2025年上期のセキュリティ求人トレンドを徹底分析【グローバル企業での対応ニーズ増加・M&Aによる新会社の責任者求人】
プロフェッショナル人材の採用・活躍を支援する株式会社コトラ(本社 東京都港区、代表取締役 大西利佳子)は、セキュリティ人材の採用動向について、2025年上期までの求人数の調査をもとに分析し、下期の市場を予測しました。
「ゼロトラスト」導入の本格化やDX推進、M&Aの増加などを背景に、2025年上期もセキュリティ人材の求人数は増加傾向にあります。特に、年収1,000万円を超えるハイクラス求人や、アプリ・デジタルサービスに特化した「プロダクトセキュリティ」人材のニーズが顕著です。
■セキュリティ人材の採用動向
グローバルスタンダードへの対応ニーズが増加
セキュリティ人材は、組織によって職種が細かく分かれています。以下に代表的な企業カテゴリごとの職種を示します。

これらの業界別の求人数の推移は以下の通りです。全体の求人数は2023年まで堅調に増加し、2024年は急激に増加しました。特に、2020年以降は事業会社・SIerの求人数が大幅に増加しており、2025年上期も同様の傾向が見られます。
セキュリティ求人 受注数の推移(業界別)

2025年上期において、もう一つ顕著な動きは、コンサルティング業界の中でも監査法人のITリスク・ITガバナンスコンサルタント(アドバイザリー)の市場が拡大していることです。背景には、個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)などのグローバルの法規制への対応が増えてきたことが挙げられます。NIST CSF※1や、NIST SP 800-171、SP 800-53といったグローバルスタンダードを導入する企業が増加し、業界内で足並みをそろえる動きが見られます。
また、コロナ禍が収束し、グローバルに事業を展開する企業も増えてきました。サプライチェーンセキュリティの観点で、NISTをベースとした社内ルール・ガバナンスを新規構築し、海外の拠点や工場と共有するケースも多くあるようです。こうした動きは大企業だけではなく中堅企業にも見られ、今後さらに普及が進むことが予想されます。
※1:米国国立標準研究所(NIST)が作成した、サイバーセキュリティ対策に関するフレームワーク
ハイクラス系の求人割合が増加
募集年収ごとの求人数は、以下の通りです。2021年以降、全体の求人数の中でも、1,000万円以上の高年収帯の求人の割合が高いことがわかります。
セキュリティ求人 受注数の推移(年収別)

2025年上期においてもその傾向は続いており、下期も年収1,000万円以上の求人数は増加すると予想されます。その背景としては、ハイクラス系の求人の割合が増えたこと、つまり即戦力を求める割合が増えたことにあります。
2019年から2020年にかけて、コロナ禍でリモートワークが急速に普及し、多くの企業がIT予算を確保するようになりました。これを背景に、2021年から2022年には、EDR※2やIDaaS※3を含むゼロトラストの基本パッケージが広く導入されました。
その後、ポストコロナで企業が通常運営に戻ると、従来型のIT環境では事業継続力(レジリエンス)を十分に確保できないという課題が顕在化しました。特に中堅企業を中心に、2030年~2035年を見据えた不透明なビジネス環境やAIの台頭に備える動きが加速し、IT基盤の再構築に着手する企業が増えています。
こうした中、セキュリティ強化(ゼロトラストやクラウド化)を契機として、全社的な改革を進める動きが活発になりました。これまでゼロトラストやクラウドの導入に未着手だった企業も、新たに取り組み始めています。その結果、SIerによるゼロトラストソリューションの導入案件が急増し、関連人材の需要が大幅に拡大しています。
※2:エンドポイントへの脅威に対応するセキュリティソリューション。
※3:複数のサービスのログイン情報を一元的に管理するクラウドサービス
■業界別に見るセキュリティ人材の求人数増加の背景
コンサルティングファーム
2021年から2022年にかけてゼロトラストソリューションがバブル的に普及したことで、多くの企業で導入プロジェクトが立ち上がりました。これに伴い、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)体制の整備や、実装フェーズでの技術支援が不可欠となり、現場をリードできるセキュリティコンサルタントの確保が急務となっています。
また、大手SIerやコンサルティングファームによるシステム導入フェーズがひと段落した今、その後の運用・改善・統合といった次フェーズの課題解決に対応するため、独立系や中堅のコンサルティングファームが相次いで市場に参入しています。
加えて、サイバー攻撃の高度化によりセキュリティ対策のレッドチームやホワイトハッカー、脅威インテリジェンスの専門家といった「オフェンシブセキュリティ」関連の求人が増加しているのも特徴です。
さらに、加速する大企業のM&Aブームの影響もあります。M&A完了後のインフラの再構築やITコストの最適化、そしてセキュリティ対策は避けて通れず、これらを支援できるコンサルタントへのニーズが急増しています。M&A仲介会社がセキュリティコンサルタントの求人を出し始めたのも特筆すべき点といえます。
SIer・ベンダー
SIer・ベンダーにおける求人数が増加している背景としては、セキュリティソリューション全体の販売が好調であることが挙げられます。EDR、IDaaS、SIEM※4、ASM※5など多様な製品の販売数が伸び、それに伴ってSIerやベンダーによる導入プロジェクトが急増しています。
特に、コロナ禍を契機にリモートワークが広がったことで、ゼロトラスト第1波としてEDR、IDaaSの導入が進みました。その流れを受けて、2024年以降はより高度なネットワーク管理を実現するSIEMなどのソリューションへのニーズが拡大しており、それに対応できる人材の確保が課題となっています。
さらに、中堅企業の間では、これまで最低限のセキュリティ対応にとどまっていた状況から、予算を新たに確保して対策を強化する動きが顕著です。既存のユーザー企業も、導入済み製品の機能追加やより高度な設定を求めるケースが増えており、SIer側は体制強化を急いでいます。
※4:システムにおけるセキュリティ関連のデータを一元的に集約し、分析、管理するためのソリューション。
※5:企業のIT資産の脆弱性を攻撃者の視点で把握し、リスクを管理するプロセスのこと。
金融機関・事業会社
金融機関・事業会社では、年収1,000万円超の課長クラスの求人が増加傾向にあります。これまで中途採用に消極的だった企業も、離職率上昇などを背景に中途採用を強化しています。中でも、サイバーセキュリティ分野は中途依存度が高く、優先的に採用が進んでいます。
また、コロナ禍以前から始まっていたDX化推進の動きも影響しています。コロナ禍で通信環境が整備され、それを基盤としてコロナ禍以降は、新しい収益モデルを確立するための方法としてDXが注目されています。
こうした中、デジタルサービスやアプリを中心とした「プロダクトセキュリティ」分野の求人が増加しています。主な業務内容は、個人情報保護やグローバル展開への準拠対応、脆弱性診断のベンダーマネジメントなどです。また、「DX戦略部」のような、従来のIT部門とは異なる組織で、レポートラインや求められる視点も特殊です。年収水準は高いものの、要件が高度であるため採用は難航しています。
■2025年下期の展望
アジリティのある人材が求められる
セキュリティ人材の求人数が増えていることは事実です。しかし、採用マーケットに参入する企業の数も増えている分、市場はレッドオーシャン化しているといえます。そのため、転職希望者側も、特定領域の専門家というポジションでは通用しにくくなっています。
業界や職種によって求められるスキル・経験は異なりますが、どの領域にも共通していえるのは、アジリティのある人材の需要が高いことです。たとえば、他部署との連携を前提としたプロジェクトマネジメントや、全社的なコストカット施策に関わる社内調整、さらにはグローバル展開に伴う法規制・ガバナンス対応など、純粋な技術業務にとどまらないタスクが増加しています。技術者というより、むしろ“ビジネスパーソンとしての振る舞い”が強く求められるようになっているのです。
この変化に対応するには、セキュリティ単体の知見だけでなく、IT全般、ひいては事業構造や経営視点を踏まえて組織内で合意形成できる力が欠かせません。加えて、網羅的な知識を持っていることを示す、高度資格保有者の評価も今後高まっていくことが予想されます。
■コンサルタント(執筆者)紹介

中川 貴史
[経歴]
金沢大学大学院を卒業後、大手通信企業に入社。SEとして海外向け金融システムプロジェクト、およびホワイトリスト/PCI-DSS対応など複数のセキュリティプロジェクトに従事。コトラに転職後は、セキュリティ/インフラエンジニア/デジタルフォレンジック領域を専門として、ハイクラスを対象に転職・採用支援。
[担当業界]
セキュリティ、インフラエンジニア、デジタルフォレンジック、コンサルティングファーム、事業会社、金融機関、SIer、ITベンダー
[プロフィールページ]
https://www.kotora.jp/about/takashi_nakagawa.php
[執筆記事一覧(コトラジャーナル)]
https://www.kotora.jp/c/user-profile/takashi_nakagawa/
[コトラ公式YouTubeチャンネル(ハイクラス転職TV)]
https://www.youtube.com/@KotoraCh/videos
■株式会社コトラについて

「人が変われば企業が変わる 仕組みが変われば人が活きる」
コトラは人材のプロとして、人と企業の成長をサポートしています。
プロフェッショナル人材の採用・活躍支援、DX支援、人的資本コンサルティングなど、企業様の成長をご支援する人材ソリューションをワンストップで提供するとともに、プロフェッショナル人材にとって最高の転職体験と職業体験を提供しています。
本社所在地: 〒106-0041 東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ森JPタワー11階
代表: 代表取締役社長 大西 利佳子
資本金: 1億円
設立: 2002年10月
事業許可番号: 人材紹介/13-ユ-010833 人材派遣/派13-011201
職業紹介優良事業者認定番号: 2102007(03)
認定日:2022年3月31日
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