市販の肌着を着せてベッドに寝かせるだけで心電図と呼吸を測る装置の開発【産技助成Vol.65】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東京電機大学工学部電気電子工学科
誕生してすぐに集中治療処置室(NICU)に入らなければならない
未熟児として生まれた赤ちゃんについて非接触での心電図や
呼吸の測定を可能にし、赤ちゃんと看護師の負担を軽減します
東京電機大学工学部電気電子工学科
誕生してすぐに集中治療処置室(NICU)に入らなければならない
未熟児として生まれた赤ちゃんについて非接触での心電図や
呼吸の測定を可能にし、赤ちゃんと看護師の負担を軽減します
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東京電機大学工学部電気電子工学科の准教授、植野 彰規氏は、市販の肌着を着せてベッドに寝かせるだけで心電図と呼吸を測る装置の開発をしました。
従来、未熟児で生まれた等の理由からNICUに入る新生児や乳児には、心電図用の電極、脈波、呼吸等のセンサが装着されますが、画像検査の度に脱離と再装着を繰り返すため皮膚が剥離・損傷する等、センサの脱着過程での医療事故の原因となっています。本技術は市販の布地を介して背面より心電図を計測することで、赤ちゃんと看護師の負担を軽減できます。
病院だけでなく、一般家庭の乳幼児用ベッドやハイローベッド&チェア(注1)に組込めば、突然の心停止や呼吸停止を検出して、乳幼児突然死症候群による死亡を減らすことも可能です。更に、病院外で気軽に、手軽に無理なく生体信号を計測できるため、高齢者の日常生活下での健康状態モニタリングに利用し、疾病を予防したり、疾病の早期発見により社会復帰までの期間を短縮する等の展開も考えられます。
(注1)ハイローベッド&チェア:ベッドから椅子(またはその逆)への変形が可能で、高さが変えられる育児器具。キャスターが脚部についており、可動式のものが多い。
1.研究成果概要
・新生児集中治療処置室(NICU)内での心電図・呼吸計測において、センサの着脱に起因する医療過誤や新生児への皮膚への障害を減らすことが狙いです。
・容量性結合(注2)を応用し、寝具に貼り付けた布製電極より1mV以下の微弱な電気信号を検出することにより、市販の肌着を介して乳児の心電図および呼吸性変動を計測可能な装置を世界で初めて開発した。生後17~187日の乳児を対象に実験を行い、安静状態であれば、ほぼ100%の確率で両信号を検出できます。
・病院内の成人用ベッドに組込めば、センサ類を体に装着せずに夜間の心停止や呼吸停止を検出するモニタにも応用できます。
・中高年の一般家庭用ベッド(布団)や車のシートに取り付け、就寝時や運転時の長期データを基に、心疾患のスクリーニングや治療(投薬)効果の確認、健康管理などに役立てる構想があります。
・衣服に組み込めばウェアラブル心電(または心拍)センサへの展開も視野に入れることができます。
・心電図以外にも筋電図を計測できることを確認しており、リハビリテーションや福祉分野への応用が期待されます。
(注2) 容量性結合:電子工学において、回路内の2点間の静電容量により電圧や電流、電力などが伝達されうる結合状態を意味する。本研究では、生体-布-電極のサンドイッチ構造から生じる静電容量により、生体内部の電流変化を電極側に伝達させている。
2.競合技術への強み
(1)非接触計測:電極を3か所、皮膚に貼り付ける従来の計測方法とは異なり、布や衣服をとおしての計
測が可能となります。
(2)人体への負担軽減:皮膚の剥離や損傷、着脱の煩雑さ等が無く、電極の脱着過程での医療過誤につながる要因を軽減します。
(3)病院外でも活用可能:専門設備不要のシステムなので、ホームヘルスケア分野での実用化により、疾病の予防や早期発見が見込まれます。
3.今後の展望
・赤ちゃんは頻繁に寝返りを打ったり、起きて何かをつかもうとして、足を浮かせてして腰の部分が安定しないことが多い。さらに、NICUに入る赤ちゃんは体重が軽いため(1kg以下の赤ちゃんもいます)、体動に対する耐性を向上させるとともに、心電図の低周波成分も検出できるよう装置を改良する予定です。また、これまで3kg以上の体重の赤ちゃんで実験をしてきましたが、NICUに向けて、軽量乳児(体重・3kg以下)を対象とした計測データを蓄積します。
・ホームヘルスケア分野での実用化に向け、就寝時計測データをもとにスクリーニングする疾病を検討し、解析する予定です。
・健康モニタへの展開を視野に体動耐性を強化し、各種日常行動下での計測を実現する予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東京電機大学准教授 植野 彰規氏
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東京電機大学工学部電気電子工学科の准教授、植野 彰規氏は、市販の肌着を着せてベッドに寝かせるだけで心電図と呼吸を測る装置の開発をしました。
従来、未熟児で生まれた等の理由からNICUに入る新生児や乳児には、心電図用の電極、脈波、呼吸等のセンサが装着されますが、画像検査の度に脱離と再装着を繰り返すため皮膚が剥離・損傷する等、センサの脱着過程での医療事故の原因となっています。本技術は市販の布地を介して背面より心電図を計測することで、赤ちゃんと看護師の負担を軽減できます。
病院だけでなく、一般家庭の乳幼児用ベッドやハイローベッド&チェア(注1)に組込めば、突然の心停止や呼吸停止を検出して、乳幼児突然死症候群による死亡を減らすことも可能です。更に、病院外で気軽に、手軽に無理なく生体信号を計測できるため、高齢者の日常生活下での健康状態モニタリングに利用し、疾病を予防したり、疾病の早期発見により社会復帰までの期間を短縮する等の展開も考えられます。
(注1)ハイローベッド&チェア:ベッドから椅子(またはその逆)への変形が可能で、高さが変えられる育児器具。キャスターが脚部についており、可動式のものが多い。
1.研究成果概要
・新生児集中治療処置室(NICU)内での心電図・呼吸計測において、センサの着脱に起因する医療過誤や新生児への皮膚への障害を減らすことが狙いです。
・容量性結合(注2)を応用し、寝具に貼り付けた布製電極より1mV以下の微弱な電気信号を検出することにより、市販の肌着を介して乳児の心電図および呼吸性変動を計測可能な装置を世界で初めて開発した。生後17~187日の乳児を対象に実験を行い、安静状態であれば、ほぼ100%の確率で両信号を検出できます。
・病院内の成人用ベッドに組込めば、センサ類を体に装着せずに夜間の心停止や呼吸停止を検出するモニタにも応用できます。
・中高年の一般家庭用ベッド(布団)や車のシートに取り付け、就寝時や運転時の長期データを基に、心疾患のスクリーニングや治療(投薬)効果の確認、健康管理などに役立てる構想があります。
・衣服に組み込めばウェアラブル心電(または心拍)センサへの展開も視野に入れることができます。
・心電図以外にも筋電図を計測できることを確認しており、リハビリテーションや福祉分野への応用が期待されます。
(注2) 容量性結合:電子工学において、回路内の2点間の静電容量により電圧や電流、電力などが伝達されうる結合状態を意味する。本研究では、生体-布-電極のサンドイッチ構造から生じる静電容量により、生体内部の電流変化を電極側に伝達させている。
2.競合技術への強み
(1)非接触計測:電極を3か所、皮膚に貼り付ける従来の計測方法とは異なり、布や衣服をとおしての計
測が可能となります。
(2)人体への負担軽減:皮膚の剥離や損傷、着脱の煩雑さ等が無く、電極の脱着過程での医療過誤につながる要因を軽減します。
(3)病院外でも活用可能:専門設備不要のシステムなので、ホームヘルスケア分野での実用化により、疾病の予防や早期発見が見込まれます。
3.今後の展望
・赤ちゃんは頻繁に寝返りを打ったり、起きて何かをつかもうとして、足を浮かせてして腰の部分が安定しないことが多い。さらに、NICUに入る赤ちゃんは体重が軽いため(1kg以下の赤ちゃんもいます)、体動に対する耐性を向上させるとともに、心電図の低周波成分も検出できるよう装置を改良する予定です。また、これまで3kg以上の体重の赤ちゃんで実験をしてきましたが、NICUに向けて、軽量乳児(体重・3kg以下)を対象とした計測データを蓄積します。
・ホームヘルスケア分野での実用化に向け、就寝時計測データをもとにスクリーニングする疾病を検討し、解析する予定です。
・健康モニタへの展開を視野に体動耐性を強化し、各種日常行動下での計測を実現する予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東京電機大学准教授 植野 彰規氏
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