大塚製薬 唾液IgAが結合する病原性微生物についての論文を発表
本研究結果では、唾液IgAが様々な病原性微生物の感染を抑制している可能性が示されたとともに、唾液中のIgAを増やすことは感染予防のために重要であることが示唆されました。
これは、今まで未検討であった唾液IgAの分泌を促進する意義の一端を解明するとともに、IgAを増やす成分が健康に寄与する可能性をより一層広げるものであり、IgAの有用性や粘膜免疫に関するさらなる研究の発展に貢献するものと考えます。
【掲載情報】
Title: Identification of antigens recognized by salivary IgA using microbial protein microarrays
Authors: Koji Hamuro, Hiroshi Saito, Takao Saito and Noriyuki Kohda
Journal: Bioscience of Microbiota, Food and Health
背景と目的 | 粘膜表面で分泌される分泌型IgAは、粘膜免疫系において病原体から身体を守るために重要な役割を担っています。しかし、分泌型IgAがどのような微生物に結合するか、つまり分泌型IgAの増減がどのように生体防御に関与するかは限られた情報しかありません。そこで分泌型IgAがどのような微生物に結合するかを網羅的に検討しました。 |
方法 | 健常成人12名の唾液を用いた微生物タンパク質マイクロアレイ*3を実施しました。 |
結果 | 唾液中は、呼吸器・消化器などの粘膜組織に感染する病原性微生物に結合する様々なIgAが存在することが明らかになりました。唾液IgAが結合するウイルスには新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)をはじめとするコロナウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルスなどがあり、デングウイルス、ジカウイルスやエボラウイルスのような、過去に感染した可能性が低いと考えられるウイルスにも結合するIgAが存在することも明らかになりました。また、インフルエンザウイルスについては過去に流行したウイルス株やインフルエンザワクチンに含まれている株だけでなく、非常に多くの亜型や株に結合することも確認しました。細菌では、呼吸器に感染する肺炎球菌や結核菌、胃に感染するピロリ菌に加え、腸に感染して食中毒を引き起こす病原性大腸菌やサルモネラ、ウェルシュ菌に、唾液IgAが結合しました。病原性大腸菌やサルモネラでも多くの種類に対する唾液IgAの結合が確認されました。 |
考察 | 今回の結果から、唾液IgAは幅広い反応性を示し、感染防御の最前線にある粘膜免疫系において、様々な病原性微生物の感染を抑制している可能性が示され、唾液IgAを増やすことは感染予防のために重要であることが示唆されました。 |
大塚製薬は、今後もOtsuka-people creating new products for better health worldwideの企業理念のもと、人々の健康維持・増進に貢献してまいります。
*1:抗体のひとつ。抗体にはIgAのほか、IgG、IgM、IgEなどがありますが、粘膜ではIgAが主役となり異物の侵入を防ぐ役割をしています。
*2:国立研究開発法人科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルプラットフォーム。Bioscience of Microbiota, Food and Healthをはじめ多数のジャーナルが公開されています。
*3:分析の対象物を多数固定化し、一斉に解析するための器具または技術の総称。タンパク質の他にDNA、細胞、組織、化合物などのマイクロアレイがあります。
【大塚製薬株式会社 大津栄養製品研究所について】
大津栄養製品研究所は「腸と栄養」の研究拠点として2000年に設立されました。栄養吸収の要である「腸」に着目し、「粘膜免疫」をテーマに「乳酸菌の機能」についての研究と関連製品の開発を行っています。
2003年より、口・喉・鼻など粘膜部分で異物の侵入を防ぐ免疫物質IgAの分泌を高める乳酸菌の探索を開始。東京農業大学が単離した植物由来の Lactiplantibacillus pentosus ONRICb0240(乳酸菌ONRICb0240)がIgAの分泌量を高めることを2005年に発見するなど、粘膜免疫機能を高めるための研究開発を進めています。
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