令和の住み替え事情 ~住まいの高額化時代における選択は?~
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が令和の住み替え事情についてアンケート結果を公表
三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(所長:丸岡 知夫)(以下、ミライ研)は、1万人(18歳~69歳)を対象とした独自アンケート調査を2024年1月に実施しました。
現在、資材価格や人件費の高騰、歴史的な低金利環境などを背景に、全国的に住宅価格が上昇していますが(国土交通省「不動産価格指数(住宅価格)」より)、高額化してきている「住まいの状況」に対して、どのような「住み替えの選択」がなされているのかを調査しました【図表1】。
【図表1】住み替えの選択に関する調査の概要
【図表1】の通り、現在の住居形態が、「賃貸」・「持ち家(自己所有)」の方に、過去3年以内に住み替えたか(実態面)と、今後3年以内に住み替えたいのか(意識面)、そしてその理由について尋ね、過去・現在・未来の時系列における住み替えの選択をまとめました。
昨今では購入後の価格上昇を期待して住み替えを前提に自宅を購入する戦略などにも注目が集まっていますが、世間全体での実態や意識はどうなっているのでしょうか。
1.20代では2人に1人が過去3年以内に住み替えている
過去3年以内に「住み替えを行った」割合を各年代で見ると、18歳-29歳(以降20代と表記)では就職や転勤などを背景に全体の半数以上(51.7%)、およそ2人に1人が3年以内に住み替えを行っていることがわかりました【図表2】。また、一般的にライフイベントが多く訪れるといわれる30代で約4割、40代で約3割の方が過去3年以内に住み替えを行っています。一方で、50代・60代はともに住み替えを行ったのは約1.5割と、住み替え比率が減少していることが確認できました。
【図表2】年代別 過去3年以内の住み替え経験
住み替えをした方に絞って、住居形態の変化も調査しました【図表3】。結果をみると、年代によって傾向が大きく変わり、20代では住み替えた方の9割近く(85.8%)が「賃貸への住み替え」、約1割(14.2%)が「持ち家」へ住み替えているという結果が確認できました(「持ち家→賃貸」や「持ち家→別の持ち家」については、実家からの住み替えも含む)。
【図表3】年代別 住居形態の変化(ベース:過去3年間に住み替えあり)
中でも、住み替え比率の高い20代・30代における賃貸・持ち家それぞれへの住み替え理由を見てみたいと思います。
20代における賃貸への住み替え理由は、第1位が「勤務先への通勤を考えて」、第2位「家族構成の変化」、第3位「進学先への通学を考えて」と、実際のライフスタイルに合わせた住み替えが上位を占める結果となりました【図表4】。一方で、持ち家への住み替え理由では、第1位は「家族構成の変化」ですが、第2位に「住居費が高かったため」、第3位に「住宅ローン金利が低かったため」と、ライフスタイルに合わせた住み替えだけでなく、マネープランを軸に持ち家へ住み替えを行っていることが確認できました。
また30代における賃貸への住み替え理由は、第1位が「勤務先への通勤を考えて」、第2位「家族構成の変化」、第3位「住環境を考えて」となり、持ち家への住み替え理由は、第1位「家族構成の変化」、第2位「住環境を考えて」、第3位「子供の教育環境を考えて」と、賃貸・持ち家どちらへの住み替えも、ライフスタイルに合わせて行っていることが確認できました【図表5】。
<※その他の年代での住み替え理由については、レポート本編で解説しています。ご参照ください>
【図表4】20代の住み替え理由 (回答者:754人)
【図表5】30代の住み替え理由 (回答者:576人)
2.今後3年以内の住み替え意識は20代で半数、30代で3割
今後3年以内の時間軸における「住み替え」に関する意識についても尋ねています。こちらも年代によって住み替え意識に差が生じており、20代では約半数近く(46.9%)が、30代では約3割(32.4%)が「今後3年以内に住み替えを予定」していることがわかりました。全体として年代が上がるにつれて住み替え予定の割合が低くなっています【図表6】。
【図表6】年代別 今後3年以内の住み替え意識
住み替えを予定している方を対象に、住居形態の変化(予定)についても調査しています【図表7】。20代・30代の住居形態の変化に注目してみると、今後3年のうちに「賃貸から持ち家」に住み替えを予定していると回答した割合が、20代で20.3%、30代で22.8%と、他年代と比較しても高い結果となりました。
【図表7】年代別 住居形態の変化(ベース:今後3年以内に住み替える予定)
20代・30代における住み替え理由の中で「持ち家へ住み替え予定」の内訳を分析してみたところ、20代・30代いずれにおいても第1位は「家族構成の変化」となり、20代では次いで「住環境を考えて」「子供の教育環境を考えて」となり、30代では「子供の教育環境を考えて」「勤務先への通勤を考えて」となりました【図表8・9】。ライフスタイルの変化が多く想定される年代における住み替え理由については、住宅市場を意識したものよりも、実際のライフスタイルに合わせた内容のものが上位を占める結果となりました。
【図表8】20代の今後の住み替え理由 (回答者:683人)
【図表9】30代の今後の住み替え理由 (回答者:473人)
住宅価格が過去最高を更新している中で、賃貸・持ち家問わず、住まいにかかるコストは全体的に高額化の傾向にあります。そのような環境下では結果的に「住まい」の資産価格が上昇し、そのメリットを享受するケースも見受けられますが、本調査の結果からは、各年代における「目の前にあるライフイベント」にどう対応していくかという「リアルな目線」から、自身にとっての住居形態に向き合っていることがうかがえました。
何を重視し、何を優先するかは各人の判断に委ねられる部分ですが、人生100年時代における「我が家に合った住まいのありかた」の吟味・検討については、今後も重要であると考えられます。
■上記の記事に加え、より多くのデータをまとめた資産のミライ研究所のアンケート調査結果
「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)より
令和の住み替え事情-住まいの高額化時代における選択は?-
を資産のミライ研究所のHP(https://mirai.smtb.jp/category/report/2327/)に掲載しています。是非、ご覧ください。
【調査概要】
(1)調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)
(2)調査対象:全国の18~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
(3)調査方法:WEBアンケート調査
(4)調査時期:2024年1月
(5)サンプルサイズ:10,948
(6)備考:端数処理の関係上、割合については合計で100%とならない場合があります
■記事内容、アンケート結果に関する照会先
三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所
E-MAIL:mirai@smtb.jp
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