昆虫が下水汚泥を “食べて” エネルギー資源に変える︕水ingとスーパーワームが共同研究を開始
水ing株式会社(社長︓安田 真規、本社︓東京都港区)と、株式会社スーパーワーム(社長︓古賀 勇太朗本社︓宮崎県)は2025年10月1日から、下水処理場で発生する汚泥を昆虫により減容・資源化する新技術の共同研究を開始しました。
本研究では、スーパーワームやミルワーム※といった昆虫が汚泥を摂取・成長する過程で、汚泥の減容効果や昆虫体内に蓄積される油脂・タンパク質の資源化可能性を検証します。従来の焼却・埋立処理に代わる、環境負荷の少ない新たな処理手法として、脱炭素社会や循環型経済の実現に貢献することを目指します。
※スーパーワーム・ミルワーム︓雑食性で成長が早く、ペットフードや飼料としても利用される昆虫。昆虫の中で最も高い成長効率を誇る幼虫。体内に油脂やタンパク質を蓄える特性があります。

研究開始の背景と目的
日本政府は、持続可能な航空燃料(SAF)(※1)の導入を推進しており、2030年までに大量の原料油(※2)の供給が求められています。しかし、現状では目標供給量に対して7倍以上の原料油が不足しており、バイオ燃料(※3)の原料確保は喫緊の課題です。このような背景を踏まえ、環境負荷が少なく、コスト面でも優れた昆虫由来の燃料源に注目が集まっています。
一方、下水処理場で発生する汚泥は、従来、焼却や埋立によって処理されてきました。しかし、焼却には多くのエネルギーが必要で、CO₂などの温室効果ガスを排出するという課題があります。埋立も限られた土地を継続的に使用する必要があり、長期的な管理や環境への影響が懸念されています。
こうした課題を解決するため、昆虫を活用した持続可能な汚泥処理技術の社会実装と、新たなエネルギー資源の創出を目指し、当社は共同研究を開始しました。
(※参照︓国土交通省「SAF導入促進策の検討について」)

※1 SAF(Sustainable Aviation Fuel):従来の化石燃料に代わる、再生可能資源から製造される航空機用の持続可能な燃料。
※2 原料油:バイオ燃料などを製造するための原材料となる油脂類(例:植物油、動物性油脂など)。
※3 バイオ燃料:動植物由来の有機物から製造される再生可能な燃料で、化石燃料の代替として注目されている。
研究概要
本研究では、当社が維持管理を担う下水処理場から脱水汚泥を収集し、スーパーワーム社が飼育する昆虫(スーパーワーム・ミルワーム)に与えることで、以下の項目を検証します。
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減容効果︓昆虫がどれだけ汚泥を摂取・分解できるか
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資源化の可能性︓昆虫の体内に蓄積される油脂(バイオ燃料原料)やタンパク質(飼料原料)の量
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実用性︓大規模運用に必要なコスト・スペース・運用条件の検証
この技術により、従来は廃棄されていた汚泥が、バイオ燃料・飼料・肥料といった新たな資源として再活用される可能性があります。研究期間は2027年3月末までを予定しています。
各社の役割

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株式会社スーパーワーム |
昆虫の飼育試験、成長・減容効果・油脂蓄積量の評価を担当。 |
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水ing株式会社 |
下水処理場からの脱水汚泥の収集、供給元施設との連携、実証試験の調整・支援を担当。 |

研究への期待と展望
● 株式会社スーパーワーム 代表取締役 古賀 勇太朗氏
スーパーワーム社では、昆虫が持つ自然の分解・変換能力を活かし、これまで活用が難しかった有機性廃棄物を持続可能な資源へと変える技術の開発に取り組んでいます。今回、水 ing様と連携し、下水汚泥のような社会的課題の大きい廃棄物を対象に実証を進められることを大変嬉しく思います。昆虫と微生物の力を組み合わせることで、従来の処理に依存しない新たな資源循環モデルを創出し、自治体や産業の脱炭素化に貢献してまいります。
● 水ing株式会社 企画開発本部 基盤技術研究センター長 島村 和彰氏
水ingは、下水汚泥や廃水からリンを回収し、有用な肥料資源として循環利用する社会システムの構築に貢献しています。今回は、昆虫という自然の力を活用することで下水汚泥や有機性廃棄物から炭素を回収し、エネルギー資源に変換する社会システム構築にチャレンジします。自治体や企業の廃棄物管理に新たな選択肢を提供することを目指します。
ご参考
・株式会社スーパーワーム
株式会社スーパーワームは、昆虫を活用した未利用残渣の資源化技術を研究開発・実装するスタートアップです。昆虫の飼育を通じて、残渣から油脂(バイオ燃料原料)・脱脂ミール(飼料タンパク)・フラス(肥料・燃料利用材)を創出する独自の循環型モデルを構築しています。大手企業や自治体との共同研究を推進し、残渣を社会的価値に変換するプラットフォームを世界規模で展開することを目指しています。
(公式WEBサイト https://superworm.jp/ )
◇水ing(すいんぐ)グループについて◇
水ing(読み︓すいんぐ)は、「生命の源である『水』を通じていつまでも社会に貢献し続ける『ing』」を経営理念に掲げ、水処理施設(浄水場、下水処理場、汚泥再生処理センター、し尿処理場、民間施設等)の設計・建設から運営、維持管理までをトータルに手掛けています(運転・維持管理の拠点は、国内約300か所)。
“水の先をつくれ。”というブランドメッセージのもと、地域の暮らしの課題に目を向け、安全安心な水環境を提供し続けるとともに、水を通じて、暮らしと街の未来を支えています。

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