【調査発表】人と組織からみた「オープン・イノベーションを成功させる要因」とは?

新規事業開発等の現場に携わる会社員334名の声を調査

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤島 敬太郎)組織行動研究所は、従業員規模300名以上の企業において、新規事業開発、新技術開発、新商品・サービス開発に、自らの業務として携わっている22~65歳の会社員334名に「オープン・イノベーションに関する実態調査」を実施し、「オープン・イノベーションの推進状況や成功のポイント」など、調査結果から見える実態について公表しました。 詳細は4月8日に公表した当社Webサイトの調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000748/)からもご参照いただけます。
1.調査背景と結果のポイント
 近年、ITなどの急速な変化を背景に、多くの日本企業では、オープン・イノベーションの取り組みが加速しています。経済産業省が2016年に上場企業に行った調査では、10年前と比較してオープン・イノベーションが活発化していると回答した企業が全体の45.1%を占めたことに加え、大企業とベンチャー企業の提携数もここ数年で飛躍的に増えています。*
 オープン・イノベーションは、自社の枠組みを超え、異質な人・組織と連携することで新価値創造の質やスピードが高まることが期待されますが、十分な成果を導き出すのは簡単なことではありません。
 そこで当社は、オープン・イノベーションを成功させるための阻害要因や促進要因について、人・組織のマネジメントの側面から理解することが重要だと考え、推進状況に加え、社外連携を順調に推進している群とそうでない群に分けて分析しました。具体的には、従業員規模300名以上の企業において、新規事業開発、新技術開発、新商品・サービス開発といった何らかの新規開発に自らの業務として携わっている22~65歳の会社員334名に対し、イノベーションの意義、オープン化推進有無の理由を概観した上で、社外連携を成功させるポイントを、組織デザイン、組織プロセス、組織風土、人材の能力などの側面から分析・考察しました。
*国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(2018). オープンイノベーション白書 第二版

【結果のポイント】
●イノベーションの創出数と営業利益成長率に相関関係があることが明らかに

業界水準より高い営業利益成長率を維持できている企業は、業界水準を超えるイノベーションを生み出してきた回答者群では71.3%を占め、業界水準と同程度以下の群では24.9%(業界水準未満の回答群に絞るとわずか7.4%)となりました。【図表2】

●オープン・イノベーション活動を半数以上が推進
担当する新規開発業務においてオープン化(外部の組織と連携し、その経営資源を活用すること)が推進されているとの回答は64.4%で、新規開発において社外連携による成果が見られる企業が3分の2、自前主義を貫いている企業は3分の1ということが明らかになりました。【図表3】

●オープン・イノベーションを成功させる鍵は下記の通り考察された
・社外連携の探索活動の観点では…①リスクをとった探索活動 ②外部に開いた組織デザイン
・意思決定や人材マネジメントなど組織プロセスの観点では
…①戦略や自社の強みが明確であるから、自社や連携先企業の意思決定のスピードを速めることができる
 ②現場に権限を渡しつつ責任は押し付けない
 ③自社のオーナーシップと社内外の対等で自律した関係性により、成功するまでやりぬくことができる
 ④「協働や助け合い」「自由裁量」「競争」の風土 の4点
・担当者が強化すべき行動や能力の観点では…①発想力 ②論理的に思考・説明する能力 ③巻き込み力


2.組織行動研究所のコメント

■変化が速く不確実性の高い時代に、組織の境界や慣習の外に出て新しいものを生み出すためには
・リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 研究員 藤澤理恵


近年、オープン・イノベーションの議論が盛んですが、実際に新規開発の担当者は、何を課題と捉え、オープン化という手法にどのような期待や手ごたえを見出しているのでしょうか。オープン・イノベーションの困難さは、慣習の外に出て新しいものを生み出すことの困難さそのものです。334名の現場社員へのアンケート調査からは、リスクをとった探索活動と外部に開いた組織デザイン、自社の明確な戦略とオーナーシップ、社外との対等なパートナーシップ、担当者が専門・業務外の情報に触れることや社会への関心、やりぬく力の重要性などが見えてきました。新しいものを生み出そうという活動に、本調査が一つの参考になれば幸いです。

■オープン・イノベーション促進には人事の積極的な関与が不可欠
・リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 所長 古野庸一


大企業とベンチャー企業の事業提携が2010 年代に急増している背景には、技術の急速な発展や市場の不透明性があると考えられます。大企業が、新しい技術の獲得のために自社ですべてを開発していくよりは、ベンチャー企業と連携する方が効率的になってきている時代です。このような時代においては、人事部門の積極的な関与が不可欠であり、具体的には「事業の理解」「経営幹部への働きかけ」「専門部署の設置」「イノベーターの発掘と採用」「イノベーターを活躍させるための仕組みづくり」「既存組織の見直し」等の動きが必要です。人事がオープン・イノベーションに関する理解を進めることが、これからの企業経営に大きな影響を与えるでしょう。






3. 調査結果サマリー

●企業の成長とイノベーション

・この10年(あるいは10年以内の創業から今日まで)に、「自社の有力製品・サービスを根本から変えるような、新規事業、新技術、新商品・サービスの数」が、同業他社と比べて多く生まれているとする回答は全体の35.9%でした。
・業界水準より高い営業利益成長率を維持できている企業は、業界水準を超えるイノベーションを生み出してきた回答者群では71.3%を占めるのに対し、業界水準と同程度以下の群では24.9%、業界水準未満の回答群に絞るとわずか7.4%にまで落ち込みました。
⇒イノベーションの創出数と営業利益成長率の相関関係が明らかになりました。


●新規開発業務 オープン化の理由
・「担当する新規開発業務において、オープン化が推進されている」との回答は64.4%となりました。新規開発において社外連携による成果が見られる企業は2/3、自前主義を貫いている企業は1/3であり、多くの企業でオープン・イノベーションの活動があることが確認できました。


・「担当業務、または全社的にオープン化が推進されている」とした回答者をオープン化推進群(236名)として分析を進めていくと、オープン・イノベーションを推進する/しない理由として、
∟推進群では、オープン化は「結果を出すスピードを速める」「新しい技術を取り入れる」「用途や市場の開拓」「技術的課題の解決」などの役に立つ、と考えられていることが明らかになりました。一方で、「連携先候補が具体的に見つかったため」という回答は少なく、オープン・イノベーションは連携先の探索から開始されることが考えられます。
∟非推進群(114名)がオープン化を推進しない理由としては、「自社の知識・技術の流出懸念」が強いようです。


・オープン化推進群の市場環境と重点課題については、「競争状態が非常に激しい」「市場の成長率が高い」との認識がより強く、リスクをとってでもオープン化を図り、スピードを志向する理由がうかがえました。
また重点課題として、「ブランド創造」「効果的なマーケティング・販売プロセスの開発」「新規顧客基盤の開拓」「デジタル技術の進展」への対応を挙げる割合が高く、社外に求めるのはそのような技術や資源への期待と考えられます。


●オープン・イノベーションを成功させる鍵

<社外連携の探索活動:「リスクをとった探索活動」「外部に開いた組織デザイン」>

・オープン化推進群の約半数の56.4%が、社外連携は総じて順調(11.9%)/どちらかといえば順調(44.5%)と回答している中で、外部の知識・技術や連携先の探索活動には、社外連携の順調群とそうでない群とで異なる点が見られました。
・順調群では、探索活動が全体的に活発です。「探索は行っていない」との回答はわずか3.0%であり、非順調群の17.5%とは大きな開きがあります。図表6の項目5,6から、自社のニーズや課題、自社が開発した技術を公開するリスクを積極的にとっていることが分かるように、日本企業が従来強みとしてきた系列企業を通じた探索などに加え、よりリスクをとった新たな連携先開拓が順調な社外連携につながっている可能性がうかがえます。
・その他、順調群と非順調群で差が見られたのは、「社内を集約し外部とつなげる専門部署の設置(項目7)」、「技術フォーマットを統一した開発プラットフォームの提供(項目9)」、「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(項目10)」などがありました。
・探索活動も、社外連携順調群の方が連携先の種類が多く、大学・研究所、ITベンチャーに加えて、IT以外のベンチャーや異業種・同業他社に対しても積極的に新規性の高い連携を実現しています(図表7)。


<意思決定や人材マネジメントなど組織プロセス:
①戦略や自社の強みが明確であるから、自社や連携先企業の意思決定のスピードを速めることができる
②現場に権限を渡しつつ責任は押し付けない
③自社のオーナーシップと社内外の対等で自律した関係性により、成功するまでやりぬくことができる
④「協働や助け合い」「自由裁量」「競争」の風土


・意思決定や人材マネジメントなど組織プロセスに関するものを中心に、現場社員の考えるオープン・イノベーションの成功要因を考察すると、「1.新規事業開発および新商品開発に関する戦略の明確さ」「2.自社の強みの明確さ」「3.自社の意思決定のスピード」が成功要因であると半数以上が回答しました。続いて回答が多かったのが、「4.自社内の意思決定者が明確で、強いオーナーシップがあること」「5.チャレンジ精神・失敗奨励の組織風土」で約4割でした。
・社外連携の順調群と非順調群で差が見られたのは「6.撤退判断までの時間軸を長くとり、成功するまでやりぬくこと」でした。他にも「9.アイディアを精査・選抜する仕組み」「10.社外の連携先に関する情報収集」といった探索活動に関する項目、「12.社外の連携先の意思決定のスピード」「15.自社優位・優先でなく、対等なパートナーシップの意識」といった社外連携先との関係性に関する項目にも差が見られました。
・非順調群の回答率が順調群を上回ったのは、「16.担当者の熱意」「17.現場への権限委譲」「18.運・タイミング」の3項目となりました。全体としての回答率は高くないものの、イノベーション不振の現場における担当者の権限不足と孤軍奮闘の表れとも解釈できます。
⇒ここから、「戦略や自社の強みが明確であるから、自社や連携先企業の意思決定のスピードを速めることができる」「現場に権限を渡しつつ責任は押し付けない」「自社のオーナーシップと社内外の対等で自律した関係性があるから、成功するまでやりぬくことができる」といった組織像を描くことができます。


・「協働や助け合い」「自由裁量」「競争」の風土はいずれも、社外連携の順調群に多い傾向が見られたことから、オープン・イノベーションに向いた組織風土である可能性も考えられます。形式主義的な風土に苦労することに違いはない様子で、順調/非順調群に明確な差は見られませんでした。

 


<担当者が強化すべき行動や能力:「発想力」「論理的に思考・説明する能力」「他者の巻き込み力」>
・担当者自身の社外連携のなかでの経験や、新規開発を担当する人材が、強化していく必要があるものについても調査したところ、約半数が個人的な学びや収穫を実感しており、順調群の方が、楽しさや社内での影響力を実感する傾向が見られる一方、プロジェクト推進の苦労も順調群の回答率が高い結果となりました。
・強化すべき行動や能力については、「発想力」「論理的に思考・説明する能力」「他者の巻き込み力」などが共通して挙げられました。
・順調群では「2.専門外の知識の豊富さ・業務外の情報への関心」への重視度が高く、探索活動同様、いかに自社の慣習の外にある知識や連携先にアクセスするかが重視されているのが明らかになりました。また、「8.苦難を乗り越え、最後までやり遂げるエネルギー」「11.社会の課題を解決したいという強い思い」など、図表8で見たオープン・イノベーションの成功要因と同様、やり遂げることを強調する傾向が高かったです。
・非順調群では、「10.社内外の技術・アイディアの目利き力」「12.既存事業・商品との軋轢を恐れないこと」が順調群を上回って選択されており、慣習の外に出て新しいものを生み出す難しさが、別の側面から語られていました。



4. 調査概要 

※業員規模300名以上の企業において、新規事業開発、新技術開発、新商品・サービス開発(以降、新規開発と記述)に、自らの業務として携わっている方を対象にアンケート調査を行い、334名から回答を得た(図表1)。新規開発の対象を技術などに限定せず、従事する開発フェーズ(複数回答)も「0⇒1」44.3%、「1⇒10」67.7%、「10⇒100」37.4%、「縮小・撤退」3.3%と幅広い。イノベーションに向けた新規開発活動の範囲を広く捉えた調査としてご覧下さい。
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