米、肉・魚、野菜の購入「経済的に困難」9割 物価上昇で 食事量・栄養足りず「子どもの成長への影響心配」【フードバンクを利用するひとり親家庭2,000名超による回答】

食の困窮深刻 「子どもが遠慮して食べない日も」

認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)は2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭への食品支援事業「グッドごはん」を運営し、ひとり親家庭への食品配付を行っています。

当団体は、グッドごはんを利用するひとり親家庭を対象に、前年の収入や暮らしの状況に関するアンケート調査を毎年実施しています。今回の調査の結果、経済的に厳しい暮らしの中、物価上昇も追い打ちとなり、十分な量・栄養のとれる食事を家庭で用意できず健康に支障が生じる場合もあるなど、低所得のひとり親家庭が深刻な食生活に直面している状況が明らかとなりました。

アンケート概要

「ひとり親家庭の収入・暮らしの状況に関するアンケート」

・実施日程:2025年2月4日~2月20日

・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は、原則としてひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)

・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)

・回答者数:2,345名

・回答者属性:

 - 性別:女性 2,252名|男性 68名 (無回答除く)

 - 年代:10代 1名|20代 70名|30代 519名|40代 1,201名|50代 525名|60代以上 24名 (無回答除く)

 - 居住地域:首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉) 1,031名|近畿(主に大阪・京都・兵庫・奈良)851名|九州(主に佐賀・福岡)463名

経済的困窮が子どもの食生活に影響 食材の購入困難

回答者の世帯全体における2024年の年収(各種社会手当・養育費・同居家族の収入含む)について質問した結果、「200万円未満」が5割にのぼりました。

世帯全体における2024年の年収 (各種社会手当・養育費・同居家族の収入含む)

本調査回答者の収入状況に関する調査結果詳細(プレスリリース)

低い収入で暮らしを送る家庭にとって、日々の生活で十分な食事をとることさえ困難となり、切迫した状況に陥ることがあります。

本調査で、経済的理由により十分な量・栄養の食事を1日のうち一度も子どもに用意できない頻度について回答を得たところ、以下の結果が示されました。

経済的な理由で、空腹を満たすのに十分な量の食事を1日のうち一度も子どもに用意できない頻度
経済的な理由で、主食・主菜・副菜がすべてそろった食事を1日のうち一度も子どもに用意できない頻度

上図のとおり、「空腹を満たすのに十分な量の食事を1日のうち一度も子どもに用意できない頻度」が「ほとんど毎日」「週に2~3日程度」と回答した人の割合が計14.2%であり、「主食・主菜・副菜がすべてそろった食事を1日のうち一度も子どもに用意できない頻度」については「ほとんど毎日」「週に2~3日程度」の割合が計28.3%にのぼりました。

これらの結果から、空腹を満たすのに十分な量の食事をとることに加え、栄養バランスの整った食事を用意することにさらなる困難を抱えている様子がうかがえます。

この一因として、今般の物価上昇により、食材を自身で購入することが経済的に困難な状況が生じていることが推察されます。

本調査で、物価上昇の影響により米、肉・魚、野菜を買うことが経済的にどの程度困難かについて質問した(※)結果、約9割が「非常に困難である」「やや困難である」と回答しました。

(※ 本調査で、物価上昇が続く中での暮らしぶりが「非常に苦しい」「やや苦しい」と回答した人 <計95.8%・n=2336> に対する質問)

物価上昇の影響で、米を買うことは経済的にどの程度困難か

物価上昇の影響で、肉や魚を買うことは経済的にどの程度困難か

物価上昇の影響で、野菜を買うことは経済的にどの程度困難か

「物価上昇が続く中で、自身や子どもの食生活について不安・心配に感じていること」に関する自由記述回答では、下記のような声が寄せられました。

「今までなら野菜でかさ増しや米でお腹を満たせていたが、野菜も高く米も値段が倍になり、食べる量を全体的に減らさないといけない。最近子どもが気を遣って食事を取らなくなってきている。食べることが家計を圧迫しているように感じるようで、買える食材も限られるので同じ様なメニューで食べたくなくなってもいるようです。」

「ご飯少しとみそ汁だけの日が多い。魚や肉はたまに安売りのときに買う程度。卵も値上げしたのであまり食べられなくなった。」

「ビタミンやミネラルなどが豊富な食材が調達できず代わりに炭水化物や脂質が多いものに偏りがちなので、栄養バランスが崩れ、成長期の息子たちに悪影響を来さないかいつも心配しています。」

「栄養バランス以前に栄養がとれていない。お腹を満たせば良いと思うようになってしまった。野菜が高すぎてもやしときのこ類しか買えない」

「子どもはお腹空いたと言うが、満足に食べさせる事がだんだん厳しくなってきている」

「子どもが遠慮して食べない日がある」

「栄養の偏りや、食卓を囲む楽しさが減り、食するということへのイメージが低下し、心身の成長に影響しないか心配です。食に絡む豊かさを育んでやれないもどかしさや残念な気持ちがあります。」

「その時あるお金で購入できる野菜などで工夫して調理していますが、しばらく肉は食べておらず、卵も高騰してきているので、栄養面や偏りがとても心配です。」

自分の分を減らして子どもに・・・ 健康に影響も

歯止めのかからない物価上昇の中、保護者が自分の食事を制限して対応せざるを得ない状況が顕著にみられます。

「物価上昇の影響により普段の生活でよくとっている行動」について、選択肢の中であてはまるものを選択する(複数選択可)形式で質問した(※)結果、「自分の食事の量や回数を減らす」との回答が最も多くみられました。

(※ 本調査で、物価上昇が続く中での暮らしぶりが「非常に苦しい」「やや苦しい」と回答した人 <計95.8%・n=2336> に対する質問)

物価上昇の影響により 普段の生活でよくとっている行動(複数回答)

保護者の具体的な食事状況に関しては、「空腹を満たすのに十分な量の食事を1日のうち一度もとれない頻度」が「ほとんど毎日」「週に2~3日程度」と回答した人は約2割であるほか、「主食・主菜・副菜がすべてそろった食事を1日のうち一度もとれない頻度」については、「ほとんど毎日」「週に2~3日程度」の割合が計39.8%に及びました。

経済的な理由で、空腹を満たすのに十分な量の食事を1日のうち一度もとれない頻度(保護者)
経済的な理由で、主食・主菜・副菜がすべてそろった食事を1日のうち一度もとれない頻度(保護者)

回答者からは、子どもに食べさせるために自分の食事を控える実情について、下記のような声が聞かれました(自由記述回答)。

「子供には十分な栄養のある物を食べさせたいので自分の食事量は減らして子供に回している。自分は週に2-3日は食べない事もある」

「自分の食事内容や量を変える事で何とか生活している」

「子供の食事は減らしたくないので、わたしができる限り減らすようにしていますが、これ以上物価が上がると子供の分を減らさないといけなくなる。成長途中なのでそれは絶対に避けたい」

「こどもは食べ盛りなので、食事をたくさん用意する事ができるか常に不安です。出来るだけ自分の食事を減らして、子どもに食べさせています。」

物価上昇を背景に家庭で十分な食事を用意できず、健康状態にも悪影響が及んでいるケースもみられます(自由記述回答)。

「自分が食べる量を減らしているので、貧血が悪化した」

「栄養が不足した結果、感染症にかかりこじらせ医療費が高くなり身も蓋もなかった。」

「自分が食べずに子どもに食べさせているので、体重がどんどん減り、生理も来なくなって数年になります。」

「おなかにたまるものや炭水化物や加工品が多くなり、変な太り方をしてしまったり体調不良などがあるので健康面でも不安があります。」

「自分の食事を抜いているので、病気がちにもなり元気に働けない」

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コラム:必要な支援を躊躇せず受けられる社会を

日本国民に健康的で文化的な最低限度の生活を保障するために存在している制度が、生活保護です。セーフティーネットの一つであるこの制度について、貧困研究の第一人者である阿部彩教授(東京都立大学)は次のように述べます。

「一時的な困窮状態にある人を保護することにおいて生活保護は一番適しており、生活保護を受けることは国民の権利でもあります。しかし、権利意識が無く、生活保護を受ける人をバッシングする社会があります。社会一般の意識を、本当に変えなければなりません。」

――グッドネーバーズ・ジャパン発行『ひとり親家庭の生声白書』より引用

食の困窮をはじめ、健康的で文化的な最低限度の生活が保障されない状況に置かれたとき、誰もがためらわず必要な制度に手を伸ばし、十分な保護を受けられるよう、社会における制度理解の促進が求められます。

***

食べることは、一人ひとりに保障された権利

食は暮らしや健康の維持において不可欠であり、子どもたちの成長を支える基盤です。しかし、本調査の結果から、経済的困窮や物価上昇により低所得家庭の暮らしが著しく脅かされ、食事を犠牲にせざるを得ない状況が日常化している実態が浮かび上がりました。

十分な食事をとることはすべての人々に保障された権利であり、家庭の経済状況によって脅かされてよいものではありません。人として当然の権利が守られる社会では、すべての子どもたちが置かれた環境によらず食事を満足にとることができ、子どもたちを養い育てる親もまた食事の困難を抱えずに済むべきと考えます。

一人ひとりがもつ権利を守るため、困窮家庭への食支援を迅速に行う仕組みの整備など、政府や民間、地域社会が一体となって課題解決に取り組むことが求められています。

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■団体について

特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。

https://www.gnjp.org/

■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは

「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、延べ12万を超える世帯に食品をお渡ししてきました*。

首都圏、近畿および九州における約50か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。

*2025年2月時点(配付拠点数は月により変動) 

https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/

※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています

※生活保護受給中の方は対象外です

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会社概要

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都大田区西蒲田7-60-1 ソメノビル7階
電話番号
03-6423-1768
代表者名
小泉 智
上場
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資本金
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設立
2004年12月