〈2026年度第1回 中小企業経営実態調査〉最低賃金"4.9%引き上げ"目安の一方、 中小企業の賃上げ率は1〜4%未満が約半数。賃上げ実施企業でも経営負担が顕在化
Green(グリーン)とDigital(デジタル)を活用した中小企業の変革を目指すフォーバル GDXリサーチ研究所(本社:東京都渋谷区、所長:平良学)は、中小企業を対象にした「2026年度第1回 中小企業経営実態調査」を実施しました。

2026年7月28日、厚生労働省は令和8年度地域別最低賃金額改定の目安※を公表し、都道府県を経済実態に応じて3ランクに分け、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円とし、全国加重平均で55円(4.9%)の引き上げ目安を示しました。物価高や人手不足を背景に賃上げへの要請が高まるなか、中小企業にとっては「実施するか」だけでなく、持続的に続けるための原資確保、価格転嫁、生産性向上、公的支援の活用が重要な経営テーマになっています。
今回の調査では、賃上げを実施する企業が6割を超える一方、実施企業の約6割が経営負担を感じ、賃上げ促進税制の認知も十分に進んでいない実態が明らかになりました。
※出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html
URL:http://gdx-research.com/wp-content/uploads/2026/07/bluereport_202608-2.pdf
【調査結果サマリー】
①賃上げ実施は6割超で推移。一方、未実施企業では「売上・利益の伸び悩み」が最大の壁に。
②賃上げ理由は「従業員の定着・満足度」が突出。賃上げ率は1~4%未満が約半数。
③持続的な賃上げの焦点は「稼ぐ力」と「支援策の活用」。一方で、国の「賃上げ促進税制」を「知らない」企業が約半数と認知に課題。
【アンケート概要】
・調査主体 :フォーバル GDXリサーチ研究所
・調査期間 :2026年6月1日~2026年6月30日
・調査対象者 :全国の中小企業経営者
・調査方法 :ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
・有効回答数 :1,653人
本リリースの調査結果をご利用いただく際は、必ず【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】とご明記ください。

Q1. 賃上げの実施状況(n=1,653)
Q2. 賃上げ未実施の理由(n=607)※複数回答可
賃上げを実施している企業は63.3%でした。前回調査の66.3%から3.0ポイント低下したものの、6割超の企業が何らかの賃上げを実施している状況は続いています。
一方で、賃上げを「実施していない」企業は36.7%に上ります。未実施理由は「売上や利益が伸びていないため」39.7%が最多で、「賃上げの必要性を感じていないため」23.1%、「人件費の増加が経営を圧迫するため」19.9%が続きました。最低賃金の改定などを背景に賃上げへの社会的要請が強まる一方、未実施企業では売上・利益の伸び悩みや人件費負担が主な障壁となっています。この結果から、賃上げの実施にはまず本業での収益力強化が不可欠である実態がうかがえます。



Q3. 賃上げの実施理由(n=1,046)※複数回答可
Q4. 賃上げ率(n=1,046)
賃上げの実施理由は「従業員の定着率や満足度を高めるため」が73.9%で最多となり、他項目を大きく上回りました。次いで「社会的要請や業界の流れに対応するため」36.8%が続きます。
一方、「業績が改善したため」は11.4%にとどまり、多くの企業が業績改善による余力だけでなく、人材確保・雇用維持のために賃上げを進めている可能性があります。

日本労働組合総連合会の2026春闘最終集計では全体5.01%・中小4.69%、最低賃金目安も全国加重平均で4.9%引き上げと、「5%前後」の水準が意識されるなか、本調査では1~4%未満が48.4%、4%以上は31.4%にとどまりました。物価高や人手不足を背景に高水準の賃上げが求められる一方で、約半数の中小企業は目標水準に届いておらず、社会的要請と現場の実態との間に「賃上げ率のギャップ」が生じていることがうかがえます。
※出典:連合「2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について」(2026年7月3日公表)
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2026/yokyu_kaito/kaito/press_no7.pdf

Q5.賃上げの効果(n=1,046 )
Q6.賃上げによる経営や従業員への影響(n=496 )
Q7.賃上げの効果×賃上げの実施理由( n=1,046)
賃上げを実施した企業の47.5%が「効果があった」と回答しました。一方で、「どちらともいえない」「特に効果は感じていない」と回答した企業も合わせて52.6%に上り、現状では賃上げの効果を見定めている企業も少なくないことがうかがえます。具体的な効果では「従業員のモチベーションが向上した」が83.1%と突出し、「離職率が低下した」21.6%、「採用がしやすくなった」13.5%、「生産性が向上した」11.9%と続きました。賃上げは従業員の意欲向上につながりやすい一方で、採用や生産性などへの波及には一定の時間を要する可能性があると考えられます。

さらに、賃上げの効果は実施理由によって差が見られます。「業績が改善したため」に賃上げした企業では効果実感が62.2%と最も高く、「経営理念や方針に基づいているため」55.1%、「従業員の定着率や満足度を高めるため」52.1%が続きました。一方、「社会的要請や業界の流れに対応するため」は41.5%にとどまり、外部環境への対応だけを主目的にした賃上げは、効果を実感しにくい可能性があります。


Q8. 賃上げに必要な原資の確保状況(n=1,046)
Q9.賃上げ原資の確保の方法(n=624)※複数回答可
賃上げに必要な原資については、「十分に確保できている」12.7%と「ある程度は確保できている」46.9%を合わせ、約6割の企業が原資を確保していると回答しました。ただし、「十分に確保できている」に限ると1割程度にとどまり、「あまり確保できていない」「ほとんど確保できていない」の合計も33.4%に上ります。
原資の確保方法では、「売上拡大による利益の確保」が63.6%で最多となり、「製品・サービスへの価格転嫁(値上げ)」30.3%、「業務効率化・生産性向上によるコスト削減」17.9%が続きました。持続的な賃上げに向けては、一時的な対応にとどまらず、売上拡大や適正な価格転嫁、業務効率化などを通じて、賃上げを支えられる収益構造をつくることが重要です。

Q10. 賃上げによる経営負担(n=1,046)
Q11. 賃上げによる経営負担の影響(n=605)
賃上げを実施している企業に、経営上の負担になっているかを聞いたところ、「大きな負担になっている」12.1%、「やや負担になっている」45.7%となり、合計57.8%が負担を感じていることが分かりました。負担を感じている企業に具体的な影響を聞くと、「人件費負担の増加」が89.9%で最も多く、「営業利益の減少」74.9%、「広告費や設備投資など他予算への圧迫」43.8%が続きました。賃上げは従業員のモチベーション向上や人材定着につながる一方、短期的には人件費負担や利益面への影響として表れやすく、継続には収益力の強化が欠かせないことがうかがえます。

Q12. 賃上げ促進税制の活用状況(n=1,046)
また、賃上げ促進税制については、「制度を知らない」が48.5%と約半数を占め、「活用している」は9.2%にとどまりました。企業側の収益力強化に加え、公的支援制度の認知・活用を広げることも、持続的な賃上げを後押しするうえで重要です。


フォーバル GDXリサーチ研究所所長
平良 学(たいら・まなぶ)
■経歴
1992年、株式会社フォーバルに入社。九州支店での赤字経営の立て直し、コンサルティング事業の新規立ち上げ、
全体統括を経て、2022年に新たに発足した中立の独立機関「フォーバルGDXリサーチ研究所」の初代所長に就任。
中小企業経営の実態をまとめた白書「ブルーレポート」の発刊、全国の自治体と連携し、地域の中小企業経営者に向けたDX、GXの講演、中小企業経営者向けのイベントの企画などを通じて、中小企業のGDXを世に発信している。

■コメント
最低賃金改定をめぐる議論が進むなか、中小企業にとって賃上げは「行うかどうか」だけでなく、「継続できる原資をどのように生み出すか」が問われる局面に入っています。本調査では、賃上げを実施している企業が63.3%と6割を超える一方、未実施理由では「売上や利益が伸びていないため」が最多となりました。賃上げは人材定着や満足度向上を目的に進められ、モチベーション向上などの効果も見られますが、十分な原資を確保できている企業は1割程度にとどまります。
今後、持続的な賃上げを実現するには、売上拡大や適正な価格転嫁、業務効率化によるコスト削減に加え、高付加価値の商品・サービスへの転換などを通じて「本業で稼ぐ力」を高めることが重要です。また、賃上げ促進税制を知らない企業が約半数に上ることから、公的支援の認知・活用を広げることも欠かせません。企業自身の取り組みと支援策を組み合わせ、中長期的な戦略に基づいて賃上げに向き合うことが求められます。
■フォーバル GDXリサーチ研究所とは
日本に存在する法人の99%以上を占める中小企業。この中小企業1社1社が成長することこそが日本の活力につながります。中小企業が成長するための原動力の1つにGreen(グリーン)とDigital(デジタル)を活用し企業そのものを変革するGDX(Green Digital transformation)があります。
フォーバルGDXリサーチ研究所は、中小企業のGDXに関する実態を調査し、各種レポートや論文、報告書などをまとめ、世に発信するための研究機関です。「中小企業のGDXにおける現状や実態を調査し、世に発信する」をミッションに「中小企業のGDXにおいてなくてはならない存在」を目指し活動していきます。

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