テックドクター、欧州リウマチ学会(EULAR 2025)にてウェアラブルデバイスを活用した全身性エリテマトーデス(SLE)研究の成果を発表

ウェアラブルデバイスのデータが疾患活動性の予測精度を高めることを、東京科学大学主導の研究で確認

株式会社テックドクター

株式会社テックドクター(代表取締役:湊 和修、本社:東京都中央区、以下、テックドクター)は、2025年6月11日(水)〜14日(土)にスペイン・バルセロナで開催された欧州リウマチ学会(EULAR 2025)において、全身性エリテマトーデス(以下、SLE)の疾患活動性を予測する研究成果を発表しました。

本発表は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和6年度「医療機器等研究成果展開事業(チャレンジタイプ)」に採択された研究における成果です。東京科学大学(Science Tokyo)が代表機関(研究開発代表者 膠原病・リウマチ内科 細矢匡先生)として実施し、テックドクターは研究開発分担機関として参画しました。

SLEの疾患活動性指標である「ループス低疾患活動状態(LLDAS / Lupus Low Disease Activity State)」の達成を、臨床指標、治療薬、患者報告アウトカム(PROs)に加えて、手首装着型ウェアラブルデバイス(Google Fitbit)から得られた生体データを用いると、より高精度で予測するアルゴリズムを開発したという成果について報告しました。なお、本発表はポスターツアーに選出され、高い注目を集めました。

◾️背景と研究概要

SLEは、全身の様々な臓器に慢性的な炎症を引き起こす自己免疫性疾患です。近年の薬物利用の進歩を受けて、急性期の治療成績は向上したものの、再燃リスクを見据えた維持療法の標準化や、安全な薬剤減量・中止の判断は依然として臨床の課題として残されています。

特に、医師が診察時に把握できる情報には限界があり、疾患活動性の全体像を把握しきれない可能性が指摘されています。こうした中、PROs(患者自身の自覚症状)や、ウェアラブルデバイスによって得られる心拍数・睡眠・歩数などの連続的な生体データが、より包括的な病状把握に資する可能性が注目されています。

本研究では、こうした新たなデータを活用し、SLE患者におけるLLDASの達成を予測するモデルの構築を目的としました。

<研究概要>

日本医療研究開発機構(AMED) 医療機器等研究成果展開事業 チャレンジタイプ
研究開発課題名:
SLEの疾患活動性の可視化により安全かつ適切な治療管理を実現するソフトウェアの開発

  • タイトル:PREDICTION OF DISEASE ACTIVITY STATE IN PATIENTS WITH SYSTEMIC LUPUS ERYTHEMATOSUS BY UTILIZING WRIST-WORN WEARABLE DEVICES

  • Niwano T. et al. Annals of the Rheumatic Diseases, Volume 84, 455-456

  • URL:https://ard.eular.org/article/S0003-4967(25)01590-0/abstract

  • 研究期間:2023年7月~2024年9月

  • 研究実施機関:東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)

  • 研究開発分担機関:株式会社テックドクター

  • 研究対象:15歳以上のSLE患者 274例(うち112例がFitbit Inspire3の装着に同意)

  • 評価指標:

    • 医療記録(治療歴、検査データ)

    • 患者報告による自覚症状(視覚的評価尺度(VAS)、LupusPRO質問票)

    • Fitbitから得られる心拍・睡眠・歩数データなど

予測モデル構築手法:Random Forest、CatBoost、XGBoost、LightGBM の4つの機械学習手法を採用

診察日を中心に前後7日間の生体データを日平均化し、診療情報・PROsとあわせて統合。診察時の医師によるLLDAS判定を正解ラベルとして予測モデルを構築しました。

◾️研究成果

Fitbitを装着した112名と非装着者162名の間で、性別・年齢・LLDAS達成率等に有意な差は認められず、両群は同等の集団と考えられました。

機械学習による予測モデルの構築にあたっては、【1】「臨床指標+治療詳細+PROs」のみを用いたモデルと、【2】これらにFitbitデータを加えたモデルの2種類を評価しました。全4手法の機械学習モデルにおいて、Fitbitデータを加えた後者のモデルはすべてROC-AUCが向上し、疾患活動性予測における健康関連データの追加的価値が確認されました。

これらの結果から、診療の場で得られる医療情報に加えて、患者自身の体調変化を反映した連続的な生体データを組み合わせることが、SLEの疾患状態のより正確な把握に寄与しうることが示唆されました。

◾️社会的意義と今後の展望

今回の成果は、SLEという疾患の全貌や治療法が確立していない希少な難病において、患者の日常データの活用が治療の最適化や疾患との共存に資する新たな可能性を示すものです。

東京科学大学とテックドクターは、今後も本研究成果を基に、自己免疫疾患をはじめとする多様な疾患領域において、個別最適な医療と患者中心のケアの実現を目指し、デジタルバイオマーカーの開発や遠隔モニタリング技術の社会実装を進めてまいります。

【参考情報】

※欧州リウマチ学会は世界中から約14,000人が参加するリウマチ学の分野で世界最大規模の学会です。

AMED採択時のプレスリリース(2024年7月9日)

https://www.technology-doctor.com/news/20240709

◾️全身性エリテマトーデス(SLE)について

全身性エリテマトーデス(SLE)は、日本で3番目に多い難病です。免疫システムが自分自身の体の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患であり、膠原病の一種です。全身の様々な臓器に慢性的な炎症を引き起こし、症状は多岐にわたります。近年、治療法の進歩により急性期の管理は向上しましたが、再燃リスクの管理や、治療薬の減量・中止の判断が課題となっています。

◾️テックドクターについて

テックドクターは「データで調子をよくする時代へ」をビジョンに掲げ、ウェアラブルデバイスをはじめとした日常のセンシングデータから健康に関するインサイトを導く「デジタルバイオマーカー」の開発と、その社会実装を進めています。医療・製薬・食品関連企業や研究機関と連携し、データに基づくAI医療の実現を目指しています。

会社名 :株式会社テックドクター

WEB  :https://www.technology-doctor.com/

設立日 :2019年6月21日

所在地 :東京都中央区京橋二丁目2番1号 京橋エドグラン4階

代表取締役:湊 和修

代表医師:泉 啓介

事業内容:デジタルバイオマーカー開発プラットフォーム「SelfBase」の開発および運用、デジタル医療ソリューションの提供

※デジタルバイオマーカーとは

デジタルバイオマーカーとは、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどから取得される日常的な生体データをもとに、疾患の有無や病状の変化、治療の効果を連続的かつ客観的に評価する指標です。

従来のバイオマーカーは、医療機関で一時的に測定される「点のデータ」でしたが、デジタルバイオマーカーは日常生活の「線のデータ」を継続的に取得できる点が特徴です。運動、睡眠、心拍などの指標をもとに、病気の早期発見や治療モニタリング、さらには薬剤開発における新たなエンドポイントとしても期待されています。

海外では2019年頃から開発が進み、国内でも注目が高まっています。

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会社概要

株式会社テックドクター

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URL
https://www.technology-doctor.com/
業種
情報通信
本社所在地
東京都中央区京橋二丁目2番1号 京橋エドグラン 4F
電話番号
-
代表者名
湊和修
上場
未上場
資本金
-
設立
2019年06月