首都直下地震に備えた広域連携BCP訓練を実施
名古屋に災害対策本部代替拠点を立ち上げ、ヘリコプターで人員・物資を輸送
鹿島(社長:天野裕正)は8月28日に、首都直下地震の発生を想定した、本社・各支店による広域連携BCP訓練を実施しました。
本社(東京都港区)および首都圏4支店(関東・東京土木・東京建築・横浜)、ならびに東北・北陸・中部の3支店では、午前9時にM7.3、最大震度7の都心南部直下地震が発生し、首都圏が大規模被災により機能しない場合を想定した広域連携訓練を実施しました。
被害が大きいと予想される首都圏では、停電や断水、ガス供給・公共交通機関の停止、主要道路の車両通行規制、通信回線の遮断が想定されます。そこで、当社は社会機能の復旧や顧客企業の支援を早期に開始すべく、中部支店(名古屋市中区)が災害対策本部代替拠点として本社および東北・北陸の2支店と連携し、被災した首都圏4支店を支援する体制を構築。本支店連携による物資輸送の計画、支援状況の可視化、ヘリコプター活用による人員・物資輸送の訓練等を実施しました。
鹿島は今後も、災害時に発生し得る状況を詳細に想定した緊迫感ある訓練を実施し、改善・見直し・実践確認を繰り返し行い「事業継続力」を強化することで、建設会社の使命として社会全体のレジリエンス向上に貢献していきます。
【主な訓練内容】
1.広域での本・支店連携訓練
首都直下地震発生時には、首都圏が広範囲に被災することが予想されます。そのため、被災した公共交通機関や主要道路などのインフラおよび顧客企業からの復旧要請に応じる首都圏4支店を受援側、本社および東北・北陸・中部の3支店を支援側に分け、人的・物的資源を授受する連携訓練を実施しました。
発災直後は、本社および首都圏4支店における通信回線が遮断している状況を想定し、MCA無線※1等を使用した連絡体制を確立するとともに、本社に代わり一時的に災害対策本部の役割を担う代替拠点を中部支店に立ち上げました。その後、次第に通信回線が回復していく状況を想定し、本社および各支店が受援・支援側に分かれ、本支店間での情報共有と支援体制を構築しました。具体的には、当社技術研究所が開発したリアルタイムな災害情報共有システム「BCP-ComPASⓇ」※2をもとに、本社および首都圏4支店や施工中現場の被害予測を確認。その上で、支援側は、受援側の要請に基づき支援物資の集積場所と輸送方法・ルートの決定、応援人員が活動するための宿泊場所の確保などのオペレーションを確認するとともに、「緊急支援物資管理システム」にて物資の支援状況を可視化しました。
※1 過去の大規模災害時に行政機関やインフラ企業で活用された災害に強いとされる無線
※2 BCP-Communication and Performance Assistant System
2.ヘリコプターを活用した人員・物資の輸送訓練
被災し、鉄道や主要道路が寸断された場合でも、一刻も早く現地調査し、復旧作業を開始することが当社の責務です。そこで、実際にヘリコプターを活用し、人員・物資の輸送を行う訓練をしました。
具体的には、まず、ヘリコプターで東京ヘリポート(東京都江東区)から名古屋空港(愛知県西春日井郡)へ空路で向かい、検討したルートで災害対策本部の代替拠点である中部支店に人員を輸送しました。次に、ヘリコプターに物資を積み、名古屋空港から川島ヘリポート(埼玉県比企郡)まで空輸後、物流拠点とするカジマメカトロエンジニアリング(社長:池田邦彦、東京都港区、鹿島グループ会社)の川越事業所に社用車で物資を輸送・集積。その後、集積した物資を再度、川越事業所から川島ヘリポートまで陸送し、ヘリコプターで川島ヘリポートから東京ヘリポートまで空輸後、陸路で本社まで輸送しました。
3.安否確認訓練
社員・派遣社員および国内グループ会社に所属する約2万7千人を対象とした「従業員安否システム」の登録訓練を、全社一斉に行いました。家族の安否確認は、発災後、社員一人一人が復旧活動に専念する上での最優先事項です。訓練では、各自が家族との連絡手段を複数用意していることを確認するとともに、実際に家族と連絡を取った上で、「従業員安否システム」に登録しました。さらに、家族の職場や学校、自宅など、有事の際の避難場所を自治体のホームページで確認し、各家庭内で共有しました。
4.「q-NAVIGATORⓇ」で地震後の建物の安全性を把握
当社グループが推奨する「q-NAVIGATOR」は、建物内に設置した複数のセンサーが地震による揺れの強さを感知し、建物の変形の大きさを推定することで倒壊可能性を判定するシステムです。これを導入した自社建物では、揺れが収まってから1~3分で表示される判定結果で、安全性を把握しました。
5.工事現場の初動対応訓練
当社は、地震による仮設足場・仮囲いの倒壊、危険物流出など二次災害を防止し、工事関係者の避難・安全確保など初動対応を適切に行うため、「震災時における現場対応指針」を定めています。各工事現場では指針に基づいて、安否確認や避難場所の確認など初動時に必要な行動を整理し、関係者間で共有しました。また、全国の工事現場で被災状況を「災害時現場速報システム」に登録し、全社共有しました。
6.待機者および帰宅者への対応(一斉帰宅の抑制、帰宅許可の判断)
発災直後の一斉帰宅は、混雑による救命救助活動に支障をきたすおそれや、沿道の建物からの落下物など二次被害に遭うおそれがあります。そのため、当社では帰宅を急がず、事業所内に留まることを原則としていますが、家庭の事情などにより帰宅せざるを得ない従業員がいることも想定し、帰宅許可に関する手続きを訓練しました。また、各従業員は、やむを得ず徒歩で帰宅する場合に備えて、当社の「災害時の個人行動基準」に則り、「BCP-ComPAS」を用いた帰宅経路の確認や、歩きやすい靴の職場への用意等を行いました。
8時間におよぶ訓練の最後に行われた災害対策本部会議において、天野社長から次の総括がありました。
「年初の能登半島地震のような巨大地震が、いつ、どこで発生してもおかしくない状況である。当社が蓄積してきた震災対応のナレッジに加え、最新の知見、技術、製品を試行・活用し、当社のBCPを継続的に更新していくことが重要である。発災直後、社員が最初に考えることは家族の安否である。予め家族間における連絡手段を含めた震災時の行動ルールを決め、ルーチン化しておくこと大切である。今後も、リアルで実践的な訓練を繰り返し行い、その中で浮かび上がってきた課題を解決して事業継続力の強化に繋げるサイクルを続けてもらいたい」。
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