経営チーム間で共創的な対話を起こしている経営陣の約7割以上が、対話が会社の持続的発展に寄与していると回答<コーチング研究所調査報告>
会社の持続的発展への重要な要素は「経営チーム内に共創的な対話を起こすこと」
組織変革を実現するエグゼクティブ・コーチング・ファーム、株式会社コーチ・エィ(東証スタンダード9339)の研究開発部門「コーチング研究所」は、調査レポート「経営チームにおける対話の有用性と促進に向けて」を発表しました。
先行きが不透明で変動の激しい現代において、企業が持続的に発展するためには、戦略的な意思決定や迅速な問題解決、イノベーションの推進が不可欠です。そのため、経営者を含む役員全員が一丸となり「経営チーム」として機能することが極めて重要です。
コーチ・エィは、「経営チームが機能している」状態を実現するために、「対話」が不可欠な要素であると考え、経営チームメンバー間の対話の状態に焦点を当てました。本レポートは、コーチング研究所が実施した調査に基づき、経営チーム内の対話が企業の持続的な発展にどのように寄与するのかを探求しています。
調査では、50名以上の従業員を持つ日本国内企業の経営会議に参加する会長、社長、取締役、執行役員など484名の経営チームメンバーから回答を得ました。結果として、共創的な対話を行っている経営トップや役員の約7割が、対話が会社の発展に寄与していると感じていることが明らかになりました。
サマリー
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組織やビジネスの状態の評価で最も差が出る経営チームの行動は、「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間をとって対話している」
約4割の経営チームメンバーしか会議以外の時間を積極的に関係構築に使っていない
会議以外では対話していない経営チームメンバーの35%が、経営チームメンバーと対話する目的について「特になし、わからない」と回答している
経営チームメンバー間の共創的な対話がビジネスをより加速させる
経営チーム間で共創的な対話を起こしている経営陣の約7割以上は、対話が会社の持続的発展に寄与していると感じている
組織やビジネスの状態の評価で最も差が出る経営チームの行動は、「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間をとって対話している」
会社の持続的発展に向けて機能している経営チームのメンバーは、どのような行動をとっているのでしょうか。
経営チームメンバーの姿勢・行動に関する設問について、組織の状態(経営理念、方針の浸透、組織風土、部門間連携など)とビジネスの状態(市場の拡大、事業の創出など)それぞれの高評価群と低評価群で比較しました。
図1. 組織の状態・ビジネスの状態と、経営チームメンバーの姿勢・行動
※1
経営チームメンバーの姿勢・行動に関する項目(7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)
※2
経営理念/方針の浸透、組織風土、部門連携などの「組織の状態」12項目(5段階:1.あてはまらない、2.あまりあてはまらない、3.どちらともいえない、4.ややあてはまる、5.あてはまる)の平均値について、中央値より大きい群:高評価群(n=227)、中央値より小さい群:低評価群(n=239)
※3
市場の拡大、事業の創出などの「ビジネスの状態」7項目(5段階:1.あてはまらない、2.あまりあてはまらない、3.どちらともいえない、4.ややあてはまる、5.あてはまる)の平均値について、中央値より大きい群:高評価群(n=215)、中央値より小さい群:低評価群(n=240)
「組織の状態」および「ビジネスの状態」に共通して、最も大きな差が見られた姿勢・行動は「会議以外の場でも、経営チームメンバーたちと定期的に時間を取って対話している」という項目です。
組織の状態を良好にし、ビジネスインパクトを生み出していくには、経営チームメンバーが会議以外の場でもコミュニケーションを交わし、関係構築に時間を投資することが、重要な行動の一つといえそうです。
約4割の経営チームメンバーしか会議以外の時間を積極的に関係構築に使っていない
では、普段から積極的に関係を築いている経営チームはどのくらいあるのでしょうか。
設問「会議以外の場でも、経営チームメンバーたちと定期的に時間をとって対話している」の回答結果から、会議以外の時間を積極的に関係構築に使っている経営チームメンバーは、「とてもあてはまる:12%」「あてはまる:29%」と、約4割に留まっている現状が見えてきました。
図2. 経営チームメンバーにおける関係性の構築の状況
問. 「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間を取って対話している」 ※1(
回答者:484名)
※1
設問「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間を取って対話している」(7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)
会議以外では対話していない経営チームメンバーの35%が、経営チームメンバーと対話する目的について「特になし、わからない」と回答している
それでは、なぜ会議以外の時間を積極的に関係構築に使っている経営チームメンバーは、それほど多くないのでしょうか。
「現在の経営チームメンバーと対話する目的は何ですか」という設問に対する自由回答の結果のうち、会議以外でも対話している群は87%がその目的を記載していたのに対し、対話していない群は65%にとどまり、残りの35%は「特になし、わからない」と回答しています。
この結果から、経営チームの中には、会議以外の場で対話する意味を見出せない、目的を定義できていないことがあることが伺えます。
図3. 経営チームメンバーと対話する目的(会議以外でも対話している群と会議以外では対話していない群の比較)
問.「あなた自身にとって、現在の経営チームメンバーと対話する目的はなんですか」*1
※1
設問「あなた自身にとって、現在の経営チームメンバーと対話する目的は何ですか」(自由記述)。ただし、空欄回答を除く
※2
設問「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間を取って対話している」 (7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)において、5-7回答者:会議以外でも対話している(n=310)、1-4回答者:会議以外では対話していない(n=130)
経営チームメンバー間の共創的な対話がビジネスをより加速させる
コーチ・エィでは、対話を以下のコミュニケーションと定義しています。
対話とは、それぞれが培ってきた経験や解釈、価値観をもとに「違い」を持ちこみ、互いの「違い」を顕在化させながら、共創したい未来に向けて新しい「意味」「理解」「知識」をともに創り出す双方向のコミュニケーション
つまり、対話とは、共創的なコミュニケーションであることが前提です。
図4は、共創的な対話を起こしている経営チームと、起こしていない経営チームの、組織の状態およびビジネスの状態を示したものです。
図4. 経営チームメンバーの共創的な対話の有無と、組織の状態・ビジネスの状態
※1
設問「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間を取って対話している」(7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)において、中央値より数値が大きい回答を抽出。その上で、設問「経営チームメンバーとの対話の目的を、事業やプロジェクトにおける新しい価値を創り出すことに向けている」、「経営チームメンバーとの対話において、生じる誤解や対立を超えて、対話の目的を実現する意志がある」、「経営チームメンバーに対して、年齢や立場に囚われず、率直に自分の意見を伝え、相手の意見を聞いている」(7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)の平均値について、中央値より大きい群:共創的な対話を起こしている経営チーム(n=66)、中央値より小さい群:共創的な対話は起こしていない経営チーム(n=73)
※2
経営理念/方針の浸透、組織風土、部門連携などの「組織の状態」12項目(5段階:1.あてはまらない、2.あまりあてはまらない、3.どちらともいえない、4.ややあてはまる、5.あてはまる)の平均値
※3
市場の拡大、事業の創出などの「ビジネスの状態」7項目(5段階:1.あてはまらない、2.あまりあてはまらない、3.どちらともいえない、4.ややあてはまる、5.あてはまる)の平均値
図4のグラフが示す通り、組織の状態、ビジネスの状態のそれぞれにおいて、共創的な対話を起こしている経営チームの方が、起こしていない経営チームよりも、よい結果となっています。
経営チームメンバー間の関係構築を積極的に行うことに加えて共創的な対話を引き起こすことは、ビジネスをより加速させることにつながるようです。
経営チーム間で共創的な対話を起こしている経営陣の約7割以上は、対話が会社の持続的発展に寄与していると感じている
共創的な対話を起こしている経営チームメンバーに、会社の発展に対話が寄与しているかを聞いたところ、「事業の生産性の向上」「新たな事業の創出」「組織を超えた強力」「次世代のリーダーとなる人材の育成」「組織の変化の加速」の項目で、「とてもよくあてはまる」と「あてはまる」の回答が7割以上を占めました。
共創的な対話を起こしている経営トップや役員の多くは、会社の発展に対話が寄与していると感じているようです。
図5. 共創的な対話を起こしている経営チームメンバーが、会社の発展に対話が寄与していると感じている割合
設問:経営チームの対話が【以下の会社の発展に関わる項目】に寄与している
※1
設問「会議以外の場でも、経営チームメンバー達と定期的に時間を取って対話している」(7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)において、中央値より数値が大きい群を抽出。その上で、設問「経営チームメンバーとの対話の目的を、事業やプロジェクトにおける新しい価値を創り出すことに向けている」、「経営チームメンバーとの対話において、生じる誤解や対立を超えて、対話の目的を実現する意志がある」、「経営チームメンバーに対して、年齢や立場に囚われず、率直に自分の意見を伝え、相手の意見を聞いている」(7段階:1.全くあてはまらない、2.あてはまらない、3.ややあてはまらない、4.どちらともいえない、5.ややあてはまる、6.あてはまる、7.とてもよくあてはまる)の平均値において、中央値より数値が大きい群を抽出(n=66)
コーチ・エィ「コーチング研究所」のコメント
今回の調査結果から、経営チームメンバーが関係を構築し、信頼関係を築いた上で共創的な対話を起こすことが、会社の継続的な発展への重要な要素であることが見えてきました。
経営チーム内の関係性や対話の在り方は、組織の状態、そしてビジネスの状態に影響します。
その視点で考えたときに、現在の経営チームの状態や経営メンバー同士の関係性や対話の在り方は、現在の組織やビジネスの状態にどのような影響を与えているのか。そして、どのような経営チームの状態が組織の前進、発展にとって理想的といえるのか。
本調査レポートが、経営チーム内の関係性や対話について考えるきっかけとなり、会社の継続的な発展を後押しするものになれば幸いです。
コーチング研究所では、今後も、コーチングや対話が組織や経営に与える影響について、引き続き研究を進めてまいります。
調査概要
調査期間 |
2023年12月19日〜12月21日 |
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調査対象 |
従業員50名以上の日本国内企業に所属する5名以上の経営会議に参加する経営層メンバー(会長・社長・取締役・執行役員 等) |
有効回答 |
484件 |
設問概要 |
経営チームメンバーの姿勢・行動に関する設問 経営チームの状態に関する設問 経営トップの関わりに関する設問 組織の状態に関する設問 ビジネスの状態に関する設問 |
コーチング研究所とは
コーチング研究所は、株式会社コーチ・エィの研究開発部門です。コーチ・エィが長年培ってきた「組織開発に向けたコーチング」の豊富な経験とリサーチ実績をもとに、人と組織の状態を可視化し、コーチングの可能性を科学的な視点から読み解く活動をしています。また、コーチング研究所のリサーチデータは新商品の開発や既存のサービスの品質向上に活用されています。
株式会社コーチ・エィ
コーチ・エィは、組織変革を実現するエグゼクティブ・コーチング・ファームです。
人と人との関係性に焦点をあて、システミック・コーチング™というアプローチで、組織全体の変革を支援する対話を通じた組織開発を推進しています。
1997年の創業(当時はコーチ・トゥエンティワン)以来、パイオニアとして日本におけるコーチングの普及・拡大に貢献してきました。クライアントの約8割がプライム市場に上場している大企業です。また、コーチ人材の開発にも力を入れており、今まで1万人以上のコーチを輩出してきました。
2008年にはコーチング研究所というリサーチ専門の部署を構え、世界に先駆けてエビデンス・ベーストのコーチングサービスを提供してきました。豊富なコーチング実績の分析データをもとに、コーチングに関する学術研究や成果の可視化に向けた研究に取り組んでいます。
東京のほか、ニューヨーク、上海、香港、バンコクに拠点を構え、日本企業の海外拠点はもとより、海外現地企業にもコーチングを提供しています。世界的なコーチ養成機関の草分けであるCoach Uを2019年に子会社化するなど、さらなるグローバルネットワークの拡大を図っています。
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