安定性を向上させる「超分子エマルジョン」を新開発
サンスクリーンなどに利用されるW/O乳化製剤では、疎水性のシリコーンに親水基であるポリエチレングリコール(PEG)を置換した「PEG変性シリコーン」が乳化剤として汎用されています。しかし、PEG変性シリコーンを用いたW/O乳化は、安定性に課題があるため、乳化剤を多めに配合したり、増粘剤を添加したりすることで製剤の安定性を図ります。しかし、その結果べたつきや重たい使い心地になってしまいます。
メナードはこの課題に対して、α-シクロデキストリン(α-CD)を用いることで、油水界面でPEG変性シリコーンと超分子複合体を形成させると、W/O乳化において安定性が劇的に向上することを見出し、できた分散系溶液(エマルジョン)を「超分子エマルジョン」と名付けました。この「超分子エマルジョン」の技術により、W/O乳化製剤における乳化剤や増粘剤の配合量を最小限とすることが可能となります。今後、本技術をもとに心地よい感触のサンスクリーンやリクイドファンデーションの開発に応用していきます。
なお、本研究の成果は2023年9月12日から15日にかけて長野市で開催された第74回コロイドおよび界面化学討論会にて発表しました。
【参考資料】
1.超分子エマルジョンについて
超分子とは、複数の分子が水素結合などの比較的弱い相互作用によって秩序高く会合して形成される分子集合体のことを言います。ポリエチレングリコール(PEG)とα-シクロデキストリン(α-CD)は超分子複合体である擬ポリロタキサン構造※1(図1)を形成することが知られています。今回、メナードは、これを界面化学に応用することで、W/O乳化の保存安定性が劇的に向上することを見出し、できたエマルジョンを「超分子エマルジョン」と名付けました。
2.超分子エマルジョンによるW/O乳化の安定化効果
PEG変性シリコーンを乳化剤として用いたW/O乳化において、α-CDを含む製剤と含まない製剤を調製し、50℃で約1か月間保存した後の安定性を比較しました。
図2に示した光学顕微鏡画像の通り、調製直後は、α-CDの有無によらず良好な乳化粒子のW/O乳化が得られていますが、1か月後に比較すると、α–CD未配合のW/O乳化では乳化粒子が粗大化するのに対して、α–CD配合のW/O乳化では調製直後と同等の乳化状態を維持していることが分かりました。
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