〈中小企業のESG経営に関する実態調査 第1弾〉ESG経営を「知っている」中小企業のうちが「取り組んでいる」のは約3割という結果ESG経営を明確に理解している企業は1割にも満たないことが判明
取り組めていない理由のトップは「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」
Green(グリーン)とDigital(デジタル)を活用した中小企業の変革を目指すフォーバル GDXリサーチ研究所(本社:東京都渋谷区、所長:平良学)は、全国の中小企業経営者1,077人に「中小企業経営に関する実態調査 」を実施しました。
近年、ESG経営という言葉を耳にする機会が増えたと思われる方も多いのではないでしょうか。
ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス/企業統治)の頭文字を取ったもので、ESG経営とはこれらに配慮した経営を意味します。今や企業経営に欠かせない経営指標のひとつとして、投資家や金融機関、また企業経営者などから注目されている「ESG経営」。今回は、中小企業経営におけるESG経営に関する認知度や取り組み状況について調査を実施しました。
【調査結果サマリー】
①中小企業においてESG経営の認知状況は約3割が「知っている」と回答
しかし、他社に説明できるほど明確に理解できている経営者は1割未満という結果
重要性が日々高まっているものの、まだ知らない経営者の方が多いという結果に
②実際にESG経営に取り組んでいると回答した中小企業は3割超え
なかでも半数の企業が「Environment(環境)」分野に注力していると回答
また、ESG経営にまだ取り組めていない企業の「取り組みたいと思っている・取り組む予定である」という回答を合わせると7割超えの企業が取り組む意欲があるという結果に
③もし取り組むなら「 Environment(環境)」分野からと約4割が回答
ESG経営に取り組めていない理由は「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」がトップに
本リリースの調査結果をご利用いただく際は、必ず【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】とご明記ください。
【アンケート概要】
・調査主体 :フォーバル GDXリサーチ研究所
・調査期間 :2024年9月9日~2024年10月11日
・調査対象者:全国の中小企業経営者
・調査方法 :ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
・有効回答数:1,077人
①中小企業においてESG経営の認知状況は約3割が「知っている」と回答
しかし、他社に説明できるほど明確に理解できている経営者は1割未満という結果
重要性が日々高まっているものの、まだ知らない経営者の方が多いという結果に
Q1. あなたは「ESG経営」を知っていますか。(N=1,077)
ESG経営について、「知っており、他の人に説明できる」と回答した人は5.0%、「知っているが、説明できるほどではない」と回答した人が29.2%で、知っている人の合計が34.2%となりました。一方、「聞いたことはあるが、よく知らない」、「知らない」と回答した人は合計65.8%となり、ESG経営の重要性は高まっているものの、まだまだ知らない経営者の多い状況ということが読み取れました。
Q2. Q1でESG経営を「知っており、他の人に説明できる」または、「知っているが、説明できるほどではない」と回答した方に伺います。 貴社では、ESG経営に対する情報をどのように収集していますか。当てはまるものを全てお選びください。(N=368)
ESG経営について知っている人の45.9%が「ニュースやメディアの記事」から情報を収集しているが、「特に情報は収集していない」という回答が23.1%で2番目に多い結果となりました。「その他」と回答した15.8%のなかには、顧問先のコンサルティング会社から情報を受けることが多いということが明らかになりました。このことから、ESG経営を認知している経営者の中には、ESG経営についての情報収集は積極的ではなく、受動的に収集しているケースも少なくないことが読み取れました。
②実際にESG経営に取り組んでいると回答した中小企業は3割超え
なかでも半数の企業が「Environment(環境)」分野に注力していると回答
また、ESG経営にまだ取り組めていない企業の「取り組みたいと思っている・取り組む予定である」という回答を合わせると7割超えの企業が取り組む意欲があるという結果に
Q3.Q1でESG経営を「知っており、他の人に説明できる」または、「知っているが、説明できるほどではない」と回答した方に伺います。 貴社では、ESG経営に取り組んでいますか。(N=368)
ESG経営について知っていて、実際に「取り組んでいる」と31.8%が回答しました。「取り組んでいないが、取り組みたいと思っている・取り組む予定である」と41.6%が回答し、全体の7割以上の企業がESG経営に取り組む意欲があることが明らかになりました。ESG経営に対する関心や意欲が少しずつ高まってきていることが表れている結果となりました。
Q4. Q3でESG経営に「取り組んでいる」と回答した方に伺います。 経営に取り組み始めた理由は何ですか。当てはまるものを全てお選びください。(N=117)
ESG経営に「取り組んでいる」と回答した経営者の49.6%がESG経営に取り組み始めた理由に「社会情勢を受けて」と回答しました。次いで、「持続可能な事業の展開のため」が48.7%、「企業ブランディング向上のため」が41.9%と続きました。ESG経営に取り組む主な理由は、一般的には事業の持続可能性を確保するためと言われていますが、今回の調査結果では「社会情勢を受けて」が「持続可能な事業の展開のため」と近い回答数となりました。この結果から脱炭素社会の実現やガバナンスの強化などのために、自社以外の外部企業からの期待や養成なども影響しているのではないかと考えることができます。
Q5. Q3でESG経営に「取り組んでいる」と回答した方に伺います。
ESG経営の中の「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス/企業統治)のうちどの分野に取り組んでいますか。(N=117)
Q6. Q3でESG経営に「取り組んでいる」と回答した方に伺います。
ESG経営の中の「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス/企業統治)のうち最も注力しているものはどれですか。(N=117)
Q7. Q3でESG経営に「取り組んでいる」と回答した方に伺います。
最も注力していると回答したものについて、その理由として当てはまるものをお選びください。(N=117)
ESG経営に「取り組んでいる」と回答した79.5%の経営者が「Environment(環境)」分野に取り組んでいると回答しました。また、同様に最も注力している分野についても44.4%が「Environment(環境)」と回答し、理由としては「取り組むべきことが分かりやすいため」、「事業との親和性が高いため」の回答が多い結果になりました。「Environment(環境)」については、再生可能エネルギーの導入、環境配慮型のグリーン製品・サービスの開発・導入などの他にペーパーレス化、デスクやオフィス周りのグリーン化など、身近ですぐに始められる取り組みがあることが影響していると言えるでしょう。
また、「Social(社会)」は71.8%が取り組んでいると回答しました。人的資本経営への関心が高まる中、従業員や顧客との関係性を重視する企業が増えてきていることの影響がこの結果に反映されていることが読み取れました。
一方で、「Governance(ガバナンス/企業統治)」は48.7%が取り組んでいると回答しました。他分野よりも取り組みが低いことについては、内部統制や起業に対して経営の透明性や情報開示を求める市場規律の重要性が十分に認識されていない、企業経営全体に関わることであるため、取り組んでいてもその認識がないということも考えられる結果となりました。
Q8. Q3でESG経営に「取り組んでいる」と回答した方に伺います。
ESG経営にいつ頃から取り組みを始めましたか。(N=117)
ESG経営に取り組み始めた時期については、半数以上が「2022年~2024年」と比較的最近という結果になりました。環境意識の高まりや、温室効果ガス削減に向けた企業の取り組みが増えていることに加え、昨今の報道で企業の不祥事問題が相次いで発言され、企業経営におけるESG経営の重要性が問われた影響があるではないかと推察されます。
Q9. Q3でESG経営に「取り組んでいる」と回答した方に伺います。
次はどの分野に注力をしていきたいですか。最も当てはまるものをお選びください。(N=117)
ESG経営に取り組んでいる方が次に取り組みたい分野として、「Governance(ガバナンス/企業統治)」と32.5%が回答し、次いで31.6%が「Social(社会)」と回答しました。また、「すでに全てに取り組んでいる」と12.8%の回答がありました。現状取り組まれている割合の高い「Environment(環境)」は23.1%という結果となりました。
③もし取り組むなら「環境」分野からと約4割が回答
ESG経営に取り組めていない理由は
「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」がトップに
Q10. Q3でESG経営に「取り組んでいないが、取り組みたいと思っている・取り組む予定である」と回答した方に伺います。
現在取り組めていない理由について、ESG経営のそれぞれの分野ごとに当てはまるものを全てお選びください。(N=153)
「Environment(環境)」については、45.8%が「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」と回答し、次いで「何から取り組めばよいか分からないから」と30.1%が回答しました。
「Social(社会)」については、42.5%が「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」と回答し、次いで「何から取り組めばよいか分からないから」と32.7%が回答しました。
「Governance(ガバナンス/企業統治)」については、39.9%が「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」と回答し、次いで「何から取り組めばよいか分からないから」と26.8%が回答しました。
どの分野に関しても、取り組めていない理由は「他に優先すべき課題があり後回しとなっているから」「何から取り組めばよいか分からないから」が半数を占めていることが分かりました。
Q11. Q3でESG経営に「取り組んでいないが、取り組みたいと思っている・取り組む予定である」と回答した方に伺います。
今後取り組みたいと思っている分野として最も当てはまるものをお選びください。(N=153)
Q12. Q11で取り組みたいと回答したものについて、その理由として当てはまるものを全てお選びください。(N=153)
ESG経営に取り組んでいないが、取り組みたいと思っている・取り組む予定であると回答した経営者の40.5%が今後取り組みたいと思っている分野として「Environment(環境)」と回答しました。理由としては、「取り組むべきことが分かりやすいため」が38.5%、「事業との親和性が高いため」が18.2%、次いで「コストがかからない・少なくて済むため」が9.1%という結果となりました。世界的な気候変動対策への取り組みや資源の有効利用といった取り組みが直接的に企業の持続可能性に影響を与えると認識している企業が多いことが伺えます。
【有識者のコメント】中小企業におけるESG経営の現状と展望について
フォーバル GDXリサーチ研究所所長
平良 学(たいら・まなぶ)
■経歴
1992年、株式会社フォーバルに入社。九州支店での赤字経営の立て直し、コンサルティング事業の新規立ち上げ、
全体統括を経て、2022年に新たに発足した中立の独立機関「フォーバル GDXリサーチ研究所」の初代所長に就任。
中小企業経営の実態をまとめた白書「ブルーレポート」の発刊、全国の自治体と連携し、地域の中小企業経営者に向けたDX、GXの講演、中小企業経営者向けのイベントの企画などを通じて、中小企業のGDXを世に発信している。
■コメント
今回は、中小企業のESG経営に関する認知状況と取り組み状況についての調査を行いました。
ESG経営の認知度については、「知っており、他の人に説明できる」と「知っているが、説明できるほどではない」を合わせても3割強に留まり、多くの経営者がESG経営についての認識が不足していました。
また、ESG経営を認知している企業のうち、実際に取り組んでいる企業も3割ほどで、中小企業のESG経営はまだ始まったばかり、と言えるでしょう。逆を言えば、まだ取り組んでいない企業も、これから取り組み始めれば自社の強みに繋がる可能性も多いにあります。
ESG経営は中長期的な企業価値の向上や持続可能な経営の基盤となる重要な経営手法です。まずは、取り組みやすい分野や施策から第一歩を踏み出す中小企業が少しでも増えることを期待します。
■フォーバル GDXリサーチ研究所とは
日本に存在する法人の99%以上を占める中小企業。この中小企業1社1社が成長することこそが日本の活力につながります。中小企業が成長するための原動力の1つにGreen(グリーン)とDigital(デジタル)を活用し企業そのものを変革するGDX(Green Digital transformation)があります。
フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業のGDXに関する実態を調査し、各種レポートや論文、報告書などをまとめ、世に発信するための研究機関です。「中小企業のGDXにおける現状や実態を調査し、世に発信する」をミッションに「中小企業のGDXにおいてなくてはならない存在」を目指し活動していきます。
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