4/22、アースデイに環境大臣へ公開質問状提出。どうぶつ基金「ちきゅう部」が奄美大島ノネコ駆除政策の科学的根拠を問う
~“愛護動物”を「害獣」とされる構造に異議。命と地球に向き合うアースデイに~

公益財団法人どうぶつ基金(所在地:兵庫県芦屋市、理事長:佐上邦久)は、「地球環境について考える日」アースデイ(4月22日)に、環境省が推進する「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(以下、本計画)」の科学的正当性を問う公開質問状を環境大臣宛てに提出しました。
この公開質問状は、どうぶつ基金の政策提言部門「ちきゅう部」が作成したもので、希少種保護を名目にしたノネコ駆除政策の根拠に対し、深刻な疑義を突きつけるものです。
■「ちきゅう」と「いのち」に向き合うアースデイに
奄美大島では今、「外来種」「害獣」というレッテルを貼られた猫たちが、科学的裏付けも乏しいままに捕獲され続けています。それらの猫の多くは、元は人間の飼育放棄によって生まれた存在であり、動物愛護法に基づく「愛護動物」として本来保護されるべき命です。
アースデイとは、地球とそこに生きるすべての命を見つめ直す日です。
だからこそ、どうぶつ基金は強い意志をもって、この質問状を4月22日=アースデイに提出しました。
■駆除の現場で何が起きているのか
ノネコの捕獲現場では、保護対象であるアマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどの希少種が、誤って捕獲・死亡する事故も報告されています。
「希少種保護のため」とされるこの政策が、実際には、その希少種を傷つける・命を奪う矛盾をはらんでいるのです。



■科学の名の下に命が消される構造
本計画の根拠となっている塩野﨑和美氏の論文には、海外データの流用や偏ったサンプル、最大値のみの引用などが見られ、科学的に信頼できない問題点が多数存在しています。
にもかかわらず、この計画が推進されている背景には、駆除事業・研究・政策が一体となった、いわば「害獣駆除産業」と呼べる構造があります。
命が「害獣」に仕立てられ、科学の名の下に殺され、ビジネスになる——この構造そのものを私たちは問います。
■公開質問状のポイント(抜粋)
以下の3点を、どうぶつ基金は環境省に対して強く求めています。
-
ノネコ駆除計画の即時中止
-
科学的に妥当な根拠に基づく計画の再構築
-
環境大臣による公開かつ明確な回答
■公開質問状 全文
※文書(PDF)は以下リンクよりご確認・ダウンロードいただけます。
令和7年4月22日
環境大臣 浅尾 慶一郎 殿
公益財団法人どうぶつ基金
理事長 佐上邦久
公開質問状
平素より環境保全行政にご尽力いただき、感謝申し上げます。
私たちは、環境省が進める「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(2018~2027年度)」について、科学的根拠の妥当性に対し重大な疑義を抱いております。
本計画の基礎資料とされている塩野﨑和美(2016)『奄美大島における外来種としてのイエネコが希少在来哺乳類に及ぼす影響と希少種保全を目的とした対策についての研究』には、統計手法の不備、データの誤用、引用の不正確さといった科学的欠陥が確認されており、これを政策判断の根拠とすることは、証拠に基づく政策決定(EDPM)に明確に反するものと考えます。
本計画は国費を投入し、数千匹規模のノネコを捕獲・殺処分する方針を含む重大な政策です。よって、その根拠となる科学的情報の妥当性は慎重に精査されるべきであり、不備があると認められる以上、政策の中止と見直しを強く求めるとともに、以下に科学的根拠の妥当性について具体的な疑問点を列記しながら質問させていただきます。貴職(および関係部局)におかれては、開かれた国政運営の一環として、真摯に説明責任を果たされますようお願い申し上げます。
なお、本質問および回答の有無とその内容については、どうぶつ基金のホームページ等、各種媒体を通じた公開を予定しており、また回答如何によっては、再度の質問のほか適宜な対応を考慮しておりますことを念のため申し添えます。
記
1. 「ノネコが年間60,000頭の希少哺乳類を捕食する」という推定値の根拠は何か?
この推定値は、奄美大島の実際の生態系と矛盾しており、科学的妥当性に欠けると考えられます。出典である論文の推計は、地域に即していない海外の研究や仮定に基づいており、地域固有の生態情報を無視しています。このような数値を政策根拠として使用する合理的な説明を求めます。
(回答)
2. 糞分析のサンプルバイアスを考慮したか?
ノネコの捕食行動に関する研究として糞分析が用いられていますが、サンプルの採取方法や地域偏在が明記されておらず、偏ったデータによって影響が過大評価されている可能性があります。計画立案にあたってこの点が考慮されたか、明確な回答を求めます。
(回答)
3. 海外のデータを機械的に流用しているのではないか?
対象地域である奄美大島の生態系と異なる海外事例を基にした数値や推計を、そのまま流用していると見受けられます。これは地域特異性を軽視する誤った科学的手法であり、根拠として不適切です。実際に参照したデータとその妥当性をご説明ください。
(回答)
4. ノネコの個体数推定の手法に欠陥があるのではないか?
ノネコの推定個体数は計画の規模や対策内容を決定する上で基礎となる数値ですが、その算出には偏ったサンプルや推定法が用いられており、統計的信頼性に問題があります。どのような手法に基づいて算出されたのか、その妥当性をご説明ください。
(回答)
5. 捕食量の推定方法が不適切ではないか?
捕食量に関しては最大値を基準とした評価がなされており、ノネコの生態的実態を反映していない可能性があります。これによりノネコの影響が過大に表現され、政策判断に誤りを生じかねません。推定方法と前提条件を明示してください。
(回答)
6. 引用されたデータの出典が曖昧ではないか?
出典の記載が曖昧であり、どの研究に基づくのかが明確に示されていない点が複数あります。また、再現性を欠く記述も見られます。このような状況では、検証も反論も不可能であり、政策に用いるには不適切です。引用の正確性と再現可能性についてお答えください。
(回答)
以上の点を総合すると、本計画の根拠とされている論文は科学的に重大な欠陥を含んでおり、これを基に政策を進めることは、EDPM(証拠に基づく政策決定)の原則に明確に反します。
したがって、私たちは以下の対応を強く要望し、本要望に対する貴職(および関係部局)の回答を求めます。
I. 本計画の即時中止
(回答)
II. 科学的に妥当なデータを収集した上での計画の再検討
(回答)
環境行政においては、感情論ではなく、正確かつ科学的根拠に基づいた政策決定が不可欠です。
国民に対して誤ったデータに基づく政策を推し進めるのではなく、透明性のある説明責任を果たすよう強く要請いたします。
つきましては、年度初めでご多忙のところ恐縮ですが、各質問および要望への回答を上記各回答欄にご記入の上、文書(PDF等)にて2025年5月12日(月)までに上記の連絡先メールアドレスにご回答くださいますようお願い申し上げます。
以上

公益財団法人どうぶつ基金
どうぶつ基金は、1988年に横浜で設立された民間・非営利の動物愛護団体です。活動資金のすべてを民間からの寄付でまかなっており、飼い主のいない猫の無料不妊手術「さくらねこTNR(※)」、多頭飼育崩壊の犬・猫の無料不妊手術、里親探しの支援、写真コンテストの開催、啓発活動や署名活動等を行っています。
※さくらねこTNR…「さくらねこ」とは、不妊手術済のしるしに、耳先を桜の花びらの形にカットした猫のこと。「さくらねこTNR」とは、飼い主のいない猫等に不妊手術を実施することで繁殖を防止し「さくらねこ」として一代限りの命を全うさせ、飼い主のいない猫に関する苦情や殺処分の減少に寄与する活動のこと。
※TNR(ティー・エヌ・アール)…Trap(猫を捕獲して)、Neuter(不妊手術を行い)、Return(元の場所に戻す)の略。野良猫を殺さずに減らす最も有効かつ人道的な方法で世界中で行われている。
どうぶつ基金 ちきゅう部とは…
https://www.doubutukikin.or.jp/activity/earthclub/
「いのちとちきゅうをつなげる視点で社会を見直す」をモットーに、環境・動物問題の構造分析と提言を行う部門
<組織概要>
名称:公益財団法人どうぶつ基金(Animal Action Fund)
住所: 兵庫県芦屋市奥池南町71-7
設立:1988年6月
理事長:佐上 邦久
公式サイト:https://www.doubutukikin.or.jp
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