「旅人たちと巡る、世界の“認知症” 」第2弾【イギリス編】を開催しました!
今回のイギリス編ではスローショッピング創設者であるKatherine Vero(キャサリン・ベロ)氏をスペシャルゲストとしてお迎え。本イベントへの申し込みは100名を超えました。
6月29日(日)に、世界8カ国でのクラウドファンディングのスタートを記念したオンライントークイベント「旅人たちと巡る、世界の“認知症” 」の第2回目が開催されました。
今回はイギリス編ということで、スローショッピング創設者であるKatherine Vero(キャサリン・ベロ)氏をスペシャルゲストとしてお呼びしました。
※スローショッピングとは、認知症のある方をはじめ、認知機能や身体に不安を抱えている人でも安心して買い物ができる空間を目指す取り組みです。
※前回の欧米編のレポートはこちらから。
※ issue+designは、認知症とともに幸せに生きるヒントを届けるため『認知症世界の歩き方』の実写映画化にチャレンジしています。映画についての詳細はこちら。
制作支援のため国内外8か国でクラウドファンディングを実施しています。

本イベントは"世界8カ国でのクラウドファンディング"を記念した、特別なオンラインイベントです!
今回はイギリス編!スローショッピング創設者であるKatherine Vero(キャサリン・ベロ)氏をスペシャルゲストとしてお迎えしました。
イベントでは、キャサリン氏が自身の経験をもとに、認知症のある人が日々の暮らしの中で直面する困りごとや、スローショッピングで実際に役立っている工夫について紹介しました。
また、「誰もが過ごしやすい公共空間とは何か」を問い直し、よりインクルーシブな社会のあり方についても考えていきました。
イベント概要
日時: 2025年6月29日(日)20:00~21:00
会場: オンライン(Zoom・Youtube)
<ゲスト>
Katherine Vero(キャサリン・ベロ)
キャサリン・ベロ氏は、認知症をはじめとする目に見える・見えない障害のある人々に対して、安心して買い物ができる環境を提供する革新的な取り組み「スローショッピング」の創設者です。
教育分野で30年以上の経験を持ち、公文式教室を11年間運営するなど、現場でも豊富な経験を積んできました。自身の母親の介護経験から得た学びをもとに、現場目線の実践的なアプローチで、尊厳・包摂性・地域とのつながりを大切にした仕組みづくりに取り組んでいます。
現在は、小売店や美術館、公共施設と連携し、アクセシビリティの向上やスタッフ研修、カスタマーサービスの改善などを通じて、多様性と社会的責任の実現を支援しています。
「誰もが安心して過ごせる環境」を目指し、常に学び、実践を重ねながら、最良の事例の共有にも力を注いでいます。
<ホスト>
森雅貴(issue+design)
アーカイブ
イベントの様子はYouTubeにてアーカイブ公開中です。
(https://www.youtube.com/live/yTU1GnjTvPE)
当日の様子
ゲストトーク「スローショッピングが描く、認知症にやさしい小売のデザイン」

キャサリンさんは、認知症の母との買い物の体験をきっかけに、障害のある方やその家族が理解や尊厳をもって迎えられる包摂的な買い物環境を作ろうと考えたのが「スローショッピング」という新しい買い物のアイデアでした。
お店の早いペースの環境では、認知症の方が孤立しやすくなります。スローショッピングではBGMを止め、椅子を置くなど小さな工夫で空間を整え、誰もが安心して買い物に参加できる環境をつくり、安心・安全・自主性・選択・コントロールを大切にしていると語りました。
最近では、ニューカッスルのグレンジャーマーケットでワークショップを行い、買い物体験や消費者のニーズを調査し、そのデータの分析を進めています。また、金融機関と連携してインクルーシブなサービスのあり方を調査し、ニューカッスル・ビルディング・ソサエティではビジネススクールのインターンと共に研究体制を強化していると話しました。
スローショッピングは、組織の多様性と包摂性を推進する大きな力となり、活動は組織内部の監査から始め、既存の取り組みを確認し、低コストでできる調整から着手しています。定期的に企業とやり取りを行い、コア要素が保たれているかを確認していると話しました。
また、日本での適用についても、文化的背景に応じて「助けを求めやすい静かな支援」を組み込むことが有効だと考えていると述べました。日本ではグループ調和や個人のさりげない配慮が重視されるため、特別な配慮が必要だと告げるのではなく、誰でも利用できる時間を設けることが重要だと語りました。

キャサリンさんのトークのあとは、彼女を紹介した株式会社cocoroéの田中美保さんから、質問を投げかけ、キャサリンさんにお答えいただきました。
その中で語られたことをいくつかご紹介します。
スローショッピングは、心理療法的観察技法の訓練によって理念を深く形づくったということ。そして、支援は用意されているけれども自主性を最優先にするという考え方で、人は自分の経験の主体として尊重されることで力を発揮します。と話しました。
小売業者や公共施設がスローショッピングを導入する際は、最初に五感を使って調整のポイントを見つけるのが良いと言います。音や香り、照明、触覚などの刺激を減らし、椅子を定期的に置いて休めるようにします。トイレへのアクセスを確保し、拡大鏡や太いペンなどを備えることも有効で、これらは大きな負担なくできる調整で、体験を大きく変えると言います。
スタッフ研修の重要性についても話されました。認知症や自閉症、メンタルヘルスに関する多くの課題は外からは見えません。スタッフは理解と思いやりを持って対応するために、記憶障害だけでなく、視覚認知や空間認識、処理速度、感情調整についても学ぶ必要があると話しました。
そして、スローショッピングはプログラムではなく、「価値観を共有するフレームワーク」だと語りました。それぞれの文化や環境に合わせて柔軟に形を変えながら、「誰もが安心できる環境や思いやりのあるスタッフが常にいること」を大事にしています。
スローショッピングは買い物の場から始まりますが、時間、尊厳、選択、思いやりという価値観は他分野にも広がり、日常のペースやプレッシャーを見直す文化的な呼びかけだと言います。医療現場や薬局、病院の受付でも活かせますし、公共サービスや郵便局で静かな時間やわかりやすい案内を導入することも考えられます。より思いやりのある社会をつくるための静かで根気強い呼びかけだと思います、と語りました。
質疑応答では、参加者から多様な視点からの質問が寄せられました。
非常に多くの質問をいただきましたが、ここではその中でも2つご紹介します。
「日本人高齢者をイギリスで支援した経験はありますか?」という問いに対し、キャサリンさんは「スローショッピングの大事な考えのひとつは、サポートが必要だと自分から言わなくていいということです。」と話しました。他の方と同じように、日本から来た高齢の方もご家族と一緒に買い物を楽しみ、座って休みながら温かく迎えられていたこともあると当時の様子を振り返りました。
また、「認知症当事者が喜びを見せた具体的な例を教えてほしい」という問いには、毎週同じスーパーで活動を続けるうちに、利用者が「ここは私たちのためにある」と感じるようになり、自信を取り戻していったことや、写真や結婚式の思い出の品を見せに来てくれた方がいたことを紹介しました。
最後にキャサリンさんは、「とても素晴らしい時間を過ごせました。また日本社会のために、今後も一緒に取り組んで行けたら嬉しいです。この映画化の取り組みはとても興味深く、クラウドファンディングが成功することをお祈りしています。」と締めくくりました。

今後の展開・お知らせ
本イベントシリーズ第3回目は、7/1(火)に開催されたアジア編です。
こちらのレポートもぜひお楽しみに。
クラウドファンディング開催中!
日本を皮切りに、世界8カ国(フランス、台湾、中国、韓国、イギリス、アメリカ、カナダ、シンガポール)でクラウドファンディングを展開中!
<残り数日!>
国内からは、以下の2つのサイトからご支援いただけます。

映画『認知症世界の歩き方』特設ウェブサイト
詳細・ご支援はこちら
今後のイベントの予定

「脱偏見 vol.3」@福岡・オンライン
日時:7月8日(火)18:30-20:30
ゲスト:田口一成(ボーダレス・ジャパン CEO)
詳細・申込はこちら
主催者情報・問い合わせ先
issue+design(特定非営利活動法人イシュープラスデザイン)
issue+designは、「社会の課題に、市民の創造力を。」を合言葉に、まちづくり、防災、医療、福祉、教育など、さまざまな社会課題に対して、デザインの力で解決に挑む団体です。市民一人ひとりの創造力を引き出し、社会をよりよくする仕組みを共につくることを目指しています。
特定非営利活動法人イシュープラスデザイン事務局(担当:宮崎)
HP:https://issueplusdesign.jp/
Mail:info@issueplusdesign.jp
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