AIサーバー向けMOSFET 業界TOP(※)のSOAとON抵抗の両立
世界的なクラウドプラットフォーム企業の推奨部品にも認定
要旨
ローム株式会社(本社:京都市)は、48V系電源のAIサーバー向けホットスワップ回路(*1)や、バッテリー保護が求められる産業機器電源などに最適な100V耐圧パワーMOSFET(*2)「RY7P250BM」を開発しました。
新製品は、今後需要の拡大が見込まれる8080サイズのMOSFETで、既存品からの置き換えが容易です。また、高SOA耐量(*3)(条件:VDS=48V、Pw=1ms / 10ms)と低ON抵抗(RDS(on))(*4)を両立。これにより、ホットスワップ(電源投入)動作時の高い製品信頼性を確保しながら、電源の効率を最適化し、消費電力と発熱の低減を可能にします。

サーバーの安定稼働と省エネを両立するには、ホットスワップ回路において大電流負荷に耐える高いSOA耐量が不可欠です。特にAIサーバーのホットスワップ回路では、従来のサーバーより高いSOA耐量が求められています。新製品は、パルス幅10msで16A、1msにおいても50Aという業界TOPの性能を実現しており、従来のMOSFETでは対応が難しかった高負荷アプリケーションに対応できます。

新製品は、業界TOPの高SOA耐量のMOSFETとして低ON抵抗も両立し、通電時の電力損失や発熱を大幅に削減します。8080サイズの一般的な高SOA耐量を持つ100V耐圧MOSFETのON抵抗は2.28mΩ程度ですが、新製品は約18%低減した1.86mΩ(条件:VGS=10V、ID=50A、Tj=25℃)を実現。この低ON抵抗により、サーバー電源の高効率化、冷却負荷の低減、電力コスト削減に貢献します。
また新製品は、世界的なクラウドプラットフォーム企業の推奨部品にも認定されており、今後AIサーバーで採用が進む見込みです。信頼性と省エネが重視されるサーバー分野において、高いSOA耐量と低ON抵抗のバランスがクラウド用途で評価されました。
なお、新製品は、当面月産100万個の体制で量産(サンプル価格800円/個:税抜)を開始しています。生産拠点は、前工程がローム株式会社(滋賀工場)、後工程がOSAT(タイ)です。インターネット販売も開始しており、コアスタッフ™オンライン、チップワンストップ™などから購入できます。
今後ロームは、サーバーや産業機器向けの48V電源対応製品ラインアップを継続的に拡充し、高効率かつ高信頼性のソリューションを提供することで、持続可能なICTインフラの構築や省エネに貢献していきます。
※2025年5月22日現在 8080サイズパッケージの100V耐圧パワーMOSFETでローム調べ
背景
AI技術の急速な進化に伴い、データセンターの負荷は飛躍的に増大し、サーバーの電力消費も年々増加しています。特に、生成AIや高性能GPUを搭載したサーバーの普及が進むにつれ、さらなる電力効率の向上と大電流対応という相反するニーズの両立が課題でした。こうした中、従来の12V系電源より変換効率に優れた48V系電源システムへの移行も進んでいます。また、サーバーを稼働したままモジュール交換を実現するホットスワップ回路においても、突入電流(*5)や過負荷時の破壊を防ぐために、高SOA耐量と低ON抵抗を兼ね備えたMOSFETが求められています。
新製品「RY7P250BM」は、8080サイズにおいて業界TOPの高SOA耐量と低ON抵抗を両立し、データセンターでの電力損失低減や冷却負荷軽減に寄与し、サーバーの高信頼性と省エネに貢献してまいります。
製品主要特性

アプリケーション例
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48V系統AI(人工知能)サーバーや、データセンターの電源ホットスワップ回路
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48V系統の産業機器電源(フォークリフト、電動工具、ロボット、ファンモーター等)
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AGV(無人搬送車)等のバッテリー駆動産業機器
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UPS、非常用電源システム(バッテリーバックアップユニット)
インターネット販売情報

注) 「コアスタッフ™」、「チップワンストップ™」は、各社の商標または登録商標です。
EcoMOS™(エコモス)ブランドについて
EcoMOS™は、パワーデバイス分野において省エネ化が要求されるアプリケーションに最適な、ロームが開発するシリコンパワーMOSFETのブランドです。
家電、産業機器、車載などの幅広いアプリケーションに搭載されるEcoMOS™は、ノイズ性能やスイッチング性能などの多岐にわたるパラメータから、用途に応じた製品選択ができるラインアップを展開しています。

・EcoMOS™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
用語説明
*1) ホットスワップ回路
機器の電源を稼働させたまま部品の取り外しや挿入を可能にするホットスワップ機能を支える回路全体のこと。MOSFETや保護素子、コネクタなどで構成され、部品挿入時に発生する突入電流の抑制や過電流保護を担い、システムや接続された部品を安全に動作させる役割を果たす。

*2) パワーMOSFET
電力変換やスイッチング用途に使用されるMOSFETの一種。ソースに対して正の電圧をゲートに印加することで導通状態になるNchが主流で、Pchに比べてON抵抗が小さく高効率であることが特徴。低損失、高速スイッチングを実現できるため、電源回路・モータ駆動回路・インバータ等に広く採用されている。
*3) SOA(Safe Operating Area)耐量
デバイスが破損せず安全に動作できる電圧・電流の範囲のこと。この安全動作領域を超える動作は熱暴走や損傷の原因となるため、特に突入電流や過電流が発生するアプリケーションでは、SOA耐量を考慮する必要がある。
*4) ON抵抗(RDS(on))
MOSFETを動作(オン)させたときのドレイン・ソース間の抵抗値のこと。値が小さいほど、動作時のロス(電力の損失)が少なくなる。
*5) 突入電流(Inrush Current)
電子機器の電源を入れた際に、瞬間的に流れる定格電流値を超えた大電流のこと。電源回路の部品等に負荷がかかるため制御することで、デバイスの損傷防止やシステムの安定化が図れる。
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