ispace EUROPE、米マグナ・ペトラ社と22百万米ドルのペイロードサービス契約を締結。NASAが開発する「MSOLO」をミッション3で月へ輸送予定
世界初となる、月面のヘリウム3他揮発性物質に関するデータ取得を目指す
株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)(証券コード9348)は本日、欧州法人であるispace-EUROPE S.A.(以下ispace EUROPE)が、米国に拠点を置く、月面でのヘリウム3同位体の商業化を目指す月面資源開発企業、Magna Petra Corp.(以下マグナ・ペトラ)との間で、アメリカ航空宇宙局(以下NASA)が開発をした月面質量分析計(Mass Spectrometer Observing Lunar Operations、以下MSOLO)を月へ輸送するためのペイロードサービス契約を締結したことを、お知らせします。契約総額は22百万米ドル(約32億円*¹)となります。
*¹:2025年8月末のTTMレートを使用し円換算
本契約に基づき、マグナ・ペトラが実施する月面資源探査ミッション「HALO(Helium Availability of Lunar Origin)」の一環として、マグナ・ペトラはMSOLOを、ispace EUROPEがルクセンブルクで開発を進めるミッション3の小型月面探査車に搭載する予定です。
本連携は、NASAの実績ある技術機器と、マグナ・ペトラの資源探査ミッション、そしてispaceの「月の資源を活用して月面経済圏を構築する」というビジョンを融合させた、国際的な月面科学および商業パートナーシップの重要な前進を意味します。
MSOLOはNASAケネディ宇宙センターで開発された小型質量分析計で、月面レゴリス中に存在するとされるヘリウム3などの希少同位体を含む揮発性物質の計測を目的としています。
マグナ・ペトラはNASAケネディ宇宙センターとの間で締結された共同研究開発契約(Cooperative Research and Development Agreement:CRADA)のもと、AIによる月面同位体分布の「デジタルツイン」モデルの検証を進めています。これにより同社は、ispaceとの協業を通じて、ヘリウム3のサンプルリターン機能を含む持続可能なサプライチェーンの確立を目指します。ヘリウム3は、将来的に核融合エネルギー革命や量子コンピュータの冷却技術として重要な役割を果たすことが期待されています。
ローバーの設計、開発および月面でのミッション運用管理はispace EUROPEが主導します。MSOLOを搭載するためにローバー設計を最適化し、他ペイロードとの整合も図りながら運用全般を担います。本ローバーは、ispaceの米国法人であるispace technologies U.S. (以下ispace-U.S.)が開発を進めているAPEX 1.0ランダーに搭載される予定で、ispace EUROPEとispace-U.S.の両拠点から、顧客カバレッジと技術専門性を結集させた、大陸を跨いだ連携が実現しています。
ispaceとマグナ・ペトラは、革新的な科学の発展と持続可能な月面経済の確かな基盤構築に向けて、共に道を切り拓いていきます。
ispace-U.S. CEO, Elizabeth Krystのコメント
「NASAが開発したMSOLOをミッション3のローバーで月へ輸送させるための今回のマグナ・ペトラとの契約は、民間企業が政府機関やグローバル・パートナーと連携することで、どれほど可能性を広げられるかを示す好例です。私たちは、探査の限界を押し広げ、新たな発見の機会を創出していきます。」
ispace EUROPE CEO, Julien-Alexandre Lamamyのコメント
「本ミッションは、欧州が月面探査の分野において重要な役割を持つことを示しています。世界水準のエンジニアリングを提供し、真の国際協力の一翼を担うことで、画期的な科学および商業連携の扉を開き、持続可能な月面経済の基盤を構築してまいります。」
Magna Petra CEO, Jeffrey Max氏のコメント
「この歴史的な月資源探査ミッションを、ispaceと協力して実施できることを大変光栄に思います。ヘリウム3は、核融合炉において放射性廃棄物を一切出さないという特性を持ち、商用の量子コンピューティングにおいても重要な冷却剤となり、遍在するAI社会の実現に向けたサプライチェーンの要となる要素です。当社のHALOミッションは、この極めて重要な同位体の信頼性あるサプライチェーンを確立するための第一歩となります。」
■ ispace-EUROPE S.A.について
ルクセンブルクに拠点を置く欧州法人であるispace EUROPEは、月面探査車の開発を重点的に取り組んでいます。欧州初となる独自設計および製造、組み立てを行い、マイクロローバー(小型月面探査車)の開発をしています。世界トップクラスの人材が集まり、ロボット工学技術やルクセンブルクのエコシステムとの強固なつながりを持つispace EUROPEは、欧州における月面産業の創出を加速させ、拡大する法人や個人顧客のニーズに応えます。
同社には、月面を模した月面ヤードや関連ミッションのシミュレーションを行うためのミッションコントロールルーム(管制室)を構え、月面探査車のナビゲーション技術の開発をサポートしています。
■ 株式会社ispace ( https://ispace-inc.com/jpn/ )について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約300名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行う。2022年12月11日には SpaceXのFalcon 9を使用し、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了。続くミッション2も2025年1月15日に打上げを完了した。これらはR&D(研究開発)の位置づけで、ランダーの設計および技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化を目的としたミッションであり、結果、ispaceは月周回までの確かな輸送能力や、ランダーの姿勢制御、誘導制御機能を実証することが出来た。2027年iには、米国法人が主導するミッション3(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)の打ち上げを予定しており、ミッション1、2で得られたデータやノウハウをフィードバックした、より精度の高い月面輸送サービスの提供によって、NASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。さらに、2028年iiには、経産省SBIR補助金を活用し、現在日本で開発中のシリーズ3ランダー(仮称)を用いたミッション4(旧ミッション6)の打ち上げを予定している。
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i 2025年10月時点の想定
ⅱ当該打上げ時期については2025年時点の予定であり、今後変更する可能性があります。なお、当社が補助対象事業として採択されたSBIR(Small Business Innovation Research)制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」の事業実施期間が原則として2027年度とされており、SBIR制度に基づく補助金の対象となるミッション4は、当初2027年中の打上げとして経済産業省及びSBIR事務局と合意しておりましたが、2025年10時点では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については今後、関係省庁及びSBIR事務局と調整中の段階であり、最終的には経済産業省により正式に計画変更が認可されることとなります。
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