全国エリア別に紐解く住宅ローンの利用実態 ーペアローン利用・返済設定期間の長期化は全国的にー
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が住まいに関するアンケート結果を公表
三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(所長:丸岡 知夫)(以下、ミライ研)は、1万人(全国の18歳~69歳)を対象とした独自アンケート調査を2025年1月に実施しました。
【ポイント】
●過去5年以内(2020年~2025年)の住宅ローン利用者(581人)を対象に、「首都圏」・「近畿圏」・「中京圏」・「その他」のエリア別で住宅ローンの利用実態を調査
●ペアローン利用率は、首都圏が約3割、3大都市圏以外でも約2割が利用
●金利形態は、3大都市圏で「変動金利」が7割以上、それ以外のエリアでは約4割が「固定金利」を利用
●住宅ローン返済比率は、どのエリアでも「世帯年収の4割以上」が約2割
●返済設定期間は、どのエリアでも「35年以上」が4割超、3大都市圏以外では「36年以上」も1割超
●ペアローンの利用増加や返済設定期間の長期化は首都圏だけでなく全国的な傾向
1.直近5年以内の住宅購入者をエリア別にチェック
足元では首都圏における住宅価格や住宅ローンの借入実態に注目が寄せられる一方で、国土交通省が公表する不動産価格指数をみると、住宅価格は首都圏だけでなく全国的にも上昇傾向にあることがわかります【図表1】。
住宅価格が上がるにつれて、住宅ローンの借入も高額化・長期化の傾向にありますが、実際に注目が集まりやすい首都圏と、首都圏以外のエリアで住宅ローンの借入方法に差はあるのでしょうか?
【図表1】 不動産価格指数(住宅)

足元の住宅ローンの借入実態を把握するため本調査では、3大都市圏(首都圏、近畿圏、中京圏)とそれ以外(その他)の4つのエリアに分け、過去5年以内(2020年~2025年)に住宅ローンの借入を開始された方を対象に深堀りしています【図表2】。
*住宅ローンの借入開始時期=住宅購入時期とみなす
【図表2】 住宅ローン借入開始時期

*各エリアの定義について (以降同様)
①首都圏:東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県 ②近畿圏:大阪府・京都府・兵庫県・奈良県 ③中京圏:愛知県・静岡県・岐阜県・三重県 ④その他:①~③以外の地域
(出所)特に出所を示していない場合、ミライ研「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)よりミライ研作成
2.エリア別の住宅ローン利用実態
住宅購入者の年代は、どのエリアでも20代・30代が過半数を占めており、足元では若い世代の住宅購入者が多くいることがわかりました【図表3】。
また、「分譲マンションの平均価格○○万円超え」など、メディアではマンション価格に注目が集まることが多いですが、住宅購入者の住居形態としては、「戸建て」の選択割合が首都圏で約7割、首都圏以外では8割以上と圧倒的な割合となっています【図表4】。
【図表3】 住宅購入者の年代

【図表4】 購入した住居形態

住宅ローンの借入形態については、首都圏ではペアローン利用が約3割と最も高い結果となりましたが、中京圏や3大都市圏以外のエリアでも約2割が利用しており、ペアローン利用率の高まりは全国的な潮流であることがわかります【図表5】。
【図表5】 住宅ローン借入形態

金利形態については、3大都市圏では変動金利選択が7割超の一方で、3大都市圏以外のエリアでは約6割となっており、3大都市圏に比べて変動金利の選択が少ない傾向が見られました【図表6】。
【図表6】 住宅ローン金利形態

返済比率※1については、どのエリアも世帯年収の3割以下が主流ですが、20%前後の方が世帯年収の4割以上となっています。
住宅ローンの返済設定期間を短くして、戦略的に返済比率を高めている、といったケースも一定数あるものと想定されますが、返済負担が大きい世帯も少なくないようです【図表7】。
※1 返済比率:年収に対する年間の住宅ローン返済額の比率
【図表7】 住宅ローン返済比率

返済設定期間については、どのエリアでも「35年以上」が4割超となっており、返済設定期間の長期化は全国的な傾向となっているようです【図表8】。加えて3大都市圏以外のエリアでは「36年以上」の返済設定期間も1割超と、3大都市圏よりも割合が高い結果となりました。
【図表8】 住宅ローン返済設定期間

これらのデータから、ペアローンの利用増加や返済設定期間の長期化は首都圏だけではなく、全国的な傾向であることが分かります。
3.各エリアの特徴は?
◆首都圏
住宅価格自体が高いことに加え、ペアローン利用も約3割と全エリアの中で最も高い結果となりました。
借入額5,000万円以上の割合も首都圏以外のエリアと比較して2倍以上ですが、意外にも返済設定期間40年や50年といった超長期ローンの利用は少なく、住宅ローンの返済比率が世帯年収の4割以上の割合も少ない結果となっています。
◆近畿圏
住宅価格は首都圏に次ぐ価格で、20代で住宅を購入する割合が約4割と、近畿圏以外のエリアよりも早期に購入する傾向かつペアローンの利用が少ないといった特徴が見られました。
返済比率が世帯年収の4割以上を占める割合が高くなっていますが、同時に返済設定期間35年未満の割合も高いため、返済設定期間を短めに設定している故に返済比率が高くなっているケースが一定数想定されます。
◆中京圏
20代・30代での住宅購入が約7割で、住居形態の内訳は新築中古含めて「戸建て」が約85%となっています。
ペアローン利用は約2割、返済設定期間は35年以上が約半数、世帯年収に占める返済比率についても、中京圏以外のエリア比で特筆して高い傾向は見られませんでした。
◆その他
住居形態は「戸建て」の選択割合が約86%と3大都市圏よりも高く、ペアローン利用は約2割と首都圏に次ぐ割合となりました。
返済設定期間は、35年以上が50%超、36年以上の選択割合13.7%と3大都市圏よりも高い結果となりました。
返済比率については、世帯年収の3割以内に収まっている割合が3大都市圏と比較して高いことから、返済設定期間を長期化することで返済負担を抑制している可能性も推察されます。
4.ペアローン利用増加、返済設定期間の長期化は全国的な傾向
住宅価格の高騰や金利の上昇が続く環境において、報道やメディアでは首都圏の住宅価格や住宅ローンの利用実態に注目が集まりますが、本調査よりペアローンを利用した借入や、住宅ローンの返済設定期間が35年以上に長期化する傾向は、全国的な潮流であることがわかりました。
今後新たに住宅ローンの利用を検討される方も、既に借入実行済みの方も、住宅ローンの返済計画については、今一度「自分ごと」として向き合い、自身の世帯に合わせて見つめ直すことが一層重要になってくるのではないでしょうか。
◆上記の記事に加え、より多くのデータをまとめたミライ研のアンケート調査結果

「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)より
全国エリア別に紐解く住宅ローンの利用実態
−ペアローン利用・返済設定期間の長期化は全国的に−
を三井住友トラスト・資産のミライ研究所のHP(https://mirai.smtb.jp/category/report/3016/)に掲載しています。
是非、ご覧ください。
【本件調査概要】
(1)調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)
(2)調査対象:全国の18~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
(3)調査方法:WEBアンケート調査
(4)調査時期:2025年1月
(5)サンプルサイズ:11,435 *過去5年(2020年~2025年)以内の住宅ローン利用者:581
(6)備考:調査結果に基づく図表については端数処理の関係上、割合が合計で100%とならない場合があります
■記事内容、アンケート結果に関する照会先
三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所(桝本)
E-MAIL:mirai@smtb.jp
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