「サクセッションプラン」に関するサーベイ結果【2023年度】について
後継者計画の実行性確保に向けた日本企業の現状と見えてくる課題
1.調査趣旨と結果概要
本サーベイは、コーポレートガバナンス・コードや人材版伊藤レポート2.0において重視されている経営人材のサクセッション(後継者計画の策定・実施)に関し、日本企業の取り組み状況を把握することを目的に、2022年度に続いて実施いたしました。
本サーベイのエグゼクティブサマリーは、以下ページ内の「実績のご紹介>2023年度のサーベイ」よりご確認ください。なお、サーベイにご協力いただいた企業には、調査結果全体のレポートを配布いたしました。
■「サクセッションプラン」に関するサーベイ
<https://www.murc.jp/succession-planning-survey/>
(1) 調査趣旨
近年いっそう速く激しく変化する経営環境や、コーポレートガバナンス改革の進展、および人的資本経営や開示に関する新たな要請等の下、社長・CEOをはじめとした経営人材サクセッションの重要性はますます高まっています。サクセッションはその性質から、短期視点ではなく中長期視点で取り組む必要があるテーマです。それゆえ、自社の将来を見据えていち早く着手し、計画性をもって検討すること、そして、各プロセスを進めながらさらなる充実化を図ることが非常に重要です。
そこで本サーベイは、日本企業の経営人材サクセッションにおける最新動向を明らかにし、各企業における取り組みや課題解決に活用していただくことを目的に実施しました。さらに、女性役員拡充に向けた取り組みの実態にも踏み込むべく、設問を構成しています。
(2) 調査結果のポイント
回答企業121社のうち、プライム市場上場会社76社の集計値に基づきポイントを解説します。
(なお、無回答や無効な回答を除いて集計しており、設問ごとに有効回答数の差異がみられます。)
① 社長候補者の選出や育成の判断基準となる「人材要件」を設定する企業は約40%
サクセッションの全般的な課題としては「人材要件が曖昧であること」が最多(約71%)であり、社長の人材要件の設定率は42.1%、経営陣幹部では28.9%となりました。候補者の選出・育成を進める上では、その判断基準となる人材要件の設定は不可欠であり、人材要件が具体化されることで、候補者選出等の取り組みが進展することが考えられます【図表1】。
【図表1】 サクセッションの実施状況(社長ポジション・経営陣幹部ポジション)
② 社外人材を候補とする企業は、社長で25.0%、経営陣幹部では約60%
社外人材を社長の候補者に含めることについては、25.0%の企業が「含めている」または「近い将来に含める予定(含むその検討中)」と回答しました。経営陣幹部ポジションの場合、同様の回答は56.6%となり、社長候補者には内部昇進を重視する一方で、経営陣幹部候補者には社外人材の登用ニーズがあることが推察されます【図表2】。
【図表2】 後継者候補としての社外人材の検討状況(社長ポジション・経営陣幹部ポジション)
③ 過半数の企業で、社長および経営陣幹部候補者への育成施策として、「社外研修」と「タフアサインメント」を実施
後継者候補への育成施策を行っている企業のうち過半数が、具体的な施策内容として「社外研修」と「タフアサインメント」を、社長および経営陣幹部候補へ実施している結果となりました。一方で、「個別育成計画の策定」については、社長は過半数(56.0%)であるのに対し、経営陣幹部は38.7%にとどまっています。経営陣幹部のサクセッションを計画的かつ実効性高く進めるためには、具体的な育成計画を充実させる必要があります【図表3】。
【図表3】 実施している育成施策(社長ポジション・経営陣幹部ポジション)
④ サクセッションに指名委員会が全く関与していない、または報告を受けるのみである企業は20.0%
サクセッションの取り組みにおいて客観性や実効性を高めるためには、指名委員会や社外役員の適切な関与が求められます。今回の回答企業のうち20.0%で、サクセッションについて指名委員会や社外役員が「全く関与していない」または「実施結果の報告を受けているのみ」であることが分かりました。今後、指名委員会による各基準やプロセスの妥当性の検証等を強化することで、実効的な監督機能を確保することが必要だと考えられます【図表4】。
【図表4】 サクセッション実施における指名委員会または社外役員の関与方法・度合い
⑤ 女性役員の拡充に向けては、「環境整備」への取り組みが目立つ
女性役員の選出・育成上の課題としては、「女性管理職の絶対数の少なさ」が約95%、「役員就任へのモチベーション上の課題」が約41%でした。女性活躍に資する部長クラス(女性)への取り組みとしては、「働く場所や勤務時間の柔軟性等の環境整備」(63.2%)、「女性向けキャリアセミナー」(27.6%)の順に多く、役員候補に女性を一定数(割合)含めることやタフアサインメントの優先的な付与は、いずれも10%前後にとどまりました。女性役員の拡充に向けては、「環境整備」や「意識付け」に関する取り組みが優先されていることがうかがえます【図表5】。
【図表5】 女性役員を拡充するための取り組み:部長クラス(現在実施)
2.調査概要
調査対象 | 東証プライム上場企業およびプライム以外で売上高500億円以上の企業4,194社 |
実施時期 | 2023年11月 |
調査手法 | 調査票郵送方式 調査票の発送および回収、データ入力作業については株式会社東京商工リサーチに委託 |
有効回収数 | 121社(回収率2.89%) うちプライム上場企業は76社 |
調査項目 | I. サクセッションマネジメント全般について II. サクセッションマネジメント詳細について Ⅲ.女性役員の拡充について |
調査結果の表示方法 | ① 調査結果は百分比(%)で表示する。 ② 百分比(%)は端数処理の関係上、内訳の合計(100%)と一致しない場合がある。 ③ 複数回答可の設問については、集計対象企業総数に対する百分比(%)の合計が100%を超える場合がある。 |
調査回答企業のプロファイル
■ クレジット表記について
本調査結果の引用に際しては、必ず下記クレジットを明記してください。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「『サクセッションプラン』に関するサーベイ結果(2023年度)」
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