山岳トンネルの自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」が完成!
~切羽での災害ゼロ、省力化、生産性向上を目指して 掘削作業の自動化・遠隔化を実現~
鹿島(社長:天野裕正)が2017年から開発を進めてきた、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)が完成しました。2018年からは模擬トンネル(静岡県富士市)、2021年からは実坑道である神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)にて、山岳トンネルの掘削作業6ステップの自動化に向けた開発を進め、このたび、神岡試験坑道において6ステップすべての自動化・遠隔化に成功しました。
鹿島は今後、「A4CSEL for Tunnel」を他の工事に順次導入し、さらなる機能追加・改良を加えながら労働災害の発生リスクが大きい切羽付近での災害ゼロ、ならびに省力化および生産性向上を目指してまいります。
【開発の背景】
建設業界では、「熟練技能者不足」、「高い労働災害の発生率」、「低い生産性」が喫緊の課題であり、山岳トンネル工事も例外ではありません。
そこで当社は、これらの課題解決に向けて「A4CSEL for Tunnel」の開発を進めてきました。これは、山岳トンネル工事の掘削作業を6つの施工ステップ①穿孔 ②装薬・発破 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け ⑥ロックボルト打設 に分け、各ステップで使用する重機を自動化し、それらを一元管理する次世代の建設生産システムです。
【「A4CSEL for Tunnel」の開発工程】
当社は、2017年から開発に着手し、2018年11月から、模擬トンネルを試験フィールドとして、各重機の自動化開発および基本動作の確認を行いました。そして、2021年10月、それら自動化重機を実際の工事現場と同等の環境で実証すべく、神岡試験坑道において、建設業界で初めて地山を対象としたデータに基づく自動化施工の開発に着手しました。
【神岡試験坑道工事概要】
場所:岐阜県飛騨市神岡町
諸元:トンネル掘削延長:321.3m
掘削断面積:アプローチ部43.9m2、自動化施工試験部73.5m2
【神岡試験坑道における開発成果】
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穿孔 : 最適自動発破設計システム
穿孔時に取得した岩盤データから、最適な発破パターンが自動生成されるシステムを開発しました。発破パターンデータを全自動コンピュータジャンボに転送することで、オペレータ1名での自動穿孔が可能です。これにより、余掘量は従来施工比60%低減、サイクルタイムは同比20%短縮を実現しました。
参考)2023年7月25日プレスリリース:https://www.kajima.co.jp/news/press/202307/25c1-j.htm
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装薬 : バルクエマルション爆薬
装薬の自動化には、安全性の観点から、装填機内では非火薬、穿孔した孔内で原料を混ぜ合わせることで初めて火薬化する現場製造式の爆薬が適しています。装薬の自動化に向けた第一歩として、現場製造式の「バルクエマルション爆薬」を採用した全断面発破を国内の山岳トンネル工事で初めて実施し、許認可関係省庁等に公開しました。
参考)2024年4月25日プレスリリース:https://www.kajima.co.jp/news/press/202404/25c1-j.htm
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ずり出し : 自動ホイールローダ、遠隔バックホウ
ホイールローダに搭載したLiDARの計測データをもとに坑内の地図を作成しつつ、自機の位置をリアルタイムで推定するSLAM技術を活用することで、非GNSS環境下であるトンネル坑内においても掘削ずりの掬(すく)い取り、運搬、荷下ろしの自動化を実現しました。また遠隔バックホウとの連携により、ずり出し作業時の切羽近傍の完全無人化を実証しました。
参考)2024年7月10日プレスリリース:https://www.kajima.co.jp/news/press/202407/10c1-j.htm
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アタリ取り : アタリガイダンスシステム、遠隔ブレーカ
ブレーカ本体に搭載した3Dレーザスキャナにより、切羽に立ち入らなくても発破直後の露出した岩盤形状を定量的かつ自動的に評価できるアタリガイダンスシステムを開発しました。また、ブレーカを遠隔操作することで、アタリ取り作業時の切羽の完全無人化を実証しました。
参考)2024年7月23日プレスリリース:https://www.kajima.co.jp/news/press/202407/23c1-j.htm
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吹付け : エレクタ付2ノズル自動吹付け機
2ノズル自動吹付け機に搭載した3Dレーザスキャナによる切羽形状の測定結果を基にして吹付け計画を自動生成し、左右2ノズルをプログラム制御する「自動吹付けシステム」を開発しました。2ノズルによる自動吹付けにより、従来の1ノズル自動吹付けと比較して約50%の施工時間の短縮を実証しました。
併せて、「建込みガイダンスシステム」により、支保工建込み目標位置に対する姿勢計算結果に基づいてエレクタを遠隔操作することで、所定の位置への支保工建込みが可能であることを実証しました。支保工のセンターボルトにはワンタッチジョイントを、繋ぎ材には固定用アンカーを用いることで、人が切羽近傍に立ち入ることなく、運転席からオペレータ1名での建込みが可能です。
参考)2024年6月10日プレスリリース:https://www.kajima.co.jp/news/press/202406/10c1-j.htm
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ロックボルト : 自動ロックボルト打設機
穿孔位置への誘導から穿孔、モルタル注入、ボルト挿入までの一連作業を自動化するブームを左右2つ備えた「2ブームロックボルト施工機」を開発しました。本機は3~6mのロックボルトに対応可能で、施工速度および精度を確保したうえで、オペレータ1名によるロックボルト打設が可能であることを実証しました。
参考)2023年11月21日プレスリリース:https://www.kajima.co.jp/news/press/202311/21c1-j.htm
【今後の展開】
鹿島は今後、神岡試験坑道において実証した各作業ステップの自動化施工技術を、他の工事に順次導入していく予定です。
鹿島は、切羽近傍での作業以外にも、覆工コンクリート打設の完全自動化技術や、補助工法であるAGF工法の機械化技術等をすでに実用化しています。それらを総合的に適用することで、山岳トンネル工事のさらなる安全性および生産性向上に貢献してまいります。
(参考)
動画でみる鹿島の土木技術 山岳トンネル
https://www.kajima.co.jp/tech/c_movies/index.html#anc_mountain_tunnel
施工人員25%減と作業負荷軽減を実現 山岳トンネル工事の補助工法を完全機械化
(2023年11月29日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202311/29c1-j.htm
高流動コンクリートを用いた「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を実工事に初導入
(2023年9月7日プレスリリース)
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