酸化チタン光触媒を用いた空間殺菌が、がん患者の発熱性好中球減少症(FN)の発生率を低下
~新たな空間殺菌技術として、感染弱者への感染症予防への貢献が期待~
日本大学医学部内科学とカルテック株式会社(本社:大阪市中央区、社長:染井潤一)は、共同研究で酸化チタン光触媒を用いた空間殺菌が、がん患者の重症感染症である発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)の発生率を低下させる結果を得ました。本研究の成果は、感染弱者である免疫力の低い患者に対し、実使用環境下において新たな空間殺菌技術として新型コロナウイルスのみならず、一般細菌やウイルス、真菌による感染症予防への貢献が期待できます。
■背景と研究概要
発熱性好中球減少症(FN)は、「好中球数が500/μL未満、あるいは1,000/μL未満で、48 時間以内に500/μL未満に減少すると予測される状態で、腋窩温37.5℃以上(または口腔内温38℃以上)の発熱を生じた場合」です。これは、抗がん剤、とくに殺細性抗がん剤による治療においてしばしばみられる副作用で、複数の、もしくは重篤な合併症を有する患者では、致死率は20%を超えることもあります。
そのため、化学療法を行う医療従事者にとってFNの予防は喫緊の課題の一つです。
現状の空間殺菌技術は、導入および維持にかかるコストの高さから、必ずしも現場において理想的とはいい難いのが実情です。そのような背景から、今回、TiO₂光触媒を用いた空間殺菌装置を活用する今回の研究に至った次第です。
本研究では、光触媒酸化チタンにLED光を照射する機構を備えたLED-TiO₂装置(カルテック製KL-W01)を、病室21.5~35㎥あたり1台設置し、院内感染発生率、および浮遊微生物数の変化を調査しました。
■FNの発症を有意に抑制:好中球500/μL未満の患者で院内感染が有意に減少
病室21.5~35㎥の空間容積にあたり1台の光触媒装置を設置し、設置前群と設置後群で院内感染の発 生を比較したところ、好中球が500/μL未満の患者で有意な減少を示しました(下図)。

■FNの原因微生物をLED-TiO₂装置で排除
本研究では、FN患者の血液培養および真菌抗原検査で、ブドウ球菌属、大腸菌、カンジダ属、アスペ
ルギルス属、バチルス属をFNの原因として同定しました。この内、ブドウ球菌属、カンジダ属、アスぺ ルギルス属、バチルス属が病室内の浮遊微生物として検出されました。確認された浮遊している起因菌が、以下に示すように減少したことが、FN発症が減少した原因と考えられます。

本研究では、患者不在の病室、患者在室中の病室の2パターンで浮遊微生物数を確認しました。まず、患者不在の病室で、同装置の稼働後に浮遊微生物数が有意に減少しました(p<0.001)(左図)。
また、患者在室中の病室では、装置動作の有無に係わらず、患者が病室にいる間の浮遊微生物数は医療処置中に増加するが、装置の作動により、空気中浮遊微生物数は医療処置後に急速減少しました(下図)。

■研究者コメント
飯塚和秀 博士(日本大学医学部内科学系血液膠原病内科学分野、および臨床検査医学科 助教)

TiO₂光触媒装置は、こうした効果のほかに、導入・維持のコストが比較的少なく、また、メンテナンスが水によるフィルター洗浄のみと簡便である点も魅力的です。
本研究によってTiO₂光触媒を用いた空間殺菌の有用性は明らかになりましたので、同様の研究が増え、広く一般的な空間殺菌の方法の一つとして取り上げられることを願っています。
また、本研究論文は世界初の光触媒による空間消毒の感染症予防効果を立証した臨床試験です。より身近で気軽にできる感染予防として、光触媒装置を信頼していただくためのエビデンスの一つとなれば幸いです。
略式
2007年 北里大学医学部医学科卒業
2015年 順天堂大学大学院にて医学博士号を取得
2019年より日本大学医学部内科学系血液膠原病内科学分野、及び
臨床検査医学科の助教を務めている
現在は、臨床医として診療に従事する傍ら、感染対策室において
院内感染対策に携わっている

■会社名:カルテック株式会社
所在地:〒541-0059 大阪府大阪市中央区博労町3-3-7ビル博丈
HP:https://www.kaltec.co.jp
instagram:https://www.instagram.com/kaltech_jp/
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