歌舞伎町仕込みの味噌を造る。下司悠太個展「Whatʼs Entertainment?」を歌舞伎町のデカメロンで開催
— 味噌汁、服、家具。生活の営みを抵抗へと転換する「公開生活」の美学 —

2025年10月14日より、新宿・歌舞伎町のアートスペース「デカメロン」にて、下司悠太(げし・ゆうた)による個展「Whatʼs Entertainment?」を開催いたします。
下司悠太は、自ら仕込んだ味噌で日々味噌汁をつくり、普段着を自らの手で仕立て、自作の家具で生活してきた。そうした日々の実践や思考を、執筆・美術展示・楽曲制作といった多様な方法で発表している。ここで下司本人は、美術史的な参照項としてミエーレ・レイダーマン・ユークレスの「メンテナンス・アート」を挙げる。ユークレスが日常的な清掃や維持の労働を芸術行為へと転換したように、下司もまた、生活を支える反復的な営みを社会批評的に可視化しようとするのである。
下司は、こうした日々の実践を公開することを「公開制作」になぞらえて「公開生活」と呼ぶ。本展では、その多様なアプローチによる公開生活が観客に投げかけられる。会期中には、実際にみそ仕込みを体験する場も予定されている。「歌舞伎町仕込みの味噌」というと一見ケイオティックに響くが、この混沌とした都市生活のただ中でこそ、新たなネットワークや豊かさを発生させる契機となるでしょう。
抵抗としての生活のアティチュード
時間やお金、余裕が奪われていくことが当然のように組み込まれたこの社会において、下司は「美味い味噌汁をつくり続ける」といった実践を通じて、生活の主導権を取り戻そうとしている。それは「丁寧な暮らし」や「清貧」とは異なる、抵抗としての生活のアティチュードの提示である。「革命なんて自分には起こ せないが、自分に出来る100%の抵抗が味噌汁だった」と語る下司にとって、“抵抗”は活動を貫くキーワードである。
「他人が真似しやすいクオリティー」という美学
もう一つ重要なのが「他人が真似しやすいクオリティー」という美学だ。これは単に“低いクオリティー”を意味するのではなく、「真似してみたい」と思わせる魅力を持ち、なおかつ持続可能であることを求める。その美学は、味噌汁であれ、音楽、美術作品、ワークショップであれ、下司の営み全体 に通底している。そして、それらを横断的に展開すること自体が、「真似してみたい」と他者に思わせる効 果を持っている。
下司はケア労働そのものが持つ魅力――かっこよさ――を知っている。同時に、それが社会的に過小評価されてきた歴史も理解している。だからこそ彼は、これまで無視されてきた生の現場に、歌手や文筆家、アーティストといった「スポットライトを浴びる側」のペルソナを持ち込み、構造そのものを掻き回そうとして いるのかもしれない。
(文・磯村暖)
アーティストプロフィール

下司悠太(げし・ゆうた)
米とみそ汁の朝ご飯屋「台所」店主。
大学卒業後、会社員として勤めながら家事代行業を兼業。
2021年ごろ会社と家事代行を辞め、「反抗的味噌汁」を自費出版。 自身が社会人になった頃から始めた、米と味噌汁で生活を成立させることやボイコットのために自作できる服を設計する、等の行動を 発表し始める。 主な個展に「鉛筆はけずらないとつかえない」(2024, VALLOONSTUDIO SHIBUYA・東京)、「公開生活」(2023, アト リエサロンコウシンキョク・東京)、「ある日友達に地球のことを 教えてと言われた」(2022, SALON DU DAHU ・神奈川)、「反抗 的味噌汁」(2022, アトリエサロンコウシンキョク・東京)など。 主なグループ展に「NEW Days」(2025, Art Center NEW・横浜)、 「漂流祝祭日」(2023, 横浜市民ギャラリー・横浜)などがある。
作品










会期中のイベントスケジュール

日程 |
イベント名 |
時間 |
---|---|---|
10月13日(月) |
「台所に捧げる」 |
20:00~ |
10月17日(金) |
「みそ仕込み」 |
18:00-19:30 |
10月24日(金) |
「みそ仕込み」 |
18:00-19:30 |
10月31日(金) |
「みそ仕込み」 |
18:00-19:30 |
11月1日(土) |
「生活パーティー feat.みそ仕込み」 |
16:00–21:00 |
11月2日(日) |
「生活パーティー feat.みそ仕込み」 |
16:00–21:00 |
11月3日(月・祝) |
「生活パーティー feat.みそ仕込み」 |
16:00–21:00 |
11月7日(金) |
「みそ仕込み」 |
18:00-19:30 |
「台所に捧げる」
アーティスト杉野晋平との共作《台所に捧げる》を、個展開催前日のプレイベントにて披露いたします。会場では下司悠太による味噌汁づくりと呼応するように、調理の音と融合する形で杉野晋平の楽曲が演奏されます。演奏の後には、鑑賞者の皆さまにできたての味噌汁とご飯が振る舞われます。当日の記録映像は展示期間中に展示される予定ですので予めご了承ください。
会場:デカメロン
日時:2025/10/13 (20:00-)
参加料:1000円+ワンドリンク
「みそ仕込み」
下司悠太によるDJと味噌仕込みが同じ空間に共存する、特別な参加型ワークショップを開催します。参加者は音楽に包まれながらおよそ500gの味噌を仕込み、完成した味噌はそのまま持ち帰ることができます。歌舞伎町仕込みの味噌がゆっくりと発酵していくプロセスをお楽しみください。
会場:デカメロン
日時:2025/10/17, 24, 31, 11/7 (18:00-19:30)
参加費:2500円+ワンドリンク
事前予約制:お名前、参加希望日、参加人数をご記入の上、ご連絡ください。宛先は geshi.yuta[at]gmail.com ([at]を@に変える) あるいはInstagram (@geshi_yuta)までお願いいたします。
Instagram:https://www.instagram.com/geshi_yuta/
「生活パーティー feat.みそ仕込み」
回遊型アートイベント「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」と連動し、スペシャルイベントを開催します。下司悠太による大規模な味噌仕込みとゲストアーティストたちによる演奏、さらにこの期間だけ公開される作品展示が加わり、三日間限定の特別な時間をつくります。下司と共に「みそ仕込み」に参加し、自分で仕込んだ味噌は持ち帰ることができます。BENTEN 2 Art Night Kabukicho終了後も、それぞれの場所で発酵を続ける味噌のその過程をお楽しみください。
会場:デカメロン
日時:2025/11/1-3 (16:00–21:00)
参加料:BENTEN 2 Art Night Kabukichoのチケットをお持ちの方は参加無料。その他の方は参加費2,500 円。600ml以上の容器のご持参を推奨しております。
デカメロンについて

2020年、新宿・歌舞伎町の中心地に開廊。同店は、1348年からヨーロッパで猛威を振るったペストの様子を克明に綴ったボッカッチョによる物語集『デカメロン』を店名に冠した。
2階が展示スペース、1階のバーは展示鑑賞前後にアーティストや観覧客が交差するコミュニケーションス ペースとなっている。2021年4月にはギャラリースペースの増床を行い、実験的な現代アートの展覧会を開催し続けている。
Instagram:https://www.instagram.com/decameron_kabukicho/
展覧会概要
展覧会名:「What’s Entertainment?」
会期: 2025年10月14日(火)–11月9日(日)
会場:デカメロン
住所:東京都新宿区歌舞伎町1丁目12-4
営業時間:20:00~27:00
休廊日:月曜日 ※11月3日(月・祝)は営業いたします
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