年頭所感 2026
SDV普及が形作るトレンドと、日本が直面する構造課題解決に歩む一年へ
新年明けましておめでとうございます。QNX Japanのカントリーセールスディレクター、松岡秀樹でございます。
2025年、自動車産業はSDV(ソフトウェア定義型車両)の普及へ向けた重要な転換点を迎えました。EV中心の技術競争から、「ソフトウェアを基盤に価値を創る競争」へと大きくシフトが進み、SDVは「未来の概念」ではなく「現在進行形の価値領域」として定着し始めています。
日本でも、経済産業省による「モビリティDX戦略」がアップデートされ、2030年および2035年のSDVの世界販売台数において「日系シェア3割」 を目指すという明確な方向性が示されました。OEM各社はOTA対応の拡大、ソフトウェア子会社の設立、海外IT企業との協業など、迅速な変革に取り組んでいます。
一方で、日本特有の課題も浮き彫りになっています。QNXの調査に基づいた「Under the Hood: SDV開発者レポート」によると、
-
規制遵守に「非常に自信がある」割合は世界最低(16%)
-
生産性環境に「非常に満足」と答えたのは14%(世界平均30%)
-
開発サイクルの長さ(46%)とスケール性不足(36%)が主要課題
-
業界横断的な協働開発の重要性は83%と認識する一方、実行度は33%で世界最低
という結果が示されました。
この「慎重で堅実だが、課題が多い」日本の状況は、2026年のトレンドを理解するうえで欠かせません。以下では、自動車業界を方向づける4つのトレンドを示します。
1. OEMのアプリケーション層へのシフトが鮮明化:インフラ構築の時代から、価値創造のフェーズへ
OEMは基盤インフラの内製よりも、車内体験を生むアプリケーション層での差別化にリソースを集中し始めています。これは新しい発想ではなく、すでに進展しているトレンドです。QNXの調査では、日本の車載ソフトウェア開発者の78%が「アプリケーション層に注力」することを支持しており、世界的なトレンドと歩調を合わせています。ただし日本では、生産性に「非常に満足」している割合は14%に留まり、開発サイクルの長期化が顕著な課題となっています。そのため、非差別化領域は信頼できる基盤へ任せ、アプリケーション開発に集中することへの必然性が、ほかの地域よりも強く現れています。QNXとVectorが共同開発した事前統合済みの Foundational Vehicle Software Platform(車両基盤ソフトウェアプラットフォーム 、FVSP)は、このトレンドを支える取り組みであり、日本のOEMがアプリケーション価値に専念できる環境づくりに寄与します。
2. HPCを中心とした集中型アーキテクチャが主流に:AI・機械学習を前提とした安全にスケールする基盤
AI・機械学習を活用した新機能が増加し、複数ドメインを跨ぐリアルタイム処理が要求される中、HPC(高性能演算システム)はSDVの中核アーキテクチャとして定着しつつあります。最新SoCのマルチコア化、集中型E/Eアーキテクチャの普及により、基盤ソフトウェアには
-
安全性
-
決定性(リアルタイム)
-
セキュリティ
-
シームレスなスケーラビリティ
が厳しく求められます。日本の開発者の42%が「機能安全への対応が最も困難」と回答していることから、「安全を担保したスケール」を提供できる基盤の日本市場における重要性は非常に高いと言えます。QNX SDP 8.0は、マルチコアスケジューリング性能を最大60%改善し、次世代HPCワークロードに対応する安全基盤として採用が広がっています。
3. 協働エコシステムの重要性が急速に高まる:技術の複雑化と市場投入スピードの両立に向けて
SDV化によってソフトウェア統合は急速に複雑化し、単独企業では対応しきれない領域が増えています。QNXの調査では、日本の開発者の83%が「業界横断的な協働が不可欠」と回答しています。
しかし、実際に自社が協働開発を支援していると「強く同意」した割合は33%で、世界最低水準を示しました。つまり、「協働の必要性は理解しているが、文化的・組織的障壁で実行に踏み切れていない」という日本固有のギャップが存在します。この文脈において、統合済みのソフトウェアプラットフォームや完全ソリューションプロバイダーとの協働モデルは、日本のOEMにとって特に重要です。QNXとVectorのFVSPは、こうした課題に対する「実行可能な解」として位置づけられます。
4. 自動車で確立されたソフトウェア定義型アーキテクチャが他産業へ広がる:安全性・信頼性・決定性を備えた設計思想の横展開
ロボティクス、産業装置、医療機器、航空宇宙など、多くの領域でソフトウェア定義アーキテクチャの採用が進展しています。その際、多くの企業が参考するのが「安全性と決定性を両立させた自動車のソフトウェア基盤」です。その価値観は、医療・ロボティクスなど高信頼領域と親和性が高く、日本企業がこれらの領域で技術優位性を発揮する可能性を示唆しています。QNXはすでに、自動車以外の様々な領域で採用されており、自動車で確立した設計思想が他産業へ広がるトレンドと寄り添っています。
2025年にQNXが進めた取り組みと成果
2025年、QNXは以下の領域でSDV基盤の進化を推進しました。
-
Vector・TTTech AutoとのFVSP共同開発
-
マイクロソフトとの協働
-
Eclipse Foundation「S-CORE」プロジェクトでSDP 8.0が基盤OSに採用
-
NVIDIA開発キットへの QNX OS for Safety 8 採用
-
QNX Everywhereを通じたSDP 8.0の無償非営利利用の拡大(世界的なエンジニア不足への支援)
これらの取り組みは、いずれも2026年のトレンドに対する実践的な基盤整備であり、日本市場の課題解消にも直結しています。
2026年に向けたQNXのコミットメント
2026年、QNXは以下に重点的に取り組みます。
-
QNX Everywhereイニシアチブの強化:QNX Everywhereの目的は、QNXを使用した開発トレーニングを受けた開発者エコシステムの拡大とともに、組み込みシステムの学習・実験・イノベーションを実現しやすい環境の創出です。QNXがこのイニシアチブに期待するのは、高いスキルを持つ組み込み車載ソフトウェア開発者の育成であり、これによりOEMは、適切な人材を獲得しやすくなります。QNXでは、次世代のエンジニアが、組み込み業界の未来を形成・発展させるためのスキルと技術的ノウハウを身につけ、自動車メーカーや航空宇宙企業など、どのような業界の企業においてもそのキャリアの初日から大きく貢献できるよう、QNX Everywhereによる取り組みを強化していきます。
-
より広範な組み込み市場での事業拡大:商用車、重機、産業オートメーション、鉄道、ロボティクス、航空宇宙・防衛、医療機器などの業界はすべて、システム障害が人命の危機に直結しかねないミッションクリティカルな環境で稼働しています。これらの業界ではソフトウェア定義型への移行が進展しており、自動車業界とは多くの点で共通性があります。
-
FVSPを推進:CESで発表したFVSPにより、これにより自動車メーカーは、煩雑でコストのかさむソフトウェア統合プロセスが不要になり、ブランドロイヤルティ、差別化、価値創造のための革新的な消費者向けアプリケーションの提供に注力できるようになります。現在でも多くのOEMが、差別化につながらないソフトウェアレイヤーの開発に苦心しています。QNXはこうしたOEMに向け、製品の差別化や付加価値の創造に直結しにくい開発に注力することへの再考を提言しています。つまり、車載ソフトウェアエコシステム全体にわたるパートナーシップを構築して、基盤となる要素についてはサポートを得ることが重要です。ソフトウェアエンジニアの人材確保が世界的に難しくなり続けている一方で、多くのOEMは、そのリソースを基盤ソフトウェアの継続的なメンテナンスに費やしています。エンジニアの力は、最高レベルの製品とサービスを顧客に提供することに注がれるべきです。これを正しく実行できるOEMはドライバーと乗客両方の心を掴み、より広範な市場で競争力を維持していくでしょう。
SDVへの進化を支える確かな基盤を通じて、日本の自動車業界とともに価値創出を加速する一年とすべく取り組んでまいります。
BlackBerryについて
BlackBerryは、世界の企業や政府機関向けに、インテリジェントなソフトウェアとサービスを提供しています。BlackBerryの高性能な基盤ソフトウェアにより、大手自動車メーカーや産業界の大手企業は、安全性、セキュリティ、信頼性を損なうことなく、革新的なアプリケーションの開発、新たな収益源の創出、変革的なビジネスモデルの展開を実現できます。カナダ・オンタリオ州ウォータールーに本社を置く当社は、セキュアな通信分野における深い実績を有し、包括的で高度なセキュリティを備え、広範な認証を取得したポートフォリオを通じて、モバイル機器の防御、ミッションクリティカルな状況下でのコミュニケーション、そして重要事象の管理を可能にする運用上の耐障害性を提供しています。詳細は、BlackBerry.comをご覧いただくと同時に、@QNX Newsをフォローしてください。
QNXについて
QNXは、BlackBerry Limited(NYSE: BB; TSX: BB)の事業部門として、人々の体験を豊かにし、テクノロジー主導型の産業の可能性を広げ、ソフトウェア定義型企業が成長できる信頼できる基盤を提供しています。当事業部門は、安全かつセキュアなオペレーティングシステム、ハイパーバイザー、ミドルウェア、ソリューション、開発ツールの提供において業界をリードし、信頼される組み込みソフトウェアの専門家によるサポートとサービスを提供しています。QNXテクノロジーは、現在2億7500万台以上の自動車を含む、世界で最もクリティカルな組み込みシステムで採用されています。QNXソフトウェアは、自動車、医療機器、産業用制御装置、ロボット、商用車、鉄道、航空宇宙・防衛など幅広い業界で信頼を獲得しています。1980年に設立されたQNXは、カナダ・オタワに本社を置いています。詳細については、qnx.comをご覧ください。
©2025 BlackBerry Limited。BLACKBERRYおよびEMBLEM Design、QNXおよびQNXロゴデザインなどの商標(ただし、これらに限定されない)は、BlackBerry Limitedの商標または登録商標です。また、このような商標に対する独占的権利が明確に留保されています。その他すべての商標は各社の所有物です。BlackBerryは第三者のいかなる製品またはサービスについて責任を負うものではありません。
報道関係者お問合せ先
QNX Japan 広報事務局
電話: 03-4405-9537
Email: qnxpr@next-pr.co.jp
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
