
本社所在地
東京都江東区豊洲三丁目2番20号 豊洲フロント7階
電話番号
-
代表者名
岩田 亮
上場
未上場
資本金
1億円
設立
1989年09月