『第40回日本栄養治療学会学術集会』においてネスレ ヘルスサイエンスの研究成果3演題を発表
ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー(本社:兵庫県神戸市、カンパニープレジデント:中島昭広)は、2025年2月14日と15日に横浜市で開催された『第40回 日本栄養治療学会※学術集会(JSPEN 2025)』にて、研究成果を発表しました。
<ネスレ ヘルスサイエンスが筆頭演者の発表>
・【一般演題(口演)】 胃食道逆流症を有する患者における経管栄養不耐症による経管栄養療法中止がもたらす医療経済的インパクト
・【一般演題(口演)】 ICUにおける高たんぱく消化態流動食使用による費用削減効果の検討
・【一般演題(ポスター)】 食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食による経腸栄養不耐症減少に伴う費用削減効果の検討
ネスレ ヘルスサイエンスは、科学的な根拠に基づき、顧客課題や社会課題の解決に向けた栄養に関するソリューションを提供し続けることを目指しています。今後も、研究活動や学術発表によって栄養療法の発展に寄与するとともに、科学的根拠に基づいた製品やサービス、情報提供を行っていきます。
※日本栄養治療学会(英文名称 Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy(JSPEN)):静脈経腸経口栄養を中心とする栄養療法及びそれらを支える基礎的栄養学全般に関する会員相互及び内外の関連学術団体との研究連絡、知識の交換、提携の場となることを通して、代謝及び栄養学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と医学及び医療の向上に資することで国民の健康と福祉に寄与することを目的としています。
胃食道逆流症を有する患者における経管栄養不耐症による経管栄養療法中止がもたらす医療経済的インパクト
経管栄養療法において、逆流や嘔吐、下痢等の消化管不耐症が臨床上の課題であり、不耐症は予期せぬ経管栄養の中止をもたらします。本研究では、逆流や嘔吐のリスクを伴う疾患である胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)を有する患者において、不耐症よる経管栄養の中止が病院経営に与える影響を検討しました。病院経営の状況が悪化している昨今において、患者の状態に負の影響を与える不耐症に伴う経管栄養中止が、病院経営に対しても影響を与えるか否かを評価する本研究は、持続的な医療提供体制を維持するという点で社会的にも重要な意義を持つものと考えます。
GERD患者におけるやせ状態は、不耐症による経管栄養中心のリスク因子であった
我々は、先行研究において、GERD患者におけるBMI 18未満のやせ状態が、誤嚥や消化器症状の不耐症による30日以内の経管栄養中止の危険因子であることを報告しました(河野可奈子 他、JSPEN2024)。
また、経管栄養に乳清ペプチド消化態流動食を用いることにより、やせ状態が不耐症による経管栄養の中止のリスク因子にならない可能性を報告しました。


薬剤等費用は経管栄養を中止した場合に増加した
不耐症による予期せぬ経管栄養中止があった群では、中止日を境に薬剤等費用が急増し、その後、中止、28日後まで元に戻ることはありませんでした。 経管栄養中止あり群の薬剤等費用は経管栄養中止前に比べて中止後に有意に増加し、中止なし群と比べて有意に高い金額となりました。


請求されない診療報酬点数(持ち出し分費用)は経管栄養を中止した場合に増加した
不耐症による予期せぬ経管栄養中止があった群では、請求されない診療報酬点数(出来高換算点数とレセプト請求点数の差分、いわゆる持ち出し分)が経管栄養中止日に急増し、その後、中止28日後まで元に戻ることはありませんでした。一方で、中止なし群は分析期間中、大きな変化はありませんでした。療養病棟では、患者分類に基づく包括された診療報酬設定となっており、本結果から不耐症による予期せぬ経管栄養の中止により、病院収入に繋がらない診療行為が増加したことが推察されました。


不耐症による予期せぬ経管栄養中止を回避できれば、コスト削減インパクトがある
分析結果をもとに、不耐症による経管栄養の中止を1名回避できた場合の病院経営に与えるインパクトをシミュレーションすると、薬剤等費用は約2.5万円、請求されない診療報酬額は約6.6万円が4週間で削減されると推計されました。
また、流動食の違いによる経管栄養中止率の違いをもとに、やせ状態のGERD患者100名を想定した場合の入院4週間でのコストをシミュレーションすると、経管栄養に乳清ペプチド消化態流動食を用いた場合、半消化態流動食に比べて薬剤等費用が約28万円、請求されない診療報酬額は約75万円安くなると推計されました。


本研究の結果から、やせ型の胃食道逆流症患者において、不耐症による予期せぬ経管栄養の中止は病院経営に負の影響を与える可能性があり、その回避はインパクトが大きいことがわかりました。

鎌田 征和(かまだ ゆきかず)
(ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー)
‐発表概要‐
演題名:胃食道逆流症を有する患者における経管栄養不耐症による経管栄養療法中止がもたらす医療経済的インパクト
調査期間:2018年4月~2021年3月
試験デザイン:後ろ向き観察試験
試験対象者:入院後に経管栄養療法を開始したBMI18未満のやせ型GERD患者
評価項目:薬剤等費用、請求されない診療報酬点数(額)
発表者:鎌田征和(ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー),河野 可奈子(医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院 栄養部), 井口 晃奈(医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院 栄養部),冨永 典子(医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院 栄養部),岡本 千聡(医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院 循環器内科、大阪大学大学院医学系研究科 医化学講座)、井上 雅智(医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院),五十嵐 中(東京大学大学院 薬学系研究科),北風 政史(医療法人錦秀会 阪和記念病院)
ICUにおける高たんぱく消化態流動食使用による費用削減効果の検討
重症病態における栄養管理については注目度が高まっており、適切なたんぱく質量や消化態流動食の使用について、近年、臨床研究やガイドラインで評価されています。
本研究では、国民医療費の増大という深刻な社会的課題に対して、高たんぱく消化態流動食がどのように貢献できるかを検証し、その可能性を探ることを目的としました。
高たんぱく消化態流動食使用と半消化態流動食を使用したときのICU入室日数
高たんぱく消化態流動食と半消化態流動食を比較したランダム化比較試験(Nakamura K et al., Clin. Nutr. 2021;40:796-803.)によると、ICU(Intensive Care Unit、集中治療室)の入室日数は
高たんぱく消化態流動食で7日間、半消化態流動食で9日間でした。

国民医療費の削減可能性が示唆された
高たんぱく消化態流動食と半消化態流動食のICU入室日数を基に、特定集中治療室管理料を計算しました。特定集中治療室管理料1・2、特定集中治療室管理料3・4、特定集中治療室管理料5・6の場合に分けて、患者一人当たりの金額を算出しました。その結果、高たんぱく消化態流動食を使用することで、ICU入室日数が短縮され、患者一人当たりの特定集中治療室管理料が146,140円~256,560円安くなるという計算結果となり、重症病態患者に対する高たんぱく消化態流動食の使用により、医療費削減につながる可能性が示唆されました。
特定集中治療室管理料(1日につき)

各流動食使用時における保健医療費算出結果


酒井 清悟(さかい せいご)
(ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー)
‐発表概要‐
演題名:ICUにおける高たんぱく消化態流動食使用による費用削減効果の検討
評価方法:既存報告を基にICU在室日数を仮定したシミュレーション
評価項目:高たんぱく消化態流動食使用時および半消化態流動食使用時の医療費(特定集中治療室管理料)
発表者:酒井 清悟, 髙野 太樹,鎌田 征和,市川 正樹(ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー),五十嵐 中(東京大学大学院 薬学系研究科)
食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食による経腸栄養不耐症減少に伴う費用削減効果の検討
経腸栄養を実施中の患者では、下痢、嘔気、消化管逆流などの経腸栄養不耐症(Enteral Feeding Intolerance;以下EFI)の合併症がみられることがあり、栄養状態や臨床的な転帰の悪化につながる可能性が指摘されています。我々のこれまでの研究結果より、食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食は下痢等の患者に使用した場合の有用性が示唆されていることから(Takano H, et al. Jpn Pharmacol Ther 2022;50(11):1973-86.)、本研究では、食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食によるEFI減少が、医療機関のコストおよび業務時間にどのような影響を与えるか、費用削減効果を試算しました。
食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食はEFIの発症を抑制する
我々が実施した調査結果から、食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食は平均14日間の使用で下痢を55.8%、逆流・嘔吐を75%改善する事が確認されています。


不耐症状の発生は、医療機関のコストおよび医療従事者の業務時間を増加させる
不耐症発生時の看護業務(おむつ交換、更衣、体位交換、吸引等処置など)にかかる時間および費用、薬剤及び医療材料等費用を条件設定し、追加コストと追加業務時間を算出した結果、下痢発生時には1日あたり1,332円のコスト増、20分の業務時間増、逆流・嘔吐発生時は、1日あたり7,794円のコスト増、141分の業務時間増になると推計されました。
食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食使用によるEFIの発症抑制は医療機関のトータルコストを削減する
食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食使用によるEFI症状抑制時とEFI症状継続時の追加コストと
追加業務時間(10人あたり14日後までの累計値)をシミュレーションした結果、食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食使用により、下痢発生時のコストは約56,000円、業務時間は約14時間減少、逆流・嘔吐発生時のコストは約440,000円、業務時間は約132時間減少すると推計されました。
下痢発生による追加コストおよび追加業務時間


逆流・嘔吐発生による追加コストおよび追加業務時間



髙野 太樹(たかの ひろき)
(ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー)
‐発表概要‐
演題名:食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食による経腸栄養不耐症減少に伴う費用削減効果の検討
対象:既存の栄養管理の方法でEFIを発症した患者に対し、食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食を使用した際のコストおよび業務時間の推計値
評価項目:経腸栄養不耐症の発生による医療機関のトータルコスト, 経腸栄養不耐症の発生による看護業務時間(食物繊維含有乳清ペプチド消化態流動食を使用しない場合の製品費用が固定できないため、流動食費用は除外)
発表者:髙野 太樹,鎌田 征和,市川 正樹(ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー),佐々木 雅也(甲南女子大学 医療栄養学部 医療栄養学科),五十嵐 中(東京大学大学院 薬学系研究科)

ネスレ ヘルスサイエンス
■ネスレ ヘルスサイエンスについて
ネスレ ヘルスサイエンスは、2011年食品飲料業界のリーディングカンパニーである「ネスレ」によって創設された、先進的なヘルスサイエンスカンパニーです。世界140カ国以上で、12,000人以上の社員が在籍し、消費者向け健康製品、医療介護施設向け栄養補助製品、科学的知見を取り入れたビタミンやサプリメントなど、幅広いブランドを展開しています。「高い付加価値」と「グローバルな研究開発力」を強みとし、「栄養の力」を基軸に、総合的に健康をサポートする提案をしています。
■ネスレ ヘルスサイエンスのパーパスについて
ネスレ ヘルスサイエンスは、“Empowering healthier lives through nutrition(栄養を通じて、人々のより健康的な生活を支援すること)”をパーパスとしています。消費者、医療・介護現場が願う健康的な生活のため、高品質で科学的根拠に基づく栄養ソリューションを顧客に提供しています。
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