小売業界の2021総括&22年展望 売上第一から粗利第一への変革真っただ中に
在庫分析クラウド「FULL KAITEN」瀬川の年末談話
本リリースの内容は、一報を頂ければ、各種まとめ記事等で瀬川のコメントとして自由に引用していただいて構いません。
- 1.売上至上主義の限界と「粗利経営」の兆し
~2021年総括~
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって消費行動が大きく変化し、小売業界は大きな影響を受けました。需要の減退はコロナ禍が2年目に入った2021年も続いたということです。しかし、コロナ禍を「点」ではなく、「流れ」の中の1つとして捉えると、需要消失はコロナ禍に関係なく不可避だったことが分かります。
なぜかと言うと、2018年の小売業販売額は144.9兆円で、翌2019年は145.0兆円とほぼ横ばいなので、2019年は頭打ちだったということです。「失われた20年」の間に消費支出は多い世代で月間6万円超も減少したうえ、2019年は50万人、2020年は53万人の人口が減少しました。2025年からは約50年にわたって毎年100万人前後の人口が減っていくと推計されています(※人口動態は合計特殊出生率のような大きく変動しにくい数値で長期の変化を予測するので、様々な統計の中で最も信頼できるものの1つとされています)。
つまり、2025年を転機に加速する人口減少による需要消失という環境下では、コロナ禍と同じ事が起こるはずです。こうした縮小市場では、顧客の奪い合いによる過度な価格競争が生じます。
2020年夏以降、ギャップジャパンやイオンリテールなどが相次いで定価を下げたのに続き、ジーユーが2021年春夏物を最大3割値下げしました。そして2021年春、株式時価総額がアパレルで世界一となったファーストリテイリングがメインブランド「ユニクロ」で実質9%もの値下げを断行するに至り、良品計画も主要品目の値下げで追随しました。
大手企業がこれだけ値下げを断行したということは、消費者の購買動向も安さにより敏感になるはずで、そうなると中小企業も価格競争に突入することが増えると予想されます。
ただ、小売業界を支える大多数の中堅・中小の会社が大資本の会社に価格競争を挑んでも勝ち目がないのは明白です。大企業に価格競争を挑む中小企業が増えると、倒産やM&Aなど企業淘汰が進むはずです。
ファーストリテイリングの「ユニクロ」や良品計画の「無印良品」でも値下げ戦略が軌道に乗らず、感染拡大による巣ごもり需要や、為替の円安や原材料の高騰など、大きな影響を受けました。本年9月は新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言が月初から月末まで続いた影響で客足が遠のき、下旬になっても気温が高く秋冬物が動きにくいという要因もあり、値下げ戦略は不発に終わりました。ファーストリテイリングは2021年10月、決算発表の場で、値引きに依存するなどして売上を無理に追うのではなく、収益性と効率性を重視する方針(すなわち利益重視)を打ち出しました。規模で圧倒的優位に立つ同社でさえも、野放図な「売上第一」経営から軌道修正を図っているのです。
繰り返しになりますが、お客様の人数も消費できるお金も減る縮小市場でこれまでのような供給過多が続くと、お客様の奪い合いになります。すると値引きや広告に頼る頻度が高まり、価格競争になります。価格競争は利益を圧迫し体力勝負となるため、資本の大きさがものを言う戦いになります。
値引きに依存し売上規模ばかりを追うと価格競争に巻き込まれ利益を失い、商品の原価に投資できなくなります。結果、商売で得た粗利で商品に付加価値をつけられず、同質化した商品が増えます。このことから、昨今のような縮小市場では売上より粗利を追う経営が正しいといえます。
売上第一の経営は経済が右肩上がりに成長することを前提としており、コロナ禍により景気後退が加速した縮小市場では、粗利を第一に考えた経営へビジネスモデルを転換する潮目が到来した一年だったといえるでしょう。
- 2.粗利経営によって付加価値で競争する時代に
~2022年から起きる変化と展望~
前章で述べたように、これから日本の総人口と生産年齢人口は減少し、高齢化も加速します。「失われた20年」の間に消費支出は多い世代で月間6万円超も減少し、国民の所得は伸びず、高齢化の加速も相まって消費する力も減退します。すると消費者にとってはお金を使うということ自体が貴重な体験になり、買い物に対する期待値が上がります。
しかし、供給サイドである小売企業を見てみてください。値引きやセールが常態化し、利益率が低調です。利益を稼ぐために売上を作ろうと在庫を増やし、販売力を超えた在庫を抱える企業が後をたちません。増えすぎた在庫はセールで処分し、それでも売れ残った在庫は評価損を計上するしか手がなくなります。
このように、売上を重視して価格競争に陥ると、値引きや評価損によって粗利が大きく減ってしまいます。商品原価に投資する唯一の原資が粗利益なので、粗利が減ると商品に投資できなくなります。その結果、同質化した商品が増えることになり、似たような商品がどのお店でも売っている状態になるので、消費者は欠品の痛みを感じにくくなっています。これでは、「このブランドが好き」というブランド価値も生まれません。
2021年は売上第一主義を打破しようとする企業が出始め、小売業界の潮流が変わり出した一年だったと思います。弊社には日本を代表する小売企業から、在庫問題を解決しビジネスモデルを売上第一から粗利第一へ変革するための相談が多数寄せられました。
そして2022年は、この潮流が加速する1年になるでしょう。
なぜなら、2022年は2025年から加速する人口減少と高齢化に対応する時間として、寸前のタイミングだからです。
これから2022年以降、そうした現状を打破するために「粗利経営」の出番となります。粗利を第一に考えると、値引きや棚卸資産の評価損を減らすことが大事になり、必然的に在庫の生産量は減ります。そうすると商品原価は上がっていきます。
でもこれを悪いことだと捉えるのではなく、原価が上がる分、商品作りに投資して他者と差別化できる競争力のある商品を作ることができると考えるわけです。
付加価値の高い商品なので値引きせずに済みますから、粗利益の最大の敵である値引きと評価減(棚卸資産の評価損)の発生を減らすことができます。
さらに粗利経営に変わると、商品・人・売り場の三つに投資できます。付加価値があり差別化できる商品づくりや、従業員の皆さんのスキルアップや待遇改善、売り場の世界観・体験づくりに対しても投資ができるようになります。
これはつまり、商売をする人にとって最も楽しいはずのブランディングの時代が到来するということです。ここでいうブランドというのはラグジュアリーブランドではなく、消費者一人ひとりにいかにそのブランドに対して満足してもらえるか、どれだけ素晴らしい購買体験を提供できるかを指します。
2022年以降の小売業界は、ごく一部の超大資本企業が「価格訴求」で勝負し、それ以外の大多数の中小企業は「付加価値訴求」で勝負するという二極化が起きると思います。
そしてこの「付加価値訴求」は商売本来の姿への回帰と同じですので、むしろ小売企業にとっては消費者のワクワクと満足をクリエイトする楽しい時代になるでしょう。
2022年から加速する粗利経営への潮流がこのパラダイムシフトを牽引すると私は見ています。
- 3.世界の大量廃棄問題の解決へ
~フルカイテンのミッション~
人口減少や高齢化は日本だけの話ではなく、中国、韓国、そしてヨーロッパではイタリアなど複数の国が同じ問題を抱え、経済成長の永続を前提とした売上至上主義は明らかに曲がり角を迎えています。
とはいえ、企業は事業活動を通じて利潤を上げていかなければなりません。こと小売に関しては、無駄な在庫を持たずに利益とキャッシュフローを増やしていく粗利経営が必要不可欠であることは前章で触れたとおりです。
粗利経営を実践するには、在庫の効率を上げることが効果的です。在庫効率を上げるというのは、在庫1単位あたりの利益を増やすということです。弊社は小売企業が在庫の効率を上げることを支援する在庫分析クラウドシステム『FULL KAITEN』を開発していますが、FULL KAITENを導入する企業が増えれば増えるほど、無駄な在庫が減り粗利が増え、必要な商品が必要な量だけ流通する経済に近づきます。
今後もさらに多くの企業にFULL KAITENを導入していただくことで、世界の大量廃棄問題は解決に向かい、私たちの世代は子供たち・孫たちの世代により良い地球を残すことができるはずです。弊社は2022年もテクノロジーの力で社会を変革し続けます。
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【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月
代表者: 代表取締役 瀬川直寛
事業内容: 在庫の効率を上げる在庫分析クラウドサービスの開発・提供
【本件の問い合わせ先】
フルカイテン株式会社
戦略広報チーム 斉藤
電話: 06-6131-9388
Eメール: info@full-kaiten.com
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