最低賃金、53.2%が「引き上げる」と回答。販売価格に「すべて転嫁できた」事業所は、わずか4.7%|中小企業における最低賃金引き上げに関する実態調査
採用業務マーケティングツール「採用係長」を提供する株式会社ネットオン(本社:大阪市北区、代表取締役CEO:木嶋 諭、以下ネットオン)は、「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の人事・採用担当者を対象に、最低賃金の引き上げに関するアンケート調査を実施しました。
<調査結果>
・53.2%が「最低賃金を引き上げる」と回答。「下回っていないが、引き上げる予定」は、前年調査より7.7ポイント増加した
・引上げ理由1位は「最低賃金の引き上げに対応するため」。約9割が引き上げ後の最低賃金額を「負担に感じる」
・人件費の上昇分を販売価格に「転嫁する」は、4割未満。そのうち販売価格にすべて(10割)転嫁できた事業所は、わずか4.7%に留まった
・最低賃金の引き上げに対して、「引き上げと合わせて、扶養控除廃止等の制度改正が必要」「価格転嫁が厳しく、経営継続が難しい」「引き上げても人材確保は難しい」などの意見が挙がった
令和6年(2024年)度の最低賃金の改定は、全国平均で50円の引き上げが決定し、1055円(加重平均)となりました。引き上げ幅は昨年度を更新し、過去最大。1000円を超える地域は、昨年の8都府県から16都道府県へと拡大しています。
こうした動きは日本経済にとっては好材料ではありますが、賃上げの原資確保に課題を抱える中小企業にとっては死活問題ともいえる状況です。
今年度の最低賃金の改定に対し、中小企業はどのように対応するのでしょうか。
株式会社ネットオンは、最低賃金の改定に伴う賃上げの予定について、採用マーケティングツール「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。
<調査概要>
調査期間 :2024年8月20日(火)~9月3日(火)
調査方法 :インターネット調査
調査対象 :「採用係長」利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数:173
<調査結果の注意点>
%を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。
53.2%の事業所が「賃金を引き上げる」と回答
はじめに、最低賃金の改定による賃上げ予定について質問したところ(n=173)、もっとも多かったのは「引き上げる予定はない」事業所で、46.8%を占めました。
賃金を引き上げる事業所は、「最低賃金を下回っていないが、引き上げる予定」が23.1%、「下回っていないが、引き上げる予定」が30.1%です。事業所全体では、過半数(53.2%)が賃上げを予定していることが分かりました。
前回調査(2023年8月実施/n=210)との比較では、引き上げ予定の事業所(「最低賃金を下回っているため、引き上げる」+「下回っていないが、引き上げる」)の割合が10.1ポイント低下。一方で、引き上げ予定の事業所のうち、「下回っていないが、引き上げる」事業所の割合は7.7ポイント増加しました。
賃上げ予定の割合は減少しましたが、賃上げを行う事業所については、昨年度よりも積極的な賃上げを行う事業所が多い結果となっています。
引き上げ理由は、「最低賃金の引き上げに対応するため」
Q1で「引き上げる予定」と回答した事業所へ理由について質問したところ(n=92)、71.7%が「最低賃金の引き上げに対応するため」と回答しています。
2位以下には、「人材採用を有利に進めるため」「従業員の定着率向上(引き留め)のため」が続きました。
一方、「業績が回復した(伸びた)ため」は、7.6%に留まっています。
89.1%が引き上げ後の最低賃金額を「負担に感じる」
引き上げ予定の事業所へ、引き上げ後の最低賃金額を負担に感じるかどうかについて質問したところ(n=92)、57.6%が「非常に負担に感じている」と回答しています。「多少負担に感じている(31.5%)」と合わせると、「負担に感じる」事業所は89.1%。最低賃金の引き上げが、中小企業の経営に大きな影響を与えていることが分かります。
もっとも賃金が低くなる職種は「調理」職。平均時給は1021円
すべての事業所へ、今回の最低賃金の引き上げによってもっとも賃金が低くなる職種と、その賃金(時給換算)について質問しました(n=173)。
引き上げ後(10月1日時点)にもっとも賃金が低くなる職種は「調理」職。賃金(時給換算)の平均額は1021円です。
最低賃金は地域によって異なるため一概に語ることはできませんが、今回の調査では職種間で500円以上の賃金差が見られました。
人件費の上昇分を「販売価格に転嫁する」事業所は、4割未満
Q1で「引き上げる予定」と回答した事業所へ、人件費の上昇分を販売価格に転嫁するかどうかについて質問したところ(n=173)、63.0%の事業所が「価格転嫁を行わない」と回答しました。
6割以上の事業所が上昇する人件費を価格に転嫁できないことが明らかとなり、賃上げにおける課題が鮮明になっています。
販売価格にすべて(10割)転嫁できた事業所は、わずか4.7%
Q5で「価格転嫁を行う」または「行った」と回答した事業所へ、販売価格に転嫁した割合について質問したところ(n=64)、もっとも多かったのは「1~3割」で73.4%でした。
上昇分すべて(10割)を転嫁できた事業所は4.7%です。販売価格に転嫁できた場合においても、上昇分すべてを転嫁することは決して容易ではないことを示す結果といえます。
不安定な株式市場の影響は「ない」が67.1%
すべての事業所(n=173)へ、昨今の株価の影響について質問しました。
「影響がある」と回答したのは32.9%。現状では、「影響がない」事業所が多数を占めています。
価格転嫁に関する課題が多数。経営悪化を懸念する声も
最低賃金の引き上げに関する意見や感想を求めたところ、賃上げによる経営負担に対する懸念、価格転嫁や人材確保における制度上の課題についての意見を中心に回答が集まりました。
ここでは58件の回答の中から、一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。
<自由回答・一部抜粋>※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地
■最低賃金の引き上げに対する意見
・適正水準は分からないが、国際競争力等も踏まえて、もう少し現実的な賃上げをしないと生活は苦しいままだと思う(商社・卸売/30~49名/群馬県)
・県でひとくくりにされても困る。賃金を上げるなら雇う側にも補助が必要(小売/10~19名/愛知県)
・中小零細企業には相当の痛手。継続的に補助金(返済義務なし)が欲しい(飲食/5~9名/茨城県)
・配偶者控除などの撤廃なども含めて検討しなければ、就労希望者は働くことができない(金融・保険/5~9名/奈良県)
・扶養の範囲で仕事をしている人の労働時間を減らすことについて、国としてはどう考えているのか知りたい(医療/10~19名/茨城県)
■価格転嫁に関する課題
・フランチャイズ経営で価格を変更できないため、賃金引き上げはかなり負担になる(教育/5~9名/大阪府)
・医療は国が定める診療報酬によるので、価格を操作できない。その中での最低賃金の5%の引き上げはとても厳しい(医療/5~9名/大阪府)
・介護報酬も引き上げてほしい(介護・福祉/10~19名/沖縄県)
・国がサービスの料金を定める業種では、賃金を上げても収入は増えない(介護・福祉/10~19名/大分県)
・最低賃金を上げるのは構わないが、価格転嫁が不可能な業種については賃金を引き上げるための予算を作ってほしい(介護・福祉/10~19名/千葉県)
■経営悪化に対する懸念
・価格転嫁が厳しい中で最低賃金が毎年上がり、経営継続が難しい状況に追い詰められている(飲食/5~9名/大阪府)
・この景気の悪さで賃金の引き上げは、非常に厳しい。廃業する会社も増えると思う(そのほか生活関連サービス/5~9名/東京都)
・引き上げしても人材確保は難しい(医療/5~9名/鹿児島県)
まとめ
今回の調査では、2024年10月から改定される最低賃金の引き上げに対するアンケート調査を実施しました。その結果、53.2%の事業所が「引き上げる予定」であることが分かりました。引き上げ予定の事業所は前回調査(2023年10月実施/n=210)よりも10.1ポイント低下しましたが、「最低賃金を下回っていないが、引き上げる」事業所の割合は7.7ポイント増加しています。
賃上げ理由の2位「人材採用を有利に進めるため」と、3位の「従業員の定着率向上(引き留め)のため」は、いずれも30%近い事業所が選択しました。一方で「業績が回復(伸びた)した」は7.6%に留まっており、これらの点からはいわゆる“防衛的賃上げ”を選択する事業所が少なくなかったことが読み取れます。
今回の調査では、価格転嫁の有無についても質問しました。結果は「価格転嫁を行わない」と回答した事業所が63.0%。「価格転嫁を行う(行った)」事業所についても、人件費上昇分のすべて(10割)を転嫁できた事業所は4.7%です。厳しい経営状況に言及する自由回答からは、価格転嫁できなかった上昇分は生産性の向上でもカバーできていないことが示唆されます。
近年、最低賃金の引き上げ幅は過去最高を更新し続けており、大幅な引き上げは今後も継続するでしょう。適切な価格転嫁、生産性の向上、支援制度の活用など、中小企業には持続的な賃上げを前提とした経営の舵取りが求められています。
株式会社ネットオンは、採用マーケティングツール『採用係長』の提供を通じて採用課題の解決に貢献し、中小企業の持続的な成長に寄与してまいります。
<「採用係長」について>
中小・地方企業での利用に特化した採用マーケティングツールです。最短2分で訴求効果の高い採用サイトが完成し、採用ブランディングから採用プロモーションまで採用業務全般を支援します。作成した採用サイトは、ワンクリックで最大5つの求人検索エンジンサイト等に自動連携・一括掲載でき、全国の求職者への訴求と集客力の向上を実現します。また、当社専門スタッフによるサポートにより、採用の成功率をより高めます。
公式HP:https://saiyo-kakaricho.com
<ネットオンについて>
2004年の創業以来、Webマーケティング支援事業を行うネットオンは、“企業と求職者の最高の出会いを生みだしていきたい”という想いから、2017年より採用マーケティングツール「採用係長」のサービスの提供を開始しました。以来順調に実績を増やし、国内累計69,000超(※)の事業所様にご利用いただくサービスへと成長しています。ネットオンは今後も、全国の採用難・人材不足の解消を目指して企業の採用活動を支援し、中小企業・地方企業が強く活躍する社会の創造に貢献してまいります。
(※)2024年9月時点
<会社概要>
代表取締役CEO :木嶋 諭(きしま さとし)
所在地 :大阪市北区野崎町7-8 梅田パークビル1F
会社設立 :2004年10月1日
事業内容 :採用マーケティングツール「採用係長」の開発・運営
資本金 :7億3,628万円(資本準備金含む)
公式HP :https://neton.co.jp/
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