〈中小企業のデジタル化に関する実態調査〉約7割の中小企業の経営者が「デジタル化は必要」と回答しているものの政府の【デジタル化投資】を認知している経営者はわずか27.0%
~デジタル化にあたり中小企業が直面している課題と原因が明らかに~
Green(グリーン)とDigital(デジタル)を活用した中小企業の変革を目指すフォーバル GDXリサーチ研究所(本社:東京都渋谷区、所長:平良学)は、中小企業のデジタル化について調査をした「研究レポート」を2月28日(金)に発行しました。
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2024年11月、政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」と称する新たな経済対策を閣議決定しました。これは昨今のデフレからの回復基調や賃上げ環境の整備を背景に、成長型経済への移行を図るものです。
その対策の柱は、① 日本経済、地域経済成長 ② 物価高の克服 ③ 国民の安全・安心の確保、の3つです。
これらの取り組みのうち、特に経済成長戦略において注目されているのが、「投資立国」及び「資産運用立国」の実現です。賃上げを進めて国民生活の質を維持するためには、その原資となる企業の稼ぐ力を継続的に高める必要があり、その有効な手段として取り上げられているのが、デジタル化の推進やDXの積極的な導入です。具体的には、ITツール導入や設備投資などへの支援を強化する内容が盛り込まれています。
しかしながら、物価高や人材不足に直面している中小企業にとって、こうした取り組みはどこまで認知され、関心が示されているのか。政府のめざす方向性とともに、中小企業のデジタル化支援へのニーズや投資状況などについて調査を行いました。
●本レポートの詳細は以下よりご覧ください。
http://gdx-research.com/wp-content/uploads/2025/02/20250228_researchreport.pdf
【調査結果サマリー】
①【デジタル化投資】を「知っている」と回答した経営者はわずか27.0%
国が多くの予算を設け、情報発信しているものの
半数以上の経営者には届いていないことが明らかに
②デジタル化を必要としている企業は76.4%
売上拡大につながる可能生よりも業務効率化に期待する企業が多いことが判明!
③デジタル化にあたり政府に求める支援で最も多い回答は「補助金や助成金の提供」
多くの中小企業が「初期投資のコスト」という課題に直面!
本リリースの調査結果をご利用いただく際は、必ず【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】とご明記ください。
【アンケート概要】
・調査主体 :フォーバル GDXリサーチ研究所
・調査期間 :2025年1月14日~2025年2月14日
・調査対象者 :全国の中小企業経営者
・調査方法 :ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
・有効回答数 :828人
① 【デジタル化投資】を「知っている」と回答した経営者はわずか27.0%
国が多くの予算を設け、情報発信しているものの半数以上の経営者には届いていないことが明らかに
Q1.政府が促進する「デジタル化投資」の認知度
政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」において、【デジタル化投資】を促進しています。これには、業務効率化に資するITツールの導入や、省力化のためのシステム構築及び設備投資を行う中小企業を支援するための補助金制度が施策として含まれており、昨今の最低賃金引上げによる負担軽減のために、最低賃金近傍の従業員を抱える事業者については補助率が更に優遇される内容です。
しかしながら、【デジタル化投資】を「知っている」と回答した経営者は「よく知っている」「ある程度知っている」を合わせてわずか27.0%で、国が多くの予算を設けたり、情報発信しているものの半数以上の経営者には届いていない、という残念な状況がうかがえる結果となりました。
Q2. デジタル化に関する投資支援
【デジタル化投資】で強化したい領域として最も多い回答は「新しいソフトウェアの導入」の39.0%で、全体の4割近くを占めました。さらに、28.9%が「ハードウェアのアップグレード」、27.5%が「データ管理・分析システムの導入」と続いた。昨今、成長が著しい生成AIをはじめとする「AI・機械学習の活用」は17.3%、売上拡大につながる「デジタルマーケティングツールの導入」、「eコマースプラットフォームの構築・活用」などは1割未満であり、最先端の技術やテクノロジー、売上拡大に関する領域よりも、既存事業における業務効率化やシステム・データのアップグレートといった領域を強化したい、という傾向が見られました。
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②デジタル化を必要としている企業は76.4%
売上拡大につながる可能生よりも業務効率化に期待する企業が多いことが判明!
Q3.デジタル化の必要性
「とても必要だと思う」と「ある程度必要だと思う」と回答した企業が7割以上を占めており、多くの企業が、企業の競争力向上や業務の効率化を目的として、デジタル化の重要性を認識していることが分かりました。
Q4. デジタル化に期待すること
「業務効率の向上」の回答が86.7%と最も多く、業務の自動化や省力化による負担軽減を重視する傾向が分かりました。また、「コスト削減」、「データの一元管理」の回答も多く、デジタル化により売上拡大につながる可能性もあるが、その期待よりも業務の効率化を優先する企業が多い結果となりました。
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Q5.デジタル化支援の需要
デジタル化支援について20.1% が「受けたい」 、43.8%が 「やや受けたいと思う」と回答し、デジタル化支援を受けたいと考えている企業が約6割ということが判明しました。一方で、デジタル化が自社に必要と考えている経営者でも「あまり受けたいと思わない」、「受けたいと思わない」が約4割存在することも分かりました。政府の「デジタル化支援」がどういうものか分かっておらず、判断がつかない、もしくはデジタル化は必要だが、支援までは必要ない、求めているものが違う、というようなケースがうかがえる結果となりました。
Q6.デジタル化で求められる支援内容
デジタル化にあたり政府に求める支援については、最も回答が多いのが「補助金や助成金の提供」で8割を超えていました。 「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」における「デジタル化支援」には補助金制度も盛り込まれています。しかし、それにもかかわらず、政府に対して求める支援では「補助金や助成金の提供」が約8割を占めることから、政府の情報が正しく中小企業に届いているとは言えない結果となりました。
このような結果から情報が正しく伝われば補助金制度の活用、デジタル化が更に進む可能性も秘めていると考えることができるのではないでしょうか。
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Q7デジタル化によって強化したい業務領域
企業がデジタル化を進める中で、どの業務領域を優先的に強化したいと考えているのかの問いに対して、「データ入力・管理」が最多となり69.0%の回答でした。次いで「財務・会計」という回答が多い結果になりました。これらの業務は特に正確性が求められ、かつ、人的ミスが起きやすいため、デジタル化によって精度を高めたいと考える企業が多いのではないかと読み取ることができました。「データ入力・管理」は自動化ができれば人的ミスを削減でき、「財務・会計」ではクラウド会計ソフトでのAIによる自動仕訳の導入も進んでおり、業務の効率化と精度向上の両面が期待できます。
一方で、売上向上に直結する「マーケティング・広告」のデジタル化の優先度は比較的低く、全体の約2割にとどまった結果でした。企業のデジタル化の意識が主に業務効率化に向けられていることがわかりました。
また、今回の調査でデジタル化によって強化したい領域が事務系の業務に偏っていることに着目すると、企業が事務業務以外でのデジタル化の活用方法をあまり理解できていない、イメージできていない可能性があると考えられます。デジタル化を進めるにあたっては、単なる業務の自動化だけでなく、事業全体の競争力を高めるための活用も視野に入れることが重要です。企業がデジタル化を推進する際には、どの業務がデジタル化できるのかだけではなく、どのような経営改善を行いたいかを考え、適切なデジタルツールや専門技術の導入を検討する必要です。
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③デジタル化にあたり政府に求める支援で最も多い回答は「補助金や助成金の提供」
多くの中小企業が「初期投資のコスト」という課題に直面!
Q8.デジタル化推進のための投資予算
デジタル化を推進するためにははじめに投資予算の確保が重要となりますが、「既に組まれている」と回答した企業は1割にも満たないという結果になりました。「組むことを検討している」が16.5%、最も多かった回答が「必要だと思うが組めていない」の41.7%と、デジタル化の必要性を感じながらも、予算確保を実行できていない企業が約半数を占めているようです。政府による補助金の拡充や、デジタル化推進のための専門家による支援が更に促進されれば、より多くの企業がデジタル化を実行に移せるのではないでしょうか。中小企業のデジタル化の推進には、単なる技術の導入だけでなく、企業が適切に投資計画を立てられる環境の整備も必要です。
Q9.デジタル化を推進するための投資予算を組むことができない理由
最も多かったのは「対応する経済的な余裕がない」の56.8%、次いで「対応する人材がいない」、「対応する時間がない」と続き、資金、人材、時間それぞれの分野でデジタル化の障壁があり、中でも資金面の課題が多いことがわかりました。また、「どうすればいいかわからない」という回答も26.1%あり、具体的な進め方が分からないことが、デジタル化推進の妨げになっているケースもあることがうかがえます。
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Q10.デジタル化を推進するにあたってのハードル、課題
デジタル化を推進するにあたり企業が直面している課題について、「初期投資のコスト」の回答が66.3%、「技術的な知識不足」が47.7%、「従業員のスキルの不足」が35.6%と、これらが主な障壁となっていることが明らかになりました。投資予算の確保と同様に、資金と人材に関する課題が浮き彫りになり、デジタル化には一定の投資が求められるが、現状では多くの企業が経済的な余裕を持てず、導入に踏み切れないケースが多いことが想像できる結果になりました。
一方で、デジタルツールの導入には適切な運用が求められるが、中小企業では専門のIT人材、デジタル人材が不足していることが多く、知識やスキル不足も根本的な解決が必要であることがわかりました。これにより、どのように進めればいいのか分からず、デジタル化に踏み切れない企業も少なくないのではないでしょうか。
単に新しいシステムを導入することだけがデジタル化ではなく、デジタル化を行い、企業の経営課題の解決や、企業が存続するための利益を向上させてはじめてデジタル化が成功した、と言えると考えています。そのためには、適切な知識を持つ人材の確保や育成が不可欠で、様々な経営リソースが不足している中小企業には、コスト面の支援だけでなく、専門的な知識や経験を持つ専門家の伴走支援もますます重要になると考えます。
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【有識者のコメント】中小企業の次世代成長戦略への対応の現状について
フォーバル GDXリサーチ研究所所長平良 学(たいら・まなぶ)
■経歴
1992年、株式会社フォーバルに入社。九州支店での赤字経営の立て直し、コンサルティング事業の新規立ち上げ、
全体統括を経て、2022年に新たに発足した中立の独立機関「フォーバル GDXリサーチ研究所」の初代所長に就任。
中小企業経営の実態をまとめた白書「ブルーレポート」の発刊、全国の自治体と連携し、地域の中小企業経営者に向けたDX、GXの講演、中小企業経営者向けのイベントの企画などを通じて、中小企業のGDXを世に発信している。
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■コメント
「中小企業のデジタル化」というテーマのもと、政府が促進する「デジタル化投資」に関する中小企業の認知度やニーズ、中小企業のデジタル化の現状についての調査を行いました。政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」において、デジタル化投資を促進していますが、それを認知している中小企業は約3割程度でした。政府の方針や施策を認知させて、補助金や助成金等の支援を必要としている中小企業経営者に活用してもらうことが必要です。また、中小企業の約半数がデジタル化のための投資予算を確保できていない状況です。資金においては補助金などの制度がありますが、それだけではなく、人材や時間の面でも課題が生じています。現状の施策に加え、専門家が経営者に寄り添う伴走支援の制度などが充実することによって中小企業のデジタル化が進むと考えられます。
■フォーバル GDXリサーチ研究所とは
日本に存在する法人の99%以上を占める中小企業。この中小企業1社1社が成長することこそが日本の活力につながります。中小企業が成長するための原動力の1つにGreen(グリーン)とDigital(デジタル)を活用し企業そのものを変革するGDX(Green Digital transformation)があります。
フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業のGDXに関する実態を調査し、各種レポートや論文、報告書などをまとめ、世に発信するための研究機関です。「中小企業のGDXにおける現状や実態を調査し、世に発信する」をミッションに「中小企業のGDXにおいてなくてはならない存在」を目指し活動していきます。
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