ローカル5Gが支える新丸山ダム建設、ケーブルクレーンの自動・自律運転に成功
ダム建設DXを加速し「自律型コンクリート打設システム」確立へ
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、国土交通省中部地方整備局発注の新丸山ダム建設工事(岐阜県加茂郡八百津町、可児郡御嵩町)において、ダム建設における「自律型コンクリート打設システム」(※1)の確立に向けて開発を進めています。その第1段階としてコンクリート運搬に使用するケーブルクレーンの自動・自律運転を2025年2月に成功しました。自動・自律運転の制御信号の送受信に必要となる無線通信規格には、KDDIエンジニアリング株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺尾徳明)と連携し、ローカル5Gを活用しました。
新丸山ダムにおけるケーブルクレーンの自動・自律運転の様子(動画再生時間:3分46秒)
新丸山ダム建設工事における建設機械の自動・自律運転

新丸山ダム建設工事では、2023年12月にバックホウやダンプトラックなど10台の建設機械の自動・自律運転による盛土施工の実証実験で無線通信規格にローカル5Gを採用しました。本実証では自動・自律運転に耐えられる高速通信であること、天候影響が少ないこと、そして一般的な水平方向だけでなく、100mを超える高低差のある立体的なエリアでも安定した通信であることを確認し、順次、活用範囲を拡大しています。
「自律型コンクリート打設システム」確立に向けて、まず着手したのは、ケーブルクレーンの自動・自律化です。ケーブルクレーンは、2つの支点間にかけ渡したワイヤロープを軌道として、トロリーが横行する形状で、他の形式のクレーンと比較し運転速度が速いことから、吊り荷の横行中やコンクリートの放出時にバケットが縦や横方向に揺動します。従来、揺動の制御には、コンクリート放出地点の合図者がクレーン操作室のオペレータに無線で合図を送り、オペレータは揺動を抑えられるよう連携しながらクレーンを操縦します。オペレータと合図者の両者による熟練された技術により品質と安全を保ってきました。
しかしながら、建設業界は技術者の高齢化により担い手不足が課題になっています。自動・自律運転で、工事の品質を保ち、省人化や、生産性、安全性の向上を実現するには、リアルタイムに遠隔地の映像受信や運転指示を行うための安定した無線通信環境が不可欠でした。
ローカル5Gの優位性と新丸山ダムの通信エリア構築について
(1)ローカル5Gの優位性
無線通信では、テレビ・ラジオ放送、携帯電話、無線LAN(Wi-Fi)など、それぞれが異なる周波数を割り当てられています。ローカル5Gは、周波数帯4.5GHz帯および28GHz帯の2つを有し、通信事業者ではない企業や自治体が特定のエリア内で独自ネットワークを構築・運用できるため、他の利用者の影響を受けずに、高速で大容量の通信を安定的に利用することが可能です。建設機械の遠隔運転や複数台を同時にコントロールするには、大容量の通信が必要となり、ローカル5Gの特性は、建設DXの推進に効果的と考えています。


新丸山ダムでのローカル5GとWi-Fiの伝送映像比較(動画再生時間:1分27秒)
(2)新丸山ダムにおけるローカル5G通信エリアの構築
大林組は、利用者が独自にエリア設計できるローカル5Gの強みに着目し、2024年10月に新丸山ダム堤体のコンクリート打設エリアにローカル5Gの通信エリアを構築しました。これまでKDDIエンジニアリングでは学校、体育館、発電所などの屋内外でローカル5Gを構築してきましたが、地形が変化し多くの建設機械が移動する建設現場への構築は同社にとって初めての事例です。
2025年2月、ケーブルクレーンの自律運転システムを構築し、ローカル5G環境下で、従来、オペレータとコンクリート放出地点の合図者が連携して行うクレーン操作の自動・自律運転を実現しました。本システムは、ケーブルクレーンのフックやトロリーに無線端末を設置することで、揺動を瞬時に検知し、自動で抑制します。その結果、オペレータの熟練度によらない、安定した工事の進捗や品質の確保が可能になります。また、クレーンのフックに搭載したカメラで撮影した4K映像が監視室にリアルタイムに伝送され、高解像度の映像が自動・自律運転における安全機能や監視といった安全性の向上に寄与しています。
今後は高解像度の映像をタイムラグがなく、確認できることを活用し、AIを使った運転制御やコンクリート量の計算など新丸山ダム建設工事でのさまざまな工事プロセスへの活用にも取り組みます。

放出時における揺動抑制の比較(左:揺動抑制無し、右:揺動抑制有り)
(動画再生時間:9秒、映像は砕石を使用)
大林組とKDDIエンジニアリングは、新丸山ダム建設工事での「自律型コンクリート打設システム」のさらなる進展を図るとともに、今後も多様な事業者と協力し、建設業におけるローカル5G によるさらなるDX技術の発展を目指して研究開発や実証、導入を進めていきます。
※1 国土交通省と大林組が共同で、骨材製造からコンクリート打設までの一連の工程を自動・自律化する取り組み
関連情報
・新丸山ダム工事事務所におけるDX取組(国土交通省中央整備局ホームページ)
・新丸山ダム建設工事における盛土工事で「統合施工管理システム」の実証施工に成功(2024.04.11付))
【株式会社大林組について】
大林グループはブランドビジョン「MAKE BEYOND つくるを拓く」を掲げ、これまで培ってきた「ものづくり」の技術と知見を、新たな時代に合わせて発展させることを目指しています。2050年のあるべき姿を描く「Obayashi Sustainability Vision 2050」のもとで、建設事業の基盤強化や技術イノベーションを推進し、社会課題に多様なソリューションを提供します。
【KDDIエンジニアリング株式会社について】
KDDIエンジニアリングは、通信インフラを建設から運用・保守までワンストップで担い、培った技術でさまざまな社会課題の解決に貢献し続けます。
「『つながる安心』をカタチにする」を「VISION 2030」として掲げ、「技術力」と「実現力」で通信を核としたさまざまな視点から社会を支え、「いつでもどこでも、誰とでもつながる」そんな日常を守りながら、安心で快適な未来をカタチにします。
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