【衣服の貧困】 7割超 子どもの服が古くなっても新調できず ひとり親家庭が直面する衣服の困難・・・対人関係に影響も
子どもが学校で「お前の服ボロボロ」と言われ・・・ ~ひとり親家庭へのアンケート~
今回、グッドごはんを利用するひとり親家庭を対象にアンケートを行い、衣服に関する悩みや困りごとについて調査しました。
調査の結果、低所得のひとり親家庭は、子どもの成長や年齢に合った衣服の用意ができないなど、衣服に関する困難を高い割合で有していることが明らかとなりました。
さらに、場面に応じた衣服を持ち合わせていないことにより外出や周りとの交流を控えるなど、衣服の困難が社会生活や人とのコミュニケーションに影響を及ぼしているケースもみられます。
アンケート概要
「ひとり親家庭の衣服の困りごとに関するアンケート」
アンケート(1)
・実施日程:2023年11月1日~12月31日
・対象者:「グッドごはん」への新規利用登録を行ったひとり親家庭で、ひとり親家庭等医療費受給者証の保有者(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・回答者数:732名
アンケート(2)
・実施日程:2023年11月16日~11月26日・対象者:グッドネーバーズ・ジャパン開催の衣服無料提供イベントに申し込んだ「グッドごはん」利用者 ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・回答者数:768名
●約8割が必要な衣服を買えなかった経験あり
「過去1年間に必要な衣服を買えなかった経験」について、回答者[1]の8割近くがその経験があると答えました。
自由記述回答では、「服や靴が買えず、全員靴に穴が空いているため、雨の日が辛い」といった悲痛な声が寄せられました。
●7割超が子どもの服の新調をあきらめた経験あり
ひとり親家庭になって以降の衣服の使用・調達状況に関して回答[2]を得たところ、ひとり親家庭の保護者において、自身の古くなった服(破れている・形が崩れている・落ちない汚れがある等)を着続けることが「かなりある」回答者は38.3%、「まあまあある」回答者は46.0%に及びました。
さらに、子どもの服について、「経済的に余裕がないことが理由で、子どもの服が古くなった時やサイズが合わなくなった時に新しく購入することをあきらめた経験がある」(「かなりある」「まあまあある」)と答えた回答者は7割を超える結果となりました。
回答者からは、下記のとおり衣服にまつわる困難の声が寄せられました。
まず食べる事、学費、光熱費、家賃です。残りがあれば衣服を買いますがひとり親になってからは私の収入だけなので余裕がなく贅沢出来ません
私の普段着は、子供の過去の中学校の服やジャージです。息子もジャージ着用しています。食べるのが精一杯なので、洋服まで手が回りません
普段のおかずを買うにもままならない状況の中、子供達は状況を察してくれていて服を買ってほしいなどと言わなくなり、その子供達の優しさに胸が苦しくなります
上記のコメントにみられるように、経済的に余裕のない暮らしにおいてかろうじて食費を賄い、ましてや十分な食事をとることさえ難しい状況において、家計の中で衣服に充てる費用の優先順位が低くなる家庭は少なくありません。
そのような生活において、子どもの成長や年齢に合わせて衣服を用意することが難しい実情に苦悩する声が上げられました。
中学生になり、息子は私の身長を越しました。カッコよく流行りのものも着たいだろうに、親を気遣って小さい私のパーカーなどを着て外に行きます
少しキツくても着てもらって、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。子どもの下着もたくさん買えないので、ヘビーローテーションで使ってもらい、時々乾ききらないものも着てもらうことがある
息子はサイズが小さくても我慢して、私にはあまり話しません。先日も靴きつくない?と確認したら2足がパンパンできつくって、なかなか言い出せなかったのかと思ったら、気がついてあげられずごめん!と思いました
●衣服の困難が対人関係や学校生活に影響する場合も
本アンケートの自由記述回答[2]より、衣服を十分に持てないことで、ひとり親家庭が心理面や人とのコミュニケーションにおいて不自由さを抱えているケースが明らかとなりました。
同じ服ばかり着てる・ダサい、と周りから思われてるんだろうなと人と会う時に萎縮する気持ちがある
子供の保護者会に着て行くようなお洒落着も持ち合わせていないので、できるだけ、他の人とは関わらない様にしています
お友達と洋服の買い物をしてみたいと娘に言われても、経済的時間的な余裕のなさから応えてあげられません
子どもが友達と遊びに行く約束をしてきたときに、着ていく服がなくて、約束を断ったと聞いた
子どもが体育の着替えの時に、襟の所が少しだけ擦り切れている服を着ていて、お友達にお前の服ボロボロ〜と言われベソをかいて帰ってきた事があり、ごめんねって言いながら抱きしめた
さらに、子どもの学校生活・行事等において、衣服に関する困難が顕著に表れる場合があります。
制服の無い高校へ入学した息子の入学式のスーツが夏物しか買えなく、ペラペラで、周りから浮いていて、情けなかった
学校の運動会で、決まった色でなるべく柄が無いTシャツを着るように言われ、買えなかったので、Tシャツを裏返して着させてしまった
子供から授業参観はきれいな洋服で来てと言われ、洋服が用意できず授業参観に行けなかった
●衣服の困難が表す相対的貧困
日本で深刻化している貧困は「相対的貧困」と言われ、その国や地域の生活水準において大多数の人よりも貧しい状態を示します[3]。本アンケート結果にみられるようなひとり親家庭が抱える衣服の困難は、この相対的貧困の様相を如実に表しているものと考えます。
物理的に身体を守れるだけの最低限の衣服があれば、生命に関わるような深刻な状態に陥る心配はありません。しかし、周りと比べて見劣りする服を着ていること、場面に応じた服装ができないこと、年齢や身体の成長に合わせて衣服を選べないことにより、暮らしのあらゆる場面で困難や生きづらさに直面する可能性が生まれます。
さらに、そのような困難はその場限りでなく、子どもたちの将来にわたって暗い影を落とすことが懸念されます。なぜなら、「ボロボロの服を着ている」と友達に言われた経験や、着て行く服がなく周りとの交流を控えるといったことにより、自己肯定感や対人関係を育む機会が不足し、子どもたちの心理面や社会生活に長期的な影響を及ぼすリスクが危惧されるためです。
加えて、衣服は自己表現の手段でもあることから、自分が何を着るか・着たいかの選択が限られることはすなわち、子どもたちが自分自身の価値観や好みを知ったり反映したりするプロセスや体験が制限されることを示唆します。
日本では、年間約15億着もの衣服が売れ残り、廃棄処分されると言われています[4]。
物的な豊かさの陰で、その恩恵を享受できない子どもたちが貧困のリスクにさらされています。
生活に不可欠な物を周りと著しい差異なく持っていること・選択できることは、暮らしの安心、ひいては子どもの健やかな成長につながるはずです。したがって、衣服をはじめとした生活必需品における困難を解消することは、一人ひとりの子どもたちが置かれた環境によらず尊厳ある生活を送るための土台づくりとして、見過ごすことのできない課題であると考えます。
[1]アンケート(1)の回答者
[2]アンケート(2)への回答
[3]国際協力機構 (2008)「指標から国を見る ~マクロ経済指標、貧困指標、ガバナンス指標の見方~」
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/11881521.pdf
[4]テレ東プラス “15億着の”売れ残り服” 多くが廃棄される現実…その衝撃の現場を取材!:ガイアの夜明け”
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2020/021106.html
■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を無料で配付する事業です。
企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品を毎月ひとり親家庭に配付しています。
2023年12月時点で、首都圏、近畿圏および九州において約50か所に配付拠点を設けています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています。
※生活保護受給中の方は対象外です
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像